幻影のエトランゼ   作:宵月颯

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与えられた一時の休暇。

語られるのは過去の記憶。

ただ話したかっただけなのかもしれない。


※少ないですが、アンケート結果の水着シーンも含みます。


第百二十一話 『夏語《ナツカタリ》』

 

メメントモリにおけるレーザー照射問題。

 

軌道エレベーターで起こったクーデターを皮切りに連邦軍内でアロウズのやり方に反発する軍人が増え始めた。

 

世界を守る為に暴挙の力で押さえつけても何も意味を成さない。

 

特にイノベイトの情報が公に明るみとなってからアロウズの存在に陰りが見え始めた。

 

歪みの根源であり、怒りの矛先が変わった為に…

 

 

******

 

 

メメントモリ騒動から一週間後…

 

 

~リモネシア共和国・政庁~

 

 

メメントモリでの一件が片付いた後。

 

経過報告の為に全員が集結し話し合いが行われた。

 

その中でハスミら三人はアウストラリスから突如休暇を告げられたのである。

 

 

「エルーナ、セツコ、ハスミ、お前達は休暇を取れ。」

「どういう風の吹き回しだい?」

「ですよね?」

「アウストラリス、メメントモリの一件が片付いてもまだ問題が…」

 

 

順にエルーナ、セツコ、ハスミの疑問に対してアウストラリスはため息交じりで答えた。

 

 

「お前達…定期検査を受けていないだろう?」

 

 

定期検査の言葉に三人は黙った。

 

 

「「「…」」」

 

 

デビルアルゼナルの一件でDGのコアにされていた三人。

 

期間が短いとは言え、何かしらの変化があっても不思議ではない。

 

理由の一つとして彼女達に感染したDG細胞が彼女達の持つスフィアを通して次元力に触れている点。

 

その影響も考えて定期検査が設けられていた。

 

ここ最近は立て続けに起こった案件で右往左往していた為に定期検査を受けていない。

 

その為の強制命令らしい。

 

 

「あ…そう言えば。」

「受けてないです。」

「失念してました。」

 

 

エルーナに関してはサボり、セツコとハスミは別件の仕事を処理していたので受けられていなかった。

 

 

「今後の戦いに支障が出ても意味がない…アル・ワースへ向かい、定期検査を受けてこい。」

「へーい。」

「判りました。」

「了解しました。」

 

 

こんな流れで定期検査を兼ねた強制休暇を取らされた訳である。

 

それから数時間後の事…

 

 

~アル・ワース内、旧ミスルギ皇国~

 

 

デビルアルゼナル事件後、崩壊した国家は多くの難民で溢れていた。

 

事後処理としてシルヴィア皇女とアルゼナルのアンジュ司令官を筆頭にある程度の生活が行えるまで安定していた。

 

マナの力を失った反動で暴動が起きそうになってもエクスクロスや協力者達が圧を掛けているので少なからず起きる気力もないそうだ。

 

目処前の絶望にマナの力を失った後に対してどうするか?

 

それがマナの国…旧ミスルギ皇国の人々の今後の問題だろう。

 

今だ、ドアクダー軍団や魔従教団に反乱軍の一件が片付いた訳ではない。

 

解決すべき課題は残っているのだ。

 

 

「定期検査は兎も角、休んでいる暇はないのですがね。」

「休むに休めない…落ち着かない。」

 

 

旧ミスルギ皇国の一角に建設途中であるが、新たなアルゼナルが建設されている。

 

戦いが終わった訳ではないが、後の彼女達の安住の地が生まれつつあった。

 

現在進行形でハスミ達は定期検査をそこで受けている。

 

デビルアルゼナル跡地が近いのもあるが、エンブリヲの残した施設を検査の為に再利用。

 

猶、検査を受けて安全が確認された女性達は…

 

順にセフィーロ王国とインサラウム皇国で療養後に各自元の世界へ帰還している。

 

その女性達もほとんど残っていないのでハスミらは定期検査の順番待ちをする事はなく検査結果待ちをしていた。

 

 

「二人共、適度に休まないと潰れるよ?」

「したいのは山々だけど…」

「…どうも抜けなくて。」

「全く、野郎共が頼りにならないと…こうなるか。」

 

 

エルーナに心配されるが、ワーカホリックが抜けないハスミとセツコには少し無理がある。

 

信頼はしているが、何処か抜けている男性陣の事を心配しての発言だった。

 

 

「所で、どうして私達が水着に?」

 

 

セツコの質問にハスミが答えた。

 

 

「エンデを倒して平穏が戻ったらアンジュ達がここに店を開く予定、この水着も商品らしいわ。」

「その一環って訳ね?」

 

 

用意されたの水着は多種多様だが、選んだのは全員ビキニ。

 

エルーナは白系で金の金具がアクセントになったもの。

 

セツコはピンクと紫系で控えめのリボンとフリルでフェミニンをイメージしている。

 

ハスミは青と黒系で腰に薄水色のパレオを巻いている。

 

爆盛と特盛&特盛の為に一部アルゼナルの女性達から羨望の眼差しを受けていた。

 

見事なまでにスイカとメロンがたゆんとしている。

 

 

「…(うーん、ちょっと視線が痛いがこれに関しては体質だからゴメンね。」

 

 

納得したセツコにビールを飲むエルーナ。

 

 

「ま、お陰でビールも飲めるし最高だよ。」

「所でアンジュ達は?」

「エクスクロスと行動中。ここに残っているのはアルゼナルの非戦闘員や防衛に残された中隊だけよ。」

「確かに全員でエクスクロスにお邪魔する訳にはいかないものね。」

「あの子らを残してアンジュ達もエクスクロスと一緒にドンパチの最中って訳か…」

 

 

今回は救えた命が多い分、アルゼナルには幼い子達の賑わう声が多い。

 

今日も勉強を終えると監視役の女性達と共に海に出ている様だ。

 

 

「それに…余計な事をしそうな輩が居るみたいだから、護衛は付けて置いたわ。」

 

 

ハスミの言葉を察するに下種な考えに至る旧ミスルギ皇国の住民も少なからずいる。

 

マナの力を失っても体格差で何とやらだが…

 

それに対して、ハスミが冷徹な眼で近づきつつある下種に対して報復を行った。

 

ハスミが指を鳴らすと潜んでいた部下達が行動を開始。

 

所々から悲鳴が響き渡った。

 

 

「ウチの戦闘員を舐めて貰っては困る。」

 

 

無事、御縄に就いた下種な考えを起こした輩共。

 

アルゼナルを通してシルヴィア皇女に通達が行われるので後々に処罰が行われるだろう。

 

 

「皆、ご苦労様。」

 

 

護衛として控えていたアルシャト隊のエクスキューナー達。

 

潜んでいた曲者を縛り上げてハスミの前に引っ立てた。

 

 

「この阿保共、派手に爆殺させなくていいのか?」

「イーコス、そこまでやると人道的に引っかかるから却下で。」

「へいへい。」

 

 

エクスキューナーの一人、イーコスに指示を出したハスミ。

 

一部で騒いでいる馬鹿が居るが、全員の圧でビビりを通り起こして失神しているので気にしていない。

 

 

「なら、全身の毛毟ってやろうぜ?」

「その位は許す。」

「うし!」

「駄目だって!?」

 

 

クティノスの判断にさり気無く許可を出すハスミであったが、可哀そうと言うフォティゾの言葉もあり止めた。

 

 

「全員、さっきの阿保共を引き渡したら監視に戻って頂戴。」

「御意。」

 

 

ハスミは次の指示を彼らに伝えると休憩へと戻った。

 

先程の様子を見ていたエルーナ達から質問を投げられた。

 

 

「随分と癖のある連中だね?」

「知り合いの人格をベースにしているので各自の個が強いんです。」

「知り合い?」

「…それも、もう会えない人達のよ。」

「そう。」

 

 

ハスミの言葉にセツコは理解し納得した。

 

会えないと言う事は既に亡くなっている人物達の人格をベースにしたのだろうと…

 

 

「アウストラリスの所に居るティグリスも彼が信頼を置いた知り合いの人格をベースにしているわ。」

「なら、ティグリスの人格のモデルになった人も?」

「うん、二度と会う事は出来ない人。」

 

 

生きている間は二度と会う事も叶わない。

 

解ってはいたが、どこか寂しいと思う。

 

だからこそ彼らの意思を人形に写して傍に置きたかったのかもしれない。

 

 

「そう言えば、ハスミ…アウストラリスと何処で知り合ったの?」

「アタシもそれが気になってた。」

「話すと長くなるんですけど…」

 

 

ハスミはアウストラリスと出会う経緯となった出来事を話し始めた。

 

 

「彼と出会う事になったのはアシュラヤー・ガンエデンの継承を受けた直後…継承の儀を終えた時だった。」

 

 

当時の私は十も満たない幼子。

 

母が御使いの手によって亡くなり、次代のガンエデンとして継承の儀を受けていた。

 

その継承の儀を終えた直後にあの異空間に飛ばされた。

 

 

「異空間に?」

「それが何なのかは今でも判らない、でも…そこで御使いに敗れてボロボロになったアウストラリスと出会ったの。」

 

 

その異空間で別の道を歩もうとしたアウストラリス。

 

結果的に仲間を失い、失意のどん底に陥っていた。

 

それでも決して諦めない意思を示していた。

 

 

「当時の私は何時か出遭う事があるなら力になりたいとアウストラリスに告げた。」

「…」

 

 

小さな女の子の言葉に何処までの信憑性があるかは理解されないだろう。

 

彼自身は私が纏っていた気配で何となく察していたらしい。

 

いつの日か戦場に立つ位に化けるだろうと…

 

 

「それがハスミとの出会いだったって訳か…」

「元々、私も御使い打倒の意思を見せていたし共感?されたと思う。」

「でも、それだと年齢が合っていないんじゃ?」

「それは…次に彼と再会したのは空白事件で一度目のEFに飛ばされた頃だったの。」

 

 

恐らくアカシックレコードの采配や無限力の陰謀も絡んで時差が出たのだろう。

 

 

 

「セフィーロでの厄介事を片付けた後だったし戦う事は出来たから…」

「あーそれがハスミ無双の始まりかい。」

「エルーナさん、鍛錬は大事です。」

 

 

魔神同様に念神も自分が強くならないと乗りこなせないので。

 

 

「完全に合流を果たしたのは修羅の乱、ソーディアンの調査に赴いた時です。」

「確か、アウストラリスもガドライトの出身惑星の制圧した頃から姿を消していたね?」

「そこから封印戦争と今に至るまで行動を共にしていました。」

「それはサイデリアルとして?」

「…結果的にはそうなるかな。」

 

 

自ら決闘を申し込み敗北し…

 

結果的にサイデリアルとして彼らに手助けをしたのは事実だ。

 

 

「所で…何で引き分けになったのに負けたって言ったのさ?」

「それは私が彼にトドメをさせなかったから…」

「えっ?」

「好きと言う感情が勝って手を鈍らせてしまった。」

 

 

自ら決闘を申し込んで置いて別の感情を戦いに持ち込んでしまった。

 

真剣勝負にそれはご法度だ。

 

だからこそ敗北したと答えた。

 

 

「ハスミ…」

「セツコ、あの時の私が未熟であったのは本当よ。」

 

 

ちゃんと勝負をして勝敗を決めてあの人の背を守ると誓いたかった。

 

私が愛していると言う感情を見せなければ彼の弱さにならなかったのに。

 

 

「私の想いは彼の弱点を生み出してしまった。」

「それ、後悔しているのかい?」

「今はないです、私が彼を愛していると言う感情は確かです。」

「一途だねぇ?」

「フフッ。」

 

 

エルーナさんとセツコ、判っていましたがニヤニヤしないでください。

 

恥ずかしいので。

 

 

「話の最中の所で悪いけどいいかな?」

「キョウジさん、例の検査結果ですか?」

「…エルーナルーナとセツコの二人には異常はなかった。」

「…」

「理由を話して貰えるかな?」

 

 

検査結果を携えて現れたキョウジ。

 

ドモンとシュバルツの二人はデビルアルゼナル跡地の監視で不在。

 

検査結果を伝えに来た所、エルーナさんとセツコには異常は見られないと告げる。

 

私を覗いては…

 

 

「当事者には話す必要がありますものね。」

 

 

ハスミは封印戦争後に別の並行世界に飛ばされた時の出来事を告げた。

 

敵対勢力によって強制的に眷属化させるウイルスを受けてしまった。

 

だが、体内に残っていたDG細胞によって防がれた。

 

その影響で眷属化ウイルスは不安定になった。

 

紆余曲折、眷属化ウイルスを放った親玉を倒して解毒に成功。

 

体内のDG細胞は共存共栄の道を選んで時折話をする仲になっていたと話した。

 

 

「君の中に居るDG細胞は自我を持っていると?」

「ほぼ幼い子と同じ思考ですが、善悪の区別はついています。」

「そうか…だが、君の中のソレはDG細胞と言うよりは別の形に変異していると思う。」

「変異ですか?」

「次元力の影響を受けたDG細胞…通称Dセルと呼ぶ事にする。」

「…」

「君の身体組織は人と何ら変わりもないし、そのDセルは本当に必要な時だけ出て来るみたいだね。」

「そう、ですか。」

「シュバルツやロサの様な一例のあるし…様子見でいいと私は思っている。」

「えっ?」

「排除すべきだと言うと思ったかな?」

「覚悟はしていましたけど…」

「ただ異物として消すのではなく対話も必要だと君に気づかされたからね。」

 

 

まあ、対話が可能な相手限定ですけどね。

 

 

「Dセル自体、君と同居している隣人の様なものだし敵意はないのだろう?」

「そうですね。」

「なら、Dセルに関しては私達は一切の介入はしないよ。」

「ありがとうございます。」

 

 

正直、気が楽になった。

 

色々とありすぎて溜め込み過ぎていたのかもしれない。

 

話す事で心が軽くなると言うが…本当である。

 

 

「じゃ、検査も終わったし!」

「泳ぎに行きましょう!」

「ちょ、ちょっと二人共…!?」

 

 

ハスミはエルーナとセツコに引っ張られて浜辺に移動していった。

 

ただ一人、残されたキョウジは彼女達の居た席に検査結果の入った封筒をテーブルに置き重石を置いてその場を去って行った。

 

 

「ハスミ君、君の説教で私達も助けられたんだよ。」

 

 

キョウジは正体を明かした後のハスミに時々会う事があり説教を受けていた。

 

 

「…」

 

 

実の弟に兄弟殺しの汚名を着させて何が世界平和!?

 

一番悲しいのは実の師匠と兄二人を自分の手で失ったドモンでしょ!?

 

それも主犯に踊らされての行為で…あの後、どれだけ苦しんだと思っているの?

 

ドモン自身がDG細胞で変異したゴッドガンダムで暴走する位に精神を病んだんだぞ!?

 

そんな事も予測出来ないのは……兄失格でしょ!!

 

それ以前にアンタら家族はコミュニケーション不足!!

 

ちゃんと家族会議でも何でも話し合う機会を増やしなさい!!

 

 

「…(正直、アレは怖かった。」

 

 

ハスミの正論と毒舌混じりで身震いしたキョウジだった。

 

 

=続=






配役は入れ替わり。

救うべき人を救う為に。


次回、幻影のエトランゼ・第百二十二話『紡想《ツムグオモイ》』


彼女は想いを込めて翼となる。
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