虎の尾を踏む。
どちらも怒りの源。
さあ、反撃の時である!
ブルーロータスによって提示された大規模作戦の一案。
それは前回のGGGだけではなくノードゥスに関係する組織全てに伝達された。
既に各地のレイラインへ展開するルイーナと交戦を開始したホルトゥス。
地球連合軍・統合参謀本部はこの期を逃す必要はないと判断し漁夫の利に乗る事を決定した。
そして元帥であるギャスパル・ギラン氏は腹心であるダニエルの疑問に答えた。
「元帥…何故ホルトゥスの思惑に加担するのですか?」
「私の過去の贖罪と言えば判るか?」
「過去の贖罪ですか?」
ギャスパルは告げた。
ホルトゥスは歴史の影より世界の闇と膿を葬ってきた組織。
当時、その組織には政財界の闇の根源を葬ってきた『鬼神の漣』の姿もあった。
十数年前の私は表、漣は裏から世界を牛耳ろうとした。
だが、ある日…奴の娘が孫諸共暗殺されかけた。
孫の方は娘が身を挺して救った為に命に別状はなかったが娘の方はそれが原因で亡くなった。
その手を下したのは当時の私の部下達。
私自身が部下を御せなかった事と部下達の思想の行き違いによって起こってしまった事件だった。
娘の死後、漣は私とのバイパスを断ち切りホルトゥスは影へと消えていった。
以降、旧連邦軍は退廃と汚職に塗れる事となった。
後のL5戦役と呼ばれる戦乱が起きるまではな。
「まさか…L5戦役が近づく中で旧連邦の内部改革が急速に進んでいたのは?」
「再び、ホルトゥスが活動を再開した証でもある……かつての志を折らずにな。」
「…」
「私も出来得る限りの活動に目を瞑っていたのはその為だ。」
「自分達の偉業が世に示されなくても…ですか?」
「そうだ、表向きは連合軍が事を鎮めたと言う事にするのもホルトゥスが自由に動く為の免罪符。」
手柄はそちらに与える。
今後の自分達の活動には手を出さず時折は協力しろと言わんばかりにな。
「…規律を重んじる軍とは相寄れないでしょう。」
「いや…我々は規律で結束を生む、ホルトゥスは自由によって結束を生む……形は違えども理にかなっているだろう?」
「閣下がそう仰るのなら。」
腑に落ちない表情でダニエルはギャスパルに返答した。
ギャスパルは不敵な笑みで更なる回答を伝えた。
「それに我々が苦労せずともガイアセイバーズの悪行を世に知らしめたではないか?」
「グライスマン大統領の生還を含めてですが……如何しますか?」
「奴が復帰したとしても政治の道を踏めんよ…奴にはガイアセイバーズ設立の罪を償わなければならんのだからな?」
「…自滅も近いと?」
「そう言う事だ、次の大統領の席に座する人物にも心当たりがある。」
「…(もしや、この事を見通していたと?」
「だが、全てが終わった訳ではない…ジェイコブ、鋼龍戦隊の罪状を撤回しガイアセイバーズ追撃の任に就かせろ。」
「了解しました。」
「彼らには今日まで道化を演じさせた事もある…少し色を付けても構わんぞ?」
「と、仰いますと?」
「ノードゥスへ部隊ごと再編させ対処させても構わんと言う事だ。」
「その方が彼らを自由に動かせると?」
「無論、ノードゥスに参加させた場合の命令系統が少々厄介な事になるがな…」
現在のノードゥスは国連安全保障理事会と地球防衛軍、地球連合軍の三か所からの同時承認式命令系統となっている。
一例として一方が命令を出した場合、他の二方からの了承を得なければ命令を下せないと言うもの。
一時期、横暴な命令を下した各軍上層部を牽制する為に出された案件である。
これによりノードゥスは特異な命令系統を持つ部隊へと変わったのだ。
「だが、取れる獲物の数は多い方が得と言うものだ。」
ギャスパルは不敵な笑みのまま告げた。
>>>>>>
一方、その頃。
「あの、狸親父め…」
私ことハスミは現在、クスハ達と共に指示を出した南米の戦場へと向かっていた。
「ハスミ、どうかしたの?」
「リアルタイムで軍上層部が鋼龍戦隊への追撃の任を解いたらしいわ。」
「本当に!」
「このままノードゥスに再編される形になりそうよ。」
「よ…良かった。」
通信越しから安堵の表情で答えるクスハ。
「でも、まだ終わった訳じゃないわよ?」
「えっ?」
「鋼龍戦隊は自身の汚名を晴らす為にガイアセイバーズを追う任を与えられたわ。」
「そうなるよね…」
「ガイアセイバーズの主幹であるアルテウル・シュタインベックを拘束しなければ完全に汚名は晴れない。」
「ハスミ、皆…大丈夫よね?」
「大丈夫、ノードゥスに再編する事が決まっているのだから鬼に金棒よ。」
「そうよね?」
「早い所、南米のレイラインの奪還を済ませないといけないわ。」
「ええ。」
クスハ、これから貴方に試練が訪れる。
どうするかは貴方自身が決めるのよ?
超機人の操者に選ばれた意味をその理由を知る事になるのだから…
私はその試練を見守るだけよ。
「クスハ。」
「ハスミ、どうかしたの?」
「超機人に乗る意味を考えた事はある?」
「乗る理由?」
「長き時の中で彼らは歴代の操者と共に戦い、別れ、その意思は受け継がれていった。」
「…」
「超機人は意思を持ち生きている、その意味が如何言う事なのか…南米のレイラインに着くまで考えて置いてほしい。」
「判ったわ。」
その問いの答えを知った時、本当の意味で貴方は真の超機人達の操者となる。
如何か、夏喃の策略に惑わされないで。
もしも夏喃の策に嵌ってしまったのなら私は貴方を見限るしかない。
アカシックレコードとはそう言う約束だから。
「…ここで二手に分かれましょう。」
「ハスミ、どうしたの?」
ハスミは発言に尋ねるクスハ。
「予想以上にルイーナの破壊活動範囲が広い……一度分散させて彼らへの活路を開かなければならない。」
「だったら一緒の方が…」
「クスハ、私達はホルトゥス……連合軍じゃないのよ?」
「あ…そうだったわね。」
「破壊活動範囲に連合の基地がある、私とクスハはそこへ向かう…残りは南米のレイラインへ向かってください。」
「了解した、そちらも無理は禁物だぞ?」
移動道中で同行していた加藤機関のシャングリラと別れ、私達は南米のエクアドル基地へと向かった。
「ハスミ、一体何が?」
「…奴らの気配を感じる。」
「それって…!」
「クスハ、バラルが近くに居る……恐らくは奴らも連合の基地に向かっていると思うわ。」
「一体どうして。」
「判らないけど…そこに何かがあるのかもしれない。」
不安が過る中で私達は目的の基地へと向かうしかなかった。
=続=
龍の逆鱗に触れる。
虎の尾を踏む。
どちらも怒りの源。
選ばれし操者と志を共に。
前へと進め。
次回、幻影のエトランゼ・第七十話 『《ゲキリン》後編』
さよならは言わない。
これは一時の別れである。