覚悟の果てに剣を構える。
そして現れるは赤き鬼神。
古の静寂は何を問う?
ガープの居城の障壁を破り、侵攻を開始した私達であったが…
突如として現れたアインストの集団と三つ巴戦に移行する事となった。
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「アインスト!何故ここに?」
「ハスミ少尉、奴らはあの大地震後に頻繁に現れる様になったので御座いますです。」
「以前遭遇した個体とは違う様だ、これがな。(やはり奴が来るのか?」
「では、L5戦役に遭遇した奴らは様子見だったと言う事ですか?」
「そうらしいわね、でなきゃこんな時に襲ってくるなんて思いもよらなかったもの。」
「…(流れはOGからINへ移行しつつあるのか?」
勇者チームをガープ居城内部に先行させ、進入路を死守する構えとなったATXチームと魔法騎士達。
現在侵攻を開始しているアインストはクノッヘン、グリート、ゲミュートの三種。
いずれにしても油断は出来ない相手である事は確かである。
「それにしてもアインスト達はどうしてここへ攻めて来たのかしら?」
「様子から察するに敵の味方という訳でもないようでありんす。」
「若しくは奴らが興味を示すものがここにあるかもしれん。」
「…(該当すると言えばエクセレン少尉を攫いに来たか、ここをストーンサークル化程度しか思いつかない。」
さっきの考えが当たって居れば、ここへ出て来る筈。
未だ気配がない以上は何とも言えない。
だけど、エクリプスを召喚した時の念消費が激しいし索敵に割りたい。
落ち着いて気配を探るしかない。
「殿は俺とクジョウが務める、エクセレンとラミア、ロサは援護を頼む。」
「了解。」
「任せて了解よん♪」
「了解でありんす。」
「はいです。」
「光ちゃん達はお姉さん達と一緒に戦艦の護衛をお願いね。」
「判りました。」
ソウルゲインとエクリプスがクノッヘンとゲミュートを翻弄。
その隙に艦への攻撃に適したグリートをヴァイスリッター達が片付ける算段となった。
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一方その頃。
ガープ居城の一室では。
「どいつもこいつもアタシの城を滅茶滅茶して…タダで済むと思わない事ね!」
普段の人を喰った様な様子は見られず、ただ怒りに任せて呪詛の様な言葉を紡いだ。
理由とすれば、前回ハスミがガープを退ける際に与えたダメージが回復していない為である。
未だガープの顔の傷は癒えず、切り傷だらけのまま出血が続いていた。
「あの機械人形乗りめ、よくもアタシの美しい顔に傷を…この痛みと怨みはあの女の命で償って貰うわ。」
風を巻き上げてガープは戦場へと赴いた。
そして勇者チームは城内部の潜入に成功したものの、城の主が見当たらず捜索を続けていたが…
既にガープは己の個人的な復讐の為に艦護衛の為に残ったチームへ攻撃を仕掛け始めていた。
それはエリア守護の任を放棄する事。
己の主であるバルドーへの裏切り行為でもあった。
「また会ったわね、人間!」
「わぉ、前会った時よりかなり怒ってない?」
「私が奴の顔面に傷を負わせたのをかなり根に持っているようですね。」
「その白い機械人形の乗り手?あの時の女ね…探す手間が省けたわ!」
ガープの怒りのボルテージは上がりつつあり、最早冷静さを失いつつあった。
「アンタだけはアタシの手で直接切り刻んであげるわ!」
「その傷に値する事を貴方がした、当然の報いと思いますけどね。」
「どう言う事でございますのですか?」
「アフリカの砂漠を彷徨っている時、道中でキャラバンの惨殺死体を発見しました…それも風で斬り裂かれた様な無残な姿でした。」
「っ!?」
「惨殺死体の中には女性や子供、老人も含まれていました、そこに居るガープは無残に遊び半分で…!」
「酷い…」
「何て事を。」
「アタシの庭でウロチョロしているのが悪いのよ、当然よ。」
「ふざけるな!弄んだ命の数の分…お前の罪を数えなさい!!」
「人間風情が…っ!!」
「その人間にそこまで手傷を負わせられたのは誰だ?そもそも貴様の声も気に喰わん!」
「はい、アクセル副長に声が似てらっしゃってますんで余計でありんす。」
「ラミアちゃん、それ言っちゃう?」
「クジョウ、遠慮はいらん!奴をここで仕留める!!」
「了解です、アクセル中尉。」
ガープへ再度攻撃を仕掛けるアクセルとハスミ。
エクセレン達は引き続き、台風男爵とアインストの相手を引き受けていた。
「ゆけ、玄武剛弾っ!!」
「そんな攻撃がっ!?」
「今のは囮、こちらからも受けて貰う…白月の斬撃!!」
玄武の甲が月牙の斬撃がガープを撃ち抜き、斬り裂く。
「怒りに任せた攻撃ではこちらの動きを読めないでしょう。」
「どいつもこいつもアタシに泥を塗って…もういいわ!この城諸共アンタ達を八つ裂きにしてあげるわ!」
「その台詞、打つ手無しか?」
「生憎ですが、私達の攻めはまだまだ続きますよ。」
ガープに必要以上の攻撃を加えて更なる怒りのボルテージを上げつつあるアクセルとハスミ。
その様子を戦闘を続けながらエクセレン達はツッコミの嵐をしていた。
「副長さんにハスミちゃんったら…えげつないわね。」
「しかし、敵にダメージを与えつつ油断させるには効果的なやり方だと思いますです。」
「ハスミ、すっごく怒ってた…キャラバンの人達のお墓作る時に絶対に敵を取るって話してた。」
「ハスミちゃんらしいわね。」
「…(ハスミ少尉、余り話した事は無いが彼女は冷静かつ情に深いのだな。」
「ハスミさん。」
「一緒にセフィーロを旅をした時もそうだったわね。」
「うん。(今なら解る気がする、ハスミさんは隠しているけど誰よりも優しすぎるって事を。」
台風男爵の集団へオクスタンランチャーの銃弾が飛び交い、イリュージョンアローが貫く。
炎の矢が氷の刃が碧の疾風が晶石の弾奏がアインストを斬り裂き射抜く。
「ぐっ…アンタ達、ここまで。」
「さて、ここで閉めさせて貰うぞ。」
「地獄の底で閻魔様の元で土下座して来なさい!」
二機の必殺技がガープを貫く。
「コード、麒麟!」
「陽の光、月の闇、それらを転じて無に帰す!双蝕ノ宴!!」
ソウルゲインの拳がエクリプスの双刀が唸りを上げた。
「シズマ、締めは任せたぞ!」
「そのつもりだ!!」
「アンタ、いつの間に!?」
「貴方を油断させている間にこちらへ呼び寄せたのよ、要は時間稼ぎって所ね。」
「こんな簡単に…」
ハスミはこの事を計算しアクセルと共に奥へと潜入してしまった勇者チームを呼び戻す為に時間稼ぎを行っていた。
救援に間に合ったセイバーヴァリオンの一撃によってガープは四散し配下である台風男爵も塵となって消失。
ガープの亡骸より緑色の発光体が出現しセイバーヴァリオンに吸収され消え失せた。
「風のアフェタ、回収終了。」
「残りは後二つか…」
「目的の一つを果たせた所で悪いけど、まだ敵が残っている事を忘れないで。」
「解っている。」
「…(原作でもそうだけど取っ付きにくい所は相変わらずね、瞬兵君がよく懐いたわ。」
風のアフェタの回収により風の力が復活。
残りのアインストを片付ける為に臨戦態勢に入る一行だったが…
突如として鬼火の様な物体と共に赤い鬼神が現れた。
「何なの、アレは!」
「恐らくはアインストの司令官だろう、これがな…(とうとう出て来たか。」
「…(アインスト・アルフィミィ、初めましてだね。」
「…」
「エクセレンさん?」
「ああ、ロサちゃん…どうしたの?」
「急にエクセレンさんの意識レベルが低下したので…」
「あらら、さっきの戦闘で疲れちゃったのかしら?」
「エクセ姉様、戦闘続行が不可能なら艦の方へ戻られた方が宜しいのでございますです。」
「大丈夫よ、ラミアちゃん達やボクちゃん達が戦っているのに休んでられないわ。」
「無理はしないでください。(やっぱりアインストの呼び声に反応しているのか?」
「解ってるわよ、大丈夫だから気にしないでね。」
赤い鬼神ことレッド・オーガの出現と同時にエクセレンの意識が一瞬途切れた。
仲間達の声で意識を取り戻すものの本人の不快感は拭い去った訳ではない。
「…(だったら、早く決着を付けないとエクセレン少尉のアインスト化が進行してしまう。」
ガープとの戦いでエクリプスの力を使い過ぎた。
どうであれ早期決着に持ち込まないと…
風の力が戻った分、風のウィンダムやマイトガインの力も戻った。
無理強いしなければ勝てるはず。
「ガイン、今までのアインストとは様子が違う…気を付けるんだ。」
「了解、舞人。」
「北斗、行けるか?」
「大丈夫だよ、銀河。」
「銀河君、北斗君、アムロ大尉の情報通りならあの赤いアインストには注意するんだ。」
「「了解!!」」
「…(この舞人君、もしかして?」
「ハスミさん、どうかしましたか?」
「ううん、何でもないわ…(調べてみる必要があるかな?場合によっては例の記憶が蘇っていると思うし。」
「ガープとの戦闘で何かありましたか?」
「ちょっと子供には聞かせられないR指定の話をね、気にしないで頂戴。」
「R指定ってもしかしてアレか?」
「多分、映画とかである大人のみ閲覧可能な奴だよ…ほらスプラッターとか多いと付けるし?」
「ああ、あっちか…そうだよな。」
「…(貴方達、やっぱり転生してると神経図太くなるわね。」
こう転生者が多いのはそれだけこの先に待ち構えている試練が過酷である事を教えてくれている。
そうだよね、転生している人達も私も言えない事を一杯している。
眼を瞑りたくなる事も背けたくなる事も色々あった。
いずれ起こる封印、終焉、破界、再世、時獄、天獄の戦いで私は止められるのだろうか?
それでも止めなくてはいけない。
この世界に転生した時から決めていたのだから。
私はやり遂げて見せる。
だから、ケイロン…見守っていてください。
貴方の望む罪の清算を必ず叶えてあげるから。
「キョ…ウ…スケ…」
「えっ!?」
「喋った?」
「…(やはり、アルフィミィか。」
「この前まではエクセレン少尉にのみ聞こえていた声が…何故?」
「…(成程、この件は例のお話の中盤に差し掛かっているのか。」
赤い鬼神ことレッド・オーガと戦闘を続ける一行。
エクセレン少尉とこの場に居ないキョウスケ中尉に聞こえた声。
それが普通の人間にも聞こえる様になったのだ。
だが、ハッキリとした感情表現はなく虚ろな様子である。
暫く戦闘を続けた後、レッド・オーガはその場から撤退してしまった。
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無事、ガープを倒した一行はトリントン基地へと帰還した。
しかし、トリントン基地も例のアインストと共にザフト地上降下部隊が進行。
こちらでも三つ巴となってしまった。
何とか防いだものの再び狙われる可能性がある為に駐留部隊を分ける事となってしまった。
ガープを倒した事により次のエリアへのバリアが破壊出来る様になったが、新たな弊害も出てしまったのである。
そして砂漠の戦いはこれからも続く。
その予兆が脳裏を過ぎるのだった。
=続=
次の大地を目指す一行。
そこで出会うのは希望か?絶望か?
鏡に映る影が姿を現す。
次回、幻影のエトランゼ・第二十一話『影鏡《シャドウミラー》前編』。
選択はいつも理不尽が伴う。