幻影のエトランゼ   作:宵月颯

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月の聖地を脅かす者よ。

二対の鷹がそれを拒み。

竜の騎士と宇宙の騎士が月の舞台を駆け巡る。

さあ、機械仕掛けの道化達よ踊り狂え。

薔薇の妖精は妖艶に微笑む。

睡蓮よ、己の枷を解き放ち、刃の花弁で切り刻め。


第九話 『月廻《ツキメグリ》中編』

眼を背けるつもりはない。

 

私は戦う。

 

その先の未来を勝ち取る為に。

 

 

******

 

 

「…(予想通りの展開かな?」

 

 

作戦開始から一時間が経過した。

 

万全の用意を整えた私達ノードゥスが奇襲役を務め、月駐留部隊が絶対防衛戦線に侵攻し戦線を掌握する。

 

それが今回の目的である。

 

敵はそれを察したのか部隊を派遣し応戦を開始した。

 

相手は小回りの利く機体ばかりではない、火力重視のスーパー系である。

 

「…(ギャンドラーは兎も角、ガルファは重機士クラスが出撃していない所を見るとまだ偵察部隊規模か?」

 

その部隊に見覚えのある敵が混じっているが落ち着いて行けばやられる事は無い。

 

隊長クラスがまだ出撃していないのが幸いだった。

 

だが、敵側の戦線維持が困難になった頃合いでもある。

 

今こそ痺れを切らせて出て来るだろう。

 

その時が狙い眼である。

 

先に機械化城を目視したメンバーの映像を見ると電球のオブジェが確認出来た。

 

恐らく現在の城の主は電気王。

 

そして、この前線の司令官なのだろう。

 

電気王の戦闘パターンは前任の歯車王よりシンプルだ。

 

歯車王が狡猾かつ知略に長けた指揮官であれば、電気王はその逆である。

 

姑息な手を使わず、力押しによる圧倒的な戦力を投入し続けるだろう。

 

DG事件以降後に地球侵略を開始したらしいが…

 

侵略行為も儘ならず、かなりの失態を侵しているのでそろそろ奴にとっては大詰めだろう。

 

 

「麗しきは戦の花か…」

 

 

つい、鼓舞する為に口ずさんでしまう。

 

蒼き翼を持つ少女の歌を。

 

写し取った姿が若干似ている為かどうしてもこの癖も治らないのだ。

 

 

「戦い護る為の歌も…いいよね。」

 

 

いずれ出会うだろう熱き魂の歌を歌う歌い手達の姿を思い出しながら。

 

私は戦闘に集中した。

 

 

******

 

 

「Dボゥイ、ぺガスの調子はどう?」

「悪くない。」

「そりゃそうさ、文句を言えばおやっさんとレビンにどやされちまうぜ?」

「フッ、そうだな。」

 

 

ブルーアース号よりアキの通信を受けたブレード。

 

現在ブレードは月支部で開発していた新装備と共に戦場を駆け巡っていた。

 

その名もぺガス。

 

地球圏に戻ったDボゥイ達はノードゥスに所属した事により、彼らが戦う相手はラダムだけではなくなった。

 

代償として様々な敵勢力と戦う事になってしまう選択でもあったのだ。

 

その為、今後予測される戦いに備えてとあるプランが発案された。

 

戦力増強をかねてスペースナイツで稼働していた人型作業ロボットを改修した結果。

 

このぺガスが誕生した。

 

史実とは違い、かなり早い登場であるがDボゥイ達の進言が関わっていると言う真実を知るのはフリーマン氏のみである。

 

 

「僕らの武装はエネルギー消費が激しいからね、これはありがたいよ。」

「ああ、それに答える為にも奴らを蹴散らすぞ!」

「OKだよ、兄さん!」

 

 

そして更に物語は変異し、この場に居る天馬は一機だけではない。

 

 

「エクレス、僕らも続くよ!」

「ラーサ。」

 

 

紅と白の騎士は機械仕掛けの天馬と共に戦場を駆け抜けた。

 

 

******

 

 

その頃、機械化城では…

 

 

「くっ、地球人共め!」

 

 

機械化城の玉座の間で悪態をついているのはこの城の主である電気王である。

 

依然として地球侵略が遅々として進まず、占拠地である月の掌握に力を注いでいた。

 

しかし、地球人の戦力を甘く見ていた為かこの様な醜態を晒す事になってしまったのである。

 

現在、月の防衛戦線の維持の為に部隊を投入していたのだが…

 

 

「この隙を突いてあ奴らの侵入を許すとは…おのれっ!!」

「電気王様、緊急事態です!」

 

 

玉座の間に入室する部下の機械兵。

 

人であるならば表情などから焦りなどが確認出来るが、この機械兵には表情を変えると言う精密性はないので声の状況で判断するしかないだろう。

 

しかしその声で緊急を要する事であるのは電気王でも理解する事は可能だった。

 

 

「今度は何だ!」

「何者かにより我々が掌握していたマスドライバー施設が先ほど制圧されました。」

「何だと…!?」

「一瞬の事でした、次の地球制圧作戦の為に整備を進めておりましたが…」

 

 

機械兵によるとマスドライバー施設のメインコンピューターが何者かに掌握されたと説明した。

 

その時、制御区画の画面には渦巻きが描かれた二つのレンズが接続された奇妙なマークと余りにも気色の悪い声が響いたとの事だった。

 

そしてその声の主から電気王に伝言が言い渡された。

 

 

『ク~ックックック、オタクらさ~自分達が優位に立ったのに一瞬の内に崩された気分はどう?』

 

 

発現から察するに嫌味めいた声で挑発を繰り返していた。

 

 

『ちなみにこの音声は録画されたものだからそちらさんが何を言ってもこっちは痛くも痒くもないんで~♪』

 

 

口癖なのかク~ックックと言う声を何度も発言。

 

 

『悪いけど、このマスドライバーはオレ達『ホルトゥス』が乗っ取らせて貰ったぜ。』

 

 

声の主の音声メッセージの後、施設に侵入していた謎の生物に機械化帝国の駐留部隊を全滅させられてしまったのだ。

 

残された部下の映像から重火器を操る赤い何かと嫉妬タラタラの黒い物体、高速で動く蒼い存在、ビームサーベルで落書きの様な切り跡を付ける緑のアホによって部隊は壊滅したらしい。

 

最後に『ゲロゲロゲロ~♪』と言う謎の声を最後に通信は途絶。

 

マスドライバー施設は掌握されたとの事だった。

 

 

「以上です。」

「…!」

 

 

怒りに任せて部下の頭を握り潰し、その残骸を隅に放り投げた。

 

部下は火花を散らし機能停止。

 

電気王は再び前線の映像が映し出されたメイン画面に体を向き直した。

 

そして電気王は覚悟を決めねばならなかった。

 

前任の歯車王の失墜させた事で手に入れた地位であったが…

 

それ以上の醜態を晒した電気王に次はない。

 

恐らくは本星から後任のエンジン王が派遣されている頃だろう。

 

 

「かくなる上は…」

 

 

電気王は苦肉の策として愛機と同化し最終決戦に挑む事を決めた。

 

それが自らの命を縮める事になろうとも…

 

 

******

 

 

奪還作戦決行から数時間前。

 

地球・極東方面地球防衛軍日本支部において…

 

 

『急な通信で申し訳ない、私の名はブルーロータス…率直ではあるが貴方達に伝えねばならない情報がある。』

 

 

地球防衛軍に送られた一つのメッセージ。

 

それは戦局を左右する情報でもあった。

 

ブルーロータスからの情報によると地球連邦軍月面駐留部隊と特殊独立遊撃部隊『ノードゥス』による月面の絶対防衛戦線の奪還作戦を行うと言うものであった。

 

それも今から数時間後と言うお墨付きである。

 

敵勢力による月の掌握は地球のオービタルリング制圧の足掛かりにさせてしまう危険性があった為、前々から重要視されてきた案件でもあった。

 

連邦軍も眼を光らせていたが、何分敵の戦力図が不明だった為に中々手が出せずにいたのだ。

 

もしも月が掌握されオービタルリングを制圧された場合、地球上における重要拠点を一斉に制圧する事が可能だからである。

 

オービタルリングは宇宙港だけではなくコロニーへの物資輸送や地球圏における防衛装置の役割も担っている。

 

上記の事から地球圏の人類にとって重要拠点である為、一年戦争の頃に置いてはその管理を地球防衛軍が行っていた。

 

理由とすれば連邦軍とジオン、その後に現れたザンスカール、クロスボーンバンガードなどの戦争に利用されるのを防ぐ為でもある。

 

もしも連邦軍の管轄だった場合、一部の強硬派による被害は計り知れなかった。

 

その為、オービタルリングは地球防衛軍の管轄並びに人類間の戦争による強制的な利用は一切行わないと言う約定が取り決められたのである。

 

しかしその約定から数日後、例のマクロス落下を期に休戦協定が結ばれた為に七年経った今では忘れ去られているのが現状である。

 

話を戻そう。

 

地球防衛軍に与えられた情報は彼らと協力関係を持つGGG(ガッツィー・ジオイド・ガード)の傘下に収まっているザウラーズにとって重要な案件であった。

 

 

<貴方達が敵対している機械化帝国を連邦軍が眼を惹き付けている、もしも先手を打つなら今しかない。>

 

 

要約するとこの様なメッセージである。

 

勿論、彼らには宇宙へ移動する手段は持ち合わせている。

 

ノードゥスが冥王星へ飛ばされてから一週間後。

 

彼らの協力関係であるVARSの本拠地が襲撃されたのである。

 

その最中に彼女らの切り札の一つである『移動要塞モビィ・ディック』を起動させ壊滅は免れた。

 

しかし、強力な戦力を保有している事が露見してしまい一時期は接収の危機もあったが…

 

表向きは地球防衛軍の保有する移動戦艦と言う建前で事無きを得たのである。

 

GGGが大きく動けない現状で稼働する事が可能な移動要塞はその一隻のみ。

 

元々、月の機械化城や月の位相空間に隠れているグランダーク城への決戦が近かった事もある。

 

その為、地球防衛軍はGGGを経由しブルーロータスの提案を承諾。

 

急ぎ、早期決戦に向けて動き出したのである。

 

地球の守りは各地の地球連邦軍や協力関係にある民間の研究機関、秘密裏に動いているホルトゥスが眼を光らせているのでそう易々と占領される危険性はないだろう。

 

賽は投げられた。

 

後は流れるままに事が進むのを待つばかりである。

 

 

******

 

 

時は戻り。

 

月の絶対防衛戦線奪還作戦開始から数時間後。

 

 

「どうやら敵さんも切羽詰まったみたいね。」

「ああ、例のマスドライバー施設を解放しに行った部隊の話では既に敵の姿が無かったらしい。」

「あら、また睡蓮さんの仕業かしら?」

「かもしれん、確証はないがな。」

 

 

進撃を続けるノードゥス。

 

乱戦の中でエクセレンとキョウスケは変化しつつある戦場に違和感を感じていた。

 

 

「…(アムロ大尉の言う通り、セツコ・オハラ曹長とカルヴィナ・クーランジュ少尉に接触を果たしたが双方共に記憶がなかった。」

 

 

後のZ事変の立役者の一人であるセツコ・オハラ。

 

フューリーとの激戦に置いて共に戦ったカルヴィナ・クーランジュ。

 

二人に簡易的な接触を果たしたが記憶を取り戻した気配はなかったのだ。

 

一例としてカルヴィナ少尉の前でドモンとDボゥイの会話を見せる事で過去の記憶を持つのか?と確認したが…

 

その表情を確認したが特に反応はなかった。

 

記憶を取り戻すにしても何かの法則性があるのか現在でも不明のままである。

 

結局は無駄骨となってしまったが今後も二人の事はマークする必要があるだろう。

 

一方でマスドライバー施設への奇襲作戦に参加していたモビルアーマー部隊からは『エンデュミオンの鷹』の不満の声が拾えた。

 

 

『俺達の苦労は一体…』

 

 

先程も説明した通り、奇襲には成功したものの掌握する予定の施設がもぬけの殻だったのだ。

 

何者かと争った形跡と睡蓮のマークが残されていた事からホルトゥスの仕業ではないかと噂になっている。

 

その為、マスドライバー施設の確保は事無く終わってしまった。

 

モビルアーマー部隊はそのまま待機となりマスドライバー施設の警戒を続けている。

 

だが、その施設を眺める様に謎のMSが一機その様子を伺っていたのは誰も知らない。

 

 

『キョウスケ少尉。』

「隊長、どうされました?」

『先程月面駐留部隊からの通信で絶対防衛戦線の奪還が完了したそうだ。』

「わぉ、じゃ私達は?」

『このまま敵勢力を拠点まで追い詰める。』

「ですが、この戦力では…」

『それだが、地球防衛軍が敵勢力の拠点に奇襲を仕掛けているそうだ。』

「!?」

『どうやら制圧相手の敵勢力は防衛軍の追っている敵勢力の一つらしい。』

「つまり共闘と言う訳ですか?」

『いや、殿は彼らの方で俺達の任務は彼らの進む道を作る事だ。』

「成程ね、それじゃあ花道を作りに行きましょうか?」

「ああ。」

 

 

 

変異する物語の対峙は交差しつつあるのだろうか…

 

 

=続=




絆の戦士達は勇者の進む道を切り開く。

次回、幻影のエトランゼ第九話『月廻《ツキメグリ》後編』

歩め、その先の未来を勝ち取る為に。



<今回の登場人物>

※エクレス
テッカマンブレード支援機ぺガスの兄弟機。
早期にラダムから脱したテッカマンエビルの支援機として導入された。
カラーリングは彼の装甲と同じ黒をベースとしている。
武装はぺガスと同じであるが、捕縛用のアンカーが取り付けられている。
名称はペガサスの兄弟馬エクレウスより。

※???
ホルトゥスが秘匿する技術で作成されたMSサイズの機体。
今回はその一機をブルーロータスが搭乗している。
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