幻影のエトランゼ   作:宵月颯

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突如発生した地球規模地震。

希望の光は散り散りとなり…

世界と言う鏡は割れた。



第一七話 『異変《イヘン》』

四月の後半を迎えたある日の朝。

 

それは唐突に発言された。

 

 

******

 

 

「…(いくらなんでも早すぎる!」

 

 

別件でATXチームから離れタウゼントフェスラーにて伊豆基地へ戻っていた私とロサ。

 

その日の早朝、アカシックレコードから新たな情報がもたらされていた。

 

 

「…(よりにもよってZ事件とベルターヌ事件のダブルブッキンクは無茶振りし過ぎでしょう!」

 

 

猶予は三日間、三日後に二つの事象が発生するとの事だった。

 

私は個室に念の結界を張ってから携帯端末を取り出し、連絡を取った。

 

 

「ブルーロータス。」

『ハスミ、一体どうしたのですか?』

「拙い事が判明しました、監視対象AとBに『魔導師』と『狩人』を緊急派遣してください。」

『では…!』

「派遣後は彼らに監視を続行、三日後にそれは起きます。」

『判りました、直ちに最優先派遣を致します。』

「お願いします。」

『ハスミ、貴方はどちらへ?』

「伊豆基地経由で梁山泊に向かう予定になっているのですが、その道中で例のお遊びに付き合わされる予定です。」

『…今後の動きは?』

「プランBのまま行動、A、Bの確保が出来なかった場合はプランAで行動してください。」

『プランCは?』

「まだあの三体を動かす訳には行きません。」

『判りました、引き続き待機させます。』

「頼みます、あの黒い基地外にこちらの手の内を見せる訳には行かないので…」

『黒い基地外?』

「黒の天才と言うべきでしょうが、私とすれば基地外としか言いようがありませんよ…」

『はぁ…?』

「私からの要件は以上です。」

『判りました、お気を付けて。』

 

 

私は一度目の通信を切った。

 

二つ目の連絡を加える。

 

 

「小父様。」

『ハスミ君、こんな夜更けにどうしたのですか?』

 

 

こちらが早朝であれば向こう側は深夜の為、この様な発言になっている。

 

 

「予測通り、三日後に地球規模で大地震が発生します。」

『何ですって?』

「ただの地震じゃありません、例の侵略者と時空転移を伴う事象です。」

『魔物の再来ですか…厄介ですね。』

「例の武装はどうなっていますか?」

『滞りなく地球防衛軍に行き渡る様にしてありますよ。』

「判りました。」

『君はどうするつもりですか?』

「例のお遊びに付き合う事になりそうです。」

『そうですか、貴方も大変ですね。』

「いえ、出来る限りで良いです…各地の防衛配備を急がせてください。」

『ええ、上層部にも声掛けはしておきますよ。』

「判りました、夜分遅くに失礼しました。」

 

 

二度目の通信を切ると自分の足元の影に違和感を感じた。

 

恐らくは彼だろう。

 

 

「さっきの話を聞いていたのなら貴方の御主人様の元にも伝えて貰えますか?」

 

 

理解したのか足元の影はゆっくりとドアの下から外へ出て行った。

 

 

「…(呼炎灼を監視に付けるってどういう神経しているんだか。」

 

 

******

 

 

その後、私達はタウゼントフェスラーの不調もあり予定通り伊豆基地に待期となった。

 

量産型ヒュッケは向こう側で乗り換えをして居る為、愛機と共にこちらに居る状態だ。

 

まあ、こっちじゃないと本領発揮出来ないし。

 

いざという時の為に必要であるのは変わらない。

 

いつもの様に訓練を終わらせ、今までの報告書を纏め上げて提出。

 

後は、半休を頂いて小説のデータを担当宛に送ったりなどをしていた。

 

丁度、こちらに戻ってくるのと同時に注文して置いた宅配便が届いていた。

 

まあ、食品なので監査に引っかからなかったのも幸いだろう。

 

 

「丁度切れてたから届いて良かった。」

 

 

注文したのは『夜空や』と言う行きつけの喫茶店兼菓子販売店である。

 

そこのキャンディセットなどを注文していたのだ。

 

透明な藍色の球体のポットの中には太陽、月、星、天の川の四種類の形のキャンディと金平糖が入っている。

 

後は長方形の缶ケースに収められた星座のマークが入ったクッキーである。

 

前回の戦いの際には幼少組に分けてしまったのでご無沙汰であったが、ようやく購入の目処が経って大人買いに走った次第である。

 

こんな悠長な事をしている状況ではないのだが、例の侵略者が地球へ進軍してこない以上は下手な動きは出来ない。

 

刺激するよりは様子を伺う事に決めた。

 

第一に連中は封印が解かれなければ本領発揮が出来ないがダメージを与えられない不可視の状態だ。

 

そして例の封印が緩むのがその三日後。

 

効率のいい相手を送っておいたので大事にはならないと思いたい。

 

 

♱ ♱ ♱ ♱ ♱ ♱

 

 

それから三日までの間に幾つかの事件が発生した。

 

まずは鉄甲龍からの宣戦布告。

 

国際電脳はこれが切っ掛けで株価暴落の末、倒産。

 

これに対してクリムゾングループが躍り出ようとしたが、またもや娘の不祥事により頓挫。

 

結局は別の企業が参入する事でネットワークの安全は保たれつつあった。

 

百鬼帝国の進撃。

 

現在は各地のスーパーロボットチームが対応、新たな仲間も加わったとの事だ。

 

ヘリオポリス崩壊。

 

オーブが自治権を持つ中立コロニーは連合とザフトの小競り合いに巻き込まれ崩壊。

 

死傷者は軍人を除いて無しと言う事例が出ている。

 

蒼い睡蓮の介入か?とささやかれている。

 

そして街に蔓延しつつある謎の影。

 

手に負えない相手との事で特車二課がブレイブポリスと合同で対応。

 

正体は過激派組織が保有する研究所から逃げ出した生物兵器との事である。

 

民間から五名の死者が出ており、早急に対処が求められた。

 

その後、旧国際競技場跡地で射殺されたとの事だ。

 

これらが三日間で起こった事件だ。

 

 

 

「はぁ、拙ったな…」

 

 

予定の三日後、ブルーロータスの連絡では『魔術師』と『狩人』の介入で監視対象AとBを確保した者の…

 

監視対象Aから謎の物体が四つ程、敵に奪われてしまったとの事だった。

 

そして監視対象Bも負傷しており、現在は治療中との事だ。

 

 

「曖昧な封印の解呪か、通りで例の事件と混合されたと思ったよ。」

 

 

中途な結末を迎えた為に二つの事件が重なる事で今回の事件は起こる事になった。

 

その予兆として既に地球が震え始めている。

 

 

「だけど…お遊びはキッチリやらせて貰うよ、エンドレスフロンティアでね。」

 

 

私とロサはタウゼントフェスラーごとエンドレスフロンティアに飛ばされる事となった。

 

だが、次の話は私の居ない場所で行われる。

 

続報を待って欲しい所だ。

 

 

******

 

 

運命の三日後、地球規模で大地震が発生。

 

長時間における地震の後、地球は六つに割れ、マントルが肉眼で確認できる姿へと変わった。

 

太古の地球の姿の一つ、ベルターヌへと。

 

 

=続=

 




崩壊した世界。

新たな出会いと戦い。

二対の獅子は唸る。

次回、幻影のエトランゼ・第一八話 『獅子《シシ》』

黄金の獅子と黄昏の獅子は対峙する。


<今回の用語>


※夜空や
ハスミが気に入っている喫茶店兼菓子販売店。
一番人気は天体の形をしたキャンディセット。
エクセレンが完食してしまった際のハスミの表情は閻魔の形相だったとか…

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