幻影のエトランゼ   作:宵月颯

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拳よ届け。

愛する者へ。

本当の想いと共に。

そして、永き戦いは続く。


第百十七話 『死闘《シトウ》後編』

各エリアで起こした陽動作戦によって…

 

ミスルギ皇国の首都へ潜入する事に成功したエクスクロス、イグジスタンス、ZEXISの同盟部隊。

 

損傷もなく首都への侵攻が出来たのはほぼ確定事項である。

 

先行した陽動部隊の過剰戦力による陽動が効き過ぎているのも理由の一つであるが…

 

エンブリヲ自身が別の事に気を取られすぎたのも関わっている。

 

本当の意味で彼らを敵に回してはならないと認識していない為に…

 

 

*******

 

 

鬼の形相の同盟部隊がミスルギ皇国の残留部隊と交戦しアウラの奪還をしている頃。

 

エンブリヲは本拠地にて例の作業を継続していた。

 

 

~???・エンブリヲの居城~

 

 

異空間の海に佇む孤島。

 

一見してみれば只の島だろう。

 

だが、この島には別の名前があった。

 

その名はアルゼナル。

 

アンジュ達が拠点としていたオリジナルのアルゼナルである。

 

エンブリヲは前回の大災害の頃…

 

ある実験によってたった一人でこの島に辿り着いた。

 

最悪な事は続き、実験の最中に大災害の影響で自身の所属する世界と人類が滅んだ。

 

エンブリヲはこの実験を行った事で運良く生き延びたのだ。

 

更にエンブリヲは実験の影響で限定的な不老不死を会得。

 

そこから三千年後の現在までマナの国を含めたいくつかの実験場を造っては壊し続けた。

 

自身の認めた女性達と共に永遠に暮らす為のユートピアを目指す為に…

 

三千年と言う長い年月はエンブリヲの性根を捻じ曲げるには十分過ぎる時間だっただろう。

 

最も、これらもとある存在によって仕組まれた茶番劇であった事をエンブリヲが知る事もない。

 

 

「星座の加護を持つ者達…この姿は実に美しいな。」

 

 

DG細胞によって全身コーティング状態のハスミらの顔を輪郭に沿って撫でるエンブリヲ。

 

意識を失い、肉体を動かせない以上は相手のやりたい放題状態である。

 

 

「あの者の言う通りにスフィアを持つ者を核にしてみたが…中々の出力だな。」

 

 

エンブリヲは未だに彼女らの意識がない事をいい事に…

 

誰も聞いていないと踏んで真実を曝け出していた。

 

何故、アル・ワースの中でしか行動が出来なかったエンブリヲが外界へ干渉出来たのかを?

 

本来であれば、エンデの干渉でアル・ワース内でしか活動出来ない筈。

 

外界に干渉出来たと言う事は彼に対して次元力を有した協力者が居ると判断出来る。

 

その決定的な言葉がエンブリヲによって答えられた。

 

 

「あの者はナルーダの眼を盗んだと話していたが…仲間割れでもない。」

 

 

テオロ・オキハ。

 

あの者の介入によって私の夢は実現する。

 

だが、どうも腑に落ちない…

 

 

「その先の末路…」

 

エンブリヲが言いかけた時、自身の住まう居城に地響きが広がった。

 

 

「!?」

 

 

これに関してはエンブリヲも表情を歪ませた。

 

それは、この異空間に潜入した存在が出現したと言う合図でもあった。

 

 

「エンブリヲ様!」

「侵入者です!」

「…判った、騎士団も出撃を急いで欲しい。」

「ええ、お任せくださいな。」

 

 

エンブリヲの元へ駆けつけたヘルガーデン騎士団。

 

ターニャとイルマの発言。

 

二人の発言で冷静さを取り戻したエンブリヲ。

 

団長のマリリンに出撃を命じ、それに彼女も返答した。

 

 

~真・アルゼナル周辺~

 

 

アンジュとサラマンディーネの歌とアウラの力。

 

それに対して進むべき道を指し示したラーゼフォンの二人。

 

彼女らの歌と真の調律者の力によって…

 

無事に転移を終えた同盟部隊。

 

 

「…本当にアルゼナルとそっくりね。」

 

 

アンジュはエンブリヲに囚われた際にマナの国の真実を聞かされていた。

 

脱出後にアルゼナルの仲間達にも伝えたが…実際に見るとでは印象は違っていた。

 

異空間に一部の海辺を残して浮遊する浮遊島。

 

違う所と言えば、慣れ親しんだアルゼナルにエンブリヲの居城がある事だ。

 

 

「エンブリヲ!来てやったわよ!!」

 

 

声色でも怒っている様に聞こえるが、アンジュは冷静である。

 

搭乗したヴィルキスから居城に向かってアンジュは叫んだ。

 

 

「ようこそ、アンジュ…エクスクロスの諸君。」

 

 

エンブリヲのヒステリカを中心に出撃したヘルガーデン騎士団の面々。

 

 

「サリア、クリス、エルシャ…君達には失望したよ。」

「それはこっちの台詞よ。」

「…もう騙されない!」

「アンジュちゃんのお陰で私達も大事な事に気づけたから…」

 

 

一度、エンブリヲの元へ下った三人も大事な事に気づけたと話してエンブリヲに反論していた。

 

 

「エンブリヲ!スズネ先生達をどうした!?」

「返答次第じゃタダじゃ済まねえぞ…!」

「僕らもお前の行動にはウンザリしているんだ!」

 

 

仲間を奪われたイグジスタンスのヒビキとガドライト、バルビエル達の発言に他の男性陣も怒りを露わにしていた。

 

 

「君達に言われずとも会わせてあげよう…彼女達にね?」

「!?」

 

 

エンブリヲが指を鳴らすとアルゼナル全域が変化を始めた。

 

一見しても美しかった島が徐々に生物にも似た機械化が進み、要塞へと変貌したのだ。

 

 

「あれは!?」

「…間違いない、DG細胞だ。」

「ドモン…!」

「既に攫われた誰かがDGのコアにされている。」

 

 

DG細胞による変質を知るブリット、キョウスケ、アクセル達の発言。

 

DG細胞と最も関りを持つドモンが最悪の結果を告げた。

 

攫われた誰かがコアにされていると…

 

 

「流石は当事者の発言かな?」

 

 

エンブリヲはどこぞの誰かと似た様な発言をしドモンを煽った。

 

ヘイトを上げるのはお手の物かと言う位に…

 

 

「っ!」

「君の父上は素晴らしい研究を行ってくれた。」

「侮辱するな…父さんはこんな事の為に研究を行った訳じゃない!!」

「だが、結果的に戦乱を招く技術を生み出した。」

「…」

「そのお陰で私は理想郷を作り出す事に成功した…彼女達のお陰でね?」

 

 

エンブリヲが目配せすると変質したアルゼナルことデビルアルゼナルより出現するコアと化したDG。

 

かつての姿と異なりDGと言うには不明な姿へ変貌していた。

 

 

「あれって…!?」

「DGなのか?」

 

 

シンやカミーユの発言。

 

空白事件のデビルウルタリアや修羅の乱のランタオ島での事件で情報は入って来ていたが…

 

以前よりも姿が変質している以上は驚きの声を上げていた。

 

 

「エンブリヲ…!」

「紹介しよう、彼女達が新たなDGの女神だよ。」

 

 

ヒステリカでDGの元に移動するとDGはコックピット部分を開いた。

 

そこに収められていたのは…

 

 

「セツコ…?」

「…エルーナ様。」

「…!」

 

 

銀膜に包まれた三人の変わり果てた姿を目視し…

 

バルビエル、ダバラーンの混乱と無言のままのアウストラリス。

 

 

「…エンブリヲ、彼女達をコアにしたのか!?」

「その通りだよ、DGとスフィアを持つ彼女達との相性は実に良い。」

 

 

彼女達の扱いにユーサーが声を荒げた。

 

エンブリヲの発言通り、彼女達のスフィアは相性がいい。

 

互いの力を循環させ巡る流れ。

 

地の属性を持つスフィア同士故に次元力の発動も油断出来ない状況だった。

 

 

「他の者達もこの通りだ。」

 

 

エンブリヲは更なる状況を生み出した。

 

デビルアルゼナルから生み出された多種多様な機体。

 

解り易く言うのであればデストロイやサイコガンダムなど攫われた女性達が搭乗していた機体が出現したのだ。

 

 

 

「まさか…ステラ!?」

「し…n?」

「フォウなのか!?」

「か…」

 

 

DG細胞によって操られた上に戦う事を強要された彼女達。

 

この行動は同盟部隊のヘイトを上げるには十分な効力を発揮した。

 

 

「彼女達の憂いは彼女達自身で掃って貰おう。」

 

 

エンブリヲによって一方的に戦う事しか出来ない彼女達。

 

だが、同盟部隊は意を決して行動した。

 

答えはもう決まっていた…

 

 

「各機!彼女達を止めつつDGへと向かう!!」

 

 

コアを止めれば、周囲の機体も一時的に機能を失う。

 

何時ものパターンだが、救う為にも手段は選べない。

 

アウストラリスの指示の元、先に先行するイグジスタンス。

 

同時にエクスクロスら他の同盟部隊も続いた。

 

 

「おやおや、彼女達をその手に掛けるかな?」

「…」

「随分と君には安いのだな?」

「黙れ。」

「っ!」

「貴様の行動は目に余る。故に貴様の存在すら残さんぞ?」

「…」

 

 

エンブリヲはアウストラリスの発言と漏れ出ている闘気に恐怖した。

 

不死性を得ていても本能は理解している。

 

不死すらも覆す力を彼は持っていた。

 

その怒りが凄まじくこのままだと世界を崩壊させる勢いだろう。

 

 

「アウストラリス、こっちの戦いは俺らがやる。」

「ガイオウ…」

「テメェが本腰入れなかったら俺がテメェを殴っていた。」

「…頼むぞ。」

 

 

イグジスタンスの指揮はガイオウらが引き受けると答えた。

 

それはアウストラリスの後押しする為の発言。

 

そう…迷いを捨てた戦友の為に答えたのだ。

 

彼らは行動を開始しデビルアルゼナルへの攻撃を開始した。

 

 

「あれは…!?」

 

 

エンブリヲは同盟部隊に配置された翼の生えた機体を目視した。

 

 

「まさか、そんな筈は…」

 

 

言わずもがな、調律者と名乗っていた本人がまさか本当の調律者と遭遇するとは思いもしなかっただろう。

 

だが、エンブリヲも調律者と名乗った以上は引き下がれなかった。

 

 

「自らの役目を放棄した者が調律者の前に現れるとは?」

「そうだね、僕らは大事な人達の元で生きる為に調律者の役目を放棄した…でも!」

「!?」

「お前の様な調律者を放って置く訳にはいかない!」

 

 

ラーゼフォンのパイロットである神名綾人の叫び。

 

捻じ曲がった調律者を正す為に再び調律者として立ち上がった。

 

 

「貴方も世界の調律を捻じ曲げた…それは駄目。」

 

 

ベルゼフォンのパイロットの如月久遠も同意する。

 

共栄共存の道を歩む為に独裁の調律は不要だと答えた。

 

 

「その通りだよ?」

 

 

時を同じくして次元転移で現れた陽動部隊の面々。

 

 

「っ!?」

「どうも、自称調律者君?」

 

 

陽動部隊の一角である孫光龍の発言から始まり…

 

 

「貴様が配置した部隊は全て俺達が壊滅させた!」

「漁夫の利を得ようとした愚か者達も手出しは出来ないだろう。」

 

 

ダイマとルドの発言で陽動作戦で仕掛けてきた敵陣営を壊滅させたと告げた。

 

やりすぎ都市伝説級にやり過ぎだと思われるが、敵がぐうの音も出ない様に撤退させるには致し方ない。

 

そもそも仕掛けてきたエンブリヲや魔従教団にドアクダー軍団が悪いので情状酌量余地はないのだ。

 

 

「それに人の娘を破廉恥な姿で周囲に晒した君を……僕は許さないよ?」

 

 

何時もよりトーンを落とした低い声で話す光龍。

 

囚われたハスミを目視した結果である。

 

そもそも、空白事件で治療のためとはいえ全裸になった娘を見た本人が言える事でもないが…

 

 

「エンブリヲの奴、消し炭確定だな。」

「消し炭どころか塵芥でしょう。」

「…確かに。」

「父親と言うモノは何処までも娘には甘いものです。」

 

 

エンブリヲの末路が確定した瞬間をマサキとシュウは互いに愚痴っていた。

 

 

「…」

 

 

エンブリヲは理解した。

 

手を出した存在達のバックに付いている存在達が如何に凶悪な存在なのかを…

 

テオロの発言はこの事を指していた。

 

ハスミの予言は今まさにこの瞬間の事を告げていたのだ。

 

お前の退路は塞いだ。

 

逃げ場などない。

 

お前は犯した罪が逃げるお前の足枷となっているのだから…

 

 

「…(この私が恐怖しているのと言うのか?」

 

 

ぞくりと背筋が凍る。

 

目処前に現れた絶対的な戦力。

 

罠に嵌ったのはどちらなのか?

 

 

「…潮時ね。」

「マリリン?」

「もう少し粘ると思ったけど……もういいわ。」

「?」

「判らない?貴方の様な薄汚いジジイに従う義理はもうないって事。」

「!?」

 

 

ヘルガーデン騎士団の団長を任せたマリリンの裏切りとも言える発言。

 

マリリンのパールファングはターニャとイルマの搭乗するラグナメイルを戦闘不能に追いやっていた。

 

 

「貴方達も目が覚めたでしょ?」

「…」

「…」

「これで良かったのよ、碌でもない男の駒になる必要なんてないの。」

 

 

マリリンの発言で沈黙したターニャとイルマ。

 

エンブリヲの発言と行動で何か思う事があったのだろう。

 

何も言わず、マリリンの言葉に耳を傾けていた。

 

 

「マリリン、ご苦労だった。」

「いえ、ユーサー皇子…黒い燕ちゃんはこれ位出来ませんと?」

「だが、君も危険に晒した事は事実だ…許して欲しい。」

「…本物の皇子様は格が違いますこと。」

 

 

ユーサーの発言でマリリンはイグジスタンスが放った密偵だった事が判明。

 

同時にエンブリヲを使役するラグナメイル二機を沈黙させる手腕。

 

かつて『放火魔』と呼ばれた部隊の隊長である名残は消え失せていた。

 

 

「マリリン…」

「フラフラちゃん、さっさとお姉様と子猫ちゃんを助けに行きなさいよ。」

「言われずともな!」

「ほんと、可愛げないのは変わらずだけど……一皮剥けた事は認めてあげるわ。」

 

 

元部下だったクロウの尻を叩いたマリリン。

 

一皮剥けたのは彼女も一緒である。

 

 

「在り得ない…」

 

 

続々と離反と自身の陣営が崩壊する様を見せつけられたエンブリヲ。

 

同時に更なる崩壊が彼に降りかかった。

 

 

「考えが…甘かったようね。」

「…!?」

 

 

デビルアルゼナルの中心部。

 

その核であるDGの元で、意識を取り戻した彼女は告げた。

 

 

「…意識が戻ったのか?」

「私には一度、感染の経験がある……意識を取り戻すのに手間を取っただけよ。」

「っ!?」

 

 

コーティング部分が一部剥がれて意識を取り戻したハスミ。

 

これにはエンブリヲも顔を歪ませた。

 

 

「……罠に嵌ったのはお前だ!」

「ハスミ・クジョウ!」

「エクスクロス…!今の内に取り込まれた人達を!」

 

 

だが、異変に気が付いたデビルアルゼナルも再び洗脳する為にハスミへの感染を再開した。

 

それに気が付いたハスミも持ち前の精神で抗っていた。

 

 

「制、御権を…奪われ…る前…に早…く!!」

 

 

一時的に意識を取り戻したハスミ。

 

事前に対改造DG細胞の制御権を奪う手筈を仕込んでいたのだ。

 

これにより周囲の機体が一時停止。

 

ハスミは転移能力でコアにされていたエルーナとセツコを移動させ救助を優先。

 

この隙が出来た事で各自機体から囚われた女性を続々と解放して行った。

 

 

「こんな事が…!?」

「エンブリヲ、言った筈だ……予言の成就は、すぐ其処まで…来ているぞ!」

「くっ!」

 

 

今まで静観していたのはこの期を逃さない為。

 

ハスミは苦渋しつつも反逆の時を待っていたのだ。

 

 

「どうやら君達を甘く見ていた様だな…だが!」

「っ!?」

 

 

感染の速度が速まり、再び沈黙したハスミ。

 

同時に一時的に沈黙したデビルアルゼナルも再起動し攻撃を再開した。

 

 

「アンタだけは!!」

「アンジュ!」

「この女の敵が!」

 

 

ここでアンジュの名台詞とも言えるエンブリヲへの罵倒が開始した。

 

 

「何が愛よ! キモい髪型でニヤニヤしてて、服のセンスもなくていつも斜に構えてる、恥知らずのナルシスト!」

「そうよ!そうよ!」

「気色悪!」

「超が付く変態っ!!」

「サブイボもんでしょ!」

 

 

他女性陣からも同意のエールが叫ばれる。

 

 

「女の扱いも知らない、千年引きこもりの変態親父の遺伝子なんて生理的に絶対無理!」

「同感!うっわー引くーって叫ぶ!!」

「サイテー!!」

「キモイ!鳥肌立つ位にキモイ!!」

「絶対に結婚とかカップル成立に向かない!!」

「一生変態は治らないわね。」

「変態人生に生きてるって感じ?」

「いや、変態そのものでしょ?」

 

 

良識のある女性陣から追撃のエールが告げられた。

 

 

「ここで塵に還れぇぇぇぇぇッ!!」

「やっちまえ、アンジュ!!」

「俺らの分も頼む!!」

「消し炭にしちまえーっ!!」

 

 

女性陣を連れ去られた男性陣より殺って良しの攻撃と共に…

 

 

「私を抱こうなんて、一千万年早いわぁぁぁ――――ッ!!」

 

 

エンブリヲのヒステリカはヴィルキスのエネルギーソードで縦一閃からのディスコードフェイザーで絞められた。

 

同時に…

 

 

「お前にアンジュは渡さない!」

 

 

サラマンディーネより貸し与えられた刀でタスクはエンブリヲ本人白兵戦を繰り広げており…

 

タスクはエンブリヲを切り裂き貫いた。

 

これによりエンブリヲの不死性が失われた事で再生できない筈だったが…

 

 

「アンジュ、奴が!」

「あのデビルアルゼナルがエンブリヲを繋ぎ止めているのね!」

 

 

エンブリヲのヒステリカとエンブリヲ本人を同時に倒した筈のアンジュとタスク。

 

だが、デビルアルゼナルは破壊されたヒステリカと死体となったエンブリヲを取り込み再生し始めていたのだ。

 

そして、アウストラリスへ彼らは後押しをした。

 

 

「…」

「アウストラリス…トドメはお前に譲る。」

「良いのか?」

「ここはお前が行くべきだろう。」

「それは同意するわ、アンタも奴に殴り足りないでしょ?」

「アウストラリスさん、行ってください。」

「ドモン、アンジュ、タスク……済まぬ!!」

 

 

因縁の相手は因縁を持つ者にと予め決めていた。

 

だが、今回ばかりは譲って貰った。

 

お前に誓った誓いを果たそう。

 

 

「ハスミ、お前に伝えねばならない。」

 

 

蒼雷迅のコックピットから降りてデビルアルゼナルの足元に降り立った。

 

自殺行為に見えただろう…

 

だが、知る者は知っている。

 

彼が本来の姿で対峙する事を選んだのだと…

 

それは破界の王と同一の姿を晒した瞬間だった。

 

そして彼は告げた。

 

 

「ハスミ、あの日を事を覚えているか?」

「…」

「互いの背を守り合う戦友であり続けたいとお前は願った。」

「…」

「俺は違う…」

「…」

「お前と共に歩み続けてようやく理解した。」

「…」

「お前を手放したくないと…」

「…」

「改めて告げる。」

「…」

「俺はお前を……愛している。」

「…!」

「二度と離さん!ハスミ…お前は俺の唯一無二の存在だ!!」

「!?」

 

 

姿を晒した次元将ヴィルダークは己の次元力とスフィアの呼応させた。

 

その蹴撃は更なる力を得て…

 

目処前の悪魔を討ち滅ぼしたのだった。

 

 

「貴方が…助けに来てくれる事を信じていました。」

 

 

次元将ヴィルダークの姿を晒したアウストラリスことヴィルダーク。

 

それはある意味で新たな波乱を呼ぶかもしれない。

 

だが、その事に当人は気にも留めていなかったのである。

 

闘いに勝利したものの目処前の処理する案件の多さにハスミは静かに呟いた。

 

 

「帰って早々にやる事が多いですね…」

「致し方あるまい。」

 

 

闘いに勝利した者のけじめであるとヴィルダークが答えた。

 

 

「ヴィル…あの。」

「どうした?」

「…降ろして貰えませんか?」

 

 

ハスミは救出された後。

 

元の姿に戻ったヴィルダークによって姫抱きにされている状態だった。

 

ハスミ本人もいつまでも姫抱きにされているのは申し訳ないと答えたのだ。

 

 

「構わん、このままで居ろ。」

 

 

しかし、ヴィルダークはあっさりと拒否。

 

どうやら離す気はないらしい。

 

 

「二度と離さんと言った筈だ?」

「ヴィル…」

 

 

ハスミは無理であると悟り、諦めつつも何処か嬉しそうにヴィルダークに身を預けた。

 

そして彼の気持ちに応じた言葉を告げた。

 

 

「ヴィル、愛しています。」

「…俺もだ。」

 

 

二人が本当の意味で笑顔を取り戻した瞬間だった。

 

余談だが、このネタで暫く弄られるのは別の話である。

 

 

「…」

 

 

しかし、塵芥はしぶとい。

 

デビルアルゼナルは取り込んだヨカッタネを利用し再び再生しようしていた。

 

この様子にヴィルダークはある一計を告げた。

 

 

「皆の者………どうやらこの者は此方と闘い足りぬ様だが?」

 

 

デビルアルゼナルはエンブリヲと同化し彼の意思の元で稼働していた。

 

救うべき者達を救い出した後にする事と言えば…

 

 

「なら、再生が出来ねえ様に仕留めるだけだな?」

 

 

ヴィルダークの言葉にガイオウも同意する。

 

仲間を奪われた男性陣の機体の眼が赤いのは気にしない事。

 

最早、止める事はしなくていいだろう。

 

 

「永遠と再生するのなら再生を拒むまで破壊するだけだ…」

 

 

デビルアルゼナルと同化したエンブリヲはこの世で最も恐ろしい報復を受ける事となった。

 

同盟部隊による圧倒的な蹂躙。

 

再生させては破壊し再生させては破壊を延々と続くサドンデス戦闘が開幕した。

 

ちなみにエンブリヲの精神と魂が崩壊するまでそれは続いた。

 

この様子をこっそり見ていた存在達は戦慄し恐怖したとの事。

 

 

>>>>>>

 

 

この日を持ってエンブリヲは討ち取られた。

 

自称調律者の呆気ない最後と共に…

 

だが、エンデ復活の為の贄になったのは明白だった。

 

神聖ミスルギ皇国は使えるべき君主を失ったと思われたが…

 

アンジュの妹であるシルヴィアが国の崩壊、マナとノーマの関係性を説明。

 

これらは成るべくして起こったと…

 

勿論、反感もあったがドアクダー軍団や魔従教団と言う脅威を目処前にして何も成せない事は事実だ。

 

シルヴィアはアルゼナルの一行を…ノーマを認める事を民に進言した。

 

マナを失った自分達もいずれノーマと同じ存在になりつつあるのだから、いがみ合っても意味はない。

 

これから共存する為にも必要であると説いたのだった。

 

これは早期にエクスクロスと共に行動した事で国や自身の在り方を考えさせられたのだろう。

 

俗に言ういい薬である。

 

シルヴィアは皇女として国家復興とノーマやアウラの民達と交流する事が出来る国作りを行っていくと答えた。

 

アンジュもアルゼナルの代表となったのもあり、これからは姉妹で新たなマナの国を構築していく事になるだろう。

 

ちなみに神聖ミスルギ皇国に元の世界へ戻る条件下で従っていた勢力であるが…

 

イグジスタンスが責任を持って返すのでエンデ打倒に協力しろと説き伏せた。

 

ほぼ強制であるが、エンデの領域で制限なく転移能力を持っているのはイグジスタンスであるので理解して貰っている。

 

一部、離反者が出てしまったが…各勢力の代表らにより離反者は反逆者として倒しても構わないと方針を告げた。

 

この一勢力だったネオアトランティスはエンブリヲが倒された後、さっさと雲隠れし姿を見せてない。

 

拮抗する三大勢力の内、一角が崩れた事で更なる波乱を呼ぶと思われたが…

 

エクスクロスとイグジスタンス、先の勢力によるレコンギスタ同盟が一角として加わり戦況は戻りつつあった。

 

ホルトゥスは助っ人と共に連れ去らわれた女性達を引き連れて元の世界へ送還。

 

一部希望者はイグジスタンスを通して多元地球に居るZEXISへ送り届ける事となった。

 

そして最後の問題。

 

エンブリヲが倒された事で奴の恐怖を取り込みエンデは一時的な復活を遂げた。

 

これにより多元地球とアル・ワースを隔てる境界が崩壊。

 

正に世界同士が野ざらしにされてしまったのだった…

 

 

「良いもの見させて貰ったよ、もっとカオスになるのが楽しみだw」

 

 

異空間の歪で野ざらしにされた世界を閲覧する存在。

 

ナルーダ・タトーゲと同一の存在の一人。

 

緑のローブの存在こと、テオロ・オキハはケラケラと笑っていた。

 

 

「その方が僕的にお得だし。」

 

 

=続=





響いた永遠の歌。

不安定な世界は守られた。

だが、世界は思惑と共に歪みの果てで繋がった。


次回、幻影のエトランゼ・第百十八話『連界《レンカイ》』


早すぎる世界同士の遭遇。
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