そして目的。
それは未来に運ぶ命の為に。
女神は明日の為に祈る。
私が表舞台へ参戦する宣言を終えた後。
ホルトゥスの協力者達と会合を行った。
滅ぼされた並行世界からの来客達と出身世界での協力者達である。
中には行動中のメンバーも居る為、各方面の代表者達のみとなっている。
******
天鳥船島内部、会議用の広間にて。
広間の中心に巨大な円卓上の机と座席が設けられており会議に出席する代表者達が既に集結していた。
ハスミはその上座に座す前に代表者達に礼の言葉を告げた後に着席した。
「皆様、今回の収集に応じ…会議に出席して下さり真に有難うございます。」
「君には大きな借りがあるからね。」
「恩を仇で返すと言う事はありえんよ。」
「先の演説…君の宣言通りであれば我々の行動は公になっても構わないと言う意味でいいのだね?」
「ええ、最早躊躇っている状況ではなくなってきたので…」
「成程、秒読みにもなってきた訳か。」
「はい、それでは今後の活動についての会議を行います。」
ハスミは代表者達に今後の方針を伝えた。
宣言通りの表舞台への進出。
ガイアセイバーズ、ルイーナ、バラル、ゲストへの妨害の継続。
俗世で活動を続けるメンバー、同盟関係である国際警察機構、BF団、フューリーとの連携。
道中でノードゥス、鋼龍戦隊、連合政府の穏健派へ危機が生じた場合は助力する事。
引き続き、民間への被害が出ない行動を最優先とする。
最後に誰一人欠けてはならない。
「私からは以上です。」
「相変わらず無茶な方針だね。」
「私はホルトゥスに協力してくださっている皆さんの命を保証する義務があります、無駄な血は流させません。」
「君のアカシックレコードを読み解く力、それが成せる業か。」
「はい。」
「しかし、君は良かったのかい?」
「どういう事でしょうか?オオマ社長…いえ、ダイマ社長。」
私は他の代表者達と話し合う中で代表者の一人であるダイマ・ゴードウィン氏に話を持ち掛けられた。
天臨社のCEOであるオオマ・ショウリ氏とはこちら側における彼の偽名である。
あの世界から流れ着いたのを助けるのは構わなかったが、色々と問題があったので話し合いで何とか説得。
理解して貰った上でこちら側の大手企業の一つを経営して貰っている。
「君が例の演説をする前に起こした戦闘…古巣だった鋼龍戦隊に別れを告げたと聞くが?」
「そうですね、正直に言えば巻き込みたくなかったと言うのが本音です。」
「巻き込む?十分巻き込んでいると思うが…」
「正確には連合政府と言う枠組みからの圧力から遠ざける為と言った方が正しいですね。」
「成程、彼らが人質にされるのを防ぐ為か。」
「はい、今も連合政府内はアルテウル…いえ、ユーゼスの陰謀により揺れ動いています。」
もしも、あのまま鋼龍戦隊に帰還したら連合政府からの出頭命令と戦線離脱と言う戦犯扱いを受けるだろう。
その手の工作活動位は奴の立場なら可能だ。
無様に奴らの手中に収まるつもりもない。
あの謀殺未遂によって私がアシュラヤー・ガンエデンの巫女として覚醒した事にした方がやりやすい。
今の鋼龍戦隊やノードゥスにはやって貰わなければならない事が多くある。
現在も外宇宙でソール11遊星主と交戦中のGGGの事も気掛かりだが…
「だからこそカードを揃えました。」
私は指を鳴らすと各代表者達の前のディスプレイにある映像を映し出させた。
「彼はまさか…!」
「生きていたのか。」
「はい、あの現状でしたが何とか回収に成功しました。」
「成程ね、このカードなら奴も狼狽えるだろうね。」
映し出された映像には病室兼監禁室のベッドで負傷したグライエン・グラスマン氏が治療を受けていた。
あの状況下で救助したとは言え、多少なれど負傷は免れなかったらしい。
ハスミは映像を見せた後に各代表者達に今後の指示を与えた。
「ルド議員とトレーズ議員は穏健派の議員らと共に引き続き強硬派の足止めをお願いします。」
「判っている。」
「奴らの好きにはさせんよ。」
「後日となりますが、石神社長の元に破嵐万丈さんが訪ねてくると思います。」
「彼か…苦手なんだよね、私。」
「お気持ちは解りますが、何とか時間を引き伸ばしてください…お得意のジョーク悪戯でも構いませんので。」
「了解したよ。」
「我々戦闘部隊はどうする?」
「加藤司令、加藤機関はJUDAのメンバーと共に火星方面、真壁司令率いるアルヴィスはオルファンの監視、フリットさんらディーバと地獄組は行動を開始したミケーネの軍勢の対処に当たってください。」
「地上は兎も角、月方面は?」
「そちらは中継役の孫光龍氏とフューリーの方々が既に監視を行っています。」
「南極の方はどうするのかね?」
「アーニーさんら残りのアルティメット・クロスのメンバーが網を張っています、それに破滅の対処には無垢なる刃が一番ですから。」
「ハハ、相変わらず悪辣だねぇ。」
「クジョウ家の家訓の一つ『恩義は倍に仇討ちは完膚亡きまでにして返す。』ですので。」
本当に家の家訓って物騒だね。
某龍神様の四兄弟思い出しちゃった。
「ソール11遊星主戦対策で対応して貰っているクトゥルフの方達からの連絡もありましたし程無く準備が整います。」
漸く、向こう側のゴタゴタが落ち着くらしい。
彼らの帰還の援護も指示しているので戻ってくるのに時間がかかるだろう。
「問題は鋼龍戦隊とノードゥスに入ってしまった虚偽情報ですかね。」
「虚偽情報?」
「主に記憶保持者間での事ですが、私が孫光龍氏に洗脳されていると誤解されてしまっています。」
「それが問題でも?」
「下手をするとノードゥスによる他のメンバーとの乱戦が予想されます。」
「確かにノードゥスには血の気の多いメンバーが揃っていたね。」
「ええ、無駄な戦闘は避けたいですが…無限力の介入が原因で止めようがありません。」
正直、頭が痛い。
ま…思い通りにはさせませんけどね。
「だったら接触される前に逃げればいいんじゃない?」
「…ケロロ軍曹、もしも本気を出した東方不敗から貴方は逃げられると思いますか?」
「無理!何処の無理ゲー!?即死確定じゃん!!」
いつものやる気ない表情のケロロに対して遠い眼で私は例えを出した。
一例として生身でゴッドフィンガーとか爆熱ゴッドカレーパンを口に突っ込まれる拷問とかニュータイプの毒舌演説とか言って置いた。
ネタがネタだけにケロロの顔面が土気色になったのは気にしない。
「ま、接触予定のシャッフル同盟の方達にはヴァンさんらオリジナル7の方達や地獄組が死なない程度で対処しますので問題はないでしょう。」
「争い合う戦いではなければ、直に観戦したいメンバーだね。」
「…いつの日か見られますよ。」
今は手を取り合う事が出来ない。
でも、何時かは…
「では、各自…先の指示通りに動いてください。」
私は会議を終了させ、各代表者達を見送った。
円卓のテーブル席に一人残された私は静かに一息を付いた。
「終わったか?」
「はい、これで私は後戻りする事は出来ません。」
室内の柱の陰から出て来たケイロン。
そのままハスミの元へと移動しハスミも立ち上がりケイロンの元へ移動した。
「私は自分の使命から逃げませんよ。」
「そうか…」
「貴方との約束を果たす為にも私は逃げません。」
「それでいい、最もお前が逃げる事など有り得んだろう。」
ハスミはケイロンから触れられた。
「私達の願い…御使いを倒し、スフィアによる次元修復で滅ぼされた世界の再生と世界のバランスを整える新たな世界の構築の為に。」
「俺達は善にも悪にもなろう…その願いの為に。」
「「全てはバアル打倒の為に。」」
「この願いも祝福であり呪詛と化すかもしれません。」
「…判っている。」
「次元修復後の最後に私達がバアルの概念に成り代われば世界は守られる。」
「互いに一度は死した身、覚悟は出来ている。」
「はい、ですが…貴方を巻き込んでしまった。」
「構わん、元より可能性の未来の為にも往くべきものが行かねばならん。」
バアルを消し去る…それは悪が消える事。
だが、それは出来ない。
善と悪、聖と邪、生と死。
どちらも等しくなければならない。
バアルの意思を消し去った後、私達がバアルに成り代わり闇の存在と化せばもう誰も戦わなくて済む。
だが、同時に彼らの存在意義が無くなるかもしれない。
それでも願ってしまう。
仲間達の明日を…未来を。
私がやろうとしている事が間違った願いであったとしても。
私はあの光景を繰り返したくない。
絶対に…
=続=
<彼らが存在する理由>
「ハスミ、訪ねたい事がある。」
「何でしょう?」
「彼らは何故この世界に流されたのだ?」
「理由とすれば神に抗った為です。」
「抗った?」
彼らの世界にも高次元生命体と認識出来る存在が居ました。
世界構築の概念に干渉していたカリ・ユガとジスペル。
世界崩壊を招いたル・コボル、アウターゴッド。
多少なりとも存在意義が違いますが根本的な概念は高次元生命体と変わりません。
先ほどの述べた存在達は属する世界の人々の手によって倒されました。
理由とすれば彼らを放置すれば人類が滅びの一途を辿るからです。
人々は滅びの運命に抗っただけの事。
しかし、これが切っ掛けで奴らの干渉を許してしまったのです。
「何故だ?」
「その世界で多大な影響力を持つ高次元生命体が倒された事により外部からの干渉を受けやすくなったからです。」
「まさか…!」
「この好機を奴らも黙っている訳がありませんよ。」
「奴らは銀河の中心にして世界の中心より世界を監視する者、その存在達が消失したとすればあの者達にとって又と無い好機か。」
「ええ…この結果、倒された存在達の断片は取り込まれ…奴らの力となってしまいました。」
そして神に抗った人々の世界は外部からの干渉を受けて属する世界が消失。
次元の海を漂いながら生き残った欠片はこの世界に流れ着いたのです。
多くのモノを失いながらも抗う事を諦めるなとでも訴える様に。
「それをお前が救い上げたのか?」
「はい、戦うべき相手は同じ……そして奪われた世界を取り戻す為に。」
「…」
「私は奴らを許す事は出来ません。」
彼らもまた御使いによって奪われた者達だったか…
同胞を失った俺、父親の命を奪われたエルーナ、一族の誇りを取り上げられた尸空、全てを失ったバルビエル、母親の命を奪われたハスミ、故郷を滅ぼされたガドライト、御使いに呪われたアサキムらの様に。
皆、戦うべき相手に向けてそれぞれの意思の元で今も抗い続けている。
「ヴィル?」
俺は静かに彼女の体を抱きしめた。
それに察したのか彼女もまた細い腕で抱き返した。