幻影のエトランゼ   作:宵月颯

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望んだ結末でなくても進む。

抗う為に戦う。

そして異例の存在は問う。

目指す先の未来への意思を。


第五十二話 『狩人《カリビト》』

幾多の並行世界を巡り、私達はスダ・ドアカワールドへと転移した。

 

未だに侵略を続けるダークブレイン軍の噂を現地の人々より見聞。

 

そして数日前に陥落したと噂が入ったラクロア国へと向かった。

 

 

******

 

 

私達は転移したザーンの村から東に向かってセントーの町へと到着した。

 

だが、この城に近い町も既にダークブレイン軍の進軍によって陥落。

 

所々に不気味な結晶が点在し町全体を囲む様に覆っていた。

 

 

「ここも既に陥落していたなんて…」

「確か、この町を南に下るとラクロア城があるんだったね。」

「ハリスさん、その通りです。(昔見た設定集の地図と一致してるから間違いない。」

 

 

私達は機体から降りずに町周辺を調査。

 

住民は結晶に飲み込まれた者達以外は避難した様子だ。

 

結晶に取り込まれた人々。

 

中にはジム顔とかガンダンク顔の民族も含まれていた。

 

 

「ここまで。」

「…城に近いなら襲われても可笑しくないだろうね。」

「仰る通りです。」

「ハスミ、この結晶を生やした存在に心当たりは?」

「カーウァイ中佐、結晶の色から察するに町を襲撃したのはダークブレイン軍の三幹部の一人クリスタル・ドラグーンで間違いないでしょう。」

「例の水晶の竜か?」

「はい。」

 

 

アカシックレコードで調べた結果、城も陥落している様子が伺えた。

 

ただ、この世界の神々がこの状況を傍観し続けているのも気になる。

 

既にスペリオルドラゴンと関わりを持つ騎士ガンダムがこの世界に降り立ったのはアカシックレコードでも確認している。

 

問題は騎士ガンダム達は数週間にデブデダビデの攻撃によって負傷し生死の境を彷徨っている事。

 

今の彼らに無理強いは出来ないだろう。

 

オマケにミリシャやアークもダークブレイン軍の襲撃で援軍を送れる程の余力はない。

 

 

「ハスミ、今後の行動はどうする?」

「…先手を撃ちます。」

「まさか、敵の手に堕ちた城に向かうのか?」

「いえ、向かう場所はこの世界の宇宙に転移したダークブレイン城…奴らの居城です。」

「いきなり連中に殴り込みをする気かい?」

「誰かがやらなければならない事です。」

 

 

場合によってはスフィアの次元力で何処かの異空間に転移させる。

 

このスダ・ドアカワールドを救うにはそれしか手がない。

 

 

「…使う気なんだね。」

「はい、出来る事ならまだ使うべき時ではないと思いましたけど…」

 

 

ハリスの言葉に私は答えた。

 

蒼き女神の力を解放し奴らへの報復を行う。

 

危険だと分かっていてもやるしかない。

 

 

「ハスミ、先にこの世界に転移しているロンド・ベル隊と合流するのはどうだ?」

「…それは。」

 

 

私の様子に察したのだろう。

 

確かにテンペストお義父さんの言葉は正しい。

 

でも…合流すると言う事はハリスさんやケイロンの正体が記憶所持者達にバレてしまう。

 

クワトロ大尉達に隠し通せるか?

 

どんなに考えても嫌な結末しか見えない。

 

 

「ハスミ、結果がどうであれ…彼らと合流した方が得策だろう。」

「ケイロン…」

「これもお前が話していた無限力とやらのお遊びの一環かもしれんな。」

 

 

そんな事をすれば、私達の約束が…

 

ヴィルとの約束が遂げられなくなってしまう。

 

それは少しの亀裂で瓦解してしまう程に危険な約束なのに。

 

どうしたらいい…

 

 

「テンペスト、余りハスミを困らせないでよ。」

「ハリス、だが…」

「ハスミが前に話しただろう?」

 

 

ハリスは前回のハスミからの説明を復唱した。

 

 

「ハスミは絶対にケイロンを事情を知っている記憶を持つ者達に合わせたくないってね。」

「…ロンド・ベル隊で確認が取れている記憶保持者はクワトロ大尉のみ、危険はないと思ったのだが?」

「いや、あのクワトロ大尉だっけ?結構な切れ者だし…こっちの意図に気付くかもよ?」

「テンペスト、ハリスの言う通り…ロンド・ベル隊との合流は少し待った方いい。」

「カーウァイ中佐…」

「ハスミが提案の有無に関して回答を渋るのには必ず理由がある。」

 

 

ハリスとテンペストの会話にカーウァイも参加。

 

話し合いの結果、ロンド・ベル隊との合流は少し待つ事となった。

 

 

「テンペストお義父さん、すみません。」

「いや、俺も急かし過ぎた…すまなかったな。」

 

 

この時点でロンド・ベル隊との合流は正論。

 

それでも私は彼の存在を守らなければならない。

 

私は大切な人達を護る為に裏切りを重ねる覚悟は出来ている。

 

 

「!」

「っ!」

 

 

話し合いを続ける私達。

 

だが、有る気配を感じ取った。

 

澱んだ悪意を詰め込んだナニカを。

 

 

「ハスミ、ちょっとばかり厄介な相手が近づいている様だね。」

「はい…!」

 

 

いち早く悪意の存在に気が付いたハスミとハリス。

 

 

「敵襲か…!」

「はい、隊長格と思われる気配が2、残りは雑魚が14、十分気を付けてください。」

「今回も敵の数が多い。ハスミはエクリプス、ハリスは前回と同様にエクスガーバインで対応してくれ。」

「了解。」

「了解したよ、流石にウダウダ言っている暇はなさそうだからね。」

 

 

カーウァイの指示の元、各自戦闘準備を済ませ接近する敵影に対し臨戦態勢を取った。

 

 

「来ます!(この気配、やっぱり!?」

 

 

ハスミの声と共にセントーの町に出現した機影。

 

紫色の奇怪な生物。

 

そしてそれを引き連れた古代のファラオの姿をした巨人と赤いMS。

 

 

「妙なエネルギーを感知したと思ったが…また来訪者の様だな。」

「貴様らは一体何者だ!」

「だぁはっは!!教えてやろう!俺様の名はデブデダビデ…ダークブレイン軍団の最高幹部だぁ~!!」

 

 

カーウァイの言葉に自己紹介をしたデブデダビデ。

 

だが、デブデダビデの発言に毒舌で反論するハスミ。

 

 

「…下品で三流の様なセリフですね。」

「な!?」

「その様な物言いではそう取られても致し方ない。」

「ぐぬぬ!初対面で俺様を怒らせるとはいい度胸だなぁ!?」

「それに度胸も何も勝手に自己発言で自滅したのはそっちだろう?」

「…」

 

 

ハスミに続きケイロンとハリスもまたデブデダビデへの毒舌が炸裂する。

 

そのデブデダビデも出出しから馬鹿にされたのであっては彼の気も収まらないだろう。

 

 

「どいつもこいつも俺様をコケにしやがって…プランドラー!ラマリス共!奴らを血祭りに上げろ!!」

「了解…」

 

 

デブデダビデの号令により動き出すプランドラーと呼ばれた存在の機体とラマリス。

 

 

「カーウァイ中佐、あのプランドラーと呼ばれた機体ですが…」

「ハスミが知る存在か?」

「はい、名称は変わっていますがあの機体の名は『ガンダムキラー』…パイロットはアムロ大尉です。」

「確証はあるのか?」

「気配は濁っていますが、間違いなくアムロ大尉です。」

 

 

ハスミは戦闘開始する前に現れた敵影に混ざるMSの存在をカーウァイ達に伝えた。

 

 

「濁りか…ちょっと厄介だね。」

「はい、精神操作系でもあの濁りは一番対処がし難い案件です。」

「ハスミ、策はあるのか?」

「ありますが、先に機体の動きを止めない事には…!」

「判った、各自雑魚を片付けた後にプランドラーと呼ばれた機体の動きを封じるぞ!」

「デブデダビデとやらは俺が引き受けよう。」

「ケイロン、デブデダビデはダークブレイン軍の最高三幹部の中で一番残忍な相手です…お気を付けて。」

「善処しよう。」

 

 

各自段取りを決めた後にプランドラーと呼ばれた機体とラマリスの軍勢に対応した。

 

 

=続=




救うべく動き出す。

それは一つの伏線。

だから迷わない。


次回、幻影のエトランゼ・第五十三話 『奪還《ダッカン》』。


その好奇心は夢見た明日を目指す力。

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