声は伝えなければ届かない。
想いと真実もまた…
前回、イグジスタンスの使者としてエクスクロスと合流したハスミ。
現在はアシュラヤー・ガンエデンの神僕たるショメルの部隊が護衛に付いている。
本来は対バアル戦の場合のみ行使される力。
それを出撃させた事はエンデがバアルの一部であり…
人類が倒すべき存在へと切り替わった瞬間でもある。
アル・ワースを創造した創造神。
その真実が跡形もなく晒された事で崇拝者達は一気に絶望に陥った。
だが、前へ進む為にも他者の作り出した泥濘に浸かっている場合ではない。
自らが立ち上がり他者と共に進む事こそが、人類が必要とする決意なのだと…
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イグジスタンスが指定した時間まで所定の場所で待機をするエクスクロス。
その間、ハスミは思念でショメル達に周囲の警戒と護衛の継続を命じていた。
「…(守る為とは言え、数多くのすれ違いをしてしまった。」
ハスミは一人静かに思う。
それは自分が大切な人達を護る為に必要な代償。
例え、分かり合えずに後ろ指を刺されようとも決めた事。
いざ、全てを語り終えると肩の荷が下りたよりも脱力感の方が大きかった。
自分でも気づいていて、気付かないふりをし続けたのもある。
「…(この様子にアウストラリスは察してしただろうな。」
ハスミの脳裏にアウストラリスの言葉が脳内変換される。
『俺が言えた義理ではないが、一人で何でも背負い込む癖は止めて置け。』
『ハスミ…お前自身はお前の為にある。過剰な他者への慈悲は時に過保護であると思え。』
気難しい表情で裏表なく告げるアウストラリスの言葉。
「…(一応、飴と鞭の使い分けはしておいたつもりですけどね。」
ハスミは『はぁ~』とため息を付いた。
それと同時に彼女の元を訪ねる者達が居た。
「ハスミさん。」
「光、海、風……あの事件以降、貴方達もエクスクロスに参加したのね。」
「ええ、助けて貰ったお礼がしたくて。」
「私達も出来る事をエクスクロスで行おうと三人で決めました。」
エンブリヲの起こした事件以降…
彼女達も救助された後はエクスクロスへ参加し今に至る様だ。
「そう、此処にロサも居てくれたら全員集合だったのだけど…」
ロサは生憎、ピートと共に別件で新西暦世界に移動して貰っていた。
次元結界を破壊するプロセスを記載したデータをノードゥスへ送付する為である。
「話は皆から聞かせて貰った。あの時は本当にありがとう。」
「昔取った杵柄って事で、大した事はしていないわ。」
「それでも…あの変態男から守ってくれたわ。」
「ええ、とても感謝しています。」
そりゃ、あの外見若作りのキモ糞鰤大根の餌食にさせない為である。
あの時、体力が残っていたら…あのいけ好かない顔面を殴り飛ばしたかった。
それだけが心残りである。
「僕達も話していいですか?」
光達と話しているとエクスクロスの一部のメンバーも近寄って来た。
ハスミ自身、かなり苦言を告げているので申し訳ない状態。
会うのを控えたいと思っていた。
それでも彼らはハスミに伝えた。
「ハスミさん、僕…救世主の意味を自分で考えて決めました。」
ワタルの救世主の意味を考えろと言う助言。
周りに振り回されず、自分自身が如何したいか?をよく考える事。
ワタルの表情を見る限りは大丈夫そうだ。
「その決意と『良き心』を忘れないで。」
私は彼に降りかかるであろう試練のヒントをさり気なく答えて置いた。
「ハスミさん、あの時はごめんなさい…私。」
続いてはナディアからの謝罪。
彼女から武力で他者と戦う姿勢と圧倒的な戦力の保有に悪態を突かれた事である。
ハスミは限定的な戦力の仕様と戦わなければ大切な人達に被害が及ぶ事…
何もせずに親しい人達が亡くなったら貴女はどうするのか?とナディアに叱咤したのだ。
何処となくラクスの様な思想を持っているが、生きる事は闘う事。
それを放棄すれば、衰退と怠惰で自身を滅ぼすだろう。
ハスミは『人は何故戦うしかないのか?』に『それは生きる為の意思の象徴である。』と告げた。
「それでも私は戦う事は出来ない。」
「それで良いと思うわ。戦う意味は単に武器を取るだけではないから。」
「えっ?」
「言葉で戦う者、優しさで戦う者、戦うの意味は人其々だから。」
「…」
「これからもすれ違いはあるだろうけど、その時代の人々がよりよい未来を切り開くわ。」
その事をナディアに答えて置いた。
他のメンバーからも謝罪や助言をした事への感謝を告げられていると…
作戦開始時間のアラートが鳴り響いた。
=続=