幻影のエトランゼ   作:宵月颯

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交わる事のなかった世界。

それは静かに歩み寄る。

0と1の羅列と共に。


第八十一話 『魔扉《マジカルゲート》』

前回、木星帝国の地球圏へのコロニーレーザー照射を防ぐ為に編成されたノードゥス艦隊を木星に送った私達。

 

それから更に数週間が経過した。

 

物質界メンバーは変わらず、オロス・プロクスと協力者達の動向を追っている。

 

私達は情報が入るまで小競り合いの元となる紛争を秘密裏に止めていた。

 

クロノにとって今は有益であるが、後に不利益に繋がる紛争なので問題はない。

 

ノードゥスからは完全に敵対する方向にしたので、なるべく鉢合わせにならない様に心掛けている。

 

ぶっちゃけ言うなら出逢ったら無視&撤退するか不定期に現れるラマリス倒している位だ。

 

こう言った事が続く中で一言だけ言わせて貰いたい。

 

ラマリス多くない?

 

 

******

 

 

ガドライト・メオンサムだ。

 

今現在、奇妙な場所に居る。

 

 

「ここは何処だ?」

 

 

周囲を散策した後、ここが開発が進んだ島である事は理解した。

 

だが、転移の感覚もある。

 

この場所が別の世界である事は判った。

 

ダイバーランド、それがガドライトが居る場所の名である。

 

 

「しっかし、妙だな…」

 

 

ガドライトはある違和感を覚えていた。

 

島の案内パンフレットや島の全容が閲覧可能な観光案内所で得た情報によれば…

 

島民500名、ワールドリンクと呼ばれる国際規模のネットワークの管理を行う施設が存在する。

 

その過程で技術者や管理を行う者達の家族も移住しているとの事。

 

違和感とはここから来るものである。

 

 

「子供の姿が見当たらねえ、どうなってんだ?」

 

 

島に在住している筈の子供の姿が全く見えないのだ。

 

塞ぎこんでいる親世代の人々の姿は散策で素通りする時に見えるが異常である事は確かだ。

 

 

「首を突っ込むつもりはないが、少し探る必要がありそうだな。」

 

 

ガドライトも前の世界で双子の娘を授かった事もあり気になっていた。

 

その後、島の観光客を装いながら監視しつつ様子を伺う事にした。

 

 

「おじさん、見ない顔だね?」

「オジ……初対面の人にそれはなくね?」

「ケント、ちょっと失礼よ。」

「いや、だって無精ひげ?だっけ…どうみてもおじさんにしか見えないし。」

「…(好きでひげ生やしている訳じゃないんだけどな。」

 

 

公園で二人組の子供にぶつかったガドライト。

 

謝罪の後に世間話にシフト。

 

二人の自己紹介も兼ねて島について聞いていた。

 

二人組の名は男の子はケント、女の子はアオイと名乗った。

 

 

「そう言う事だったのか…」

「俺の弟も巻き込まれたんだ。」

 

 

この島に子供の姿がないのは仮想ネットワークで発生した大規模バグが原因。

 

仮想世界に意識を送り、世界中と繋がれる子供だけの遊び場。

 

その世界にバグが発生し多くの子供の意識がそこに閉じ込められる事となった。

 

現実世界に肉体はあるが意識が戻っていない状態。

 

島で見かける親世代の顔に陰りがあったのはそのせいだろう。

 

バグが取り除かれなければ子供の意識は戻ってこない。

 

親はいつ戻るか判らない子供の為に待ち続けるしかない状況だと言う。

 

 

「慰めにもならないが、無事に戻れる様に祈って置く。」

「…ありがとうございます。」

 

 

>>>>>>

 

 

数日後、予測通りに島で異常現象が発生。

 

ネットワークを通じて島を管理しているシステムが暴走を始めた。

 

例えば、水道管理局だと水道管の放水システムのバグだったりガス管理局からはガス管の放出制御のバグだ。

 

今回は港の運行システムの異常で早期にバグが止められなければ、この島の港に入港する予定の貨物船がシステムエラーで航行不能のまま港に激突する事となる。

 

管理局の様子を盗聴していたガドライトは一連の現象を理解した。

 

 

「成程な、あの暴走もネットワーク内のバグと連動で起こっているって訳か。」

 

 

状況を察したガドライトは原因を呟くが止める事が出来ない。

 

元凶が存在するネットワーク内部に行く事が出来ないからだ。

 

そんな事が出来るのは仲間の一人位だろう。

 

 

「そんな都合のいい事が起こる訳…」

『ご…無事ですか、ガド…ライトさん。』

 

 

その時、所持していた電子端末に連絡が入った。

 

 

「すんげーグッドタイミング。」

『何か?』

「ちょっとな、それよりも早急に頼みたい事がある。」

 

 

ガドライトは連絡を寄越したハスミに事情を説明。

 

ハスミは該当する名称に反応していたが、即座に転移座標の割り出しを進めた。

 

それらはすぐに終わり転移の準備を進めてくれた。

 

 

『ガドライトさん、此方の素性は伏せた状態での行動を願います。』

「判ってる、こっちの無茶な要件を聞いてくれて助かったぜ。」

『指定ネットワーク内部の座標に転移後、速やかに原因のバグを破壊してください。』

「了解した、ナビゲートは引き続き頼むぜ?」

『了解。』

 

 

ガドライトは人気のない場所へ移動し転送された小型クロスゲートから転移を始めた。

 

 

******

 

 

港の運行システムを管理するネットワーク内部。

 

ネットワーク内もそれに反映しネットの海に港が設置された造りになっている。

 

 

「さってと、お目当ての敵は……ってあれは!?」

 

 

運行システムを監視するプログラム。

 

それを立体化した港に見覚えのある敵が引っ付いていたのだ。

 

 

「ありゃラマリスじゃねえか!」

『情報取集は此方で続けます……今は処理に専念してください。』

「ったく、奴らも見境ねえな!!」

 

 

ネットワーク内部に転移したジェミニアのコックピットで叫ぶガドライト。

 

本来なら飛ばされる前の世界に出現していた敵がこの世界に現れた事に驚愕していた。

 

ハスミからの助言後、すぐさま攻撃行動へと移った。

 

 

「港から引き離さねえとだが、出力の大きい武装は不味いな…」

 

 

光粒子ブラストで一掃しようと考えたが、ネットワーク内部で立体化された施設はシステムの命そのものと言ってもいい。

 

もしも破壊すれば、現実世界でも連動し運行システムは停止してしまうだろう。

 

その旨をハスミから説明を受けていたので別の意味で苛立ちが増えていた。

 

 

「面倒だが、全部たたっ斬るしかねえ!」

 

 

ジェミニアから光粒子ブレードを形成し戦闘を開始した。

 

仮想世界の港に取り付いたラマリスらもその動きを察知し此方へ攻撃に転じた。

 

 

 

一方その頃。

 

 

 

戦闘が開始された港のサーバーに移動する一体の機関車型の機体の姿があった。

 

 

「グラディオン、さっきの話…本当なのか?」

「ああ、何者かが港のサーバーに現れた新種のバグを取り除いている。」

「デリトロスじゃないバグって一体何だろう。」

「それは此方でも判らない、ケント…今は港のサーバーを正常に戻さなければならない。」

「うん、判ってるよ。」

 

 

機体の搭乗者達は港のサーバーで起こっている戦闘の話を薦めながら現地へ移動を続けた。

 

 

「つったくよ、ラマリスの次はモノホンのウイルスか?」

 

 

港に取り付いていたラマリスを一掃したガドライト。

 

正常化すると思われたサーバー内部に新手の敵が出現したのだ。

 

 

「ん?」

 

 

同時に先程の機関車型の機体もゲートらしき空間を通って現れた。

 

 

「グラディオン、あれは?」

「あの機体か…」

「あれもグランナイツなのか?」

「いや、グランナイツにあの姿をした仲間はいない……ウェブソルジャーと交戦している様だが。」

「グランナイツでもない存在って…」

「ケント、まずは周囲のウェブソルジャーを倒してからだ。」

「判った。」

 

 

機関車型の機体は人型へと変形し武装らしき実体剣で攻撃を開始した。

 

 

「ハスミ、奴が例の?」

『はい、このネットワーク世界を守護するグランナイツの一人グラディオンです。』

「あれにケントが乗っているのか…」

『正確にはシンクロ…融合していると言った方が正しいです。』

「その辺の細かい事は気にするなよ。」

『先程も説明しましたが、彼らとの接触は控えてください。』

「へいへいっと。」

 

 

知りたがる山羊の力である程度の情報を収集したハスミ。

 

その過程で得た情報をガドライトに共有し引き続き接触を控える旨を伝えた。

 

互いの認識が不鮮明な状況の中でウェブソルジャーは一掃。

 

港のサーバーは無事に正常化し貨物船のシステムも回復した。

 

 

「…(さてと、肩入れはここまでにしておくかね。」

「待ってくれ、君は一体?」

「ちょっとした野暮用って奴だ、あとはそっちに任せるぜ。」

 

 

グラディオンがガドライトの機体に通信を送るが、ハスミからの指示通りに言葉を閉ざした。

 

同時にクロスゲートからネットワーク世界を離脱し現実世界へと戻って行った。

 

 

「今の声…何処かで?」

 

 

ケントは聞き覚えのある声に頸を傾げながら拠点であるマジカルステーションへと戻って行った。

 

 

 

>>>>>>

 

 

数時間後。

 

 

『…こちらの世界に残ると?』

「おう、ラマリスがこっちのネットワーク世界に出た事も調べねえとだろ?」

『確かにそうですが…』

「それにお前なら判っているんだろ?」

『致し方ないですね、アウストラリスにはこちらから説明して置きます。』

「わりいな。」

『いえ、アサキムも似た様な状況で例の世界に滞在すると言っていましたので。』

「姿が見えねえと思ったらそう言う事か。」

『滞在中に必要な物資並びに偽造IDは此方で準備が済み次第転送します。』

「判った、アンナロッタちゃん達によろしく伝えてくれ。」

『了解。』

 

 

ガドライトは通信端末を切るとすっかり夜となった空を見上げた。

 

 

「99%の絶望の中に遺された1%の希望…か。」

 

 

 

******

 

 

同時刻、天鳥船島にて。

 

島の神殿内部の一室で話し合うアウストラリスとハスミの姿があった。

 

 

「そうか、アサキムに続きガドライトもか。」

「はい、ラマリスの出現もありましたので監視を兼ねてその世界に滞在するとの事です。」

「監視の件は了承しよう、それよりも此方の問題を片付けねばならんのだろう?」

 

 

オロス・プロクスと行動を共にしていたジョーカーや降魔の殺女らが離反。

 

ジョーカーは主君であるガディウスの指示で様々な世界から集めた悪夢を利用しナハトゥムと呼ばれる存在を復活させようとしていた。

 

その事を知った私達は奴らが逃げ込んだ夢世界へ向かう手段を発見し準備を進めていた。

 

クロノアも夢世界での記憶らしき断片が蘇り情緒不安定気味だが、悪夢に囚われた人々を開放する為にも事は急がなければならない。

 

 

「ハスミ、判っているな?」

「はい、悪夢を終わりにしましょう。」

 

 

血と恐怖の夜の闇に囚われた彼らを救う為にも私は決着を着ける。

 

 

 

=続=

 




悪夢を終わりにしよう。

その先に願うのは開放だけ。


次回、幻影のエトランゼ・第八十二話 『再涙《サイルイ》』


ありがとう、悲しみよ。
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