幻影のエトランゼ   作:宵月颯

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朱色の幻影。

相対するは復讐者。

真実が開示される時。

それらは覆る。


第百二十七話『朱幻《シュゲン》』

 

引き続き、ラース・バビロンにて。

 

ゴラー・ゴレム部隊の潜入を確認した待機中のノードゥス。

 

既に施設内へ点在し、各要所を制圧する手筈だろう。

 

だが、彼らは知らない。

 

猛獣を超えた脅威が待ち構えている事を…

 

 

******

 

 

ラース・バビロン、施設内。

 

 

<スヴェル制御区画>

 

 

「…」

 

 

残留部隊が各所でゴラー・ゴレムの潜入部隊と交戦を開始した頃。

 

スヴェルの結界を維持する区画へ潜入する存在が居た。

 

 

「さてと、ここからが本番。」

 

 

独特の赤い色合いの髪を揺らしながら区画を進む人影。

 

 

「…(悪いけど、アタシの用事に付き合って貰うわね。」

 

 

彼女の名はセレーナ・レシタール。

 

地球連合軍・特殊部隊のひとつ『チーム・ジェルバ』の生き残りである。

 

生き残り…これはサイデリアルが新西暦の地球で活動していた時系列まで遡る。

 

彼女とパートナーを組んでいたアルバータが、別件でバラルの園へ向かっている最中。

 

地球へ潜入していたゴラー・ゴレム隊と接触し壊滅に追いやられた。

 

手を下したがゴラー・ゴレム隊を率いていたスペクトラ・マグレディ。

 

正式名称はヴェート・バルシェム。

 

オリジナルであるイングラム少佐やヴィレッタ大尉をベースにした存在だ。

 

彼女の目的は復讐。

 

これは前世の銀河戦争でも尾を引いて、ケイサル・エフェスに導かれた経緯がある。

 

それだけ、彼女の復讐心が強かった事を示していた。

 

 

「イルイ・エデン…アイツらに近づく為にも悪いけど。」

「…少しは慈悲の心はあった様ですね。」

 

 

隠密に長けた自身の背後を取る人物。

 

それはターゲットであるイルイの姉である私ことハスミであった。

 

 

「忍びこむ事は分かっていた……随分とお粗末な方法で?」

「分かっていたならどうするつもり?」

「そうですね、私なりの交渉をしようかと思いまして。」

「交渉?(その割には殺気が尋常じゃない気が…」

 

 

この時、セレーナはハスミの堪忍袋の緒が切れるフラグを成立させていた。

 

目的の為にイルイを敵の手中に収めさせようとさせる行為を彼女が許すだろうか?

 

否、それはない。

 

だからこそ、殺気での返答であるのだ。

 

 

「少しばかり、戦闘能力に自信があるとお見受けしますので…逃げないでくださいね?」

 

 

ニッコリと微笑むハスミの表情は笑っていない。

 

これには父親である光龍ですら冷や汗を掻く勢いである。

 

 

「あ、ヤバ…」

 

 

チャキっとSEが出るような状況で出されたハスミの太刀。

 

大の男でも両手持ちしなければ持てる筈のない代物を…

 

彼女は片手で軽々と持ち上げている。

 

更に片手で柄をクルクルと回している始末。

 

 

「その覚悟があるから、ここへ潜入したのでしょう?」

 

 

目も笑っていない。

 

あるのは目処前の生涯を確実に潰すと言う意思。

 

 

「私の妹に手を出そうとしたのだから、ねぇ?」

「…」

 

 

セレーナは背筋に尋常ではない悪寒を感じた。

 

敵地に潜入しミッションを成功させる…

 

私情を挟んでいたとは言え、いつも通りの行動を心がけた筈だった。

 

 

「私が言いたい事はただ一つ、この危機的状況に余計な行動は慎めです。」

 

 

その言葉を最後にセレーナに取って、理不尽な鬼ごっこが開始された。

 

 

「…」

 

 

制御区画の奥、スヴェルを制御する場所に隠れていたイルイの姿があった。

 

 

「ハスミお姉ちゃん。」

「大丈夫ですよ。」

 

 

イルイに声をかけたのはエメロード姫。

 

彼女もスヴェルの結界維持の為にここを訪れていた。

 

ラース・バビロンのスヴェル結界は他世界に設置されたセントラルベースを経由しており…

 

セフィーロ側もこれにより結界の維持がされている。

 

この為、結界の維持が出来る人材がここへ待機していたのだ。

 

 

「彼女の腕前は保障しているが…」

「…」

 

 

先ほどのやりとりを遠い目をしているザガートとランティス。

 

アル・ワースで三倍毒舌正論を受けた事のある彼らも制止するしかなかった。

 

追うよりも、エメロード姫とイルイの護衛を目配りで指示された為である。

 

セレーナ以外の間者が入り込む事を予測しての配置だった。

 

 

「自覚しているのか理解しているのか不明だが、彼女も狙われているのでは?」

「大丈夫。ハスミお姉ちゃんは強いの。」

「ふふっ、そうですね。」

 

 

イルイの言葉もあり、納得するしかない一行だった。

 

 

******

 

 

ラース・バビロン外。

 

 

「この程度でここを制圧するつもりだったのか?」

 

 

開口一番、答えたのはヴィルダーグ。

 

それもその筈、待機していた対人戦闘慣れをしているメンバーが迎撃していた為である。

 

地球は魔境であると某異星人が語っていたが、正に事実と言うしかないだろう。

 

一部、異星人や他多元世界の人員も混じっているが…

 

そこは突っ込まないで頂きたい。

 

 

「…」

「沈黙で答えるか?心もないただの人形には似合いの末路だな?」

 

 

人の皮を被った存在、ただ命令を実行し反旗を翻す素振りもない。

 

創造主に抗う意欲もまた必要な事であるとヴィルダーグなりの答えを告げた。

 

とあるの戦友の思考パターンを転写された同一の存在が側に控えて居るが…

 

彼らは独自の意思表示を見せているので別格と考えている。

 

 

「だが、貴様達から感じる燻りの意思は認めよう。」

 

 

ゴラー・ゴレム部隊を率いるキャリコとスペクトラ。

 

彼らはある人物達のコピーである。

 

彼らの目的はオリジナルを超える事。

 

目標である人物達が目処前に存在するのに近づくこともままならない。

 

 

「己の元となった存在に固執するよりも、今あるものに目を向けるべきだったな。」

 

 

認めるべき事とそうではない事。

 

分別を付けて答えるヴィルダーグ。

 

 

「貴様らの創造主も答えは沈黙を貫いた様だ…」

 

 

スフィアを通じてハスミが彼らの創造主であるシヴァと念話で対峙。

 

正念と共に明日を手に取る為の言葉を告げるが…

 

返されたのは沈黙と撤退。

 

 

「くっ、スペクトラ。」

「ええ…!」

 

 

キャリコ達も告げられた撤退命令に不服を感じつつも指示に従った。

 

 

「ハスミ、流れは変わりそうか?」

「後は向こう側の出方次第です。」

 

 

壮絶な追いかけっこで拘束されたセレーナを引き連れたハスミ。

 

ヴィルダーグは彼女に告げた。

 

 

=続=

 





終焉の日まで残りの時間、337日。
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