「私さあ。見ちゃいけないもん見たような気がする」
摩耶は言い出した
「なに見たんだ?」
加古が問いかける。
「大淀が眼鏡外して...」
「まあ外すことはあるでしょう?」
それは当たり前の判断だ。流石に眼鏡をかけている艦でも入隻時や就寝時は眼鏡を取る。近い例を出せば鳥海だってそうだ。しかし大淀は違っていた。
「下ネタ大爆発だった...」
「?!」
そうあの真面目どうで清楚な大淀が下ネタ大爆発とは.....
「いやマジで」
でも見た人の証言がある。摩耶は意外と嘘はつかない方だと加古も心得ている。ついに加古が悟った。
「これで分かったよ。清楚っぽい奴ほど」
つまり大淀の...
「中身は変態」
彼女らの大淀の定義は"大淀=変態"になってしまった。
※
「くしゅん...誰か私の噂しましたね」
清楚なくしゃみ。大淀はくしゃみのせいで誰かが自分のことを噂しているのではないかと思っていた。
「いや誰もしてないと思うんだけど」
珍しく大淀の話し相手に川内がいた。
「本当ですかね?」
大淀は川内に問いかけた。まあ彼女のことだからどうせ何か適当なことでもいうんだろうと思っていた刹那。
「そうだ。大淀の眼鏡外した姿見たことないんだけどさあ〜見てみたいな〜」
眼鏡を外した姿を見たいというリクエストがきた。眼鏡を外したらどうなるかも知らずに。
「ダメです!」
きっぱり断った。私自身眼鏡を外したらどうなるか知っているから。流石の夜戦バカでも私を抑え込むことは無理でしょう...
「そんなこと言わないでさ〜」
本当にお花畑ね....でも見せたくない。見せたら貴女が大変なことになってしまうから。
川内がしつこく要求してくる。幼い子供が駄々をこねるような感覚だ。大淀は"はいはい"程度に聞き流した。そんなことは束の間。いきなり視界がぼやけた。眼鏡を取られた。
「ひゃ!やめてください!」
周りの視界がぼやけて何にも見えない...ただ川内の甲高い声が脳内に響き渡る。この意外と憎たらしい声...
「いぇーい!大淀の眼鏡ゲット!」
やっと大淀の眼鏡を外した顔を見れた。しかし川内は気づいていなかった。大淀に起きた変化を。
「うぅう...うぉおあ」
視界が明瞭になってゆく...そうだ...外されたんだ。...
眼鏡が....
「へ?!っちょ?!」
大淀の顔がぎょっと川内の方に向いた。それも意味深な嗤いで。ついに川内に飛びかかる。
「川内のおっぱい柔らかそう!いったっだきまぁあす!!」
理性を失った獣のような大淀。自称夜戦バカでも太刀打ちはできまい。川内はコンクリートに尻餅をついた。もう時間がない。動こうにも身体が動かない....
「イィヤァぁああああ!」
※
「断末魔が聞こえたような」
また川内か。そう思った。他人に変なこと要求しといて結局は自分に悪い方向に返ってくる。これが川内のいつものパターンだ。
「ほっとけ」
※
「ああぁ!」
もうやめて...胸はダメぇ...なんで!なんで私ばっか...
「もっと気持ちよくさせてあげましょうか?」
大淀のゲス嗤いが川内に近づく。川内の真赤になって涙でくしゃくしゃになった顔をじっくり眺めた。
「勘弁してえ!」
川内が大淀に食われていく。胸を強く揉まれ川内が大声で喘ぐ。この声をもっと聞きたい。大淀は川内の胸を強く揉んだ。
「寝るに寝れねえな」
眠たいのに眠れない。暑いからではない。上からの騒音でもない。外からの騒音だ。自分自身、鳥海を不眠症にさせている経験があるがそれ以上に酷いものだった。
「ねえ隣の棟の方からめっちゃ川内の叫び声が聞こえるんだけど」
川内がうるさくしているのは分かった。それでもあえて名前を出したくなるほどだった。この外からの騒音で流石の加古も寝れなかった。
「もうあいつのことだから喘いでんじゃね?」
摩耶は簡単に言葉を片付けておいた。
「なるへそ」
加古はこの片付けた言葉を言葉のタンスの中にしまった。結局は...
「てか窓閉めりゃあいい話じゃん」
まさに摩耶の言う通り窓を閉めればよかったのだ。うるさいのなら音を遮るものを使えばいいこの場だと窓だ。しかし窓を閉めると暑い。次に提案されたのが....
「じゃあクーラーつけるか」
そう。扇風機でも効かなければクーラーをつければいい。そんだけの話。
「せや...」
摩耶が応答しようとした刹那。
「大変よ!」
また別の甲高い声がドアを開けて入ってきた。
そこには慌てた様子の古鷹がいた。
「どうしたん?」
と加古が問いかける。
「川内が犯されてるの!」
古鷹から出た言葉は意外なものだった。どうせ自業自得でいつも受け側になってる川内が...うん...
「どうせ提督が手を出したんじゃないのか?」
提督に罪をなすりつけた。それが楽だからだ。でもあの名前が来るまでは普通で居られた。いや違う。まだアレは"根拠の無い定義"でしかない...
「手を出したのは...大淀よ」
さらりと古鷹の口からこぼれた。そう大淀だ。
「マジかよ....」
ついに古鷹まで見てしまったのか....
現場へ向かった。そこには野次馬が大勢駆けつけていた。駆逐艦もいたが周りの大型艦に目を隠されていた。そう。そこにはいた川内の姿があまりにも不適切だからだ。
「あぁ摩耶、加古...」
そこには高雄もいた。
「高雄姉どうし....た」
絶句した。こんなやられ方は普通しないだろう...
「なにしたら自称夜戦バカの川内がここまで一方的にやられるんだ?」
加古もこの姿に唖然していた。服は破け、スカートや下着も脱がされ顔の表情も壊れていた。まるで猛々しい男どもに犯されたような感じだ。
「あはは...もういっちゃったぁ...もうえっち」
川内の口からは壊れた台詞しか出てこない。相当なやられ方をしたんだろう。
「早速ドックに連れてっていきましょう!」
賢明な判断だった。古鷹が川内を自分の肩に乗せドックまで運んでいった。
「手伝おうか?」
「ごめんありがとう」
加古もこのドック移送まで手伝った。
※
「なあ起きろ!テレビみろよ」
朝っぱらからなんだよ。私朝は弱いんだよ...それにニュース番組?見たくないね....
「ニュース番組嫌い...」
本心が口から漏れた。こぼれた言葉はテレビの音声によってかき消されていった。
「えぇここからは現場にいる足柄アナウンサーに交代します。『こちら今日未明、軽巡洋艦川内さんが襲われた場所です。憲兵からの情報によると近くに眼鏡が落ち...』」
テレビには昨日私たちがいた場所が写っていた。そういえば足柄ってこの鎮守府の公営放送のアナウンサーだったっけ?しかしそんな考えはつかの間....
眼鏡
こんな単語が出てきた。それに襲われた川内。古鷹の"大淀"という証言。
「眼鏡...あ。」
テレビの音声では犯人が見つかってないという。
「あの眼鏡って」
「まさか」
「大淀のじゃん!」
2人して大きな声を張った。部屋には彼女らの声がゆっくりと響いた。
※
「なに?大淀だって?」
「てかまだDNA検査してなかったのかよ!」
憲兵の耳には大淀だという噂は耳に入っていたがまだDNA検査などは行っていなかった。憲兵が手を抜いて捜査していたからだ。ただ大勢の艦が見たと言っている。しかし憲兵のは確実な証拠がなければ動かなかった。
「んで大淀はどこにいるんだ?」
加古が憲兵に問う。
「それが...行方不明らしい」
行方不明...未明から消息が経ってどこにいるかわからない。憲兵も提督も知る由がなかった。
「これってやべえパターンじゃん!」
もし暴走した大淀が外海に出たらどんな被害が出るか...想像もしたくない。特に意味深の方で酷い予想が立った。
「摩耶?どこに行くんだ?」
加古がどこかへ行こうとする摩耶に問いかけた。
「あいつが海に出てないか調査してくる」
そう言葉を吐き捨て憲兵の事務室を出て行こうとした刹那。
「一人で突っ込むつもりか?なら私も行く」
加古が摩耶の手を掴んだ。戦友を失うわけにもいかないし...それに大事な仲間だ。1人で危険な目に合わせられない。
「助かる!」
刹那、言葉が飛んできた。摩耶も一匹狼では行動しない考えの持ち主だった。正直、防空艦となってからは空母に随伴することが多くなったり他の艦との連携も上手く取れるようになってきた。それに1人では寂しいからだ。2人は憲兵のの部屋を駆け出していった。
※
「ドゥユゥライクシモネタ?」
そのゲス染みた嗤いがタ級に近づく。オーラで軽巡が戦艦に圧倒することはまずないことなのだが...今日の大淀は違っていた。それに対しタ級は冷静に大淀を傍観する。
「誰ダオマエ?」
知ってるけど知らないふり。
「ふふふ♪」
不敵な笑みを浮かべ大淀が接近する。刹那...服が破ける。装甲が剥がれる心まで覗かれる。そして大淀の手がタ級の胸に近づく。
「?!」
大淀の手がタ級の胸に触れた刹那、その手が激しくタ級の胸を揉んだ。
「ヤメロォ!」
「その赤面かわいいよぉ♪」
「コノバケモノメ....」
戦艦が軽巡に食われていく。こんなの普通じゃない。
オマエ.....フザケルナ。次ハオマエガコウナル番ダ。
タ級が海面に倒れこんだ。
※
「あれ...タ級だよな」
摩耶は見た。タ級が水面に仰向けで浮いている。随伴艦はいなかった。
「これまた酷い脱がされようだ」
川内以上に酷かった。服どころか装甲が剥ぎ取られている。陰部も丸出しだ。タ級の目は瑠璃色の空を覗いていた。
「おーい大丈夫かあ?」
一応生きているか問いかけてみた。
「オマエ...敵ナノニ助ケテクレルノカ?」
戦艦タ級の霞んだ目が摩耶を見る。かすれた聲だった。
「そうじゃないくてさあ。大淀が暴走してどっか行ったんだよ。ついでに眼鏡外してるけどね」
摩耶が冷淡に状況説明した。正直言って深海棲艦の被害はどうでもよかったのだ。
「?!...アイツは...」
アイツはどこに...ただ逃げた方向だけは分かる...
タ級は指をさし...
「アッチノ方向ニニゲタ....」
指をさした。戦艦でもこのようなことがあるのか...信じたくもなかった。
「サンキュー」
軽い言葉で加古は見送った。
「まあ。お大事にな」
それに対しこのような言葉しか出なかった。
目の前では戦艦が横たわっている。普通じゃない。こんなのは。
※
「ったく大淀のやつ逃げ足速いんだよ」
新規に取り付けたレーダーで大淀を探していた。こんな広い海のど真ん中で見つかるのか?2人は不安と焦燥に駆られていた。もしあいつが艦娘、深海棲艦....いや別のものに手を出したらこの海域の治安が悪くなる...
「こんな広い海に逃げられたらまずいな」
摩耶はポツリと呟いた。
「私のレーダーになんか探知されたんだけど」
索敵中だった加古のレーダーに反応があった。
「どれどれ?」
「速さは
大きさは...
「軽...」
「巡洋艦?」
少し大きめの...いや長さ的には重巡洋艦に匹敵する。が...この海域に重巡洋艦を遠征に出しているなんて聞いていないしましてや深海棲艦の重巡洋艦でさえ出ない場所だ。...そう軽巡ならこの海域ではしばしば報告される。しかし重巡並みの大きさ...そんな軽巡いるのか?
そんな考えことをしていた刹那、遠くの黒い影が嗤い近く。
「次のたあげっと発見♪摩耶ちゃんのおっぱいありったけもんで下も思いっきりいじめてあげる♪」
その黒い影は一気に距離を狭めてくる。黒い影には大きな白波が立っている。この威圧感に摩耶も加古も圧倒された。
「やべえ!一気に近ずいてきたぞ!はあ?
とんでもない速さだ。あの島風でも
「なんなんだよあいつ!オリハルコンでも積んでんじゃねーのか?」
「そんなもんあるわけねーだろーが?!いつからここはアトランティスになったんだよ!てか逃げるぞ!」
オリハルコン?そんなもんが現実にあったらたまったもんじゃない。でもその黒い影が58ktを出していることは現実であった。現実離れしすぎた。
「逃げるぞ!」
「おう!」
加古は摩耶の手を強く握り全速力で黒い影を振り切ろうとした。
あの影は速かった。しかもどこかで聞いたことのあるその黒い影の声をよくよく聞いてみると。
ーー大淀の声...
そんなことよりも...
「やべえもう追いつくぞ!っく...」
流石の重巡でも最高でも
「なんか眼鏡ないか?」
加古がふいに口から言葉を出した。そう相手は眼鏡をかけてない大淀。ならば眼鏡を装着させれば大淀は止まるのではないかという加古のひらめきがそこにあった。
「ねーよそんな...あった」
と言いつつ眼鏡を懐から取り出した
「それ貸せ!」
「なにすんだ?」
「大淀の顔に向けて投げる!」
動いてる目標に眼鏡をピンポイントでかけるのはそう簡単じゃない。逆にできたらそれは人...いや艦を超えたものに違いない。
「そんなことができんのかよ!」
「やんなきゃ分かんねえだろ?!」
摩耶と加古の怒号が飛び散った。
「くらえ!加古眼鏡スペシャル!」
「?!あぁあ!!」
投擲された眼鏡が大淀の目に向かって綺麗な弾道を描き飛んでいく。この間に大淀の悲鳴とともに月夜に反射する大淀の眼鏡のレンズが煌めく。
「入ったか...」
月夜でも見えにくい。ただ大淀の動きがおとなしく...静止してるように見える。
「分かんねえがおとなしくななってるように見えるが...」
彼女らは大淀に近寄っていく。大淀はどうなったのだろうか。暴走はしないだろう...と思った。
「んん。私どうしたんでしょうか...」
目の前が霞んで見える。目の前いに重巡洋艦らしき2人の影。そしてちょっと汚い言葉遣い。あの2人だと確信できた。
「おーい。生きてるか?」
「すみません。生きてます」
「まあ一件落着ってことで」
大淀の表情が疲れ切っていた。なにをしていたのか分からないうちに。
「私今までなにしてたんでしょうか?」
「覚えてねえのかよ」
「川内さんが私の眼鏡を外したところまでは覚えてます」
本当に記憶がなかった。なにが私をそうさせたのだろう。普段、入隻時や就寝時に眼鏡を外しても大丈夫なのに....
もう疲れて動けない。なぜだか足が震える。
「立てるか?」
「無理そうです」
加古は摩耶にアイサインを送った。
「行くぞ」
「せえの!ちゃんと掴まってろよ」
摩耶と加古は大淀の肩を組み海原を駆けた。海面は月の光が反射してダイヤモンドのようだ。今は艤装のエンジン音、波の音しか聞こえない。今までの出来事が嘘のようだ。
「そうだ。とりあえず」
「川内のとこ行こうか?」
「ええ...あとで謝りに行きます....それと」
「それと?」
「この体勢きついです...その、ワガママ言ってごめんなさい」
大淀の目線が海面に落ちる。
「摩耶?お前おんぶできるか?」
「えぇー...アイスおごってやるからチャラにしてくれよ」
「しゃあないな」
加古は最低限駆動に必要な艤装部分を残し大淀をおぶった。
「私。こうゆうの初めてだから...なんて言えばいいんでしょう」
「まあ気にすんなって」
「なあ加古。お前の艤装って案外重いんだけど」
「それも気にするな」
海は煌めく。重巡洋艦2隻の白波が高く海面かき回す。今夜の月は綺麗だった。
ー9時間後ー
「別に謝れとか賠償しろとかは言わないけど、もう人前で眼鏡外さないでね」
外した本人が何を言うか...大淀はそう思った。
「眼鏡外したのは貴女ですよね」
川内の顔が引きつった。目線がドックの端の方に行っていた。
「私、知らないもん」
「やっぱ川内の自業自得か」
摩耶はそう言葉を吐き捨てドックを後にした。
「まあこの件はおさまったことだしいいじゃない」
大淀に励ましの言葉を置いていき加古もドックを出て行った。蒼い空、積乱雲が重なり虚しさと夏の暑さが増す今日だった。
※
「そして後に大淀の異名は『変態メガネ』となったんだぜ」
笑ながら摩耶は吹雪に語りかける。時刻2356。普通の艦娘なら就寝している時間。吹雪は摩耶と同じの艦隊に配属された。艦隊の他のメンバーは霧島、加賀、隼鷹、鳳翔だった。霧島は夜中になると艦隊司令部の当直で宿舎からいなくなる。加賀は話しかけるのが怖い、隼鷹は普段プライベートは酒に酔っているのでまともに話を聞いてくれない、鳳翔は経営している店が忙しい、この理由から基本暇人している摩耶に相談話などをしていた。吹雪は摩耶のドタバタ劇の話を好んで聞いた。
「まだ私の周りのドタバタ劇聞くか?」
でも流石に眠気には勝てなかった。最近夜中の2〜3時まで摩耶と話しているからだ。
「すみません。もう寝かせてください...眠いです」
吹雪は吸い込まれるようにベッドに寝込んで行った。可愛い寝顔だった。楽しい夢を見ているのだろうか。吹雪の寝顔の表情は明るかった。摩耶はその寝顔を見届けベッドにダイブした。
「今日こそまともな夢見せろよな」
実はTwitterにセリフストーリーとしてツイートしたのを再編集、台詞の追加をしたものなんですよ....まあそりゃあ長くなるわな。
まだ今後の展開は考えて無いです(え?やばくねって思うんならそう思うのでしょうね。読者の中では。
※今回は長いので誤字脱字があるかもしれません。発見し次第改善していきます。