対峙する獅子。
現れる最後の剣。
炎獄を纏う魔族。
始めよう、壮大な物語の一角を…
前回の話から三日後。
正確には三日目の正午頃の事である。
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地球規模での大地震発生から数時間後。
地球は各エリアとの通信が途絶。
尚、通信が不可能なのは宇宙と割れた先のエリアに限られる。
それ以外では通信が可能だった為、状況を把握しつつその処理に追われていた。
宇宙では地球を目視するだけでも異常な状態である事がハッキリと分かる。
マントル部分に支えられる状態で地球の地層が六つに避け、惑星として活動しているのが不思議な状態に変化しているのだ。
宇宙側からも地球への通信が途絶えた事により混乱を招いている。
だが、連合政府に変わっていた事で大混乱へは至らなかった。
予想された侵略者に備えて各コロニーごとに生産プラントや自立ライフラインの確立。
外敵が現れた際に共同で立ち向かえる様に軍備管理が徹底されていたのだ。
これは『L5戦役』を教訓としたもので実現された計画である。
ブライアン大統領は国防理事を務めるアズラエル氏の助言を受けて立案。
本来ならば地球と宇宙の垣根をどうにかしないと出来ない事だった。
だが、前回の戦いで人類は一つと成れた。
その兆しの一つだと思われる。
その為、混乱はあるものの…
不用意な混乱は敵に隙を作る事になる為、月と各コロニー群は外敵の脅威を危険視しつつ様子を伺う事になった。
ザフトも地球降下部隊との連絡が途絶えた事もあり、戦線を一時停戦。
敵は一時的に異星人のみとなった。
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現在の私はこちら側の世界に居る訳ではないので語り部の程度に説明させて頂きます。
今回の話は少々厄介な物語が介入している。
主軸の物語に別の事象が差し込まれる現象を私は『断章介入』と呼んでいる。
今回はこの『断章介入』が関わっている。
まずは断章介入の一つである勇者達の件についての説明から入ります。
L5戦役時の彼らは彼らの因縁となる相手と戦っており、表舞台には出て来なかった。
理由とすれば彼らの半分が異星人、そして地球の意思によって生み出されたからである。
その内の地球製は三割、勇者特急隊、ブレイブポリス、GGGである。
地球では地球防衛軍所属となっているが、彼らの力の源は彼らを慕う子供達やそれぞれの正義だ。
協力者であるその子供達やその家族、周囲の人々に危害が及ばない様にしなければならない。
もしも当時の汚職まみれの一部上層部の介入が行われれば、狙われるのは彼らだ。
そして子供達を人質に彼らに自分達の元で戦えと強要するだろう。
やろうと思えばやってしまうのが当時のタカ派の連邦軍上層部だ。
最悪の結末を迎える可能があった為に私はホルトゥスを通じて彼らが地球防衛軍へ参加する手筈を整えた。
地球を守ると言う大義名分の元で戦っていれば連中の介入は抑えられる。
察して頂く様に彼らがL5戦役の一部の防衛戦並びに最終決戦のみで他の戦いに介入しなかったのはこれが理由である。
しかし今回ばかりはそうはいかない。
ノードゥスの月の防衛戦線奪還作戦時に月に前線基地を構えていたグランダークを倒した勇者達。
グランダークはその戦いで再び封印された。
だが、グランダークの放った負の念がとんでもない代物を呼び起こした。
それが今回の事件の原因の一つである。
正直に言えば、この負の念…
その場に居れば相殺する事は可能だった。
だが、無限力の介入で私はセフィーロと物質界に飛ばされてしまった事で相殺する事が出来ずに逃がしてしまった。
その為、今回の事件の一端を担ってしまったのである。
正直、頭が痛い。
頭痛にノー○ンをプリーズである。
そう言う訳でL5戦役後、私はホルトゥスを通して事件に関わる予定の彼らに監視を付けていた。
まさかの大当たりを引いた訳である。
しかし、事は旨く行かずと言うモノで取り逃がしと不完全なベルターヌを再現させてしまったのである。
不完全なので予想もしなかった介入が起こってしまったのである。
それがZ事変の一つである獅子の話だ。
元々あちら側の並行世界群は例の御使いのお遊びの関係で次元境界線が不安定になっており、飛ばされる事が多々起こっていたのである。
知っていたとは言え、本当に嫌な気分になる。
皆さんの言葉で今回の事を要約すると今回の話はランドルート序盤と変異したベルターヌ事件、インスペクター事件のお話の同時勃発である。
これにSEEDの早期介入だ。
問題山積み。
で、前と同様に先回り出来ない様にエンドレスフロンティアに飛ばされた訳である。
とりあえず、転移先で野良アインストを生身で切り刻んでストレス発散しております。
それに…
あちら側にはシュテルン・レジセイアの残骸があるのでどうにかしないとですしね。
では、今回の話をどうぞ。
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一方地球では…
地球の日本列島を中心にその下に位置する赤道直下の島々が残ったエリア。
通称、第一エリアにての状況。
大地震後の混乱は収まったものの新たな敵の介入が始まった。
震災後に突如として現れた『魔族』である。
彼らは人間はおろか進軍を開始していた百鬼などの地下と宇宙の敵勢力までも見境無しに襲撃している。
これにより地球における戦線は大混乱に陥った。
昼夜問わずに『魔族』の徘徊に怯える日々が始まった。
ある程度の迎撃は今の人類には可能であるが大地震に因るエリアの分断によって物資の供給原が断たれた。
いずれ食料や弾薬などの供給物資が滞るのも時間の問題だろう。
その為、『魔族』により現在も物資供給が可能なプラントを中心に襲撃を受け続けている。
人類から生きる希望をもぎ取る為に…
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「ここはどこだ?」
「ダーリン、私達…また飛ばされたのかな?」
「かもしれねえ、ビシニティとは違った街だしな。」
地球の日本列島、関東地方の都市部に位置する新宿。
そこに一体の機動兵器が現れた。
オレンジ色の装甲に工具を巨大化させた機器を所持していた。
機体の名はガンレオン。
つい先程、この地球に飛ばされた並行世界の者達である。
「メール、周囲の様子はどうだ?」
「何か震災と戦闘が同時にあったみたい、あちこち崩れたり壊れている建物が多いし。」
「こっちでも小競り合いか何かが起こっているのか?」
「うーん、わかんない。」
ガンレオンから索敵をし、現状を報告するメール・ビーターと言う少女。
外見は小学生だがれっきとした15、6歳の女の子である。
状況を知らない相手から見ればロリ○○と言われてもおかしくはない容姿だ。
そしてガンレオンのメインパイロットを務めるランド・トラビス。
元の世界では『ザ・ヒート』若しくは『ザ・クラッシャー』と呼ばれる修理屋である。
その異名は本人が暑苦しく、時折見せる壊し屋の様な表情から取られている。
二人はアウトローがさすらう様な荒廃世界にて『ビーター・サービス』と言う修理屋をやっていたが…
その世界でも小競り合いと言うモノは付き物で、日々戦う事も余儀なくされる事も多かった。
慣れと言うモノは恐ろしい。
「ダーリン、周囲に反応…ここに向かって来てる。」
「鬼が出るか蛇が出るか。」
「まさかお化けとか?」
そこに現れたのは炎を纏った異形の存在。
「と、思ったら化け物だったよ!」
「な、何だよあいつらは!?」
その異形こそ、このエリアに進軍している魔族の一角。
名をブレアと言う。
「何だぁ?妙な気配があったと思ったが…ただのガラクタじゃねえか?」
「ガラクタだってぇ!?」
「あん?それともポンコツか?」
「パパのガンレオンをポンコツですって…ダーリン!」
「ああ、俺達を怒らせた事を後悔させてやるぜ!!」
「いいねえ、倒し甲斐があるぜ!」
チンピラの様な性格上、やる事が汚いのがこのブレアの特徴である。
攻撃の合図と同時に配下である下級魔族を呼び出したのである。
彼の配下、炎魔ラプトルである。
「だが、この俺様の軍団に勝てるかな?」
「ダーリン、ちょっと数が多いよ。」
「多勢に無勢って奴か。」
「ヒャッハー!さっきまでの威勢は何処へ行ったんだ?」
しかし、この状況を覆す存在もまた居るのだ。
「そこまでだ!」
「ちっ、勇者共か!?」
「ダーリン、あれ!」
「ライオンだと?」
現れたのはこの地を守護する勇者達、しかしその半数は先程の震災の余波に巻き込まれ散り散りになってしまっている。
この場に居るのは転移を免れた勇者達である。
GGGのガオガイガーを筆頭としたGGG機動部隊、VAREの仮メンバーである。
他は先程の震災で逃げ遅れた民間人の救出へ向かっているので不在である。
「そこの機体、こちらで援護する…戦えないなら下がっててくれ。(あれが宗介達が話していたガンレオンか。」
「安心してくれ、こっちも尻尾を巻いて逃げる訳には行かねえからな!」
「同じライオンさん同士助け合わなきゃね。」
「判った、俺はGGG機動部隊隊長の獅子王凱だ。」
「俺はランド、ランド・トラビス。」
「私はメール・ビーター、ダーリンの将来のお嫁さんよ。」
「メール、今言う事じゃないだろう?」
「ランドさん、メールさんとは年齢的に少々問題があるかと思いますが?」
「だから違うっつうの!」
ボルフォッグの発言に対し毎度お馴染みのツッコミを訂正するランド。
「コントなら後にしな、俺は勝手にやらせて貰うぜ!」
「シズマ、無茶は止せ!」
「こっちは光達がやられているんだ、俺の一族の不始末は俺が着ける!」
「凱機動隊長、私達はシズマさんのフォローに入ります。」
「隊長はランドさん達をお願いします。」
「判った、任せるぞ…氷竜!炎竜!」
シズマの駆るセイバーヴァリオンを筆頭に氷竜と炎竜が周囲のラプトルに対し攻撃を仕掛けた。
「テメェの相手は俺達だ。」
「へっ、死にぞこないと一緒にテメェらも纏めて燃やしてやるぜ!!」
「ブレア、これ以上街に近づけさせはしない!」
ブレアの相手はガオガイガーとガンレオン、フォローにボルフォッグの布陣である。
しかし、相手は腐っても魔族の一角を統べる者。
そして業火を操る者である。
「喰らいやがれ!」
「何処を狙ってやがる!」
ブレアの腕が伸びランドの近場で地面に突き刺さった。
だが、凱はそれも攻撃手段である事を知っている。
すぐさまランドに通信を送る。
「ランド、そこから離れろ!」
「おわっ!?」
ブレアの伸ばした腕はガンレオンの足元に現れる。
回避していなければ機体毎燃やされていただろう。
「ちっ、ハズレか!」
「気を付けろ、奴らに並大抵の行動は通用しない!」
「おう、俺も少し油断しちまった…次は気を付けるぜ。」
「ダーリン、がんば!」
ガンレオンはチェイン・デカッターを構え、ガオガイガーはブロウクン・マグナムからのドリルニーで近接戦闘を開始した。
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同戦闘域にて。
「雑魚に構っている暇はねえ!」
ラダーブレードでラプトルを切り裂いていくセイバーヴァリオン。
後方から援護射撃を加える氷竜と炎竜。
「シズマさん、焦ってるな。」
「震災直後の戦闘で光さん達が負傷したのは自分のせいであると…今でも思い込んでいますからね。」
「あれは光達が自分の意思で庇っただけで…」
「それでも彼にとっては自分よりも年下の…ましてや女の子を傷つけてしまった事に罪悪感が出たのでしょう。」
「そう言うモノかな。」
「私達の超AIはまだ成長の途中です、人の心理を全て理解した訳ではありません。」
「複雑だね。」
「ごちゃごちゃ言ってる暇があるなら、こっちの手伝いでもしやがれよ!」
「私達に!」
「ぬかりはないぜ!」
双子ならではのコンビネーションで相手をし始めた氷竜と炎竜。
そして殿はセイバーヴァリオン。
三体の進撃は炎魔を一網打尽とする。
「ちっ、あのジジイめ…もう少しの所で!」
「ブレア、貴様の猛攻もここまでだ!」
「へっ、今日の所は引き下がってやるよ!」
ブレアは戦闘中の思念的通信にて不用意に人間を殺すなと彼らの上の存在であるゴーデスの指示で撤退。
本人は不快感しかないが、逆らう事は自らの破滅を呼ぶ行為なので仕方がなく命令に従った。
人間は彼らにとって餌の様なモノらしく、要は食糧が減るから攻撃は止めろと言うモノである。
「次はこうはいかねえぞ!首洗って待ってろよ!!」
ブレアは三流の様な捨て台詞を残すと爆炎を上げて撤退していった。
「一昨日きやがれってんだ!」
「ガンレオンを馬鹿にするからよ!」
「二人とも、詳しい話を聞きたいんだが…」
「そうだな、ここが何処なのかもわからねえし。」
「ダーリン、共々よろしくお願いします。」
ランド達は今後の行動を決める為に凱達の後に続いてGGGの基地があるGアイランドシティへと向かった。
これが勇者達の物語が紡ぐ、希望の始まりである。
=続=
無限力の遊戯の始まり。
それは飛び込みの出演者を迎えて行われる。
次回、幻影のエトランゼ・第一九話 『開拓《フロンティア》』
貴方との再会はこんなにも早い。