幻影のエトランゼ   作:宵月颯

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拭い去れない心の痛み。

それは己の心を蝕む毒。

だが、毒すらも清める力。

それは一つの可能性と脅威。



第四十七話 『乱舞《ランブ》』

ハガネから離艦後。

 

私ことハスミとロサは戦場となっているランタオ島へと向かった。

 

先に向かった部隊との合流道中のロサの話によるとキョウジさんを含めた拉致された人達は無事に保護された。

 

彼らの無事は確認出来るのと同時に女王感染者の正体が判明したのだ。

 

それはドモンにとってはアレの再現。

 

急がなくてはと私の中に焦りも出ていた。

 

負傷した光龍の容態も気になるが、今は事を済ませよう。

 

 

「成程、女王感染者の正体が判明…か。」

「うん。」

「つまり、女王感染者とは一度DG細胞への感染を経験した女性の事を差していたって事ね。」

「それでレインさんは…」

「…ランタオ島での決戦前に奴らに捕まってしまった訳か。」

 

 

一度終わらせた事象でも再発は免れない。

 

前回の戦いと同様に何らかの形で代替わりすると思っていたけど読み違えてしまった。

 

若しくは代償を支払う上での対価が足りなかったのかもしれない。

 

三度目の大戦から対価の償被税が上がって来たのは気のせいじゃなかったみたい。

 

ちなみに『消費税』の誤字ではない。

 

『代償を被る為の税勤』の略である。

 

 

「兎も角、他のエリアでのバルトール強襲は防げているけど…問題が出ちゃったのよね。」

「問題?」

「バルトールに指示を出しているODEシステムのコアは本来ヘルゲートに設置されていたのは教えておいたよね?」

 

 

今回は生産プラントになったメンデルかウルカノスのどちらかに設置されたと推測したのだが…

 

二つとも大外れであったが、生産プラントの破壊は成功したのでこれ以上増産される事は無いだろう。

 

問題のコアはランタオ島の地中深くに設置されていたのだ。

 

オマケに新型DG細胞の影響を受けてバルトールはデビルバルトールになってしまっている。

 

何処の無理ゲーですかね?

 

ランタオ島の周辺はGGGの援軍が来るまで鋼龍戦隊が足止めをしているが、どこまで持つか…

 

 

「ハスミ、ODEシステムは…DG?と同化しているの?」

「間違いはないわ、『山羊の眼』で視たから確実よ。」

「…」

「ロサ、無茶な事を考えているでしょ?」

「えっ?」

「大方、DGに直接取り付いてODEシステムにアクセスしようとしていると思ったけど?」

「ハスミには解っちゃうか…」

「止めはしないわ。」

「ハスミ…」

「だから、必ず帰って来て…それが無茶をする条件よ。」

「ありがとう。」

 

 

ロサ、私は徐々に真実へと明確になりつつある『山羊の眼』で視た。

 

これから何が起こるのかを。

 

これも必要な対価だから。

 

私はあなたの往くべき道を信じる。

 

 

♱ ♱ ♱ ♱ ♱ ♱

 

 

同時刻、地球・近海にて。

 

バルトール強襲による混乱の中で一つの次元震が発生した。

 

それは一瞬の事であり、第三の覚醒…サードステージ。

 

それに至っていないスフィアリアクターには察知出来ない程の微弱な揺らぎだった。

 

 

「…」

 

 

それは人であってそうではない存在。

 

識る者はその姿が一体何を示すのか理解出来ただろう。

 

だが、それ以上は詮索しない方が身の為だ。

 

彼はこの地に辿り着いてはならない時に世界を巡って辿り着いてしまったのだから…

 

 

「この世界がそうか…」

 

 

彼は何かを感じ取り確信した様に口元に笑みを浮かべた。

 

それは普段の彼を識る者達からは考えられないと思われる表情でもあった。

 

 

「…この俺と余興を共にするのは貴様らか?」

 

 

彼の前に立ちふさがったのは闘争を求める者達。

 

『修羅』である。

 

そのごく一部の者らあったが、戦いを求める者に退路はない。

 

いや、元から退路など無かったのかもしれない。

 

彼は全てに抗う事で戦い抜いてきた者。

 

彼自身にも退路などない。

 

 

「貴様達には何も判らぬだろう…貴様達が求める闘争を、その体現を、一瞬の刻に垣間見るのだからな。」

 

 

空間の暗礁宙域に存在する屑星に降り立った一人の存在。

 

機体に座する事なく生身の彼は圧倒的な威圧を広げた。

 

その場に存在した修羅達は余りの恐怖に追い込まれた。

 

勝てる相手ではない。

 

それ以前に逃げると言う考えを持たない彼らには判らない感情が脳裏に廻った。

 

 

「時に逃避と言う感情も必要だと思うが…貴様らには関係のない事だったな?」

 

 

彼は更に答えた。

 

 

「成らば刻み込んでやろう、真の『闘争』とはどのようなモノなのかをな?」

 

 

彼の指先が一瞬動いたかと思ったら周囲に点在していた修羅の烈級修羅神が一瞬の内に破壊された。

 

機体に搭乗していた者達は何が起こったのか理解出来ないまま敗北し冥府の道を歩んだのだ。

 

 

「この程度か、彼女が伝えた通り…この俺が出向くまでもなかったな。」

 

 

彼女はこちら側に飛ばされる前の俺に伝えた。

 

この世界は抗いに対する意思が熟していない。

 

貴方の鬱憤をただ煽るだけである。

 

それだけ『緩やか過ぎて反攻の意思が芽生えていない』とも話していた。

 

確かに求めていた戦いには程遠いだろう。

 

それも自分の責任と話してもいた。

 

 

「…絡繰り風情が盗み見とは呆れたものだな?」

 

 

先の光景を調査し各バルトールへ情報転送する筈だった偵察用のバルトール。

 

そのバルトールもまた一瞬の内に破壊された。

 

彼自身が知らない事であるが、先程破壊したバルトールは後の世に遺恨を残すモノだった。

 

故に放置すればより大きな戦いの火種になりかねないものである。

 

だが、静かにその脅威は防がれた。

 

その真実を識るのは山羊の眼とアカシックレコードに繋がる者達のみである。

 

 

「さて、予言された闘争の時が訪れるまで見定めさせて貰うとしよう。」

 

 

彼ことケイロンはその場を去り、彼女が指定した場所へ向かって行った。

 

 

******

 

 

一時間後、ランタオ島。

 

鋼龍戦隊がデビルバルトールを退け、ランタオ島へ接近したもの…

 

リングを形成するコーナーポストより強力なバリアが張り巡らされていると言うモノだ。

 

原作と同様であれば陸海空からの接近は不可能とされている。

 

だが、救援に駆け付けたGGG機動部隊によりそれは打破された。

 

 

 

「島のバリアはこちらで破壊した。」

「凱機動隊長、協力に感謝する。」

「いえ、それよりも島へ向かいましょう。」

「各機、島へ突入しODEシステムのコアを破壊せよ!」

「残りは艦の護衛と島周囲の民間人の避難誘導をお願いします。」

 

 

凱より島のバリアの破壊を確認した後。

 

テツヤとレフィーナは各機に指示を出して島への突入部隊と護衛部隊に分けた。

 

 

「凱隊長、島周辺の民間船舶はこちらで避難誘導します。」

「判った、頼んだぞ。」

 

 

主な避難誘導を行うのはGGG機動部隊である。

 

ビッグボルフォッグらGGG勇者ロボ軍団も前回の損傷より復帰したが本調子ではない為、後衛に回っている。

 

パワーダウンとはこの事である。

 

 

『ハスミ、向こうの方はどうだった?』

「首謀者であるウォン・ユンファの逮捕に成功はしましたが協力者の捕獲に失敗しました。」

『そうか…』

「ですが、気になる資料を手に入れる事が出来たのでこの戦闘後にお見せします。」

『判った、ご苦労だった。』

 

 

ハスミは上司であるギリアム少佐に前回のウォンの件を説明し簡易であるが事後報告を済ませていた。

 

まだまだ説明しなければならない事は幾つかあるが、目処前の問題に集中する事にした。

 

一度通信を切るが続けて別の通信が入った。

 

 

『ハスミ。』

「キョウスケ中尉。」

『あのバルトールは一体…』

「あれは新型DG細胞と融合したデビルバルトールです、かつてラウル達の物語で酷似した機体がありましたのでそのオマージュと思われます。」

『…』

「ODEシステムのコアがヘルゲートではなく…このランタオ島に安置されたのも何か理由がある筈です。」

『それがお前の推測か?』

「はい、ここまで後手に回されるのは癪ですが…」

『ドモン達はどうなっている?』

「最終リーグ開幕と同時にDG軍団の攻撃に晒されたままです、選手の多くが新型DG細胞で暴走して手の付けようがない状況です。」

『無事なのは?』

「確認できるのはドモン達シャッフル同盟、シュバルツ・ブルーダー、東方不敗・マスターアジアの七名です。」

『判った。』

「キョウスケ中尉、まさかキョウスケ中尉達も空白事件時の行方不明で『黒の英知』に触れる機会があるとは思いませんでした。」

『偶然と言うべきかお前の言う必然と言うべきか…』

「後者なのかもしれません、アカシックレコードもそうだと話してくれました。」

『…ハスミ、首相官邸で何があった?』

「それは…戦闘後でも宜しいでしょうか?」

『何故だ?』

「現時点で話す段階ではない事と場合に寄っては…」

『無理に話さなくてもいい…(話せる状況ではない、か。』

「キョウスケ中尉、恐らくですが…あの存在の介入も否定は出来ません。」

『デュミナスか…?』

「はい、私が外州精機の件でティスを逃がさなければ…こんな事には。」

『ハスミ、お前は十分に事を成し遂げている…』

「…」

『自分を責めるな、お前の協力がなければ俺達は後手に回り続けていただろう。』

「…はい。」

 

 

責めるなと言われたものの結果的に今回の失態を引き起こしてしまった。

 

もっと早くに動けていればと何度も悔やんだ。

 

何とか被害を最小限にしたが、犠牲は犠牲。

 

私の中でそれが毒の様に燻った。

 

光龍が負傷した件で引きずっているのかもしれない。

 

だからあの失態を引き起こしたのだ…

 

 

♱ ♱ ♱ ♱ ♱ ♱

 

 

数時間後、ランタオ島内部。

 

新型DG細胞による選手の暴走はGGG機動部隊のマイク・サウンダーズ13世により鎮静化した。

 

新型DG細胞の研究をさせられていたキョウジより解決策の提示がされた。

 

それはGGGの雷牙博士との共同作業で新型DG細胞を鎮静化させる新型ディスクXを使用する事。

 

それを行うにはディスクへの転写にかかる時間である15分を稼がなければならなかった。

 

連戦で疲弊した体に鞭を打ち、私達は無限再生を続けるデビルバルトールの大群と戦闘を続けていた。

 

新型DG細胞により強化されたデスアーミーの部隊からの追撃も入り混戦状態は続いていた。

 

ODEシステムのコアは依然と無傷のまま指令を送っており、各地の防衛戦線も徐々に押されつつあった。

 

混戦による混戦が更なる悲劇を呼び込んだ。

 

 

「レイン!!」

 

 

継続する混戦の最中でODEシステムのコアを発見したものの、ODEシステムの生体コアにされてしまったレイン。

 

彼女を今の状態のまま引き剥がせば命は無いと判明したのだ。

 

新型DG細胞とODEシステムの強固なガード機能がより救出を困難にさせていた。

 

しかしODEシステムを止めなければ各地の防衛戦線が決壊するのは時間の問題だった。

 

ドモンに大切な者をその手で終わらせると言う残酷な選択が迫っていた。

 

 

「俺は…レインを!」

 

 

愛した存在をその手にかける。

 

それは彼自身の前世に行った業そのものの再現。

 

ドモンは苦悶の表情で拳を握り絞めた。

 

 

「待ってください!」

「ロサ…」

「レインさんを助ける方法があります。」

「どういう事だ?」

「外側からのアクセスが駄目なら内側からアクセスを行うんです。」

「ロサ、それはドモンに…新型DG細胞に感染しろと言っているのよ。」

「判っています、だから私もサポートに入ります。」

 

 

ロサの案はODEシステムのコアに直接取り付き、同化した上で内部からコアを鎮静化させる方法だった。

 

一歩間違えば、二人ともコアに取り込まれる可能性もある危険な賭けだった。

 

 

「判った、ロサ…手伝ってくれ。」

「判りました。」

 

 

ドモンは残り少ない時間の中で決断した。

 

そして戦い続ける仲間達に言葉を残した。

 

 

「お前達、俺が戻って来るまで外の事は任せたぞ!」

 

 

これは自分の我が儘。

 

 

「兄さん、シュバルツ、必ず帰ってくる。」

 

 

これは自分の決意。

 

 

「師匠、これが俺の決めた道です。」

 

 

これは自ら選んだ選択。

 

 

「往け、ドモン……お前が戻るまでこの世界の事は儂らが守って見せようぞ!!」

 

 

私も自身の決着に向かうロサにエールを送った。

 

 

「ロサ…」

「ハスミ、暫く一緒に戦えなくてごめんね。」

「いいのよ、その代わり必ず帰ってくる事…これが約束よ。」

「うん!」

 

 

混戦の中で露出したODEシステムのコアへゴッドガンダムとエザフォスが取り付いた。

 

二機が新型DG細胞の影響でODEシステムのコアに取り込まれてしばらくの後。

 

周囲のデビルバルトールや各地のバルトールの襲撃が止んだと通信が入った。

 

 

「行ってらっしゃい、ロサ。」

 

 

私は旅立った妹分に祈りを捧げた。

 

 

*******

 

 

こうしてバルトール事件は鎮静を迎えた。

 

しかし、各地で戦いの火種が芽吹き始めていた。

 

外宇宙ではギシン星間帝国とガルラ大帝国の同盟軍による大規模侵攻。

 

宇宙エリアではザフトで新造されていたMSがファントムペインによって強奪された上にプラントのコロニーが損傷すると言う事件。

 

オービタルリングでは『火星の後継者』と呼ばれる集団の襲撃。

 

極東エリアでは『修羅』と名乗る者達の介入を受け、コウタ・アズマの妹であるショウコ・アズマの誘拐。

 

そしてランタオ島での二人…いや、三人の犠牲によるODEシステムの鎮静化。

 

三度目の戦乱の火蓋は切られたのである。

 

 

>>>>>

 

 

後味の悪い戦闘後、私は定例会議と引継ぎを終わらせた後にメディカルルームへと向かった。

 

艦長命令による面会謝絶の名目で軍医と衛生兵の人達には出払って貰っている。

 

病室で治療から目覚めた光龍がベッドの上から半身を起こしていた。

 

やはり、治療後だが顔色が優れない。

 

体内の念の流れが戻るまで静養が必要だろう。

 

こちらの諜報活動に支障が出るが、致し方ない。

 

 

「無事、終わったみたいだね。」

「いえ、始まりです。」

「始まり?」

「今回の戦いを期にユニファイド・ウィズダムは本来の意味で開幕したのです。」

「そう…か。」

 

 

現在のメディカルルームに人気はない。

 

アカシックレコード経由の話をしているのはその状況の為である。

 

私は三度目の戦いが開幕した事を光龍に告げた。

 

 

「元々アカシックレコードに記された必然とも言える戦いの一つの発生時期を遅延させただけでもまだ良い方でしょう。」

「それで…これからどうするんだい?」

「それぞれの場所でそれぞれの戦いは続いています、私達は三手に別れて各地を巡る事になると思います。」

「随分と遠回りなやり方だね、君は今回の倒すべき敵の所在を把握出来ているんだろう?」

「私が予め答えを伝えても意味はないと思いますけどね、それに…」

「それに?」

「発生時期の遅延で倒すべき敵の出現時期もズレているので今暫くは各地の鎮圧に専念すべきでしょう。」

 

 

発生時期の遅延が発生したのは事件自体を無くそうとした結果の副産物である。

 

流れのままに事件を起こしていれば悪循環な戦いが続いていただろう。

 

今回は戦うべき相手が定まっている事と想定していた以上に連合軍の軍備が整っているので対応出来るのだ。

 

 

「それとお父さんには道化をして貰います。」

「道化?」

「ええ、アラン・ハリスの名で国防総省傘下のアクタイオン・インダストリー社から新型テスト機管理の名目でこの艦に乗艦して貰います。」

「いつの間に話を進めていたのかな?」

「もしもの隠蔽プランの一つです、戸籍に関しては小父様の方で手配して頂いているのでご安心を。」

「やれやれ、まあ…僕の表向きは武器商人って事になっているから間違ってはいないけどね。」

「当面の問題は…彼らの監視ですかね。」

「監視?」

 

 

会話の最中、自動ドアの開閉音と共にメディカルルームへ侵入する者達が居た。

 

ギリアム、キョウスケ、アクセル、マサキ、リュウセイ、凱の六人である。

 

 

「ハスミ少尉、入るぞ。」

 

 

ギリアムが一声書けてから仕切り用のカーテンを開けた。

 

ベッドの上でヘラヘラと『どうも。』と返事をする光龍に対しギリアム以外は彼の姿に驚愕の声を上げていた。

 

 

「!?」

「な!?」

「オイ…!」

「マジか…!?」

「…どういう事なんだ!」

 

 

メディカルルームで彼の姿に凝視する記憶を持つ者達。

 

彼ら記憶を持つ者なら一目で判るだろう。

 

目処前の人物が自分達の敵だった存在だと…

 

周囲の様子を察してギリアム少佐はこの件に関する説明をハスミに求めた。

 

 

「ハスミ少尉、説明して貰っても構わないだろうか?」

 

 

ギリアム少佐を始めとした記憶保持者達の刺さる視線。

 

自分で晒したのだ、責任は取ると決めている。

 

私はギリアム少佐達へ静かに話した。

 

 

「彼は君と何の関係を?」

「…血縁者と言うべきでしょうか。」

「血縁だと?」

「判りやすく言うのであれば親子…です。」

 

 

「「「「「!?」」」」」

 

 

「アラン・ハリス…いえ、孫光龍は私の実の父です。」

 

 

私は静かに眼を伏せて答えた。

 

彼らにとって前世の頃から戦って来た相手だ。

 

だが、今回は流れが違う事を理解して欲しい。

 

そしてその決着は次に続く。

 

 

=続=

 




世界に散らばった闘争。

それを防ぐ為に仲間は世界を巡る。

そしてこの騒動もまた起こるべくして起こった出来事。


次回、幻影のエトランゼ・第四十八話 『血縁《ケツエン》』。


絆に必要なのは血縁か心縁か?



<ある者達の思惑>


=???=


「ふう…結局茶番となってしまった様だね。」
「光龍の見出した道、それも流れのままなのだろう。」
「まあいいさ、これであのハスミ・クジョウが光龍の娘である事は明確となった。」
「潤よ、此度の事…後に強大な渦となるだろう。」
「泰北、どういう事だ?」
「あの娘が光龍の娘であると同時にクジョウの血を受け継ぐ者…此度の件はナシムの姉妹神たるアシュラヤーへの反逆行為。」
「それがどうしたと言うのだ、貧弱な人間を『在るがままの姿』で護る事を選んだ臆病者など大した事ではないだろう?」
「…」
「話が終わったのなら僕は失礼するよ。」


夏喃は話を終えるとその場を去って行った。

そして泰北は一人残された場で静かに告げた。


「生々流転……万物は絶えず生じては変化し、移り変わっていくのじゃ。我らの宿命もまた然り。」


彼はふぅと溜息をついた。


「潤よ、真の使命に反した者は天命によって滅する時が来ようぞ。」


泰北もまたその場を去り、主無き玉座の間は再び静寂の間へと変化した。


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