半開きの扉は開かれる。
それは一方通行。
だからこそ対話を望むのだ。
イグジスタンスによるリモネシア共和国の再建計画から数週間後。
文字通りセントラルベースへと変貌しつつあるリモネシア共和国。
中心部の遺跡を覆う様に政庁が建設され、周囲のエリアには分離式の避難ブロックを設置。
何かあれば各ブロックごと切り離して避難する事が可能とした。
尚且つ、避難後の生活もある程度行える備えもしている。
余程の事が無い限りは使用する事もないが念の為だ。
******
翌日、メッセンジャー到着予定日。
~リモネシア共和国・政庁~
ZEXISが三つのグループに分かれた事を切っ掛けに…
彼らにとって第四の選択肢を増やした。
それはリモネシア共和国へZEXISからメッセンジャーを送る事。
これを利用しクロウをリモネシア共和国に呼び寄せる事にした。
前世上の記憶を持つ者達の要件や要求も携えてくるだろう。
それも含めてである。
そして記憶保持者達へDDコミュニケーターを渡す判断も話の内容によって決めようと思った。
私ことハスミは政庁の休憩スペースに設けられたテラスでその考えを纏めていた。
「…(そろそろ元ZEUTHのメンバーも時空震動でこちら側に訪れ始める頃か。」
地上の国連に協力する第一グループは神ファミリーを始めとしたZEUTH側のスーパーロボット軍団。
宇宙ではカミーユやシン達の様なガンダム乗り。
暗黒大陸方面ではアクエリオンチーム、他の地域ではジロンらブレーカーにエクソダス組と遭遇。
詳しく説明するとキリがないので空白事件で関係した転移組が来たと纏めて置く。
前とは違って若干のズレがあるだろうが致し方ない。
「…(問題はシン達の持っている私達の情報が敵対したままの時の状態。」
あの時の声明でサイデリアルがイグジスタンスとしての改名宣言。
更に鋼龍戦隊と共に行動している事はZEXISを通してZEUTH側にも伝わっているだろう。
そしてメッセンジャーとしてクロウが出向いている事も…
一応、ZEUTH側の転移先で何かあると困るので監視は付けて置いたし何事もなければいい。
そう願いたいが無限力はここぞとばかりに厄介事を連れて来る。
「…(アレは絶対に狙っているとしか思えない。」
ルーンゴーレムの他にガーディムのアールヤブもこちら側の世界に出現していた。
あの気配はバアルのモノだったし注意しないと…
「…(こちら側で起こる戦いの一部を変異させた代償と言うのは理解出来る。」
最近判明した事だが、リモネシア共和国で発見された古代遺跡からクロスゲートが発掘された。
但し、一方通行…直通型で元の世界に戻る為には利用出来ない。
唯一通れるのはゲートの先にある聖インサラウム王国の世界のみ。
プロジェクト・ウズメ…これは天の岩戸を開くと言う意味合いのもの。
現に、このゲートはDECをエネルギー源として起動。
その後の流れ流れでアイム達はガイオウを呼び寄せた後、起動状態で放置していった訳だ。
更に開けっ放し状態であり、ラマリスの要因である負念も駄々洩れしている事を示している。
一応、イルイと一緒にゲートの浄化を急いだので最悪のケースは防いだ。
まさかのクロスゲートが発見されるとは思いもしなかったが…
これも無限力のお遊びの一環だろう。
「じゃあ、遺跡の地下にクロスゲートが?」
鋼龍戦隊の念動者女子組達とテラスでプチ女子会を開催している。
因みにアヤ大尉とマイは別件で不在、先の話の質問はカーラから尋ねられた。
「そう言う事、この多元地球が構築された際に紛れ込んだと思うわ。」
「偶然?って事もあるのね。」
「偶然と言うよりは必然かもしれない。」
「それは一体?」
「今も姿を見せていない黒幕さんが仕掛けたナニカとしか…」
カーラへの返答、リオとレオナへの疑問返しをしつつ…
クスハにクロスゲートの対応はどうするのか聞かれた。
「ハスミ、あのゲートはどうするの?」
「修羅の乱の時、例の訪れた世界に繋がっているかの確認も兼ねて調査する予定よ。」
「たしか、聖インサラウム皇国…だったっけ?」
「破界の王の侵攻に乱入して途中まで皇国側に参戦した後、どうなったか判らず仕舞いだったから…」
「それよりもどうしてあの世界に繋がっていると?」
「それもスフィアの力?」
「違う、アイムが引き連れていた二機の機体で潜伏先が判ったのよ…」
あれは聖インサラウム皇国の精鋭騎士団であるアークセイバーの機動兵器とハスミは答えた。
「アークセイバー?」
「世界統一国家である聖インサラウム皇国の秩序維持と防衛の全てを担っていた騎士団の事よ。」
「規模はどの位だったのかしら?」
「そうね…」
レオナの質問にハスミは解説出来る範囲で答えた。
アークセイバーの組織形態としては聖王直属の親衛隊という側面を持つ。
中でも、特に秀でた力を持つ二十五名の『ハイナイト』と呼ばれる騎士達。
彼らはインサラウムにおける名誉姓『テール』を名乗ることを許され、専用機を受領されている。
騎士団長として頂点に立つのは最強の騎士であるナンバー1『ナイトオブナイツ』と呼ばれる存在。
聖王国で開催されていた御前試合の優勝者が、その名誉姓『ガルス』を名乗ることを許された上で与えられる位階。
この位置に立ったハイナイトはそれまでの専用機から、団長機であるディアムドへと乗り換える。
その授与式まである位だ。
「って位かしら?」
「その国家には王族制や貴族階級が残っているのね?」
「その世界の秩序を守っていたって事は精鋭揃いって事でしょ?」
「連合軍に匹敵する精鋭が居たのに…」
「…それだけ、破界の王ガイオウと率いる次元獣の力は凄まじかったって事よ。」
あの時、スフィアの力やガンエデンを使えていれば王国崩壊を防げたかもしれない。
過ぎた事であっても…不甲斐ないと今でも考えてしまう。
「ハスミ、アウストラリスさんも…」
「彼は御使いとの戦いでガイオウと同じ玉座型の次元獣を失った…」
それは次元将が身に纏う鎧を失った事を指している。
「戦うとしてもスフィアの力を使わざる負えない。」
アウストラリスがガイオウと戦う事を決めた以上は口出し出来ないとハスミは語った。
本来であれば、次元将の力だけで決着を着けようしただろう。
かつての本領が発揮出来なくても、それが彼なりのケジメだから…
「…お姉ちゃん。」
隣の席でフルーツパフェを食べていたイルイ。
この子の一番好きなイチゴではないが、南国フルーツのパフェに満足している様だ。
「イルイ、心配してくれたの?」
「うん。」
「ありがとう。」
私はイルイの口元に付いたクリームを備え付けのナプキンで拭き取りながら答えた。
「クスハ、イルイの事を頼める?」
「それはいいけど、どうしたの?」
「これから例のお客様と会談の時間なのよ。」
それはクスハ達の休憩時間がそろそろ終わりを告げる合図だった。
イルイも丁度パフェを食べ終えたので一緒に鋼龍戦隊の戦艦が停泊するエリアへと移動を開始。
私はクスハ達を見送った後、ふと思う。
彼女達との談笑が出来たのはギリアム少佐達の配慮だろう。
私が他の隠し事を話すと踏んで…
私は渡せる情報の一部をクスハ達を経由して渡して置いた。
「さてと、クロウさんも到着したし…お話の時間と行きますか?」
私はイルイが食べ終えたパフェグラスの後片付けをした後、政庁内の応接室へと向かった。
~政庁内・応接室~
会議室にはZEXISの代表として来訪したクロウが待機していた。
また食事を取れなかったらしく、事前に用意して置いたお茶と軽食が綺麗に無くなっている。
「クロウさん、忙しくても食事は大事ですよ?」
「悪いな…急ピッチでこっちに来たもんでよ。」
「仕方がないですね。それで…ZEXIS側ではどの様な状況で?」
「まずは甲児や刹那達の経緯を話すぜ?」
「判りました。」
ちゃっかり軽食のお代わりを応対中の職員に頼んでいるし。
後でトライア博士経由で請求書でも送って上げようかしら。
…ま、可哀そうだから目を瞑って置く。
「成程、鉄也さんとジュンさんは別件で合流していないしミチルはまだ健在なのね。」
「所でよ、お前がICPOの総本山の出身って本当なのか?」
「甲児達から聞いた様ですね?それは本当です…親族がらみの事情もあったので。」
ICPOの総本山である国際警察機構。
知性から体術に秀でている者や異能の力を持つ者達で構成された集団。
多分、九大天王やBF団の十傑衆なんて見たら白目モノね。
出身世界には素手でMSを倒せる人材がゴロゴロ居る者で…
多分、暗黒大陸に放り込んだら獣人達が涙目で降参するわ。
「ソレスタルビーイングの内情は?」
「そっちは刹那が調べている。あのグラハムが記憶を持っていた事もあってか助かっているぜ。」
「ブリタニア・ユニオンのエイフマン教授がそろそろ狙われるから監視を付けて置いたけど…大丈夫そうね。」
「その教授がどうしたんだよ?」
「エイフマン教授はGNドライブの構造からトリニティが使用しているガンダムのGN粒子の毒性にいち早く気が付いた人物です。」
「つまり、イノベイトの連中に狙われるって事か…」
「そう言う事です、前回はリボンズの暗躍もあり謀殺されましたが…」
ハスミはそれと同時に悪代官も真っ青な表情で答えた。
「あのトリニティとひろ…じゃなかったサーシェスは再起不能なまでに仕留めますので。」
「…(敵に同情したくなったのは気のせいか?」
クロウはポーカーフェイスのまま遠い眼の心根で答えた。
「トリニティが起こした戦いでどれだけの人達が犠牲になったか……身を持って判らせるいい機会ですし。」
「…」
「サーシェスはニール・ディランディだけではなく沙慈・クロスロードの姉を殺害した実行犯でもあります。」
「マジかよ。」
「そして刹那が幼少期の頃、彼や他のクルジスの少年達を炊き付けて紛争に介入させた…云わばクソ野郎です。」
奴は『聖戦』とふざけた事を抜かし、子供達に親殺しを仕向けさせた。
何も知らない子供は銃を持って戦場を掛けて散った…
それは幼少期のソースケが所属する事となった組織に近いのかもしれない。
理由も無い、ただ…大人の道具にされる行為は虫唾が走る。
そんな連中には罵声を浴びせつつ糞野郎と罵りたい。
「ルルーシュがゼロとして黒の騎士団を立ち上げたと言う事は記憶が戻るのが遅かった…が理由でしょうか?」
「どうして判る?」
「記憶が戻るのが早ければ皇族の立場で行動するのが得策でしょう?」
神聖ブリタニア帝国。
その歴史は血みどろと解釈してもいい。
政権を求めて腹違いの兄弟姉妹がその手に掛け合う。
それは世代を超えて継続し信じていた実の兄弟姉妹ですら…
現皇帝シャルルもその渦中に生を受けた瞬間に晒された。
その兄であるギアス教団の教主V.Vもまた犠牲者なのかの知れない。
結果、彼らが求めたのは嘘のない世界。
アーカーシャの剣…
文字通り、アカシックレコードにアクセスする事が可能な遺物。
だが、このアーカーシャの剣も元凶になりつつある。
そうアーカーシャの剣を構成している意識体達が負の無限力の集まりだからだ。
取り付かれれば最後…死後の魂はバアルに縛られる。
「…恐らくマリアンヌ皇妃が一番の理由なのでしょうけど。」
「マリアンヌってルルーシュの?」
「そう、皇帝が最も寵愛した妃であり秘密裏にV.Vに暗殺された。」
ルルーシュの妹ナナリーが眼の光と足の自由を失った事件。
そしてルルーシュとナナリーが日本に送られる経緯となった出来事。
これに関しては皇帝の親心もあったのかもしれない。
母無き子達の行く末を願って…
「死した後、彼女の精神はアーニャ・アームストロングの中に潜んでいた。」
V.Vか教団のギアス使いにでも精神操作を受けていたのだろう。
だが、マリアンヌはC.Cから受け取ったギアスで精神のみが生き残った。
その後、彼女は自分を手に掛けた存在に復讐する為に夢の実現の為に動き始めた。
既に彼女自身が怪異と化していたと気づきもせずに…
「…それにマリアンヌは既にマリアンヌではなくなっているわ。」
「どういう事だ?」
「この世界で感じた悪意の気配…あれはマリアンヌの皮を被ったエンデの意思でしょうね。」
「エンデ?」
「ある次元世界を支配している高次元生命体…御使いと同じくバアル化している。」
「それもルルーシュが正体を知っているのか?」
「彼は前世でエンデの一部に実際に立ち会っている。」
「!?」
「ある程度のキーワードを話せば察してくれるでしょう。」
ハスミは職員が入れてくれたお茶を一口飲んだ。
「クロウさん、本題に入ります。」
「確か、呼び寄せた本当の理由だったな?」
「はい、この政庁の地下にクロスゲートと呼ばれる次元転移門があります。」
「なっ!?」
これにはクロウも驚いていた。
事前に説明は受けているだろうが実物があるとすれば別問題である。
「アイムが解放したままの扉を通り…ユーサー皇子へ対話を行います。」
「交渉役に俺も出向けと?」
「その通りです。」
「…判った。」
クロウの即答に驚くハスミ。
「良いのですか?」
「四の五の言っている暇はねえんだろ?」
「…」
「行ってやるよ、聖インサラウム皇国にな?」
「ありがとうございます。」
対話は新たな共存共栄を齎すのか?
それとも…
=続=