幻影のエトランゼ   作:宵月颯

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それぞれが願う。

明日と言う名の未来を。

だからこそ戦う。

未来を勝ち取る為に。


第六十九話 『願星《ネガイボシ》』

前回の孫光龍の奇襲によりヘブンゲートは半壊し根城にしていたルイーナは増産した戦力の四分の三を失う事となった。

 

同時に次元断層によって地球侵略に踏み込めないゲストは月とコロニーの侵略を開始したものの予想もしなかった戦力に圧され敗走を余儀なくされた。

 

これはスカルムーン連合にも同様の事が起こっており、地球は支配を阻む星と誤認される結果となった。

 

だが、一筋の光が宇宙を煌めいた後に次元断層は修復され地球は元の宇宙へと帰還。

 

それぞれの場所で引き起こっていた情報整理の為に太陽系は一時期の混乱が巻き起こったのである。

 

宇宙収縮現象を止めたGGGと新生スペースナイツに外宇宙組の連合チームの帰還と共にノードゥスは再編された。

 

だが、現在も鋼龍戦隊の大統領殺害の疑惑が晴れた訳ではなく現在も反逆者の烙印を押されていた。

 

 

******

 

 

地球と宇宙の交信が復活してから二日後。

 

GGGの拠点であるオービットベースにて。

 

そこでは鋼龍戦隊以外のノードゥス関係者達が集結していた。

 

地上各所の防衛に当たる部隊は地球で待機中の為に全てではないが『修羅の乱』後の久しい再会である。

 

 

「では、ホルトゥスが大々的に表舞台に出て来たと?」

「ええ、そしてホルトゥスのリーダーはあのハスミ・クジョウ少尉との事でした。」

「…彼女が?」

「イティイティ島に避難している鋼龍戦隊が彼女と直接対話しています。」

 

 

オービットベースの司令室より大河長官並びにノードゥスの各部隊の上官が集まり情報整理を行っていた。

 

地上での状況を知る万丈の言葉に大河並びにブライトらは驚きを隠せていなかった。

 

 

「以前、エルザム少佐が提示されたオーダーファイルに寄れば彼女の一族はBF団の長であるビッグファイアと並ぶ何かを秘匿していたとの事です。」

「何かとは?」

「先史文明期の遺産との事です……それをガンエデンと呼称していたと記録にあります。」

「先史文明期か…ダ・ガーン君、地球の勇者である君は何か知っていないかい?」

 

 

司令室のモニターより格納庫で待機しているダ・ガーンに大河は質問した。

 

ルイーナの出現を期に再度の復活を遂げたダ・ガーンもその質問に答えた。

 

 

『遥か大昔、高度な文明を築いた人類は天から訪れた禍に対抗する為に四つの神々を作り上げた…その神々の名を総称しガンエデンと呼んでいた事に覚えがある。』

「神々か…その後はどうなったのかね?」

 

 

ダ・ガーンは自身が知るガンエデンの情報を大河達に伝えた。

 

ガンエデンには紅のバビル、蒼のアシュラヤー、白のナシム、黒のゲベルの四体が存在した事。

 

それぞれが巫女と呼ばれる器を必要とする事と地球の各所で塔を備えた神殿に秘匿されていた事。

 

ガンエデン自体が星を守護する存在である事を告げた。

 

だが、天から訪れた禍との最終決戦後の事は不明だと答えた。

 

 

『私達も禍を止める為に人類と共に立ち向かったが最後に力尽き…全てを見届けた訳ではない。』

「そうだったのか…」

「質問に答えてくれて有難う。」

『私は星史の命令によって答えただけだ。』

『ダ・ガーン、そう言う言い方すんなよ!』

 

 

真面目な部分は相変わらずの様で隊長である星史に突っ込まれていた。

 

 

「話を纏めるとクジョウ少尉はホルトゥスを指揮し何を起こそうとしていると思われる。」

「L5戦役時代からもホルトゥスの情報網には何度も救われていましたが…いきなり敵対すると思います?」

「まだ情報が少ない以上はホルトゥスを敵と認定するには少々問題がある。」

「…ホルトゥスの情報網は的確である上に開示速度も速いですからね。」

「おまけにこちらが解析不能だった情報の解決策も提示してますし。」

「本当に謎だらけデス。」

「パピヨン、君は何か感じたかい?」

「いえ、ただ大きな何かが地球へ迫っているのを感じた程度です。」

 

 

命らオービットベースの司令室クルーもそれぞれが口を濁した。

 

動揺に凱もまた心境を呟いた。

 

 

「あの時…レプリジンの護からパピヨンの命を救ってくれた手前、ホルトゥスの事を悪く言う訳にもいかない。」

「敵陣営からノードゥスへの参加者の多くはホルトゥスの情報と補助によって救われたものが多い。」

「我々ノードゥスに戦力を集結させる行動…彼女が行おうとしている事の一つなのかもしれない。」

「長官、オービットベースのシステムにハッキングです!」

「何だと!?」

「これは…!」

 

 

『ノードゥスの皆さん、お久しぶりです。』

 

 

「君はブルーロータス…!?」

 

 

ハッキングによりモニターに写された人物とはホルトゥスのメンバーでありリーダーの影武者であるブルーロータス。

 

彼女からの強制通信だった。

 

 

『我々ホルトゥスはルイーナに占拠された各レイラインの奪還に動きます。』

 

 

ブルーロータスは地球に点在するレイラインの位置を示した地図を提示する。

 

 

『そしてガイアセイバーズの思惑で大統領殺害の嫌疑を掛けられた鋼龍戦隊を解放する時でもあります。』

 

 

通信中の別枠でパリの大統領官邸にて負傷した姿のグライエン・グラスマンが無事であった声明と真の裏切り者はガイアセイバーズであると速報が発表されていた。

 

中継された会見の場にはブライアン・ミッドクリッドにトレーズ・クシュリナーダとルド・グロリアの姿も見受けられる。

 

 

『奇襲作戦と同時進行で外宇宙より行動中のゲストとスカルムーン連合はこちらで足止めを行っています。』

 

 

ブルーロータスは部隊を地上と宇宙に分けて二つの大規模作戦を提示した。

 

 

『行動を起こすかは貴方方次第、私は好機と呼べるこの時に情報を提示しただけです。』

 

 

ブルーロータスは最後に告げた。

 

 

『最後に当主より言伝です、どうか正しき決断が下る事を願いますとの事です。』

 

 

その言葉を最後にハッキングは途絶え、通信は途絶した。

 

 

「長官…」

「うむ、彼女が伝えた情報を無駄にする理由もないだろう…至急作戦会議を開く。」

「判りました、各関係者代表をミーティングホールへ案内します。」

 

 

大河は指示を出して作戦会議を開く旨を伝えた。

 

 

 

******

 

 

同時刻、天鳥船島。

 

立ち入り禁止区域の玉座の間では。

 

 

『希望通り、情報をノードゥスへ流しました。』

「ブルーロータス、言伝をどうもありがとう。」

『では、次のご指示があるまで待機しております。』

 

 

ハスミはモニターに映るブルーロータスに礼を伝えるとモニターを切り替えた。

 

そしてもっとも信頼する関係者達…ケイロン、カーウァイ、テンペスト、光龍、ロサ、ピート、クスハと共に作戦会議を執り行った。

 

 

「今から大規模作戦の会議を始めます。」

 

 

ホルトゥスはノードゥスに情報開示と同時にルイーナに占拠された地球各所のレイラインに奇襲を仕掛ける作戦に入る。

 

レイラインは前回の戦いで力を解放後…定期的に位置が変更しており、今回は南米、オーストラリア、日本、太平洋・ハワイ沖の四か所に移動している事が判明した。

 

これ以外のエジプト、イタリアの二か所は既に別の組織の部隊が交戦を開始し行動している。

 

ホルトゥスは残りの四か所へ部隊を分散し奇襲を行う流れとなる。

 

 

「…」

 

 

南米のエクアドル東海岸部…

 

そろそろ例のシナリオが訪れる頃か。

 

「クスハ、貴方はエクアドル東海岸のレイラインの奪還チームに入って。」

「判ったわ。」

「恐らく、位置的に鋼龍戦隊と鉢合わせになると思う。」

「大丈夫、私はブリット君を取り戻すまでは戻る気はないわ。」

「なら、心配ないわね。」

 

 

クスハ、そこでの戦いは貴方に酷な選択を強いる事になるかもしれない。

 

それでも貴方が立ち向かわなければならない戦い。

 

私は助言だけしか出来ないけれど無事に取り戻せる事を祈っている。

 

 

「これより、レイライン奪還作戦…作戦名シフルールを決行する。」

 

 

私は事前に立てていた作戦を決行する事に決めた。

 

各レイラインの奪還作戦。

 

そして来るべき決戦に備える為にも。

 

私は私自身に決断を下す。

 

 

「クスハ、もう一つ頼みがあるの。」

「何?」

「鋼龍戦隊と合流する時に連れていって欲しい子がいるの、おいでイルイ。」

「…」

「ハスミ、この子は?」

「この子はイルイ・エデン…私の遠縁に当たる子なの。」

「イルイちゃんね、よろしくね。」

「は、初めまして。」

 

 

私は激戦になる前に今世に置けるクスハとイルイの再会を遂げさせた。

 

イルイ、迷いを断ち切った貴方なら鋼龍戦隊やノードゥスを導いてくれる。

 

だから、来る日までお別れだよ。

 

 

=続=

 




それは願い、想い、望み。

想いだけでは届かない。

だからこそ手を伸ばす。

二度と手放さない様に。


次回、幻影のエトランゼ・第七十話 『逆鱗《ゲキリン》』


反撃の息吹を絶やすな。

それは意思の力の体現。

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