壊変された時系列。
全てはあの戦いへと変異する。
そして…
パリ、カラチでの戦いが終わってから数週間後。
更なるフューリーとガディソードの反乱にゴライクンルの暗躍。
また、鋼龍戦隊の一角が行動不能に陥っていた。
だが、サイデリアルは再び不可解な行動を起こした。
その結果…更に一か月後。
ラブルバイラを事実上支配していたヘルルーガ率いる強硬派は鋼龍戦隊の電撃作戦によって敗北。
穏健派と民間人らがラブルバイラに残っている事もあり、連合軍の駐留部隊が護衛の形で火星に移送。
火星の移民団や植民中だったバーム星や他の星々の人々らに混じり行動する事となった。
そしてサイデリアルは折角手に入れたフューリーの支配を手放した。
一度はガウ=ラ・フューリアへ拉致されたトーヤ達だったがある人物の手によって離脱。
グランティードの真の姿であるグランティード・ドラゴデウスの目覚め。
その結果が齎したのは早期した鋼龍戦隊による二度目の電撃作戦。
ガウ=ラ・フューリアはサイデリアルの手によってエイテルムを使用する事が出来なくなっていた事もあり…
苦し紛れに反抗したグ=ランドンらクーデター組を倒し、ガウ=ラ・フューリアの奪還に成功した。
安全の為にガウ=ラ・フューリアも火星へ移送。
ガディソード同様に監視付きであるが、反乱続きだった彼らの内情が収まるまでの間を考えての措置である。
そして、ゴライクンルはと言うとホルトゥスの反撃を受けて地球圏から撤退。
大々的に暗躍していた事が彼ら側の銀河で公にされた事により…
インスペクターことウォルガの方でも問題視され、彼らを匿っていた組織も芋づる式に宇宙警察機構に逮捕されつつあるそうだ。
他の侵略組織もサイデリアルの出現とホルトゥスの暗躍でズタボロにされ地球圏から撤退し暫くは侵攻する事もないだろう。
戦うべき相手はダークブレイン軍団と負念によって復活した悪意達のみ。
だが、地球連合軍はこれにサイデリアルも対処案件に組み込んでいる。
それは地球連合軍に入り込んだ毒によって徐々に引き起こされようとしていた。
****
月のターミナルベースにて。
施設内、玉座の間の奥に設置された円卓の一室で幹部による緊急会議が行われていた。
アウストラリスを始めとした五名のメンバーに加えて更に二名の姿が加わっていた。
「で、僕らまで呼び出した理由ってなんなのさ?」
「…」
円卓の席で愚痴を言っているヴィジュアル系の青年と無言のサングラスを掛けた男性が控えていた。
二人の様子にアウストラリスが理由を告げた。
「急を要する事が始まろうとしている…故にお前達にも召集をかけた。」
「そう、理由の一つはそのアサキム・ドーウィンとその子の自己紹介かな?」
「その通りだ、まずは新たな同志としてアサキムそして俺の片腕を紹介する。」
アウストラリスの発言に少し動揺する二人。
「「!?」」
そんな様子の二人を余所に言葉は続けられた。
「ハスミ、同志のバルビエルと尸空だ。」
「お初御目にかかります、私の名はハスミ・クジョウ…知りたがる山羊のスフィアリアクターとして選ばれました。」
ハスミは一度席から起立し二人にお辞儀をして自己紹介をした。
「隣席のアサキムは夢見る双魚のスフィアリアクターとして覚醒、訳あってアウストラリスに協力する形となりました。」
「よろしく頼むよ。」
「ご心配の監視の目は彼に御座いませんのでご安心を。」
アサキムの挨拶に続きハスミは事務的な自己紹介を済ませた後、席に着席した。
「ふうん、君がアウストラリスの片腕ね……それなりの実力があるって事でいいのかい?」
「そうですね、実際に見て頂いた方が解りやすいと思いますので機会があれば…」
ハスミの提案にエルーナが静止を掛けた。
「あーそれ…止めといた方がいいよ?」
「何だよエルーナ…戦い事に興味がある君が珍しいね?怖気づいたのかい?」
「…そう言う問題じゃないって事さ。」
バルビエルの嫌味に対して鞘に収まった軍用ナイフをクルクルと弄りながら空しく呟いていた。
「何が遭った?」
尸空は事情を知っていそうなガドライトに質問するが似た様な答えを出された。
「俺もエルーナと同意見って事だけさ。」
二人の様子にバルビエルと尸空は『不在中に何が遭った?』と混乱しつつも今までの双方の活動報告と共に話し合いを継続した。
「話を戻す、バルビエルと尸空を呼び出したのは俺達の計画が大きく変わる事を告げる為だ。」
アウストラリスは静かに告げた。
「俺達は…サイデリアルは捨駒にされた。」
「っ、どういうことだよ!?」
アウストラリスの発言に動揺するガドライト。
「正確には御使い共がスフィアに代わる代用を発見しそちらを利用する決断を下した。」
「つまり、僕らは用無しって事?」
「その通りだ、流れは変わりつつある。」
代用品の発見。
人類に残された希望はスフィアとそれぞれの時代で培われたシンカの力…人機一体の術。
「俺達は決断しなければならない、今後の歩み方をな?」
「その決断とは?」
「道化を続けるか、反逆するかだ。」
その発言に周囲は無言を突き通した。
判断を誤れば待つのは滅び。
だが、微かな希望を捨てたわけではない。
「アウストラリス、想いは皆も同じ様ですよ?」
「そうか。」
沈黙を破る様にハスミは告げた。
答えるべき総意は同じであると…
「ならば、不退転の道はないと思え…これから先の戦いは抗いで在ることをな。」
早急する此度の決戦。
負念に穢れた巨人の出現は間もなくである。
=続=