幻影のエトランゼ   作:宵月颯

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再び、戦いの火蓋は開かれる。

それは静かにゆっくりと…




異界ノ詩篇
第一五話 『波乱《ハラン》』


『L5戦役』から早四か月。

 

地球連合政府設立と同時に厳正な投票によって大統領の就任式が行われた。

 

地球連合政府代表・ブライアン・ミッドクリッド大統領は新たなる異星人の再来と危険性を説き、今後の太陽系防衛戦線の強化と異星人難民の受け入れを検討すると主張。

 

この異星人難民についてはラドリオ星の皇女であるロミナ姫を筆頭とした異星人の方達の事である。

 

一部はマクロス艦隊と共に旅立って行ったが、残る者は今後の外部侵略者の情報と戦力を提供。

 

それはお堅い頭の連中を納得させる為の口実として使わざる負えなかった。

 

 

イージスの盾か…

 

ハルパーの鎌か…

 

どちらに転んでもこの戦いは起きるのだ。

 

それが無限力が提示した今回の遊戯だ…

 

余りにも腹が煮えくり返る答え方だった。

 

 

******

 

 

アメリカ大陸、テキサス州に近い荒野エリアにて。

 

 

『各機へ、戦闘中のオセロ小隊が敵の機動中隊に押されている。』

 

 

戦艦のカタパルトデッキの起動音と共に通信が入る。

 

 

『エクセレン、先行してオセロ小隊の護衛を頼む。』

「OKよ、キョウスケ。」

『アサルト2、どうぞ。』

 

 

オペレーターの合図と共にヴァイスリッターは出撃した。

 

今回の敵はAnti・DCの残党。

 

ホワイトスター戦後にビアン博士と連合軍の介入によって残党の大部分は解体されたが、それをよしとしない連中の集まりである。

 

未だ、自分達こそが正義と思い込んでいるのだ。

 

 

「フン、地球連合のウジ虫共め…我らAnti・DCが健在である事を思い知らせてやる!」

「た、隊長!?」

 

 

空中で陣を取るガーリオンの部隊。

 

しかし、その一機が長距離射撃によって撃墜されたのだ。

 

「直上からの射撃だと!」

『はいはい、一列に並んでね。』

 

同じ様に長距離射撃によって二機、三機と撃墜されていった。

 

地上ではランドリオンとバレリオンの敵混成部隊が進軍していたが、それらも壊滅の危機に瀕していた。

 

赤き衝撃と青き閃光が敵陣に突撃し、敵を翻弄。

 

撃ち漏らした敵機体を後方から追撃してきたカーキ色のヒュッケバインモドキが撃墜していた。

 

 

『ハスミ、先行配備された量産型の調子はどうだ?』

「安定していて扱いやすいですが、やはり馬力はヒュッケよりも落ちますね。」

『量産型だからな、本来ならブリッドに任せるつもりだったが…』

「仕方ありません、ブリッドはクスハと共に超機人の一件でテスラ研へ出向中ですから。」

『そのブリッド達も数日前に超機人に似た機動兵器と1戦交えて動けない状態だ。』

「本当に…二人とも無事でよかったです。(孫光龍の早期復活のせいで妖機人の活動を早める事になってしまうとは、『おのれ無限力め!』と言いたい。」

 

 

私はマオ社より納機されATXチームに先行配備された量産型ヒュッケバインmk-Ⅱに搭乗している。

 

データ収集の為とはいえ、愛機から降りるのは少し心細い。

 

私の愛機であるガーリオンC・タイプTは現在ロサが搭乗し行動している。

 

今はエクセレン少尉と共に空を散歩中である。

 

「艦長、敵部隊の壊滅を確認…敵母艦の機影は確認出来ません。」

「判った、各機シロガネへ帰投せよ。」

 

戦死者は出ていないものの、損害を受けたオセロ小隊は後続部隊と合流しラングレー基地へ帰還。

 

私達は引き続き、警戒任務に戻った。

 

 

******

 

 

今回の戦闘報告書を各自提出し一息ついた頃。

 

 

「今月に入って連中の襲撃回数、何件目よ?」

「今回を合わせて68回目ですね。」

「何だか多くない?」

「主に連邦政府から連合政府に代わったのが原因ですね。」

「でしょうね。」

 

 

早期による地球連合政府設立は大きな波紋を呼んだ。

 

この政策に人類全てが同意する訳ではない。

 

ごく一部がこの様に反乱や紛争を起こしているのだ。

 

だが、そうせざる負えない状況に近々なるのだから仕方がない。

 

そんな複雑な想いを巡らせる私、そしてエクセレン少尉は分隊室のソファーで項垂れながら文句を続けていた。

 

 

「東海岸から西海岸を右往左往する身にもなりなさいよ。」

「敵がこっちの都合を考えてくれる筈も無いと思いますけどね。」

「それ言っちゃう?」

「ブリッドが居ない分、突っつく相手がいないからと私まで巻き込まないで下さい。」

「ハスミちゃんってば毒が出てるわよ。」

「事実を話したまでです。」

 

 

毎度の事ながらエクセレン少尉の相手をしていたブリッドの胃がよく無事だった事を称賛したい。

 

それはさておき。

 

今回の戦いからインスペクターやアインストが本格的に活動を開始する。

 

既にガルファ、鉄甲龍、百鬼帝国、イバリューダーまでもが活動を開始している状況だ。

 

そして二月十四日に起こったプラントへの核攻撃未遂事件。

 

これはバイオネット、アマルガム、シャドウミラーによる同盟とそれに同調したタカ派連合軍の一派による介入である。

 

バイオネットとアマルガムはホルトゥスの介入で活動すらままならない位の大打撃をL5戦役時に与えていたのだが…

 

シャドウミラーの出現によって今回の戦いから少しずつではあるが参戦の兆しを見せていた。

 

おまけにこの件にイスルギ重工も一枚噛んでいると来た。

 

あの女狐、少し痛い目を見ないと判らんものかな?

 

例のナマズ髭にはしばらく道化を演じて貰うし無論手は打ってある。

 

ナマズ髭には後の事件で役に立って貰わなければならない。

 

某銀行員の如く『倍返しだ!』をするつもりである。

 

 

******

 

 

次の命令があるまで自室に籠る事にした。

 

勿論、隊の訓練メニューとその他の提出書類を仕上げてからである。

 

この辺は前世のワーカーホリック癖が出ているのでどうしようもない。

 

因みに自室に籠ったのには理由がある。

 

ある場所へ連絡を取る為だ。

 

 

『おや、珍しいですね…君から連絡を寄こすとは?』

「お久しぶりです、小父様。」

『お久しぶりですね、ハスミ君。』

「少し込み合った話になるのですが…お時間は宜しいですか?」

『構いませんよ、君もそれを見通して連絡したのでしょう?』

「はい、現国防産業連合理事の小父様も多忙の身ですし…無理強いは出来ないと思いましたからね。」

『色々とね、君が教えてくれた『鏡に映る影』共とあのオカマ君や女狐さんのおかげでこちらの市場を荒らされて困っているよ。』

「やはりですか…」

『こちらでも手を打って置きましたが、どこまで介入出来るかは現状では不明ですね。』

「相変わらず用意周到で…」

『備えあれば患いなし…君の母君が良く仰っていた事ですよ。』

 

 

電話相手はお察しの通り、あの方である。

 

実は幼少の頃、母の葬式の際に御爺様の伝手で顔合わせをしている。

 

小父様が母の学生時代からの後輩だった事に驚きを隠せないのだが…

 

その関係から九浄家の財産並びに遺産管理をして頂いている。

 

ちなみに今回のこの方は反コーディネーター運動はしておりません。

 

何故なら、その先駆けとなった諍いに学生時代の母が介入した為である。

 

DQNないじめっ子コーディネーター達を相手に到底人間業とは思えない荒業、モザイク修正要の惨状、その後の真っ黒い後始末などが鮮やかに行われたらしく…

 

それからの付き合いだそうだ。

 

因みにアカシックレコードで調べたらDQN共の屍の山の上にオホホな笑い声で佇む紺のセーラー服姿の母のシルエットの記録がありました。

 

何だか竹刀とかヨーヨーが似合いそうな一場面です。

 

母さん、青春謳歌の学生時代に貴方は何をやっているのですか?

 

 

「……才色兼備でおしとやかな母のイメージが何処かへ逝きそうです。」

『実子の前で自分の黒い歴史を出さないと言うのが親と言うものですよ。』

「本当ですね。」

『では、本題と行きましょうか?』

「はい、実は…」

 

 

私が小父様に伝えた事。

 

ヘリオポリスに納機される五機のガンダムの件。

 

それらにある細工を依頼した。

 

どうせ、いろんな人の手に渡ってしまうのだから別に細工位いいでしょう?

 

対価はそれらの発展型の改良データ。

 

いずれ必要になってくるので秘密裏の依頼だ。

 

例の老人達を出し抜いて貰わないといけないのでその保険である。

 

念の為、ホルトゥスを通して小父様の警護も付けている。

 

 

『何となくですけど、君も母君に似てきましたね。』

「そうですか?」

『やり方は大人しめですが、少量で飛び散らせる火花の量は膨大…母親譲りですよ。』

「よく言われます、母を知る人には母に似てきたと…」

『…(それでも君の隠す苛烈さは母君以上ですけどね。』

「例の四月の件はホルトゥスに依頼してあるので大事にはならないと思います。」

『判りました、君も気を付けてください。』

「はい、気を付けます。」

『最後にですが、僕の不祥事で犠牲となった彼らを救って頂き感謝します。』

「直接ではなく遠回しです…私は情報を与えただけにすぎません。」

『判っていますよ、彼らの今後はこちらで調節しますし…場合によっては君に助力を願う事もあるかもしれません。』

「その時はその時です。」

『では、失礼するよ。』

 

 

私は最後の言葉と同時に通信を切った。

 

例の事を思い出したらムカついてきたから、バイオネットの施設に地獄の二人組でも差し向けてやろうかしら。

 

それはそれで楽しそうだけどね。

 

タヌキやキツネになるつもりはないけど、これだけはどうにもなりません。

 

 

******

 

 

一方その頃。

 

シロガネ艦内、ATXチームの分隊室にて。

 

深刻な表情で話を続けるキョウスケとアクセルの姿があった。

 

ハスミは自室にエクセレンとロサは休憩所へ居る為、二人のみである。

 

 

「どう思う?」

「どうもこうも、あれはヴィンデル達の仕業だろうな。」

「ブルーロータスの介入で被害は防げたが…」

 

 

二月十四日に発生したプラントへの核攻撃事件において。

 

 

『何者かが連合軍のタカ派を先導しプラントに核攻撃を開始したのです。』

 

 

突如送られてきたホルトゥスからの暗号通信。

 

ブルーロータスからのメッセージであり深刻な状況でもあった。

 

 

『我々ホルトゥスもその妨害の為、行動を開始します…どうか鏡に映る影にお気を付けて。』

 

 

しかし、対応に遅れた連合軍の代わりにホルトゥスが介入し核攻撃は防がれたが、それでもプラント側に数名の死傷者を出した為に情勢は悪化しつつある。

 

その後、二月二十二日に行われる筈の『世界樹攻防戦』は例の猫事件が原因で頓挫した。

 

逆にプラント側が報復として起こしたエイプリル・フール・クライシス事件が原因でナチュラルとコーディネーターの開戦は防ぐ事が出来なかった。

 

双方ホルトゥスの介入で未遂に終わってはいるが、戦争継続を願う者達の思惑はより一層表面化しつつあったのだ。

 

 

「ヴィンデル達の目的が変わった訳じゃない、別の場所から狙ってくるだろう。」

「元鞘として、奴らは今後どう出る?」

「恐らくここへ送り込まれてくるだろう、W17……ラミア・ラヴレスがな。」

「記憶があると思うか?」

「そこまでは判らん、覚えていたとしても奴がボロを出すとは思えん。」

「そうか。」

「しばらくは様子見と行くしかない、これがな。」

 

 

その発言直後に発生した戦闘で件の存在と再会したのはまた次回へ続くのだった。

 

 

=続=

 

 




不透明な平穏に戻った幼子達の日常。

新たなる波と出会い、別れ。

次回、幻影のエトランゼ・第一六話 『日常《ニチジョウ》』


子供達の日常を汚す影を祓え。


<今回の用語>


※猫事件

閑話・伍 『猫日《ネコノヒ》』を参照。
二月二十二日に陽昇町で起こったアークダーマの騒動。
地球圏全域で人が猫化(猫耳尻尾のみ)する現象が発生。
徐々に人類が猫化の危険性があったが、一部の地球防衛軍により事件は終息。
色々と羞恥心が晒される日でもある。
記憶を持つ者にとって同時に『世界樹攻防戦』の危機を防いだので余り悪く言えないとの事。


※ATXチーム

L5戦役後に隊員の再編成がされ、所属人数は八名(内一名はサポートロボット)である。
隊長であるゼンガーは別件で不在、ブリッド、クスハの両名はテスラ研へ出向中。
現時点で部隊は五名のみとなっている。
なお、キョウスケ中尉が隊長代理、アクセル中尉が副隊長を務めている。

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