消えた筈の悪意。
それは心の奥に潜んでいる。
だが、同時に相反する心もそこにある。
梁山泊での戦闘を終えて、月のターミナルベースへと帰還したサイデリアル。
一部隊が出撃した形に偽装しているので他の勢力も手出しはしていない状況。
手を出せば、どの様な報復が待ち受けているかを理解しているからの沈黙でもあった。
******
ターミナルベース内、円卓の席が準備された空間にて。
各自、コーヒーを片手に経過報告が行われていた。
「ふーん、じゃあ泳がせたって事?」
「はい、勿論…罠は仕掛けさせて貰いましたがね。」
「トラップ?」
「奴の驚愕した様子を直接見れないのが残念ですけど。」
鎧を脱いだエルーナの質問に答えるハスミ。
話の顛末は梁山泊で対峙したバラオの件である。
ガドライトはハスミの発言に突っ込みを入れ、ハスミは静かにスルーしてエルーナとの会話に戻った。
「相変わらずエグ…」
「エルーナさん、ガウ=ラ・フューリアの民間人の移送はどうなっていますか?」
「全員セフィーロに移送して置いたよ。」
「アレの解除は?」
「まあ、言われた通りに連中のステイシス・ベッドだったっけ?それを解除して放り込んどいた。」
「了解しました、後は彼ら次第ですね。」
「所でさ、そのステイシス・ベッドって何なの?」
「それはエイテルムと呼ばれる鉱物を利用した時のゆりかご。似た構造としてはエタニティ・フラットの様なものです。」
エタニティ・フラットが話に出た事で反応するガドライト。
「つまり、連中は時を止めていたって訳か?」
「はい、フューリーも長い間…外宇宙を彷徨っていたので民が生き残るには適切な判断だと思います。」
似た様な現象ではバラルの『総人尸解計画』やヨーナンテイの『静死の柩』も該当する。
何れも時の流れが止まり、その中では人は生きられない。
文字通りの緩やかな死が待つ。
例外は霊子化しているアストラル体や尸解で転化した仙人だけだろう。
それでもいずれ御使いの餌食になるのは目に見えている。
あの襲撃は彼らフューリーをステイシス・ベッドから解放させ弱りきった生きる力を回復させる為だ。
Z事変経験者からすれば、霊子結界の燃料タンク扱いと思っているだろう。
御使いの監視を避ける為とはいえ、その意図を理解出来ないなら…そこまでだったと言う話である。
「それでもエイテルムが有限である以上、ステイシス・ベッドも完全ではなく緩やか死が待ち受けている。」
「放って置けば…揃って全滅って訳か。」
「だからこそ彼らも地球と言う第二の故郷を手に入れたかったのでしょう。」
話し合いと言う『相互理解』と『共存共栄』を目指せば事は静かに済んだが…
血統を重んじるプライドの高さがそれを跳ね除けてしまった。
人の思想はそう簡単に変わるものではない。
なので、腐りきったプライドをへし折って置いた。
「そう言う事でエルーナさん達に伸びすぎた彼らの出鼻をへし折って貰ったって訳です。」
「アタシらも退屈しなかったからいいけどねw」
「…(これが類は友を呼ぶってか。」
事後報告がてら説明するハスミとストレス解消出来てスッキリな表情のエルーナ。
遠い眼をしているガドライトを余所に質問をするアサキム。
「…ハスミ、そういえばディラドの方はどうなっているんだい?」
「それも時期に解決予定です、アレも始まりつつありますし。」
「アレ?」
「破界と再世ですよ、どうやらこちらと時差のズレがあったらしくてディラド戦に参加中の部隊のいくつかはアビスの向こう…あの世界へ飛ばされる予定です。」
「成程、アイム・ライアードが仕掛けたプロジェクト・ウズメの後に発生した時空振動がそこで…」
「…(これで終焉の銀河と時獄戦役が同時期に発生するのは必然…確定してしまった訳だけど。」
ハスミはアサキムらへの説明を終えた後、アウストラリスに予定していた行動プランを告げた。
「アウストラリス、私はこちら側のXN-Lの件を片付けた後…予定通りアビスを通りアサキムと共にガイオウ並びに『偽りの黒羊』、『尽きぬ水瓶』のスフィアリアクターの動向を追います。」
「ああ、『揺れる天秤』、『傷だらけの獅子』、『悲しみの乙女』の監視も忘れるな?」
「はい。」
「僕は別行動で彼らに揺さぶりを掛ければいいかな?」
「ええ、流れ通りに事を進めるには致し方ないので。」
「それは…君を攻撃する事になっても?」
「…そうですね、その時は猫のじゃれ合い程度にはお相手しますよ。」
アサキムの発言に対して返答するハスミ。
猫のじゃれ合いと話しているが、そのじゃれ合いがドン引きレベルの戦闘である事を理解するのは難しい。
ハスミなりにやんわりと告げた。
それは『下心のない信頼関係』を築く為に必要な返答でもあった。
「つか、お前らのはじゃれ合いのレベルを越えているだろ!?」
「へぇーどんな感じ?」
再びツッコミに戻るガドライトと興味本位で聞くエルーナ。
呆れたくもなる表情でガドライトは説明を続けた。
「ハスミはアウストラリスに生身で相手が出来る。」
「へ?」
「解り安く言うなら生身でMSと戦えるって話だ。」
「あらまー。」
「私なんてまだまだですよ、精進はしていますけど?」
「…(人間止めてるバケモン連中の巣窟で修行していたお前がヤバイんだよ。」
ガドライトの心情を余所に謙遜な態度で話すハスミ。
茶化し程度の話を終えると次の方針の下で各自動く事となり解散の流れとなりつつあったが…
「ハスミ、どっかでラーメン食べたい。」
「はい?」
「あの時、アタシも鋼龍戦隊と戦いたいのを我慢したんだからさ~いいよね?」
エルーナの突然の願いに対して声を上げるハスミ。
その提案に関してハスミはアウストラリスからの了承を得る為に進言した。
「…アウストラリス、どうなさいますか?」
「済まんが労いを頼む。」
「判りました、エルーナさん…ラーメンの件はどうにかしましょう。」
「楽しみにしているよw」
流石のアウストラリスもエルーナの鬱憤を溜めて置く訳にもいかないのでハスミに対処を命じた。
この提案が後に必然の再会を生み出す切っ掛けとなる出来事。
無限力が提示した悪戯の時でもあった。
******
一方その頃。
<???>
封印戦争集結後。
悪意の吹き溜まりとも呼べる空間にて。
「漸く絶望の意思が満ちた。」
その意志は負念の力によって象られたラマリスを吸収しながら答える。
捕らえられたラマリスは一体、また一体と断末魔をあげながら喰われていった。
「今こそ復讐の時。」
意志の背後に出現した無数の機動兵器群。
「始めよう、更なる糧を喰らうために。」
背に巨大な斧の様な鎌を携えた鎧の姿へと変化した存在は告げた。
「勇者の神話に終焉を。」
危機は再び迫りつつある兆し。
そしてそれも人の意志に出された試練。
絶望の目覚め。
=続=
それは目覚め。
変異の事象。
次回、幻影のエトランゼ・第九十話『双児《ソウジ》』
重なる魂は何をもたらす?
∴∵∴∵∴∵
とあるスレにて。
【悲報】お化けモドキで世界滅亡の予感を語る【終末】
1:名無しのニート 絶望したい 。
2:名無しのアルバイター 草
3:名無しのニート 草ヒドッ⁉
4:名無しの社畜 スレ立てたの学生かな? 社会に貢献してから言おうぜ?
5:名無しのフリーター 言えてる wwwwwwwwwwww
6:名無しのアルバイター 大草原はヤメレやれ。
7:名無しのニート 真面目に語りたいだけなのに。
8:名無しのハンター 語るとして具台的には?
9:名無しのニート このままだと人類どうなるかって話。
10:名無しのDK 何もしなければ滅亡は正しい。
11:名無しのアルバイター 今は軍人さんらが頑張っているし俺らが出来そうなことって少なそう。
12:名無しのハンター 祈る事も出来ますよ?
13:名無しのニート 12は宗教家?
14:名無しのハンター 正直に言えば天使とか嫌いな方です。
15:名無しのDK 同じく天使は好かんぞ
しばらくグダグダな話が続いた後、残ったスレ民によって意味深な言葉が残された。
30:名無しの花屋 星の鍵は散らばった、いがみ合う心は二つ。
31:名無しのハンター ⁉
32:名無しのDK ⁉
33:名無しの花屋 希望と絶望、勇ましき者達への危機
34:名無しの花屋 相反する心がそれを救う
35:名無しの花屋 日常の中の平穏と天の河の見える雪の谷
36:名無しの花屋 答えを求めるなら歩め
37:名無しの花屋 砂時計は止まらない
38:名無しの花屋 牢獄の体験者らへ告げる
39:名無しの花屋 光が注ぐ半球の中間の時を待つ
そこでスレは途切れた。