それは生と死の狭間。
それは一瞬の刹那。
それらの境地の果てに。
兆しは目覚める。
前回の戦闘の最中。
デブデダビデは撤退しラマリスの大群が消滅した後に展開された戦い。
サイデリアル代表のアウストラリスによる戦闘。
周囲への配慮を考え、カラチ市街への被害を減らす為に次元結界による闘技場を展開。
その意味は鋼龍戦隊が標的であると知らしめる行為だった。
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引き続き、次元結界によって展開された闘技場。
その中心に立つアウストラリスの蒼雷迅。
一騎当千の戦士達を前に引かぬ堂々とした姿はサイデリアル当主の姿でもあった。
「さて、誰でもいい…戦う意思のある者から掛かってこい。」
かつて刀と拳を交わしたゼンガーもアウストラリスの殺気で本気である事を察し。
同時に当時危惧していた予想が現実と化した事に内心冷や汗を流していた。
「多勢に無勢と思っているのなら…見当違いだぞ。」
アウストラリスは煽る様に告げた。
「ノードゥスの一端を担う部隊がこの程度か…?」
「何だと!?」
「そいつは聞き捨てならねぇ!」
頭に血の上ったコウタやトウマは声を荒げた。
「アタシらの力を見てからいいやがれ!」
「中尉、まずいですよ。」
同じくカチーナのブチ切れとラッセルの静止も入りつつある。
「そうだ、それでなくてはな?」
アウストラリスの闘気が満ちる。
彼の臨戦態勢は整いつつあった。
「それでこそ、あの者が認めた鋼龍戦隊!」
そこからは一方的な蹂躙と呼べる程の戦いが行われた。
初手で交戦したコウタとトウマは瞬く間に蹴り飛ばされ…
同時に殴りかかったミチルも同じ末路を辿った。
触れれば帯電する装甲で攻撃が鈍り、一瞬の隙を作ってしまう。
それに感づいた銃撃戦を得意とするメンバーでの高機動&遠距離攻撃を仕掛けるが…
「その手の攻撃対処法は既についている。」
彼は生粋のインファイター。
彼が考える手は在り得ない方法だった。
放たれたビーム兵装のビームを駆け上がったのだ。
特に大火力を放つ事が出来るライン・ヴァイスリッターやジガンスクード・ドゥロは痛い反撃を喰らう。
「うっそぉ!?」
「マジモンかよ!!」
エクセレンとタスクの嘆きも空しく、二機も墜落。
空中で隙が出来たと判断したレオナも攻撃に転じるがその手も見透かされていた。
「そ、そんな…!」
墜落するジガンスクード・ドゥロを足場にしてズィーガーリオンをも蹴り飛ばして足場に転じたのだ。
その光景は因幡の白兎を連想させる。
「ユウ!?」
「カーラ!下がれ!!」
砲撃体制を整えていたユウとカーラも次の攻撃の餌食となり遭えなく落下。
地上に降りた所をカチーナらが攻撃を仕掛けようとするが、落下したのと同時にユウらが落とした武装をカチーナ達の方へ投げ飛ばし…
その反撃の手である銃撃を利用し誘爆させた。
ビーム兵装だった為に運悪くカードリッジに武装が貫通し爆発。
目晦ましに利用され、距離を詰められたカチーナ達も蹴り飛ばされる結末を迎えた。
「弱すぎるな…あの時の奇跡はこの程度のものだったかのか?」
たった一人の奮戦にレフィーナ支隊は壊滅状況に陥った。
最後の防壁だったダイゼンガーとアウセンザイターも撃破。
残ったアルトアイゼン・リーゼとソウルゲインのみが対応していたが…
「成程、兆しはここにあったか…」
「!?」
「どういう事だ?」
「お前達が皆の指針となれ、兆しはすぐ其処だ。」
その言葉を最後に二機も撃墜された。
「「!?」」
一瞬の出来事、スフィアを利用した攻撃による壊滅。
「さらばだ、次に会う時はシンカの目覚めを上手く使いこなせている事を願おう。」
アウストラリスらが去った後、鋼龍戦隊・レフィーナ支隊は次元結界から解放された。
ヒリュウ改自体は航行がある意味で可能な範囲の損傷で済んでいるが…
出撃していた部隊は壊滅に近い状況だった。
最も被害が少なかったのはフューリー製の機体やシュンパティア搭載機位だろう。
今後の活動に支障が出ない程度の配慮なのだと思われる。
機体もそうだが、パイロット達も負傷し動ける者が限られてしまった。
急ぎ、ヒンダン基地へ急行し修理と治療依頼を申請。
これによりハガネ支隊はヒリュウ支隊との合流を遅延する事となった。
ヒリュウ改に関しては応急処置後に伊豆基地へ移動し修理と言う形になった。
一方の艦が動かせない状況に陥った為、統合参謀本部は別行動中だったクロガネに合流の指示を行った。
現状で鋼龍戦隊の機能を失わせる訳にはいかないのも理由の一つ。
戦いは日に日に過激になって行く。
それはまるで何かを再現する夢の様に広がっていた。
~数週間後~
伊豆基地にて。
大手医療メーカーであるJUDAコーポレーションから発展し正式に民間運用へ認可が下りた『再生治療』。
これによりカラチで負傷したメンバーの多くはほぼ完治しつつあった。
しかし、再生治療は個人差も含まれるが一部はそうもいかず安静を余儀なくされている。
今だ病室入りをしているキョウスケらの元へパリから帰還したリュウセイらが立ち会っていた。
現在、病室に入院しているのはキョウスケとアクセル、リュウセイとギリアムが見舞いに来た形である。
「そうか、パリ方面にもサイデリアルが…」
「それどころか、シン達から聞いていたサイデリアルのメンバーの他に別の奴が現れやがった。」
「何だと?」
「そいつの名前はファウヌス…サイデリアルの軍師って名乗ってたぜ。」
「ファウヌス…か。」
「ギリアム少佐、どう思いますか?」
「恐らく、ハスミ少尉がサイデリアルに居続ける理由の一つだろう。」
ギリアムの推測…
それはハスミがサイデリアルに居続ける理由。
ファウヌスと言う例外が出た事やサイデリアルの内情を知る為だろう。
アカシックレコードから閲覧制限が出ている以上、そうせざる負えなかった。
それが今のギリアムが出した結論だった。
「無茶しやがって…」
その言葉で何とも言えない表情のリュウセイ。
サイデリアルへ潜り込む為にガンエデンの力を利用しての行動。
最もな理由は不明だが、これからの事を考えてのハスミなりの動きなのだろう。
「流石にガンエデンの力を条件に敵の懐に入り込むとは思わなかったが…」
「大胆な行動だが、あのアウストラリスには効果があったのだろう。」
「…そうだな。」
キョウスケらはカラチで起こった出来事をリュウセイらに説明。
イルイの件、デブデダビデの戦線離脱、アウストラリスの行動。
アウストラリスの目的はシンカの兆しを見極める事。
その事に対してキョウスケら数名はシンカの兆しが見え始めていた。
「シンカの兆し?」
「ああ、封印戦争でもハスミやアウストラリスが説明していた真実を知る為の条件。」
「て、事は…」
「アウストラリスとの戦いで俺達にもその兆しが訪れた。」
「俺達はハスミ達が戦っている奴らの正体と危機を知る事が出来た、これがな?」
但し、彼らが目覚めたのはシンカの始まりであるが…
その流れを知り、その先に待つ正しきシンカに至れれば真実は明らかになる。
「ハスミ達が追っているのはバアルで間違いない。」
「だが、ややこしい状況に陥っている…これがな?」
「ややこしい?」
キョウスケとアクセルは険しい表情で事の次第を告げた。
「そのバアルは俺達が想像していた以上の存在……云わば、因果を覆せる存在。」
「結果的に奴らと戦うにはシンカの力が必要だと言う事は確かな話だ。」
二人の言葉に対してギリアムは一つの結論に近い言葉を放った。
「実験室のフラスコに注がれた無数の薬液は混ざり合い一つになりつつあるか…」
「少佐、それってハスミが話していた?」
「ああ、実験室に残された最後のフラスコ…そのフラスコに無数の薬液が注がれ一つになる。」
最後のフラスコはこの世界を構成する銀河を示し、無数の薬液は可能性を示している。
その結果が齎すもの…それは。
「彼女達が話していた一万と二千年の周期…節目の年である一億と二万年の周期が差し迫っている事だ。」
言葉通り、終焉の銀河の開戦が始まる兆し。
平行して発生しているもう一つの戦いである時獄戦役と天獄戦役。
文字通りの人類滅亡のカウントダウン、それらが起ころうとしていた…
「そしてシンカの目覚めを迎えた人類もまた危機を覆す為の選択を強いられるだろう。」
共存共栄による種族を超えた同盟。
それが成す事が出来るのか?
託された想いと願いが晩成に向かうのはもう少し先の話である。
=続=
変異する。
それは流れが変わりつつある。
次回、幻影のエトランゼ・第九十七話『介入《カイニュウ》』
それは無限力の陰謀か?
それは生命録の慈悲か?