幻影のエトランゼ   作:宵月颯

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立ち上がれ。

そして結末に抗え。

それは目指した明日への誓い。

その手に掴め。


立の付箋

ハスミらが並行世界を渡っている頃に発生したそれぞれの戦い。

 

そしてそれは蒼の女神の予言と共に奇跡を呼んだ。

 

ここモーディワープの最下層エリアにて。

 

尊者ヤクスギを母体に目覚めたカンケル。

 

それと対峙するソムニウムのラミアともう一人の存在。

 

満たされたリンカージェルの中心の祭壇で拘束されたヒノキと助けにきたケータはもう一人の存在の名を答えた。

 

 

「君は二年B組の古見。」

「蒼斧君、よく頑張ったね。」

「どうして君が?」

「後は僕に任せてくれ、君は彩君と一緒に逃げるんだ。」

 

 

古見こと古見浩一はケータに逃げる様に告げると彼とヒノキをテレポートで逃がした。

 

勿論、彼らからここで出会った記憶を操作した上で…

 

 

『紅の器、感謝する。』

「構わないさ、尊者ヤクスギに関しては僕らの不始末が原因だからね。」

『分かった。』

「彼女から託された力を無駄にしないでくれ。」

 

 

念の力で宙を浮く古見浩一いやビッグファイアはラミアに告げた。

 

戦うべき存在に対抗する力を無駄にするなと。

 

そしてラミアは戦うべき相手に向けて三つのフォルテの実が合わさり生まれたオルトスの実を喰らった。

 

そして一迅の嵐と共にラミアはベターマン・オルトスへと変貌した。

 

 

「元十傑衆、密教のヤクスギ…君の最後は僕が見届けよう。」

 

 

ビッグファイアはカンケルとベターマン・オルトスの戦いを見届けた。

 

 

******

 

 

一方、ランタオ島では。

 

新型DG細胞を取り込んだODEシステムのコア。

 

例の襲撃後も沈黙を貫き、静かなほど何の動きを見せていなかった。

 

半球型のドームを形成した建造物を見上げる人物。

 

 

「…」

「フォルカ。」

「フェルナンドか…」

 

 

修羅の内部抗争により裏切りの烙印を押されたフォルカとフェルナンド。

 

フォルカはショウコを救う為に、フェルナンドはアルコの計略に嵌った為に。

 

それぞれの思いで修羅と言う群れから去った。

 

今回、フォルカとフェルナンドは何かの意思によりで神化への道に至っていなかった。

 

共に行動していた鋼龍戦隊から離れ、神化に至る修行をこのランタオ島で続けていた。

 

神化の糸口を掴む為に東方不敗並びにシャッフル同盟と手合わせを続けていた。

 

だが、掴むべき道へ至る事はなかった。

 

 

「俺達が神化に至らないのは…一体何が足らないと思う?」

「判らない、おそらくそれが俺達が知るべき事であり神化への道なのかもしれない。」

「こうしている間にもミザルの奴は事を進めているぞ?」

「解っている。」

 

 

焦りが二人の覇気とその拳を鈍らせた。

 

今回、彼らが神化に至らないのは新たな試練が課せられている事を二人はまだ知らなかった。

 

そしてそれは目覚めと共に識る事となる。

 

翌日、ODEシステムのコアを狙って再度強襲を仕掛けた火星の後継者とデュミナス一派。

 

ボソンジャンプの要である演算システムとA級ジャンパーの拉致に失敗した上での暴挙である。

 

同時に重震のマグナス率いる修羅の軍勢も現れ、戦況は混乱を極めた。

 

援軍としてロム・ストールと神崎一矢の協力があったとしても東方不敗らも人間である。

 

連日の襲撃でその疲弊は限界を越していた。

 

そしてこの御仁の溜め込んだストレスは最大値に上がっていた。

 

 

「この一大事にいつまで寝ているつもりだ!この馬鹿弟子がぁああああ!!!!」

 

 

その叫びと共に仲間の危機にODEシステムのコアは起動を開始した。

 

彼らが目覚めたのである。

 

 

「…」

「ようやく起きたか、この馬鹿弟子めが。」

「師匠、お前達…遅くなって済まない。」

 

 

軽い挨拶をした後、目覚めたドモンは戦うべき相手に視線を向けた。

 

 

「ぐふふ、どんな奴が出てくると思ったが……こんな弱っちい奴とは?」

「マグナス、貴様の目は節穴か?」

「なにぃ!?」

「貴様には判らんだろう、奴から溢れ出る覇気を。」

「!?」

 

 

目覚めたドモンから発せられる覇気。

 

それは明鏡止水の極意。

 

 

「今なら判る気がする、俺達に足りなかったもの。」

「ああ、俺達修羅が持たなかったもの……人と共に歩み他者を慈しむ心だ。」

 

 

ドモンの明鏡止水の覇気に引きずられる形でヤルダバオトとビレフォールもその覇気を強めた。

 

フォルカの『静かなる闘志』とフェルナンドの『荒ぶる闘志』は更なる高みへ。

 

金色の機神、純白の機神、紺色の機神が並び立ったのだ。

 

 

「フェルナンド、合わせるぞ!」

「ああ!」

 

 

神化に至った純白の機神ヤルダバオトと紺色の機神ビレフォールの二体の拳が合わさる。

 

己自身よりも高まった覇気に逃げの構えを見せるマグナスのアンドラス。

 

だが、ドモンの一手によってそれは遮られた。

 

 

「貴様を逃がすと思ったか!!」

「ひぃ!?」

「今が勝機だ!」

 

 

ドモンの合図と共に放たれる合わせ技。

 

 

「「真・覇・機神!双撃拳っ!!」」

 

 

アンドラスの巨体を二体の機神が貫く。

 

それは与えられた試練を潜り抜けた証だった。

 

 

「何とかなったみたいですね。」

「そうみたいね、ロサも助けてくれてありがとう。」

「いえ、レインさんが無事でよかったです。」

「でも、あの子は…」

「きっと目覚めてくれます、私待ってます。」

 

 

コアの中心地で彼らの戦いを見届けたレインとロサ。

 

二人にしか真実が判らない会話を続けていた。

 

 

>>>>>>

 

 

ガルファ本星こと惑星アルクトスの奪還作戦を開始した地球防衛軍。

 

斥候として一時ガルファと同盟を組んでいた機械化帝国の生き残りであるエンジン王から齎された情報によって一行は抜け道からガルファ本星へと侵入した。

 

ガルファ皇帝の鎮座する宮殿でGEARは最終決戦を迎えていた。

 

だが、今回は状況は違ったのである。

 

 

「やはりですか…」

「エンジン王?」

「アルクトスのシステムを乗っ取り…今まで生きながらえていた様ですね、機械神!」

『ふん、生き残っていたのは貴様も同じかエンジン王!』

 

 

ガルファのシステムを乗っ取り、ガルファとして今まで道化を演じていた機械神。

 

数十年前に起こったアルクトスの悲劇もデュミナスだけではなく自身も関わっていた事を機械神本人が告げた。

 

以前の大戦で倒したのも機械神本人だったが、アルクトスの管理システムにバックアップを残していたらしい。

 

この機械神はガルファに取り付いた云わば残滓の様なものである。

 

 

「だったら…こいつを倒せば!」

「アルクトスを救える!」

「やろう、銀河、拳一、アルテアさん!」

「ああ!」

「やってやろうぜ!」

「…往くぞ!」

 

 

幾多の戦いで『希望』を見失わなかった電童はフェニックス・エールの力により六体のデータウェポンの力を集約されたアカツキの大太刀を。

 

子供達の背に『希望』を見出した凰牙はフェニックス・エールの力により二振りの刀剣「雲噛」と「海鎚」を。

 

キングゴウザウラーはキングブレードをそれぞれ構えた。

 

ヤマタノオロチを想像させるガルファ皇帝のボディを乗っ取った機械神の残滓。

 

それぞれの剣がその残滓を切り裂いた。

 

 

『馬鹿な…』

「機械神、これが人の…命あるものの可能性です。」

 

 

ギルターボのコックピットからエンジン王はかつての主君に最後の言葉を告げた。

 

機械神の残滓に操られたガルファ皇帝のボディを破壊された事によりアルクトスの管理システムは停止したかに見えたが…

 

機械神の残滓に掌握される前にシステムの一部が人との関りと人の可能性を信じた心を腹心であるゼロの中に密かにバックアップしていた。

 

それによりアルクトスの管理システムは再起する事が可能と判明。

 

残されたガルファの重機士や機士らは芽生えた心に混乱し戸惑いの中にいた。

 

だが、アルクトスの人々との長年の隔たりはすぐには解消されないだろう。

 

それでも地球の心を持つ勇者達の言葉と共にゆっくりと時間をかけながら良好な関係を築いていけると…

 

新たな可能性を信じていた。

 

この戦いで惑星アルクトスの解放にはなったが、デュミナス一派の姿から痕跡は一切掴めなかった。

 

流れはソーディアンへと集まっているのだろう。

 

アカシックレコードから流れた情報を元に私ことハスミは更なる可能性が生まれた事を…

 

新たな未来が訪れる事を信じていた。

 

 

=続=

 

 


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