幻影のエトランゼ   作:宵月颯

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蒼き星を目指し戦士達は突き進む。

その先にどんな苦難が待ち受けようとも受け入れよう。

これが我らの進むべき道であっても変えられる道ならば。

切り開こう。


第八話 『騎士《テッカマン》前編』

私達が冥王星宙域に飛ばされてから数週間が経った。

 

息を潜めていた異星人連合の襲撃。

 

何度も続くゼントラーディとの交戦。

 

クロスボーンバンガードの横槍。

 

そして姿を現した木連。

 

私達は彼らと交戦を繰り広げていたネルガル重工所属の戦艦ナデシコを救出。

 

別の指揮系統からの命令で木連と和平を結ぶ予定だったが向こう側が和平交渉を破棄し交渉決裂。

 

その最中だったそうだ。

 

以後、私達と同じ指揮下に入る事が決定した。

 

彼女らの目的も地球に帰還する事なので同行する方が得策と判断したのだろう。

 

後、ヤマダさんと九十九さんが無事でした。

 

何でもアキトさんの機転で助けられたそうです。

 

あ、これは記憶持ち決定です。

 

どうも最近になって記憶持ちの人達がこちらに合流する様になった。

 

もうじき大きな波が訪れる予定だったので致し方ない。

 

私自身が想定していたとは言え、急な転移だったので地球の事が心配だ。

 

しかし今回のこの世界は数多くの戦力と蒼い睡蓮が影で動いている為、そう易々とは敵陣営が戦火を広げる事は出来ないと思う。

 

今は合流予定の彼がどう動くかが問題である。

 

どこぞの眼帯付の仙人さんじゃないけど『流れのままに』なのかもしれない。

 

そしてマクロスは木星宙域から離脱し火星宙域へと到着する予定だ。

 

火星を通り過ぎれは地球へ帰還する事が出来る。

 

だが、その前に起こる出来事がある。

 

そうαのシナリオである例の裏切りフラグが待っているのだ。

 

今回ばかりはやらせる訳にはいかない。

 

 

******

 

 

マクロス、実際乗艦したが悪い所は余りない。

 

ただ、現時点でマクロスに天候システムが導入されていないのでしばらく朝日を拝めないのが難点だ。

 

訓練や偵察で宇宙に出る時は星海航行を満喫し放題だが。

 

後に進宙するバトル7と連結されているシティ7やバトル・フロンティア船団のコロニーなら二十四時間のサイクルで様々な天候、朝から昼、夜へと切り替わるので時代の流れなのかもしれない。

 

元々移民船としての機能も持っていたので住民が住める居住スペースから工場、農場など生活に困らない様に様々な業務ブロックが配置されていた。

 

そして長い航海になる事に不満が溜まるのを防ぐ為に『ミス・マクロス』を決めるアイドル選抜コンテストを開催する動きもあった。

 

私はいずれこの戦いを救う『歌』を歌う彼女の事は好意を持てるが初代トライアングラーを視る羽目になるので何処かまどろっこしいのである。

 

恋愛小説も執筆する過程で相手を不快にする様な執筆は避けているせいもあるかもしれない。

 

実際、彼が選んだのは彼女ではなくあの人だったし。

 

取りあえず、ミスマクロスのコンテストに乱入するゼントラーディの横槍は目を瞑る事とする。

 

あれも必要なターニングポイントである。

 

彼らに文化を与えるのは元々決まっていた事だし。

 

何よりもそのバタフライエフェクトがあったからこそ勝利出来た戦いでもある。

 

その後に起こった悲劇はどうしようもないが…

 

蒼い睡蓮の新規情報でラダムの他に早期にガルファも地球圏を目指して現在侵攻を続けていると厄介な情報を得た。

 

ガルファは勇者軍団の敵陣営であるグランダーク達に組しており利害一致の共闘関係を結んでいる様だがこれも敵の敵は味方と言う考えではなく互いに足の引っ張り合いをするスタンスだろう。

 

出来る事なら救える命があるなら救いたいが何分、こちらの情報の開示が難しい事と無限力の介入も危険視しなければならないので下手を打てない。

 

いずれ鉢合せをするかもしれない。

 

そして更に厄介な事に孫光龍が早期に目覚めた以上、沈黙を貫いてきたビッグファイアも動きを見せるだろう。

 

そうなれば私の正体もいずれ彼らに知られる。

 

そろそろ腹を括る必要も考えて置こう。

 

ああ、また地獄の黒い番犬と獅子座の金甲冑の覇気を纏ったエルザム少佐とギリアム少佐の冥府級説教が…

 

隊長なんて三枚卸し上等、カイ少佐は鬼軍曹よろしく速攻で訓練室行き、お義父さんは前回の事もあってネガティブオーラが余計に酷い。

 

ヤバい、考えただけで恐ろしくなってきました。

 

いや、今は考えるのはよそう。

 

兎に角、バラルとBF団の今後の動きを調べながら動くしかない。

 

そう言えば、マクロス出航のドサクサに紛れて密かに忍び込んだ五人組はどうしているだろうか?

 

 

「ふう…」

「ハスミ、どうしたの?」

「ちょっと考え事。」

 

 

只今、ハガネ艦内の自室に籠っている私。

 

その隣には1/60サイズのガーリオンが浮遊している。

 

この機体の正体は前回のDG事件で生き残った『超AI』である。

 

構築された性別は女性、精神年齢は大体15歳前後位になっている。

 

私にとっては妹の様な存在になった。

 

名は『ロサ』、ラテン語で薔薇と言う意味だ。

 

機体のカラーリングは薄い水色にしており青い薔薇の花言葉の『奇跡』と『不可能を成し遂げる』と言う意味合いを持たせている。

 

ロサの外装を作ろうと思い立った時、ロブさんからはグルンガストとかゲシュペンストの一案を頂いたが人格モデルが女性なので却下させて貰った。

 

リュウセイはバーンブレイド3の外装とか言うのでハリセンを構えて笑ってない笑みをしてあげたら踵返して逃げて行った。

 

他にもハロやロペットなどの外装はどうかと案件を頂いたがピンとくるものが無かったのでマイナーだが一番親しみのあるガーリオンの外装にする事にした。

 

ぬいぐるみっぽいSD風ガーリオンでも良かったがロサ本人が動きづらいと話していたので元のガーリオンをプラモサイズにした外装と言う事で落ち着いた。

 

少し変化を付けてスカートの様な装甲と頭部アンテナに小さな白いリボン型アンテナのオプションを付けてあげた。

 

念の為、背部分に取り付けたバーストレールガンには麻酔針とスタンガンが仕込まれている。

 

音声は麻酔銃と関連している方と同じなので察してください。

 

流石にフェアリオンの様なロリ風は出していない。

 

あえて控えめの女性風に仕上げてみた。

 

通常勤務に勤しみながらだったので完成するのが遅くなってしまったがとりあえず良かった。

 

ちなみにロサの外装が完成したのが、丁度お義父さん達が連れ去らわれた事件前。

 

ロサは名目上、私のサポートロボットなのだがお義父さん達が拉致られた為に搭乗者不在のガーリオンCをコックピットからハッキングし戦闘に参加してしまったのだ。

 

流石の私もこのお転婆ぶりには気が付かなかった。

 

色々とあって救出後のお義父さんは鹵獲したヴァルシオンへ、ロサはそのままお義父さんのガーリオンCに搭乗し、私の随伴機として行動する事となった。

 

勿論カラーリングも判りやすい様に変更しました。

 

機体の改装とか塗装って結構難しくてリョウト達に手伝って貰った次第であります。

 

あれだね、自動車の傷直しとは桁違いに難しかったです。

 

コックピットブロック内部に取り外し可能な専用のコネクトシートを接続。

 

要はoo版ハロの設置スペースと似たようなものが取り付けられたのだ。

 

そこからガーリオンCをロサが操縦する事になる。

 

勿論普通にパイロットとの同伴も可能だが、戦力の乏しいこの状況では乗り手が居る事が好ましい様でロサの戦闘AIとしてのパイロット登録が決定した。

 

 

「前に話した事、覚えてる?」

「うん、例の事件だったね?」

「そう…それがもうすぐ行われる。」

「助けるの?」

「今の状況で助けられるか分からないけど…やるしかない。」

「大丈夫、私も手伝う。」

「ありがとう、ロサ。」

 

 

どうか、これから起こる『あの戦い』に間に合って欲しい。

 

星の海を駆け巡る白き騎士よ。

 

どうか間に合って欲しい。

 

私はロサを抱きしめながらそう願うのだ。

 

 

♱ ♱ ♱ ♱ ♱ ♱

 

 

イングラム少佐からRシリーズの合体テストを行う為、護衛と言う形で出撃命令が下った。

 

その中にクスハとブリット、マサキに私とロサも含まれている。

 

他はマクロスの護衛と周辺の偵察などで動いている。

 

何かある事は解っているのにこちら側の拒否権無しは歯痒いが致し方ない。

 

そこでキョウスケ少尉はドモンさんとアクセルさんに頼んで秘密裏に私達の後を追尾していた。

 

あの二人は民間からの協力者だし何とでも言い訳は出来るだろう。

 

 

ちなみにRシリーズはR-3だけプラスパーツが装着されておらず、合体しても脚部部分がない上にR-2はトロニウムエンジンの出力が不安定でエネルギー不足に陥り、すぐに動けなくなる。

 

はい、れっきとしたフラグ確定です。

 

そして確実な不安が過る中、マクロスから少し離れた宙域でテストが行われた。

 

だが…

 

 

「皆さん、こちらに向かって未確認の機動兵器が接近中です!」

「えっ!?」

「イングラム少佐、各機の警戒態勢への移行を推奨します。」

 

 

ロサの言う通り、αのシナリオが始まる。

 

初めましてレビ・トーラー、シャピロ・キーツ、アタッド・シャムラン。

 

 

「私はレビ、レビ・トーラー、ラオデキヤ様直属の戦爵にしてジュデッカを操る者。」

 

 

実際に感じてみたがジュデッカを制御機にしている分、その念は実に厄介だった。

 

クスハとアヤ大尉が不穏な状況で説明していたし。

 

リュウセイとマサキは前の記憶がある分、相手の正体を理解していたので慢心はしていなかった。

 

 

「予定通りにリュウセイ・ダテ、クスハ・ミズハ、ブルックリン・ラックフィールド、ハスミ・クジョウが揃っているようだな。」

「何故、俺達の事をを知っている!」

「我らの偵察部隊から随時お前達の情報は送られている。」

「こちら側の情報が筒抜けだったと言う事か…」

「…(それでも前回よりは情報流出を最小限に抑えているんだよね。」

 

 

今回は蒼い睡蓮が秘密裏に彼らの偵察部隊とされている人員を秘密裏に処分していた。

 

これは悪い意味ではない、寧ろ理不尽に洗脳されている人達を救っていたと言った方が正しい。

 

そのせいか、奴らに入る情報も微々たるものになってしまったのだろう。

 

奴らに入る情報は既に戦闘部隊でも入手出来る代物ばかりだ。

 

それでも相手側に渡ってしまった情報も少なからずあった。

 

あの状況下で私達の情報を入手出来る人はイングラム少佐ただ一人。

 

そのイングラム少佐はシャピロに例の如くその正体を暴かれ。

 

レビはここにおびき寄せられた私達について説明していた。

 

アタッドは地球人と見下しているけど、一応貴方も地球人なのですが?

 

カーウァイお義父さんの状況次第ではアレンジペルソナを永久に表面意識に出て来られない様に始末する。

 

元々、ジェニファー・フォンダの責任じゃないしね。

 

ある程度の説明を語り終えた後、私はレビに問いただした。

 

 

「リュウセイやクスハ達なら話は分かるけど、何故私まで?」

「フ、うまく隠しているのか自覚があるのか判らんが貴様も強念者だ。」

「は?」

「えっ!?」

「何だって!?(やっぱりDG事件の時に感じたあの念は間違いじゃなかったのか!」

「アタシだって信用したくないさね、お前のデータを見る限りレビ様に近い念を所持している以上、放っておく訳にもいかないのさ。」

 

 

おい、無限力。

 

これもお前のシナリオか?

 

だとしても早すぎるだろう。

 

あーこりゃ冥府級説教コース突入するかも。

 

何とか誤魔化す所だけ誤魔化して逃げるしかない。

 

 

「…一つ聞きたい事がある。」

「ん?」

「カーウァイ・ラウを知っているか?」

「…(カーウァイってたしか?」

 

 

今は写真だけでしか見れなくなってしまった義父の面影が脳裏を過ぎった。

 

癖のある教導隊を指揮し私を受け入れてくれたあの優しい手を。

 

だからこそ聞きたかったのかもしれない。

 

その最後を。

 

 

「ああ、捕らえたサンプルにそんな名前の奴がいたねぇ?」

「!」

「随分ともがいてくれたものでさ、加減が出来なかったよ。」

「まさか…」

「アタシが人形として再利用してやったのさ。」

「!?」

 

 

レビに代わりベラベラと話し始めたアタッド。

 

OGシナリオの結末の一つに繋がった瞬間だった。

 

 

「そんなに逢いたいなら逢わせてやるさね…もっとも、お前の様な地球人の事を覚えているかは保証できないけどね?」

 

 

数機のメギロートとゼカリアの混合部隊と共に転移して来たエゼキエル・ラヴァン。

 

通信でその無惨な姿を垣間見る事となった。

 

昔の面影を残したサイボーグ姿でコックピットに鎮座していた。

 

それも原作と違い身体の半分が機械化された姿だった。

 

 

「…」

「カーウァイお義父さん。」

「おい、ハスミ!大丈夫なのか!?(キョウスケ達から聞いていたが、コイツはかなりヤバい状況だぜ。」

「どうするニャ。」

「マサキ。」

「くっ!(下手に動くとこっちの素性も相手にバレちまう。」

「ハスミ!(もしもキョウスケの感が当たっていたのなら…!」

「ハスミ、返事をして!」

「ハスミ!」

 

 

マサキやリュウセイ、クスハ達の声が通信機から何度も響く。

 

私は何をしている?

 

これくらいの動揺で動けないのか?

 

情けなくここで終わるのか?

 

何もせずにただ落とされるのか?

 

答えは否だ!

 

私は約束した!必ず貴方に会うって!

 

そして私達の願いと夢を貫く為に!

 

例え、これが仕組まれた罠だとしても!!

 

 

「…リュウセイ。」

「ハスミ、平気なのか?」

「平気よ、それよりもお義父さんの事は私に任せて貰える?」

「何を!?」

「理由は聞かないで…」

「ハスミ…」

「私は私の戦いを続ける、それが死んだ母さんやカーウァイお義父さん達との約束だから。」

「…分かった、無茶はするなよ。」

「ありがとう。」

 

 

その通信を聞いていたのかイングラムはリュウセイ達にSRXへの合体を指示した。

 

 

「リュウセイ、ライ、アヤ、お前たちはSRXへの合体を始めろ。」

「隊長、しかし!」

「他はSRXの合体が完了するまで援護を…それがこの状況を打開する唯一の方法だ。」

「隊長…」

「…(碌なテストもしない内にパターンOOCを発動とは。」

 

 

前回なら失敗していただろう、だがリュウセイは信じていた必ず成功させてみせると。

 

 

「ライ、アヤ…やってやろうじゃねえか!」

「リュウセイ。」

「リュウ?」

「ここで失敗したとあっちゃあ…俺達にRシリーズをSRXを託してくれた皆に示しがつかねえ!」

「お前に言われるとはな…」

「ライ、リュウ、やりましょう!」

 

 

SRXへの合体陣形へと三機が移動し準備に入った。

 

 

「念動フィールド、オン!」

「トロニウムエンジン、50パーセント限定で稼働!」

「行くぜ!ヴァリアブル・フォーメーション!!(前回の失敗はアヤの念動フィールドへの多大な負荷とトロニウムエンジンの不備が原因だった、それなら!」

 

 

リュウセイは合体シークエンス中に前回の事を振り返り、ある事を思いついた。

 

失敗すれば自身の命も危うい可能性もあった。

 

だが、これから起こる戦いに比べれば些細な事かもしれない。

 

過信か執念か。

 

リュウセイは必ずやり遂げると誓った。

 

 

♱ ♱ ♱ ♱ ♱ ♱

 

 

リュウセイ達がエアロゲイターの偵察部隊と交戦を始めた頃。

 

この宙域へ向かって突き進む一筋の光があった。

 

 

「一刻も早く、行かなければ…!」

 

 

紅と白の装甲を纏った騎士は碧色の閃光と共に宙域へ突き進む。

 

それは更なる警鐘を鳴らす事となる。

 

 

=続=

 




痛みをその身に宿す白き騎士。

不完全な念動兵器。

罪を背負いつつも絶望に抗う睡蓮。

全ては交差し奇跡となる。

次回、幻影のエトランゼ・第八話『騎士《テッカマン》後編』

抗え、残酷なる未来を。


<今回の登場人物>

※ロサ
第六話に登場したDGに搭載されたUG細胞の制御AI。
DGと切り離された為、別格となっている。
回収された後、本人の希望でハスミのサポートAIとして生きる事を決める。
GGGから提供された『超AI』の為、いずれは『勇気』に目覚める可能性もある。
外装フレームは1/60スケールのガーリオン。
背部分に装備されたバーストレールガンには麻酔針とスタンガンが仕込まれている。
現在は乗り手の居ないガーリオンCの戦闘AIとして登録されている。

※マサキ・アンドー
魔装機神サイバスターの操者。
ある事情で行方を眩ませているビアン博士達の護衛を務めていた。
現在はノードゥスに合流しAnti・DCの行方を追っている。
過去の記憶を所持しているがとある記憶だけ封印されている。

※レビ・トーラ
エアロゲイターの幹部。
ラオデキヤの名が出ている為、α基準と思われる。

※アタッド・シャムラン
レビの腹心。
数年前に捕虜となったカーウァイに人体改造を施した。

※シャピロ・キーツ
説明不要の裏切りフラグ持ち。
服装はディラド戦のもの。


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