幻影のエトランゼ   作:宵月颯

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その興味で相手を蹂躙する。

知る筈のない言葉は相手を惑わす。

暴露と言う恐怖の名の元に。


第百三話 『興味《キョウミ》』

夢は続く。

 

子供達はネバーランドへと導かれる。

 

出来得る事ならそのポケットが虹の光で溢れますように。

 

そう、願わずにはいられない。

 

 

******

 

 

今頃、レントンはドミニク先生との約束を思い出している頃だろう。

 

この世界に居るレントン達は別の並行世界の人物で第303独立愚連隊として活動している。

 

空白事件で知り合ったゲッコーステイトではない。

 

レントンとエウレカは八年前の雪の降る日にドミニクに雪月花ことゆきづきのはなの由来を聞く事になる。

 

百年に一度、星の粉が降る日に虹色の光を放つ花が咲く。

 

その虹色の光の中で願い事をすると願いが叶うとされている。

 

レントンは一週間後に先生を失い、軍の行動でエウレカと離ればなれになった。

 

彼は八年間の孤独の中で自問自答を繰り返し、幼馴染であるエウレカを取り戻す手段を得た。

 

そうして来るべき日は訪れた。

 

 

~人革連・インド中央部~

 

 

この日、ZEXISは第303独立愚連隊が追っている最重要機密の確保の補助をする様にとエルガン代表より依頼を受けた。

 

表向きは対イマージュ戦略の最重要機密とされている。

 

だが、不自然である事は確かだ。

 

元々、対イマージュは国連の平和維持理事会の管轄。

 

正規の手続きを取れば、何ら問題は無いのだが…理由がある。

 

その理由は狂言強盗の依頼だった。

 

エルガン代表はある人物へ最重要機密を非公式に譲渡したいのだ。

 

要は火事場泥棒をZEXISへやらせようとしている。

 

黒の騎士団は正義を貫くと言うスタンスを取りたかったが、代表であるゼロは部下達を抑えて説明し何かの思惑があると思うで締めくくった。

 

話し合いを続ける中で目的の輸送団がイマージュに襲撃されている報告を受け、急ぎ現場へと急行するのだった。

 

 

<数刻後>

 

 

「隊長、何か来ます!」

「っ!?」

 

 

イマージュに襲撃された輸送団を保護しつつ戦闘を続行中の第303独立愚連隊。

 

強襲艦月光号より出撃中のKLFはホランドのターミナス type B303、レントンのニルヴァーシュ。

 

数としては少ない方であるが、ZEXISとの共同作戦である以上は斥候と考えるべきだろう。

 

イマージュの襲撃に応戦中の第303独立愚連隊へZEXISのプトレマイオスが到着。

 

各自出撃しイマージュへの攻撃を仕掛けた。

 

 

「安心しろ、アイツらは味方だ。」

「えっ?」

「あれが国連の対策チーム・ZEXISだ。」

「あれが…ZEXIS。」

 

 

ホランドは救援であるとレントンに告げた。

 

月光号の艦長であるタルホがZEXISと連絡を行い、連携を開始。

 

各機に襲撃中のイマージュへの攻撃を命じた。

 

ソレスタルビーイング、コロニーの有志、黒の騎士団を中心としたメンバーによってイマージュは掃討されつつあった。

 

だが、次元境界線の歪曲現象の反応を感知。

 

次元震が発生し発生と同時に次元獣も出現。

 

その中にはエリア11で遭遇した白い次元獣…MDも含まれていた。

 

出現と同時にMDは輸送団の戦艦を襲撃。

 

更に墜落した戦艦に攻撃を加えようとした為、ホランドとレントンが対応。

 

この時、レントンは輸送団の戦艦から幼馴染のエウレカと再会。

 

避難も兼ねて彼女を乗せたレントンだったが、ニルヴァーシュに変化が起きた。

 

白と灰色だったニルヴァーシュに鮮やかな赤いラインが加わったのだ。

 

そして追撃して来た別の次元獣へ反撃し倒す事に成功。

 

彼は虹の道を歩み始めた瞬間だった。

 

 

「…(うっし、無事にレントンはエウレカと再会…俺は俺の仕事をこなすぜ。」

 

 

クロウはレントン達の再会が無事に終わった事を確認するとMDの元へ移動し依頼を完遂しようと行動を開始した。

 

 

「…(MD、悪いが仕留めさせて貰うぜ。」

 

 

MDの件はエリア11で知り合ったエスターとの約束であるが、MDはいずれ出会うマルグリットの弟の命を奪う行為でもあった。

 

今の状態で次元獣を人と機械に分離する方法は手元にない。

 

それこそ、事情を知る彼らが現れない限りは…

 

 

 

「MD…そろそろ決着を着けさせて貰う。」

 

 

ACPファイズを仕掛けるクロウだったが、予想通り次元境界線の歪曲が発生。

 

二度目の次元震が発生、それは一点に集中し出現した。

 

出現と同時にクロウのブラスタへ急接近する謎の機体。

 

 

「誰だ、てめぇ…(また会ったな、アイム。」

「初めましてと言っておきましょう。」

「次元獣…なのか?(何を言っても嘘ってのはお見通しだがな。」

「ええ、少々特殊なタイプのね。クロウ・ブルースト…貴方の命を貰います。」

「堂々と宣戦布告か…何が目的だ?」

「この世界を救う為です。」

 

 

アイムがお決まりの台詞を答えたと同時に更に次元震が発生。

 

それも同じ様に一点に集まり、出現する機体。

 

かつて在り得なかった新たな来訪者の出現だった。

 

 

「おや、来客ですか?」

「…」

「アイツは…?」

 

 

クロウらはやり取りを一度中断すると出現した機体に通信を送った。

 

 

「お初御目に掛かる、私の名はファウヌス。」

「ファウヌス?」

 

 

通信中のモニターから見えたのは全身白銀の鎧を纏った人物である事とボイスチェンジャーで声色を変えているので性別が不明である事だ。

 

 

「このエリアで戦闘が確認出来たのでね、様子見に来ただけだ。」

「…」

「その甲斐で面白そうなものが釣れたのは好都合だよ。」

 

 

ファウヌスは機体の向きをアイムのアリエティスへと移動させた。

 

 

「ファウヌスといいましたね、貴方は何者なのですか?」

「そうだね、君にはこう告げた方がいいだろう。」

 

 

ファウヌスはアイムにだけ通信を制限すると電子音の声でこう答える。

 

それも電子音からでも判る悪戯めいた口調で…

 

 

「…あのレポートはどうしたかな、ハーマル君?」

「!?」

 

 

その言葉を耳にしたアイムは硬直した。

 

自信あり気な表情は一気に氷点下に堕ちた。

 

そう、在るのは耐え難い恐怖だった…

 

 

「…(何故、その事を…?あの上司はこの手で…!?」

「おや、答えられない…と?」

「貴方は一体…!」

 

 

アイムは揺さぶり出された動揺を隠しつつ話を続けた。

 

余裕だった心情は瞬く間に焦りに変わった。

 

もしもファウヌスが自分の知る人物だったら?

 

全ては薄っぺらな偽りが暴露される。

 

このスフィアで虚偽を覆す事は出来ない限りは…

 

いや、虚偽を引っ繰り返す策があったら?

 

焦りは焦りを呼び、アイムの手は冷や汗でびっしょりになった。

 

その混乱がスフィアの同調を鈍らせているとも知らずに…

 

 

「それは君のご想像にお任せするよ?」

「答えはしないと?」

「そうだね、君が求めた回答が正しいかは君自身に任せるよ?」

 

 

ファウヌスはまるでアイムの過去を知っているかの様な話し方を進めた。

 

それは当事者でなければ、知る由もない情報。

 

アイムはファウヌスの正体が自分の過去を知る人物であると錯覚する事となった。

 

 

「答えは必要ありませんよ、貴方をここで始末すれば良いのですから!」

「…単調だが、判断の速さは認めよう。」

 

 

鎧を纏っているファウヌスの表情は不明の為、彼がどの様な表情なのか理解出来ない。

 

アイム自身は焦っている様に聞こえただろう。

 

だが、彼にとってそれも想定内の行動だった。

 

 

「だが、詰めの甘さは前と変わらない。そう…前とね?」

「!?」

「君は何処までも甘いから、あのレポートのミスにも気づかない。」

 

 

ファウヌスは気配だけでアリエティスの動きを読み取った。

 

アリエティスのブラッティヴァインを避けると装備された杖状の武装から拡散用のミラーを射出し変曲的なビーム攻撃を仕掛ける。

 

それらも本来であれば、アリエティスの偽りのスフィアの力で退けられる筈だったが…

 

ファウヌスのアルゲティオスはそれらを無力化したのだ。

 

 

「どうした?その程度かい?」

「貴方は…何処まで人を煽れば!?」

「何を今更、本当の事だろう?」

 

 

偽りの力を使うアイムの行動を読み取っての行動。

 

それはある意味で逸脱した行為であり規格外である。

 

本来であれば在り得ないのだ。

 

最も彼が偽りを相殺するナニカを持ち得ているのであれば別であるが…

 

現状、それを知れるのはクロウとアイムだけだろう。

 

 

「アイツ、アイムの攻撃を見切ったのか!?」

「クロウ、どうだ?」

「あのファウヌスって奴からスフィアの気配は感じねぇ…マジで素でやってんだろうよ。」

「そんな事が…!」

 

 

クロウはヒイロと刹那からスフィアの気配を感じられないかと聞かれたが答えはNOだと答える。

 

 

「…(奴がスフィアを使ってねぇなら、どうやって動きを読んだ?」

 

 

クロウはスフィアの力で偽り惑わす力を持つアイムの偽りの黒羊の力は身を持って知っている。

 

だが、ファウヌスからスフィアの気配は感じれなかった。

 

ならば、どうやってアイムの動きを読み取ったのか?

 

謎は残るばかりである。

 

 

「ぐっ…!」

 

 

そうこうしている内にアイムはファウヌスとの一騎打ちに敗れた。

 

現状で自分達が倒せない相手よりも力量の差が違い過ぎると認識されたのだ。

 

ファウヌスは沈黙しているMDに接近し静かに告げた。

 

 

「さて、戦利品としてこのMDは貰っていこう。」

「それをどうするおつもりですか?」

「君なら判るだろう、調べるのさ…徹底的にね?」

 

 

それだけを告げるとファウヌスはMDを次元結界に密閉すると、共に次元転移で撤退して行った。

 

 

「私もここは引かせて貰いましょう。」

 

 

余裕の表情を見せていたアイムは苦虫を噛み潰したような表情で次元獣と共に撤退した。

 

 

「…(後でハスミの奴にファウヌスの件を聞かねえとな。」

 

 

この後、クロウは危惧していた事が杞憂に終わる事になる事を知る由もなかった。

 

戦闘終了後、第303独立愚連隊はZEXISに加入。

 

薄氷の様で薄っぺらな嘘を引き連れて共に行動する事となった。

 

 

=続=

 





想いは交差しそれぞれの正義を示す。

それは悪意を戦う意思。

そして真実と脅威もまた存在する。


次回、幻影のエトランゼ・第百四話『声明《セイメイ》』


名を告げよう。

我らの名は…



=追記=

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