幻影のエトランゼ   作:宵月颯

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孤島の鳥籠の中で何を思う。

問われた問いに耳を傾け。

この先の未来を決める。

これはその予兆に過ぎない。







第十一.五話 『捕人《トラワレビト》』

梁山泊での戦いから早一週間。

 

現在ノードゥスは伊豆基地で待機のまま、パワーアップの為に各施設に戻った仲間達の帰りを待っていた。

 

時には迎えに行ったりしている。

 

大きな流れではシンジ君が第13使徒と戦ったり、今まで放置されていたカイラスギリーの破壊、フロンティア1から他のコロニーにバグを放った鉄仮面との戦い、リュウセイがレビを救出したりなど、時系列が崩れ過ぎた状態が起きているらしい。

 

と、アカシックレコードがリアルタイムで教えてくれた。

 

残るは鎖国状態となっているアクシズの動向やジオンを隠れ蓑にしているギガノス帝国とAnti・DG、弱体化させた異星人連合、現時点で脅威になっているゼ・バルマリィ帝国の動向である。

 

地上の敵勢力はこの一週間の間にノードゥスに総力戦を持ち込んたが、ほぼ壊滅したと言って良いだろう。

 

目まぐるしく変わる戦場と戦況。

 

私は最後の戦いに間に合うのだろうか?

 

 

******

 

 

「浮かない顔だね。」

「…そう見えますか?」

「無理もない、無理やりとは言え少々手荒な真似でこちらに出向いて貰ったからね。」

 

 

現在、私は地球の某所のBF団所有の孤島に囚われている。

 

目処前に居るのはBF団の総帥ビッグファイア本人である。

 

その横には諸葛孔明が控えている。

 

 

「…(本当に私と同じ元学生にしか見えないな。」

 

 

目処前のビッグファイアは学ランの様な服?を着ており、年相応の青年の様にしか見えないのだ。

 

悪いと思ったがビッグファイアの過去をアカシックレコードに教えて貰った所、その手のマニアなら誰でも知るとある有名な物語の過去を持っているらしい。

 

マーチウインドを相手にGR計画を遂行したあの有名なシナリオである。

 

私も正直驚いている。

 

 

 

「敵である私をここへ呼び寄せた理由は何なのでしょうか?」

「君と話して見たかった。」

「それだけではないのでは?」

「君は用心深いようだね。」

「敵地のど真ん中で気を許す兵士などいませんよ。」

 

 

 

ビッグファイア、BF団を統べる者。

 

現存する最古のサイコドライバーにしてガンエデンに並ぶ力の持ち主。

 

例のシナリオでは遥か遠い銀河に生きる異星人だったが、同胞達の愚かさに愛想を尽かせて地球へ降り立った。

 

そして長き時の中でバラルと敵対しある意味では地球を守護していた存在でもある。

 

私は複雑に絡み合う時系列の記憶から出来るだけ彼の情報を引き出していた。

 

正念場、ここで選択を間違えればバベルの塔での頂上決戦が開始してしまう。

 

それを防ぐ為にも情報と言うカードの切り方を誤ってはいけない。

 

 

 

「では、率直に言おう…我々の仲間になって欲しい。」

「っ!?」

「驚いたかい?」

「いえ、想定していたとは言え…はっきりと言われたので。」

「想定?」

「私を連れ去った理由は私の持つ力、まずは仲間へ勧誘し出来なければ命を…とありきたりですがね。」

「これは一本取られましたな。」

「そうだね。」

 

 

こうやって笑っているのにどうしてあんな事に踏み切れたのか理解できない。

 

本来の優しさを隠す様に踏み切ってしまったGR計画。

 

人はそんなに愚かなのだろうか?

 

私にはそうは思えない。

 

確かに裏表は誰にでもある。

 

絶望するには早すぎる位に。

 

人類に対して絶望するには足りない。

 

それ以上の絶望がこの先の未来で脅威として待ち受けている。

 

それを彼は知っているのだろうか?

 

 

「きっかけはアシュラヤーの単語でした。」

 

 

アシュラヤー。

 

ヘブライ語で『幻想』を意味する言葉。

 

あの手記に隠されていた言葉。

 

『アシュラヤーの目覚めはハトハラーの時』と言う言葉。

 

要約すると『幻想の目覚めは始まりの時』と言う意味だ。

 

そしてこの一週間でその存在が何なのかを理解した。

 

 

「私がアシュラヤーに選ばれた、それは貴方達にとって有力な利益若しくは脅威を生む何かであると推測しました。」

「その着眼点は間違ってはないね。」

「ここへ招いたのも手元に置いて監視する為でしょうか?」

「初めはね、けれども君は自分の推理で大体は把握出来ているだろう?」

「…」

「僕としては、そろそろ君の『正体』を晒してもいいと思う。」

「正体?」

「君がアシュラヤーの巫女であり、ホルトゥスを統べる者と言う事をね。」

 

 

理不尽は常に寄り添う様に。

 

これはカマかけか?

 

だが、あの眼は真理にたどり着いた眼だ。

 

 

「詩篇刀・御伽を所持すると言う事はそう言う事だよ。」

「…」

「勿論、この事を『バラル』が放って置く事は無いだろうね。」

 

 

成程、既に正体はばれていたか…

 

なら、こちらのジョーカーを一つ切らせて貰おう。

 

 

「共犯者にするつもりですか?」

「だとしたら?」

「条件があります。」

「条件?」

「この先の未来、そして貴方が絶望せずにすむ新たな未来への開拓を決める事でもあります。」

「成程、その条件とは?」

「まずはバラルの説得もしくは力を示して掌握する事、もう一つは…」

「っ!?」

 

 

その発言は一凪の海風にかき消された。

 

 

******

 

 

今回の決議で彼がどう出るかは判らない。

 

だけど、悲劇的結末を変えられるのなら変えてあげたい。

 

絶望せずに済む未来を見せてあげたい。

 

その思想は余りにもねじ曲がり、変わってしまうかもしれない。

 

それでも可能性があるのならその可能性に賭けたいと思った。

 

だから、それぞれの決着は人類共通の脅威を祓ってからご自由に。

 

そこまで邪魔をするつもりはない。

 

 

「ふぅ…」

「ハスミ、大丈夫?」

「うん、ちょっと疲れただけ。」

 

 

ビッグファイアとの話の後、私は牢屋代わりの一室に連行された。

 

拉致された身ではあるが、待遇が少し良過ぎるのもどうかと思う。

 

同じ様に拉致されたロサと再会し今に至る。

 

 

「結局どうなったの?」

「正体バレてたわ。」

「ええっ!?」

「まあ、そんなに驚く事じゃないわ。」

「で、でも…」

「いずれ判る事が早く来ただけよ。」

「…ハスミが言うなら。」

「こちらの意思は伝えたし、後は向こうがどう出るかかな?」

「大丈夫なの?」

「うん…理は巡り、結末へと辿る。」

「それって?」

「なる様にしてなるだけ…後は時間が掛かるだけよ。」

 

 

その後、どう言う訳か私はBF団から解放された。

 

ビッグファイアの意思らしい。

 

鹵獲されていたゲシュペンストmk-Ⅱに搭乗させられた上に極東方面へと放置された。

 

ちなみに放置された場所がネルフ本部。

 

はい、シンジ君がゼルエルに対してキレッキレの暴走中でした。

 

オマケにその様子を見に来たのか、ユーゼスまで現れる始末である。

 

どうやらレビを奪還された事で向こう側のパワーバランスが狂ったのだろう。

 

ざまぁwと思うのは私だけだろうか?

 

ここまで来て、また拉致られるヘマをしたくないのでキッチリ応戦しました。

 

ここできてダイターン3の援護もあり、何とか窮地を逃れました。

 

しかし、シンジ君がやり過ぎた為にエヴァに取り込まれました。

 

今回は何者かの思惑が絡んでいるらしくサルベージ作戦は失敗。

 

私は初号機の前で何も出来ずに落ち込むレイに助力する事に決めた。

 

初号機に触れて私が『架け橋』となる事でレイの意思を取り込まれたシンジ君に繋いだのだ。

 

後は当人同士によるものだが、すんなりと事は旨く行った。

 

即席サルベージに成功しエヴァから排出されたシンジ君を含めたエヴァのパイロット達はネルフ本部で待機となった。

 

エヴァシリーズのフルメンテや新規参入した参号機の事もあり、調整が必要と判断された為である。

 

私はそのままノードゥスに帰還、色々と根掘り葉掘り聞かれたが有力な情報がなかったのですぐに解放された。

 

そして報告書&始末書の束と格闘する羽目になりました。

 

カフェインプリーズである。

 

コーヒーカップを片手に私は一刻一刻と迫る決戦に向けて、思惑を巡らせた。

 

 

=続=

 




決戦の時が迫る。

捻じ曲がったシナリオに抗えるのだろうか?

次回、幻影のエトランゼ・第十二話『白星《ホワイトスター》前編』

結末は白き魔星と共に。


*******


「結局、解放して宜しかったので?」
「彼女の真意が判ったからね。」
「真意ですか?」
「そう、僕が想定していたよりも強大な脅威がこの世界に集結していると教えてくれた。」
「!?」
「彼女はそれを知っている、今までのあらゆる布石はその為だろう。」
「しかし、我々の監視では…」
「うまく肝心な所は欺かれていたようだね。」
「私もまだまだの様ですな。」
「さて、これから僕らもバラルやこの地を目指す脅威との対策で忙しくなるよ。」
「しかし、蓮華によって封じられた我々の能力は結局の所…どうなったのでしょうか?」
「それなら大丈夫、もう『繋いだ』と言っていたからね。」


僕はこの地を去るハスミ達を見送りながら次の戦いに備える構えを孔明に伝えた。


「…(ハスミ、いくら何でもオイタが過ぎた僕の妹に尻叩きはどうかと思うが?」


すり寄って来たアキレスを撫でながらそう思った。


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