幻影のエトランゼ   作:宵月颯

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目指すは刀船。

その中に潜む気配。

戦いは熾烈を極める。

これはその前の語り場。


第五十六話 『転魔《テンマ》前編』

ソーディアンズ・ダガーの奪取に成功した私達。

 

奪取した内の何機かを作戦に使用する事となった。

 

残りはダニエル社とEOT機関が修羅神ゼパル&烈級修羅神の残骸と共に回収。

 

戦いに参加していた企業に何のお零れもないのは腑に落ちなかったのだろう。

 

後の複線の為にも研究はご勝手に続けてください。

 

そして私達は作戦に使用する分のソーディアンズ・ダガーを携えて鋼龍戦隊の仲間達が待機しているオービットベースへと到着。

 

私達STXチームは鋼龍戦隊に組み込まれ、オペレーション・オーバーゲートに参加する流れとなった。

 

無論、修羅場も込みである。

 

 

******

 

 

STXチームの隊長であるカーウァイ中佐がテツヤ艦長、レフィーナ艦長、八木沼長官代理達と作戦会議を交えていた頃。

 

私は毎度恒例となった記憶保持者達との情報交換を行っていた。

 

再会したロサには既に正体を明かした事を告げると少し心配そうな声を掛けられた。

 

私は自分で必要と判断した上で明かしたと話して置いた。

 

今回の始まりは再びオービットベースの一室から始まる。

 

 

「初めまして、フォルカ・アルバーグ、フェルナンド・アルドゥク、コウタ・アズマ、戦士ロア。」

「!?」

「貴様、何故俺達の名を…!」

「アカシックレコードが教えてくれたのよ。」

「ハスミさん、やっぱりアンタは…」

「説明は受けていると思う、私はアシュラヤーの意思を継ぐもの。」

 

 

紹介をしていない相手の名を答えると先の三人は驚いた表情を見せた。

 

戦士ロアに関しては不可視の状態だか、マント越しからその表情に反応があったのは伺えた。

 

『知りたがる山羊』はサードステージに上がってから使用範囲を任意に出来る様になっている。

 

その為、普段の能力でさえ見えないものを視る事も可能だ。

 

 

「流れは変わってしまったけど、次の作戦に必要なソーディアンズ・ダガーの奪取は成功しているわ。」

「…」

「同時にフォルカ…貴方達の同胞であるグレダス・ミモザを手にかけた。」

「奴を…!」

「その事に謝罪をして置きます。」

 

 

私が告げた事に関してフォルカは何とも言えない表情で無言になった。

 

が、それを打ち破る様にフェルナンドはストレートに告げた。

 

 

「それは奴自身が弱かっただけだ、貴様が悔やむ事ではない。」

「奴自身も性格に難があった者、捨て置けば何をするか分かったものではない。」

 

 

フォルカは奴もまたミザル、マグナス、アルコ達と同様に倒すべき相手だと告げた。

 

 

「ハスミ、転移先で遭った事を説明して貰えるか?」

「判りました。」

 

 

私はキョウスケ中尉らに転移先で起こった出来事を告げた。

 

報告した内容にスフィア関連の事だけは秘匿した。

 

この時点で彼らにガドライトさん達との接触の件は告げられない。

 

今回の話し合いにZ事変に参加していたメンバーが不在だった事がせめてもの救いである。

 

 

「あのデブ公をボコっただと!?」

「ええ、デブデダビデを再起不能に追い込んだけど…後の事は不明よ?」

「いや、スカル野郎とクリきんがいなかっただけでも苦戦する奴だったし。」

「…人の脇腹に傷を負わせた奴をそのままお返しするつもりはなかっただけよ?」

 

 

アムロ大尉にした仕打ちを考えるとまだまだ物足りませんけどね。

 

あの鏡餅なメタボっ腹に大穴を空けても生きてましたし。

 

そう簡単にはご退場願えないでしょうね。

 

ギャグ要員の宿命って奴かしら?

 

 

「…」

「ラウル…流れ通り、ラージ・モントーヤとミズホ・サイキの両名はデュミナス一派に拉致された様ね。」

「二人は何処に?」

「アルクトス奪還を成功させた地球防衛軍が接触していない所を見るとソーディアンの内部と推測しているわ。」

「やっぱり…」

「ラウル、不本意と思いますがデュミナス3の説得を試みてもいいでしょうか?」

「…えっ?」

「状況が違うとは言え、デュミナス3は自分の生きる理由を探していた。」

「確かにそんな風にも思えた…」

「私はその答えを伝えてあげたいと思っているわ。」

 

 

説得が無理でもせめて『三人の子の母親として生きて』と伝えなければならない。

 

それが前世の惑星アルクトスでの決戦においてデュミナスに伝えたかった言葉だ。

 

 

「ハスミ、今回もダークブレインは現れると思うか?」

「キョウスケ中尉…現れます、そしてダークブレインを倒さなければソーディアンの出航など夢のまた夢でしょう。」

「やはりか。」

「他の方面でも戦いは継続中です、私たちも戦うべき相手と剣を交えなければなりません。」

 

 

そして別れの時も一刻と迫っている。

 

 

「ダークブレインの次はシュウの件もあるからな。」

「マサキ…シュウ博士とネオグランゾン、激戦は免れないわよ?」

「判っているさ、手加減なんかするつもりもねぇ。」

 

 

その前の騒動もまた必要な出来事。

 

 

「それに惑星エリアの事やEFの事もあるしな。」

「リュウセイ、おそらく私はまたEFに飛ばされる可能性がある。」

「んじゃ、そん時は惑星エリアの側に転移した連中と何とかするさ。」

 

 

修羅の乱と封印戦争の間に起きた出来事。

 

それは大きな流れとなっていつか本流へと流れるだろう。

 

 

「イエッツトの件ですが…」

 

 

私はホルトゥスにツェントルプロジェクトの研究が行われている施設の監視をL5戦役から続けていた事を告げた。

 

そしてアインストを母体としたと言う点は防いだがDG細胞とマシンセルのデータが流出した事によってAI1との戦いはいずれ起こると話した。

 

その事にアクセル中尉がいち早く反応した。

 

 

「待て、今回のクライ・ウルブズ隊…ヒューゴ達は無事なのだろう?」

「いえ、こちらの行動が遅すぎました。」

「どういう事だ!」

「ミタール・ザパトはツェントルプロジェクトのテストパイロットとして鎖を繋げる候補者を探していました。」

「まさか…」

「所謂、故意による事故で負傷したヒューゴの身柄はミタールに奪われてしまいました。」

「!?」

「ですが、こちらの方で同時期に負傷したアルベロ少佐とフォリア少尉の回収は出来ましたが…未だ治療中だそうです。」

 

 

防ごうとした事件の一つが転移騒動の最中に起きてしまった。

 

ホルトゥスの部隊に情報は伝えたが、情報以上のトラブルが起こった事により痛み分けの結果となってしまった。

 

何かを得ようとすると何かが犠牲となる。

 

こんな事を何度も続けているせいか、その感覚も次第に麻痺してしまったのだろう。

 

 

 

「…次の封印戦争は予想以上の荒波が起きると思われます。」

「…」

 

 

可能性の戦い。

 

いずれ現れるであろう勢力。

 

私はまた救える命を救うだけだ。

 

 

「ハスミ、聞きたい事がある。」

「何でしょうか?」

「あのケイロン・ケシェットとは何者だ?」

「私がお慕いしている方です。」

「奴の所属する天臨社はお前の協力企業の一つか?」

「いえ、前にお話しした通り…JUDAコーポレーションとGreAT社、小父様のアクタイオン・インダストリー社が協力を得ている企業です。」

「…そうか。」

「ケイロンとはキョウスケ中尉達と出会う前に出会いました。」

 

 

私は事前に考えて置いたケイロンとの馴れ初めを伝えた。

 

本当の事は言えない、ただ辻褄を合わせる為に告げた。

 

 

「ハスミ、後でエクセレン少尉に気をつけろよ?」

「どう言う事?」

「あのケイロンって人と再会してお前が親父さん達と飛ばされた後、合流したメンバーにほぼ虚偽交じりで言いふらしていたからさ。」

 

 

リュウセイから告げられたエクセレン少尉の所業。

 

不在中に『あのハスミちゃんに愛しのダーリンが居たのよ♪』と『今頃、パパさん達と恋人認定の面接しているんじゃない?』と『二人っきりじゃないけどカップルでよろしくやっていたりして…?』など斜め上の話を不在中のメンバーに話したらしい。

 

その行為に私は呆れるしかなかった。

 

通りでこっちに戻ってから行く行く先々で微笑ましい表情をされた訳だ。

 

 

「あの人はもう…」

「まあ、いいじゃねえか…本当の事なんだしよ。」

「それよりもリュウセイとマサキ、コウタ…この場に居ないけど桂さんには後で『楽しいオ・ハ・ナ・シ』をしないといけないと思ってたのよね。」

 

 

楽しいオ・ハ・ナ・シの辺りでハスミの表情が笑ってない笑みに代わっていた。

 

 

「は、ハスミ…さん。」

「ちょっと落ち着けって!」

「あれはその…」

「三人とも……そこにお座り!」

 

 

私の鶴の一声で三人は目処前にスライディング正座。

 

その後、前の三人の所業の件に関して『オ・ハ・ナ・シ』を開催。

 

三人とも決戦前だから加減するから、そんな死んだ魚の様な目をしなくても…ね。

 

さてと、作戦開始時間までどんな黒歴史を語ってあげましょうかね?

 

ウフフ。

 

 

「キョウスケ、彼女から得体の知れない覇気が…」

「気にするな、いつもの事だ。」

「奴は…ば、化け物か?」

「一理あるが黙っていろ、これがな。」

「さ、三人とも…ご愁傷様。」

 

 

何とも言えない表情で残された四人は目処前で開催されたハスミによる三人の失言報復を見ていた。

 

 

=続=

 




目覚める闇黒の賢者。

その目覚めは予言された事。


次回、幻影のエトランゼ・第五十六話 『転魔《テンマ》後編』


残滓は流れ。

破滅は産声を上げる。

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