幻影のエトランゼ   作:宵月颯

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妖しき言の葉は呪詛。

曖昧で不変でそしてその心に浸透する。

咲き開くは美しき睡蓮。

解放されしその力は■■■■■■。

物語は終焉となるか継続となるか。

誰にも分からない。


第六話 『闇歌《ヤミノウタ》』

前回、銀河から聞かされた噂の場所へ向かう前に基地へ戻ろうとしたドモンだったが…

 

今回の件に関係しているがまだ確定した訳ではなかったので単独で調査へ向かう事にしたのだ。

 

その移動中(GF式徒歩)に伊豆基地に居るレインを通して連絡をしたが、本人は音信不通だったのでメッセージに伝言を残して置く事にした。

 

旧東京エリアで不可思議な失踪事件が発生している、DGと関係があるかは不明だがそこを調べるとメッセージを残して。

 

ドモンは旧東京エリアへと向かった。

 

 

******

 

 

一方その頃。

 

 

「あの人、一人でここへ来るみたいね。」

 

 

ーハスミノウラナイアタッタネー

 

 

「占い、か…正直に言えば予言なのだけどね。」

 

 

ーソウナノ?ー

 

 

「未来を識ると言う点では同じものよ。」

 

 

ハスミはDGの傍でタロットカードを数枚めくりその結果を見ていた。

 

左から『星』、『運命の輪』、『月』のカードである。

 

順に過去、現在、未来を表しておりそれによって相手の運勢を占う。

 

複雑な方法もあるのだが判りにくいので今回は簡易的なものである。

 

カードの絵柄には正位置と逆位置が存在しそれも占いの結果に関係してくる。

 

壱番目は『星』の正位置で希望や願いが叶うを意味する。

 

弐番目の『運命の輪』が正位置の為、変化や定められた運命を意味する。

 

参番目の『月』は逆位置の為、徐々に好転するを意味する。

 

 

「これは願った事が叶えられたけど、いずれ変化が生じ…不安定な結末を迎えるが徐々に好転はすると言う意味なの。」

 

 

ーソレハダレノウンメイ?ー

 

 

「特定の相手に占った訳じゃないから誰になるかは分からないわ。」

 

 

ーソウナンダー

 

 

「それよりもここへドモン・カッシュが向かっているけど、準備はいいの?」

 

 

ーダイジョウブダヨー

 

 

「解ったわ。」

 

 

 

彼には旧東京エリアの地下迷宮で少しお手伝いをして貰いましょう。

 

いずれここへ現れる敵を退ける為にも必然を偶然と装わなければならない。

 

さてと、どう動こうかな。

 

この一帯にマシーンランドを建設される訳にはいかないしね。

 

ドモンさん、貴方には悪いが人暴れして貰うよ。

 

貴方を追って写し身の忍も現れるだろうし。

 

いずれ起こる災厄の一つを消す為にもやらなければならない。

 

脅威に成り得る敵の対処はDGにも受け入れて貰えた。

 

その為に貴方達を手に入れる。

 

それがDGの提案であり最も生存の確率を高める方法。

 

DGが私の持つ過去の記憶と知識を垣間見た結果、先の件を認める決を下した。

 

やはりDGはかなりのスピードで成長を続けている。

 

どうすればいいのか、自ら考え、提案し行動、そして結果を元に新たな方法を模索する。

 

人に近い考えを行える『超AI』だからこそ出来る思考だ。

 

だが、『超AI』も人の犠牲の上に成り立っている。

 

この『超AI』を完成させる為に人体実験まで行われしまっていた位だ。

 

私がこの世界に産まれる前に起こってしまった事件の為、防ぐ事は出来なかった。

 

『超AI』のプロトタイプの開発者は世界から非難され今も冷凍刑に処されている。

 

現在、軍で使用されているAI搭載のロボット達は一部の思考パターンを限定されたものである。

 

例外はブレイブポリスや勇者特急隊、GGGで活動中の『超AI』のロボット達だけだろう。

 

同じAIチップを使用している以上、『例の事件』に関わる危険性がある事を危惧したい。

 

それは笛吹男に導かれて地の底へ消えて行く子供達の行列の様に。

 

 

ーハスミ?ー

 

 

私はまた考えに耽ったらしい。

 

この癖は直さなければならないが、どうしても抜けないのだ。

 

 

「DG?」

 

 

ーマタ、カンガエゴト?ー

 

 

「ええ…」

 

 

ーシンパイ?ー

 

 

「それが起こるか起こらないかは今後次第だけどね。」

 

 

DGはシュルシュルと触手の一部の伸ばしてハスミの手に置いた。

 

生物の様に脈を打ち、それでいて鉄の様に冷たい感触が触れた部分から伝わった。

 

 

「大丈夫、心配しないで。」

 

 

悪い様にはならない、ただそれだけしか話せなかった。

 

貴方にとっても。

 

私にとっても。

 

それが最良なのだから。

 

 

♱ ♱ ♱ ♱ ♱ ♱

 

 

更に時間を遡る事、ドモンが星見町へ向かう前の事である。

 

伊豆基地内のATXチーム分隊室にて。

 

少佐達は上層部との対策会議、他は巡回などで出払っており、現在はキョウスケとアクセルの二名のみ残っている。

 

その為、記憶保持者達を集めて話し合いを進める事となったのだ。

 

 

「俺はヒューゴ・メディオ、キョウスケ達とは前の世界での仲間だった。」

「久しぶりだな、ヒューゴ。」

「ドモン、お前も記憶が戻っていたのか?」

「ああ、俺の他にもここに居る全員は差違はあるが過去の記憶を持っている。」

「差違か、俺はつい最近記憶が戻ったせいか少し違和感を感じるな。」

「暫くすれば馴染むだろう。」

 

 

今回、新たに前世の記憶を取り戻したヒューゴが仲間に加わった。

 

しかし、今回のDGの一件の間だけでありDGの事件が終息すれば再び別の任務に着任しなければならない。

 

そのヒューゴ自身も先のDGとの戦闘で負傷し戦闘に参加出来る状態ではなかった。

 

搭乗機を破壊されたのもあるが、隊長であるアルベロより絶対安静の命令を受けたのもある。

 

ちなみにヒューゴの記憶が戻ったのは先のDGとの戦闘が切っ掛けだったとの事。

 

一通りの自己紹介を終えた後、それぞれが持つ情報を纏めた。

 

ヒューゴからは遭遇したDGの件についてその時の状況を詳しく聞く事が出来た。

 

例のアインストが引き起こした事件を追っていた矢先の出来事だったらしく部隊全員が奇跡的に生き残れたのは偶然にも等しかった。

 

下手をすれば同僚のフォリアはDG細胞によって完全なゾンビ兵になっていたかもしれない。

 

だが、部隊が生き残れたものの結局フォリアにDG細胞が感染した事実は変わらなかった。

 

今回は状況が違い徐々に感染が進行するタイプだったので治療の見込みがある事が幸いだった。

 

しかし、その本人はDGの信号に引き寄せられ行方不明になってしまっている。

 

一刻も早くフォリアを取り戻したいとヒューゴは表情を陰らせていた。

 

次にアクセルからは先の戦闘で遭遇したアインストがエンドレスフロンティアと呼ばれる世界に現れた群れの集団だったと説明。

 

そしてそこに住まう住人を操っていた事もあると聞かされた。

 

幸いにもそれに抗った現地に生きる人々の手によって滅んだとの事だが、今回の転生の一件でリセットされている可能性を視野に入れるべきと危惧していた。

 

ジョウからは火星の一件についてである。

 

前と同じくハザードによって火星に点在していた連邦軍が壊滅し生き残りはマーズクレイドルに集結し今も攻防戦を続けている。

 

マーズクレイドルは地球のアースクレイドル、月のムーンクレイドルと並び人類が生き残る為の設備や戦力も配備されていた。

 

そしてマーズクレイドルに冷凍睡眠に入る予定の人々がまだ居なかった事もある。

 

その為、火星の避難民達の受け入れが可能だったのだ。

 

ちなみにハザードは『蒼い睡蓮』が派遣したエージェントによって謀殺された。

 

エージェント達が追撃をされた時に搭乗していた機体にどこか見覚えがあったそうだが完全に思い出せないとの事。

 

一言で言えばマジンカイザーの様な風貌だったそうだ。

 

その謎は後で考える事にした。

 

続けてはガトー少佐からの情報である。

 

やはりザビ家は木蓮の草壁とギガノス帝国のドルチェノフの秘密裏の結託によって暗殺されてしまっていた。

 

その場に偶然にも居合わせてしまったデラーズとシン・マツナガは生き残った幼いミネバとドズルの奥方、事実を知った将官、士官達と共に二人を逃がす為にこちらへ亡命したとの事だ。

 

その逃亡中に犠牲を払いつつも連邦軍内で彼らと和平を望む穏健派に救われたのだ。

 

彼らにその情報を託しミネバ達は地球のある場所に隠居されている。

 

ガトー自身はその時再会したコウとデラーズの指示、彼の意向を察した連邦軍のとある将官の伝手でトリントン基地所属とになったとの事だ。

 

それを聞いたこの場に居る全員が驚愕した事実である。

 

ちなみにこの情報は連邦軍上層部の穏健派のみが知る情報である。

 

そしてコウからは気になる事を耳にした。

 

地球の半数以上のコンピューターシェアを握っていた国際電脳の株価が一気に下落し、現在倒産の危機に陥っているとの事である。

 

逆にGreAT社とJUDAコーポレーションと呼ばれる二つの企業が新参として参入してきたのである。

 

前者は日用品からトイレまでが売りの複合企業、後者は大手医療器具メーカーであるが双方共に今までにない画期的な技術が売りで株価を伸ばしつつあるとの事だ。

 

イスルギ重工がGreAT社かJUDAコーポレーションとの合併を企てていたがあっさりと双方から却下されたそうだ。

 

この情報はコウ自身がアムロ・レイと並ぶ機械工学への思慮深さとそれに先進的な企業を調査した結果である。

 

ジョウがJUDAコーポレーションに関してどこか聞き覚えがあると話したが思い出そうとすると先のマジンカイザーもどきと同様に靄がかかった様に頭痛を引き起こしていた。

 

これはジョウの記憶にある『虚億』もしくは『実億』の中に彼らと何らかの関わりを持っていた可能性があるとキョウスケ達は推測した。

 

しかし思い出そうとすると頭痛がすると言う事はその記憶に何らかの枷が掛かっている可能性があり、それが何者かの意思かは不明だが強大な力が関わっている事は確かだろう。

 

現に自分達の様に転生を果たした人間がこうも都合よく記憶を持ち、なおかつこうして集結する事はほぼ奇跡としか言えない程に都合が良過ぎる。

 

そして『蒼い睡蓮』の予言。

 

この予言によってこの時期に発生する戦闘や戦死者の数が前回の記憶よりも激減していた。

 

少なからず地下勢力などの侵略者、異星人やジオンなどの敵勢力からの襲撃はあるものの被害状況はどこも最小限にとどめられている。

 

『蒼い睡蓮』とは何者なのか?

 

何故こうもこちら側に介入しているのだろうか?

 

その行動は壊滅を滅亡させ、その言葉は悲報を滅亡させている。

 

『蒼い睡蓮』は災厄を滅亡させる為の意味だとしたら?

 

その行動からキョウスケの導き出した『答え』は確実なものでもないので自分自身に留めておいた。

 

隣にいたアクセルもまたキョウスケの考えを察したものの同じ様に口を噤んだ。

 

最後にキョウスケは改めてアインストの一件と同僚で部下のハスミがDG細胞に侵されて、失踪している事を話した。

 

そしてとんでもない爆弾発言を投下した。

 

 

「本人は隠しているのか自覚がないのか判らんがハスミの操縦技術は旧戦技教導隊と同等の技術力を持っている。」

 

 

「「「「「!?」」」」」

 

 

ジョウを始めとしたその場に居たメンバーが声を荒げた。

 

 

「ハスミのシミュレーション訓練結果のログを調べていたがあれはもう化け物じみている。」

「そのシミュレーションの相手は?」

「どうやって組んだのか知らんがゼンガー隊長ら旧戦技教導隊全員と対峙した戦闘シミュレーションをやっていた。」

「おい、そいつはどういうことだ?」

「ジョウ、お前は知らないと思うが隊長達はかつてPTやAM、MSの基礎OSを手掛けていた。」

「基礎OSってたしか…」

「俺が説明するよ。」

 

 

助け船としてコウが基礎OSについて説明。

 

 

「そう言う訳で現時点で稼働している多くのMSやPTの初期OSはそのデータを一般兵用に最適化して転用されているんだ。」

「て、事は…!?」

「隊長達は人知れず、とんでもない人材を生み出していたと言う事だ。」

「キョウスケ、前から聞こうと思っていたがハスミ・クジョウは一体何者だ?」

「彼女は基礎OSの開発者であるカーウァイ・ラウ大佐の養女だった。」

「ナンブ少尉、彼女の義父はテンペスト少佐だと聞いていたが?」

「カーウァイ大佐はハスミの二人目の義父、テンペスト少佐は三人目になる。」

「どういう事だ?」

「そうか、カーウァイ大佐は数年前のエアロゲイター襲撃で…」

「期間は短いとは言え、ハスミはあの旧戦技教導隊と共に過ごしていた。」

「成程な、知らずがどうか分からんが操縦技術を身に着けていたのなら化け物並みにもなるか…これがな。」

「…」

「キョウスケ少尉、もしかして…まだあるとか?」

「少佐達の悪ふざけなのかその仕込みのせいで銃器の扱いからハッキング、白兵戦闘までこなせる。」

 

 

その発言を聞いたキョウスケを除く全員の表情が青ざめた。

 

 

「最近は独学で爆薬と罠の仕掛け方法を学んでいたな。」

「…更に悪くなっているのは気のせいか?」

「いや、後者は以前の甲児達の悪ふざけ防止に役立っていた。」

「悪ふざけ?」

「…覗きだ。」

「記憶が戻ってないにしろ相変わらずですね、彼らも。」

「今の所、記憶は蘇る傾向は見えていない。」

「アイツらも『虚億』と『実億』を封じられているのか?」

「それは解らん、可能性としてはあり得ると思う。」

「そう言えばリュウセイは?」

「リュウセイにはイングラム少佐の監視を避ける為に別行動を取って貰っている。」

「…この世界の少佐も奴らに操られているままなんですね。」

「少佐の背後関係に居る存在がレビかユーゼスが分からない以上、下手な行動はとれない。」

 

リュウセイの情報が確かなら二つの『実億』に残る記憶ではホワイトスターの黒幕は二人いると話していた。

 

それがレビ・トーラーとユーゼス・ゴッツォである。

 

この世界での黒幕がどちらであるか現状では不明。

 

レビに関してはマイの事があるのでリュウセイに任せる事にした。

 

 

「あの『蒼い睡蓮』なら何か情報を掴んでいるって事はないですよね?」

「そこまで都合よく情報を持っているとは限らないと思うが…」

「それに遭遇する確率すらない相手にどうやって接触すればいい?」

「ですよね。」

「そろそろ時間か…」

「ドモン、どうしたんだ?」

「悪いが一旦抜けさせてもらう。」

「何処へ行く気だ?」

「知り合いを待たせているんでな、星見町へ行ってくる。」

「星見町!?」

 

 

ドモンの語った場所に覚えのあるヒューゴは声を上げてしまった。

 

 

「ドモン、まさかと思うが銀河達も?」

「確認は取れている。」

「ロムに続いて銀河達もか…」

「ヒューゴ、何か知っているのか?」

「前の世界で一緒に戦った仲間達の事だ、その仲間がその町に居る。」

「仲間か、どんな奴らだ?」

「まだ小学生さ、ドモンが会いに行く仲間は」

「子供か…勝平達と仲良く出来るといいね。」

「前の時といい、この部隊はどうしてこうも子供が参加する確率が高いのか…」

「状況は人それぞれだけど…彼らは軍に従っていた訳じゃなくて自分の意思で戦っていた、それだけは確かだよ。」

「…そうだったな。」

 

 

ガトーは前の記憶でもこの独立機動部隊に参加する者の大半が未成年の子供であった事を思い出し、眉間に皺を寄せていた。

 

コウもまたそれにフォローを入れ一度は抑えたが濁す様に発言をした。

 

 

「ただ、今回だけはちょっと複雑になっているのは俺にも解る。」

「何があった?」

「アムロ大尉やクワトロ大尉の話ではそう言った関わり持つ子供達を国連事務総長の指揮下にあるGGG…いや、地球防衛軍に集結する様に仕向けている存在が居るとだけ聞いた事がある。」

「その存在は一体?」

「それも『蒼い睡蓮』の仕業じゃないかって大尉達も話していた。」

「あの『蒼い睡蓮』か…こちらでも噂は耳にしている。」

「やっぱり、そっちでも噂になっていたんだ。」

「こちらと変わらんと思う、経歴、所属、その他諸々が素性不明の情報屋とだけな…」

「それと?」

 

 

「「正体を知ろうとした者は必ず『滅亡』する。」」

 

 

「その手口は様々だが、知っている中で最も凶悪なのが…」

「権力主義者達が起こした社会復帰ゼロに等しい汚職事件、天下り事件、隠ぺい事件の露見だね。」

「実に鮮やかな手腕だったと閣下も感心していた。」

「普通に感心してくれる人がいるだけ羨ましいよ。」

「…何があった?」

「大尉達、その事件を知った後…かなり共感し過ぎてあの世にも恐ろしい黒い眼差ししていたのを俺は見たんだよ。」

「私は何を言わんぞ。」

「うん、何も言わない方が良い…後が怖いから。」

 

 

コウは『蒼い睡蓮』の起こした露見事件の一件でアムロとクワトロの両名の腹黒い一面を目の当たりにしてしまった事をガトーに漏らした。

 

そのガトーも知らぬが仏と言うスタンスでスルーを決め込んだ。

 

上記の事で察して頂く様に二人も『記憶持ち』である。

 

何処までの記憶を持つがは語られていないが腹黒い一面を見せると言う状況に陥っているのでかなりの精神年齢となっている筈である。

 

 

「互いに盛り上がっている所で悪いが話を戻すぞ?」

 

 

会話の最中にドモンはその場を離れ、残った六名で話し合いを続けた。

 

 

「俺が言いたいのはDGがもしもハスミ達の持つ技術力などを吸収しているのなら油断は出来ないと言う事だ。」

「腐っても囚われた連中は最前線で戦う兵士、その能力も様々だ。」

「それにハスミはT-LINKシステムへの適性を少なからず持っている…俺はそれも危惧している。」

「彼女は適正検査でも最低位置の筈、余り気にし過ぎじゃ…」

「本当に最低位置だったらな…」

「どういう事だ?」

「アイツは何かしらの戦いや事件が起きる前に必ず予言の様に何かがおかしいと呟く事があった。」

「偶然では?」

「それはない、クスハ達も戦いに参加する前はそのおかげで事故や不測の事態から逃れられたと話している。」

「それじゃあ彼女はこうなる事を知っていたとでも?」

「俺達と同じ『記憶』を持つ者であれば…話は別だ。」

 

 

キョウスケはハスミもまた『記憶』を持つ者である可能性を語った。

 

 

♱ ♱ ♱ ♱ ♱ ♱

 

 

更に別の場所において。

 

某高層ビルの最上階にて社長室と思われる場所で専用のデスクからモニターを見る白人の男性。

 

そしてモニターには同じく社長室の様な場所で通信を送る黒髪の男性が対話をしていた。

 

 

 

「久しぶりだね。」

「お互いに。」

「まあ、そう敵視しないで頂きたい…私も『蒼い睡蓮』によって救われた身なのでね。」

「貴方もですか…同じ同志と言うのなら仕方ありませんか。」

「ですが、これだけは言わせて頂きたい。」

 

 

自分はもうあの様な過ちを犯す者になる事は無い。

 

今は共に歩む仲間もいるのだからと白人の男性は答えた。

 

 

「…そうですか。」

「身の潔白は今後の行動で示すとします。」

「信じますよ、仲間を騙し偽る様な事をしていた私が言うのも何ですけどね。」

「ははっ、こう言う業務を行っていると腹の探り合いもまた必要と思いますけどね。」

「言えますな。」

 

 

淡々と世話話を続けた二人は話の本題を持ち出した。

 

 

「『蒼い睡蓮』から君と私で『悪魔』に忍び寄る『害虫』の駆除を依頼された。」

「知っているよ、数日前に『蒼い睡蓮』から連絡は貰っている。」

「そうか…依頼にあった『悪魔』は厄介な相手でもあるが君と同じく助けるべき相手でもある。」

「一方的な迫害、理不尽な過去を持つのか…あの『悪魔』も?」

「そうらしいね、だからこそ『蒼い睡蓮』も動きを見せたのだろう。」

「確か『巫女(メディウム)』が『悪魔』に張り付いているらしいね?」

「そうらしいが彼女も『悪魔』の洗礼を受けて居る以上、時間の猶予はないよ。」

「なら、早々に出た方が良いね。」

「現地集合で宜しいか?」

「そうさせて貰うよ。」

「では、『大統領』。」

「ええ、『将軍』。」

 

 

互いに通信を切った後、社長室を後にした。

 

 

******

 

 

時間は進みドモンが銀河と別れた後、旧東京エリアに到着した。

 

 

「…紋章が疼いている。」

 

 

ドモンの手の甲に刻まれたシャッフルの紋章が警告する様に輝きを放っていた。

 

 

「解っている、ここに居るんだろう?」

 

 

それを抑え込む様にドモンは紋章に手を置いた。

 

 

「やはり、繰り返すしかないのですか…師匠?」

 

 

ドモンは消え入りそうな声で呟いた後、廃墟へと侵入した。

 

その後、旧東京エリアから様々なチャンネル、ネットを介して何かの動画が流れていた。

 

それは美しくも切ない音楽と共に影絵の少女が歌っている姿だったそうだ。

 

 

=続=




語られるは駄文の如き裏の話。

彼らは何処から来たのか?

それを知るにはまだ早いのか?

ここは庭園で起こった一時の出来事。

次回、幻影のエトランゼ・第六.五話『影話《カゲバナシ》』

蒼い睡蓮と悪魔の密会は波乱を極める。



「コックさん、一番安いランチと調味料ありったけ。」
「おやおや新郎君、ここは社員専用の無料の食堂だよ?」
「…」
「君も私の会社の社員なのだから遠慮しないで、ね?」
「あーそうですか。」
「君って本当にマイペースだね。」



<今回の登場人物>


≪???≫

※大統領
ホルトゥスのエージェント。
某企業の社長でかつて大罪を犯したらしい。

※将軍
ホルトゥスのエージェント。
某企業の社長、結構腹黒いらしい。

※巫女
ホルトゥスのエージェント。
所載は不明。

※新郎
ホルトゥスのエージェント。
現在は将軍が経営する企業の社員として雇われている。


<クライ・ウルブズ>

※ヒューゴ・メディオ
新たな記憶所持者。
現在はDGとの戦闘で負傷中の為、戦線から退いている。


<アーガマ隊>

※アムロ・レイ
記憶所持者。
二つ名の「白い悪魔」は健在。
膨大な記憶を所持している為、かなり腹黒くなっているらしい。

※クワトロ・バジーナ
記憶所持者。
アムロ同様にかなり腹黒くなっているらしい。

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