我が鎮守府の艦娘暴走せり!   作:風が吹けば桶屋が儲かる

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赤城「遠くで私を見ていたイージス艦が...あ。なんでもないです」
摩耶「トマホーク飛ばすぜ」
赤城「やめてください!絶対に痛いのでやめてください!」
摩耶「トマホーク自体積んでねーよ。ってことで今回は私が少し不思議な体験をしたことを話そう...」


#3 時が見える(ような気がした

「あぁ加古...時が見えるぅ...」

ベッドから聞こえるこのセリフ...このセリフどこかで聞いたことがあるような...なんだっけ

「そう...髪の毛が天パの奴がなんか白い奴に乗ってる奴...あぁ!なんだっけ!」

「加古。うるせえ。ついでにそれガンダムな」

「そうそうそれ!」

摩耶に指をさした。

「で。なんでいきなり『時が見える』なんて言ったんだ?」

「なんとなく言ってみたかった」

「なんだそんなことかよ。心配させんな」

加古が安堵した様子で摩耶に微笑んだ。あたりは静かだった。それも異常なほどに。時刻2020。この時間はまだ駆逐艦がはしゃいでいたり戦艦や空母などの大型艦が女子会をしていたりする時間だ。なのに生活音が聞こえない。この部屋にいるのは摩耶、加古、霧島、龍驤、時雨、吹雪の6隻だ。こんな艦隊編成になったのはもっぱら提督の気まぐれなんだとか。

「なあそういえば全く生活音がしないように感じるのは私だけか?」

「いや。私も聞こえないです。赤城さんは?」

「私もです」

霧島も赤城もこの異常事態は感じ取ってたようだ。

「ねえ時雨ちゃん。なんか変だと思わない?」

「うん僕もそう思うよ」

会話を横目に開いた窓からは波の音が聞こえる。外には居るはずの憲兵もいない。海を見渡しても深海棲艦がいる気配もない。

「あの。テレビでもつけましょうか?」

「はい。お願いします」

赤城がこの不気味な雰囲気を紛らわすためにテレビをつけた。

ピッピッ

「あれ...どこも砂嵐みたいですね...」

「時雨ちゃん!なんか怖いよ」

「大丈夫。僕がいるから」

刹那、いかにも古めかしい音楽と国家非常宣言時に使用されるチャイムと砂嵐とともに音声聞こえてきた。

「...ジ....しあげ.....す臨時ニュースを申し上げます。大本営陸海軍部、一二月八日午前六時発表。帝国陸海軍は本八日未明、西太平洋においてアメリカ、イギリス軍と戦闘状態に入れり」

画面は砂嵐のままだった。赤城はとっさにリモコンに手を伸ばしテレビの電源を切った。

「なんだったの...あれ」

「今って何年だよ」

「2016年であってるよな」

日めくりカレンダーには2016年と書いてある。

間違いない。刹那、砂嵐とともにさっきの音声がテレビから流れ始めた。さっきより大きな音だった。

「時雨ちゃん!本当に怖いよ!」

「大丈夫!大丈夫だから!」

駆逐艦が怯えている中、霧島がテレビのコンセントを引き抜いた。

「これで安心。変な声は聞こえないはずよ!」

「流石霧島姉貴!すげぇ」

加古が霧島を慕った刹那、部屋の照明が落ちた。

「おい誰か探照灯!」

摩耶が叫ぶ。

「待って!ほら。これで大丈夫」

霧島が自分の艤装の探照灯の電源をつけた。あたりは波の音しかしない。しかしあの音声がまた鳴った。今度は施設中のスピーカー、鎮守府に設置された野外スピーカーまでも。それもさっきより大きな音でだ。だんだん音楽、チャイム、音声が混ざり合い訳のわからない音が鎮守府中に轟いていた。刹那。

「アァアアアああああああああ‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎」

複数の女性の叫ぶ声がした。

「あぁ?やんのかゴルァ!」

「霧島さん落ち着いて!」

霧島が逆ギレし赤城が霧島を止める。

「...怖いよぉ。鳥海助けてえ...」

「摩耶...案外お前もチビらすんだな」

「うるせえ...」

加古が摩耶をちゃかす。

「時雨ちゃぁあん。うわぁあん」

「吹雪ちゃん。大丈夫。大丈夫だから」

時雨が飛びついてきた吹雪をゆっくり慰める。

さっきから聞こえた音声といい音楽といいチャイムといいこれらは一体なんだったのだろうか。

 

 

霧島がこの異常事態を分析していた。

「ここら辺の電磁波が乱れていますね。これらが偶然に重なり合い次元に干渉してさっきみたいな音声がなったのでしょう。しかし気がかりなのが...」

「あの叫び声...ですね」

霧島でも赤城でもあの叫び声はわからずじまいだった。

全く人の気配のしない鎮守府。それどころか海にも深海棲艦がいる気配もない。なのに声が響き渡った。

「あの...廊下見てきます」

「いってら」

この場全員が不安そうな表情で霧島を送った。

「一番頼もしい奴がこの部屋から出て行ったよ。これからどうするんだ?」

加古の問いかけに誰も反応しない。しばらく沈黙が続いた。霧島の艤装はこの部屋に置いてある。探照灯だけを頼りに部屋を灯していた。

「なあ...どうするんだよ」

加古の言葉が湿っていった。

 

ー1時間後ー

「まだ帰ってこないわね」

1時間経っても霧島は帰ってこなかった。流石に広い鎮守府でも1時間あれば一周できるほどの大きさだ。それどころか廊下を見るだけで1時間かかるのはおかしい話だった。

「私、霧島さんを探してきます」

「絶対に戻ってこいよ」

「大丈夫です!あなたたちを見捨てるわけにはいきませんから」

そうゆう風に言葉を吐いた後、赤城は部屋を出て行った。"かちゃ"っとドアが閉まる。

「なあ。あいつら本当に帰ってくるのか?」

「分かんねえよ!」

摩耶が叫ぶ。涙が混じった声で。

「正直言って怖いよ!鳥海の比なんてもんじゃねえんだよぉ」

加古の胸元に摩耶が飛びついて行った。加古は優しく頭を撫でる。優しい手だ。

「摩耶って意外とチキンなんだね」

時雨の率直な感想が摩耶の心を刺した。

「そ...そんなんじゃねえし」

 

赤城が部屋を出て1時間くらいたった。時刻は2233。廊下に出ただけで大型艦の2人が消えた。これはどうゆうことなのだろうか。

時雨の膝枕で吹雪が寝ている。加古は眠たそうにしている。摩耶はベッドで神頼み。この部屋はそうゆう雰囲気だった。誰かが口を開けた。

「...私。廊下見てくる」

摩耶だった。

「お前。チキンだったんじゃねえのか?」

「ちげーし」

摩耶は廊下に出た。廊下も案の定暗く隙間風の音がごうごうと響く。暗い。暗くて何にも見えない。そんな廊下の奥の方から一つの光が見える。その光に向かって走って行った。だんだん光が大きくなる。その光に摩耶は飛び込んだ。一瞬視界がホワイトアウトした。

「....ここはどこだ...」

潮の匂いと波が立つ音。それにディーゼルエンジンから出るような排気ガスの匂い。知らないような場所?違う。知ってる。ここは...

「私じゃねーか...それもあの頃の」

自分の甲板を自分で歩く、こんな不思議な感覚だ。海はもう瑠璃色になっていた。空も紅い成分が抜けそうな瑠璃色の空をしていた。周りには男達が必死に走り回っている。刹那、摩耶は見た。

「魚雷の...航跡?!」

慌てて艦橋へ向かって走る。しかしここは艦尾。到底走って艦橋に到達したとしても3分以上はかかる。間に合わない。そうだ私はこの魚雷を受けて沈んだんだ。痛かった。本当に...痛かった。

「くるなあああ!」

この叫びも乏しく左舷に4発命中した。船体が左に傾き始める。

「嫌だ!嫌だ嫌だ‼︎‼︎死にたくない!こんなとこで死んでたまるか!」

なあ加古。お前はちゃんと駆逐艦の面倒見ているか?...残念ながら私はあの頃の私とともにレイテ沖で沈みそうだ...じゃあな....

時は1905。摩耶は深海にその姿を消していった。

 

お...きろ....起きろ!

「ん...私...沈んだんじゃ...」

目の間に加古がいた。そして高雄、愛宕、鳥海もいた。

「私...レイテ沖の海からゾンビのように...」

「貴女は偶然海に漂っていたらしいのよ。今朝リ級が貴女をここまで運んできたのよ」

高雄が状況説明をしてくれた。でもまさかリ級が運んでくるとは思わなかった。

「それでね深海側も昨日、鎮守府で起きたようなことが起きたらしいのね。まだ原因は分かってないらしいのよ」

「じゃあなんでお前らは普通なんだよ...」

「遠征で鎮守府にいなかったからよ」

単純な理由だった。後から聞いた話、鎮守府周辺海域で濃霧が発生していたという。いつもは笑い話に変える摩耶も今回は限りは言葉が出なかった。

私は見たんだ。自分が自分に乗ってる。そして沈んだんだ。レイテ沖の海へ...だからもう思い出したくない。あんなに痛い思い出.......

 

涙が溢れてきた。怖かった。本当に怖かった。

「大丈夫。摩耶はもう沈まないから」

高雄が優しく私を抱きしめた。こんな感じに抱きしめられたのはひさしぶりだ。

あの不思議な体験といい濃霧が発生したといいあの不気味な音声といい....それらの超常現象がなぜ起きたのかは今でも謎のままだった。

 




今回はシリアスな回になりました。1、2話はギャグ?成分多めなのか、滑ったギャグなのか明るい感じになったのに対しこの回では非常に重くなったような感じがしますね...
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