幻影のエトランゼ   作:宵月颯

134 / 237
彼女は考察する。

それはとある真実を告げる。

それでも彼女は策を講じて反逆する。

その笑みは誰の為?


察の付箋

私が鋼龍戦隊と別れを告げた後の事だ。

 

南極より湧き出た破滅の軍勢。

 

奴ら…ルイーナとの攻防を続けていた。

 

同時にアートルム・エクステリオルによって地球は宇宙と断絶させられた。

 

まあ、私には関係ない。

 

だって…アレがあるもの。

 

だからこそ私達の進撃は止められない。

 

それは反逆の意思と立ち向かう為の力だから。

 

 

******

 

 

天鳥船島・立入禁止区画の玉座の間にて。

 

私ことハスミは鎮座した玉座から立ち上がり、彼の帰還を迎え入れた。

 

 

「お帰りなさい、ケイロン。」

「今戻ったぞ、ハスミ。」

「ゼンガー少佐の件、有難う御座いました。」

「いや、俺自身も気にはしていた……礼には及ばん。」

 

 

私は彼にお礼を告げた後、彼は自分からもアプローチをするつもりだったと告げた。

 

彼のやり切った表情に私も安堵した。

 

 

「御義父上達は戻っていないのか?」

「はい、カーウァイお義父さんはオルレアン工場での戦闘後は休養へ、テンペストお義父さんは化学要塞研究所に、光龍お父さんは宇宙へ上がって貰っています。」

「そうか…」

「ケイロン、帰還早々ですが…ルイーナの侵攻図に少し気掛かりな所があるので相談に乗って貰えないでしょうか?」

「判った。」

 

 

私は場所を変えて彼と数ある一室の一つで考察に入った。

 

 

「龍脈?」

「若しくはレイラインと呼ばれるものです、貴方には後者の方が判りやすいと思います。」

「かつてサイデリアルがZONEを利用し次元力を供給していた場所か…」

「ええ、地球にも該当する逸話が残っていまして龍脈は星の命…血管の様な役割を持っています。」

 

 

そう、嘗て勇者チームが戦ったオーボスもレイラインをを狙って侵略してきた。

 

だが、黄金の力を宿したダ・ガーン達によって未然に防がれた。

 

同じく宇宙皇帝ドライアスもマイナスエネルギーを利用してプラスの存在であるカタルシスエネルギーを抹消しようとしていた。

 

陰陽等しくどちらもなくてはならない事を理解する事が無かったドライアスはファイバード達の前に敗れ去った。

 

そして今回はルイーナからレイラインを死守しなくてはならない。

 

 

「こちらの対侵略予想通り、ルイーナは各地のレイラインの生命点を拠点として破壊活動を行っています。」

「例の破滅の王の現出に必要な餌を得る為にか?」

「恐らくは。」

「バアルの根源は何処までこの星に縋るのか分らんな。」

「それは地球自体が縁で繋がり過ぎてしまったせいもあります。」

「エニシ?」

「はい、地球に様々な力、意思、存在が集まるのはその縁に縁るものです。」

 

 

幾多の地球が想いを重ね続けた。

 

その願いが縁によって人の生命の強さの輝きが、どの銀河にも勝る力へと変貌した原因。

 

そしてバアルが危険視する理由でもある。

 

何時か人類がバアルを滅ぼす存在へと真化するから…

 

 

「そして不完全な真化に至った御使い達が嫉妬の対象とするものでもあります。」

「…」

「彼らも理解すれば良かったのですよ、不完全だからこそ人は幾多の真化をし続けられると…」

「お前らしい嫌味だな。」

「ええ、貴方や彼らに行った仕打ちを考えればまだまだ物足りませんからね。」

 

 

ハスミは『私、これでも結構…嫌味返しが得意なんですよ?』とケイロンに告げた。

 

それに対しケイロンはハスミの発言に静かに笑い返した。

 

 

「それでこそ俺が認めた片腕だ。」

「ですが、危険を孕んでいる事もまた事実…真化は危険と隣り合わせです。」

「高次元生命体の中で正の立場となるか真逆の存在となるかは…その者の在り方次第だったな?」

「はい。」

「鋼龍戦隊とノードゥス…お前はどちら側へと至ると思う?」

「それは彼ら次第です、私はただ助言するだけですから。」

「そうか。」

 

 

私が『助言するだけ』と告げると彼は肯定し私の髪に触れた。

 

それは静かに撫でる動作へと変わった。

 

 

「ヴィル。」

 

 

私はこの大きな手に縋ってしまう。

 

とても暖かい手。

 

その拳は破界する力を秘めているが、私にとっては安らぐ暖かい手である。

 

その揶揄に彼は驚いていたが、今は慣れてしまっている。

 

その手が生み出すのはその人の在り方次第。

 

破界だけではないのだと私は告げた。

 

 

「この手を恐れぬのはお前だけだな。」

「そんな事はありませんよ。」

「?」

「きっと、貴方を受け入れてくれる筈です。」

 

 

様々な人種、異なる時間を生き、互いに敵同士であっても手を取り合う事を諦めなかった彼らとならきっと…

 

 

「ハスミ、もう一つ気になる事があるのだが…」

「何でしょうか?」

「御義父上達の身に何が起こった?」

「それは…」

「言えぬ事か?」

「いえ、余りにも事例がなかったので…どう説明すべきかと悩んでいました。」

「事例がない?」

 

 

あのアーマラによる謀殺未遂によって私とケイロンは深手を負った。

 

カーウァイお義父さんとテンペストお義父さんも少なからず傷を負う事となった。

 

そして変異が起こった。

 

私が二人にお守りとして渡した護石が念の障壁を張った際の私の念に反応し砕け散ったのだ。

 

砕け散った欠片は二人の体に融け込んでいった。

 

あの護石は器として機能しており、私の念を込めて渡して置いた。

 

それが許容範囲以上の念に反応し砕け散ったのである。

 

そして…

 

 

「あの時の負傷と共に砕け散った護石を取り込んだお義父さん達は後天的念者として目覚めてしまったのです。」

「そうだったのか。」

「力に目覚めて間もないお父さん達は初期のクスハ達と同様の能力しか引き出せませんがやり方次第ではそれ以上の力を引き出す可能性があります。」

「想いの強さは人それぞれだったか?」

「はい、そして…更なる可能性を持つ事もまた必然と推測します。」

 

 

私は治療後に再会した二人に謝った。

 

また巻き込んでしまった事を謝罪した。

 

それでもお義父さん達は『お前と同様に誰かを護る力なのだろう?』に『お前ばかりに負担を抱えさせんよ。』と目覚めた力を肯定し受け入れた。

 

光龍お父さんも『力の使い方が判らなかったら僕がレクチャーするよ。』と先輩風を吹かせて私を安堵させてくれた。

 

私もまた周囲に助けられていたのだと実感した。

 

 

=続=

 

 




<あれの続き>


例の格闘術の資料を読み漁っていたケイロンがハスミに話しかけた。


「ハスミ、地球にはこの様な生物が存在するのか?」
「…」


あの…何で某巨人漫画と現時点で宇宙最強の胃袋を持つピンクの生物の資料が出てくるんですかね?

また無限力の陰謀か!!って突っ込み入れたくなった。


「ふむ、この戦国時代の武将だったか…随分と面白い技を使うな?」


今度はバ〇ラなのと戦〇無双ですか?

おいコラの無限力め、ちゃっかり彼で遊んでますよね?


「この傭兵の入ったダンボールだったか、何か意味でもあるのか?」


…もう個人的に突っ込みが追いつきません。


=終=


<後天的念者について>


後天的念者とは先天的に念の力を持って誕生した個体ではなく、何らかの措置によって発現した人工的な発現者を指す。

在り方は強化人間に分類するが、今回のケースは肉体改造の処置はせずにとある現象によって誕生した。

過程としては以下の通りである。

※念動の力を集める器的物質を当人が所持していた事。

※当人の周囲に強念の力を持つ者が存在した事。

※器と呼ばれる物質が許容範囲以上の念動を受けて消失した事。

※器が強念者の力の発動時にその反動で強念の力によって思念化し当人に取り込まれた事。

以上の点から後天的念者が誕生したと推測される。

尚、当人由来の本来の能力ではないので師事者の下で修業を積む事が必要である。

しかし、新たな可能性として軍事転用の危険性がある為…この件は伏せて置く。


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。