幻影のエトランゼ   作:宵月颯

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人は誰しも心に光と闇を抱える。

どちらも対等に天秤で等しく釣り合う様に。

どちらかが極端は稀。

そして心に光の闇と闇の光を持つ者。

それを持つ者は常人ではない何か。

人の形をした何かである。


第三十一話 『決心《ケツイノココロ》前編』

第六エリア。

 

地球・南米アマゾンを中心としたエリアである。

 

だが、アマゾン特有のジャングルを見る事は出来ない。

 

ココにあるのは闇。

 

戦乱によって滅んだ街や都市の瓦礫が黒い闇の海に沈む様な世界。

 

それが広がっているのだ。

 

 

******

 

 

エリア内を探索中、敵と遭遇しつつ対処して行くノードゥス。

 

このエリアの主である闇の魔物・ネクロ。

 

奴はこちらとの戦闘を行わず、逃走を続けている。

 

道中で今まで倒してきたブレアら四人の魔族を復活させ差し向けて来た。

 

だが、一度倒した事のある相手の為かこちらが不利になる事は無い。

 

奴らを倒しつつノードゥスはエリアの奥へと進む。

 

しかし、ここで予測していた事件が発生した。

 

エジプトエリアとここ第六エリアにGGGが追跡していた原種が逃げ込んだと知らせが入った。

 

前と同じであればココに入り込んでいるのは腸原種と鼻原種の二体の筈だ。

 

GGGは協力者であるソルダートJ一行と部隊を分けて二か所の原種に対応する事が決定。

 

ノードゥスはGGGメンバーの救援に向かうチームとネクロを追うチームに別れる事となった。

 

ノードゥスの記憶保持者達が不在のまま戦いは激化する。

 

私達はネクロを追うチームに組み込まれ、奴の足取りを追跡する事となった。

 

 

「…」

 

 

配置換えで私とロサは元のATXチームへ戻った。

 

現在のATXチームはギリアム少佐が隊長代理を務めている。

 

前回も説明した通り、ゼンガー少佐と合流出来ておらず、キョウスケ中尉とエクセレン少尉はMIA、アクセル中尉は合流前に次元震で行方不明のままだ。

 

現時点でATXチームを纏める者が居なかったのでギリアム少佐が代理を務めているのだ。

 

現在、そのギリアム少佐から例の件に関して話して欲しいと強く命令されている。

 

それは今まで隠してきた私の過去の記憶に関してだ。

 

 

「クジョウ少尉、話して貰えないだろうか?」

「申し訳ございませんが、答える事は出来ません。」

「制約に関してはテンペスト少佐…君の御義父上から説明は受けている。」

「!?」

「それに俺自身にも過去の記憶とやらは持ち合わせていない、制約に当てはまらないと思うが?」

「…知ってどうするつもりですか?」

「どうするか…では、君自身はどうするつもりだ?」

「…真の敵を倒す為に私は今の道を進みます。」

「真の敵?」

「…『混沌』あるいは『破滅』あるいは『虚無』あるいは『御使い』それらを形作る者。」

「それは一体?」

「人の認識と理解を越えた先に潜む者、私が戦う相手とはそう言う存在です。」

「…(もしや…リュウセイ少尉の語った、いずれ侵略を開始する者達か?」

 

 

人は物事を認識しそれらを理解する事で知識と成す。

 

その見識すらも超える存在からあの人を大切な人達を世界を守るのが私の願い。

 

私自身がこの世界において異物で拒絶されたとしても。

 

 

「その様な存在とたった一人で戦うのか?」

「一人ではありません。」

「どういう事だ?」

「それはいずれ説明します…今は互いに道は違えど、やがて行く先は交差し結び着くからです。」

「つまり、我々が手を組む事…今はその時ではないと?」

「はい。」

「何故だ?」

「現時点で手を取り合うと先のカイメラ隊と同じ状況に成り得るからです。」

「志同じくする者を一つに纏めてはならないと?」

「その通りです、こちらの手の内が判れば敵の目標が絞れてしまうからです。」

「だからこそ我々が手を取り合うのは早すぎると言う事か。」

「申し訳ございません、私が現時点で伝える事が出来るのはここまでです。」

「済まない、時間を取らせたな。」

「いえ、ご理解頂きありがとう御座います。」

 

 

ギリアム少佐、お願いですからお義父さんを余り精神的に苛めないで欲しいです。

 

私の我が儘に付き合わせているのは解っています。

 

だから、その時が来るまでそっとしておいてください。

 

過剰な情報漏洩は周囲を混乱させるだけですから。

 

 

******

 

 

一方その頃。

 

合流と無事だった記憶保持者達での会議が行われていた。

 

現在無事なメンバーは宗介、万丈、ロジャー、キラ、アスランの五名である。

 

 

「お久しぶりです、皆さん。」

「キラ君も無事で何よりだよ。」

 

 

帰還したキラとその友人のアスラン。

 

二人とも記憶を所持しており、アスランに関しては記憶を持っていても慎重に動いていたとの事。

 

色々と手を回そうとしたが、上官であるラウ・ル・クルーゼの事もあり下手に動けなかった事もある。

 

今回の血のバレンタイン、世界樹攻防戦、ヘリオポリス崩壊など一通りの混乱はホルトゥスによって阻止されてしまっているので余り憂いはないのだろう。

 

 

 

「キラ、無事で何よりだ。」

「宗介、あの…他の皆さんは?」

「その事だが…」

 

 

第五エリアの主、アズラエル討伐後。

 

突如発生した次元震により記憶保持者達が巻き込まれ消失。

 

宗介自身は瞬兵と洋の咄嗟の判断で免れたそうだ。

 

巻き込まれた内の二人、D兄弟はGGGのオービットベース付近へ転移。

 

転移後の同時刻に発生した機界七原種との戦いに巻き込まれたとの事だ。

 

そしてラダムの刺客、テッカマンアックスと交戦。

 

道中、色々とあり彼の助力により融合した七原種の特殊シールドを打破。

 

スターガオガイガーとキングジェイダーの協力攻撃により七体の内五体を浄解する事に成功した。

 

が、テッカマンアックスはこの戦闘でクリスタルが破損。

 

彼の脳髄に寄生したラダム獣に関してはマイクサウンダーズ達の新ディスクの効果で除去された。

 

この新ディスク使用はぶっつけ本番だった事もあり後遺症など諸々の検査も含めてオービッドベース預かりとなった。

 

 

「…と、言う訳だ。」

「あの…凱さんとJさんも僕らと同じ様に記憶を持っていると言う事でいいんですか?」

「確認は取れている、L5戦役中もアムロ大尉達が動けない俺やGGGの獅子王凱にメッセージを送ってくれていた。」

「こうして聞くと記憶を持つ人達が集結し始めていると考えてもいいのか?」

「かもしれない。」

「僕の様に偶然…いや、意図的にこちら側に辿り着いたのもあるからね。」

「僕もL5戦役頃からブルーロータスに情報を提供して貰っていたが、ここまでの規模になるとは思わなかったよ。」

「様々な戦いの記憶を持つ者が集結し始めている…僕らが過去の世界で戦ったカリ・ユガの時の様な事が起こり始めているのかな?」

「多分な、若しくはジスペルの件もある。」

「改めて聞くと前世の僕らの戦って来た相手や僕らの知らない数々の戦い、それらが集約し始めていると思うよ。」

「ルイーナやフューリーの出現はキョウスケ中尉達から予期されているが、今の所ザ・データベースの姿は見えていない。」

「能々考えると僕らが前世で戦って来た相手って相当危険性の高い組織や集団ばかりですよね?」

 

 

キラの発言に他の四人は無言と化した。

 

先の様に前世で戦って来た敵がこの世界に出現する可能性が多く出て来たのだ。

 

ただでさえ、現在はインスペクター、アインスト、原種、ラダム、イバリューダー等々。

 

どんなに避けてもいずれ戦わなければならない組織は数多くある。

 

 

「確かに、転移して来たミリシャやフリーデン一行、エクソダス組、月光号クルーと一緒に彼らの敵も転移して来ている可能性がある。」

「…中でもコーラリアン達の出現だけは無いと願いたいね。」

 

 

コーラリアンの単語に青ざめるキラとアスラン。

 

あの鮮明に残る光景は思い出したくないのだろう。

 

 

「話を変えよう、以前ギリアム少佐からの連絡で僕が調査していた人物についてだが…」

「調査していた?」

「この艦に乗艦している人物、名前はハスミ・クジョウ君についてだ。」

「ハスミさんですか?」

「あの、アサキムを完膚なきまでに蹂躙したパイロットですね。」

「公式の記録の他に何かあると思って僕なりに調べてみた所、彼女にはとんでもない繋がりがあったよ。」

「繋がりですか?」

「彼女の先祖がエルザム少佐の先祖と同じくオーダーのメンバーだったのは知っているね?」

「それはキョウスケ中尉から聞かされています。」

「そこで…ガンエデンの話をしたいと思う。」

「ガンエデンってナシム・ガンエデンとゲベル・ガンエデンの事ですか?」

「そう、その二つのガンエデンの他にもう二体のガンエデンが存在したらしい。」

「もう二体のガンエデン!?」

「つまり、ナシムとゲベルが存在している可能性があれば…この世界にガンエデンは四体存在する事になる。」

「一体、何処からそんな情報を!」

「ガンエデンに最も関わりのある人物から直接教えられたよ。」

「関わりのある人物?」

「…孫光龍、彼本人からだ。」

「あの人が!」

「僕も最初は驚いたよ、何故彼が僕に接触して来たかは判らない。」

「彼は一体何を?」

「彼は『勝手に調べるのは構わないが彼女の邪魔だけはしないように』と忠告をして去って行ったよ。」

「彼女の邪魔ですか?」

「ああ、恐らくナシム…イルイ・ガンエデンの関する事だと僕も最初に思ったがそれとは違うらしい。」

 

 

万丈は光龍の忠告が誰からの言葉であるか不明だと説明した後、話の続きへと入った。

 

 

「これはギリアム少佐から直接依頼された事でね、僕はL5戦役後に地球各所でガンエデンに関係する伝説を調べていたんだ。」

「その結果、四体のガンエデンが存在する事が判明したという訳ですか?」

「そう、伝承によると白のナシム、黒のゲベル、残りの二体は紅のバビル、蒼のアシュラヤーと呼ばれていた様だ。」

「バビルにアシュラヤー。」

「バビルに関しては今は説明出来ない、相手が悪すぎる。」

「では、アシュラヤーは一体?」

「その情報をギリアム少佐に伝えた所、アシュラヤーに関して拙い事が判明した。」

「拙い事?」

「L5戦役時、梁山泊でハスミ少尉がBF団に拉致された事がある。その時十傑衆の一人がハスミ少尉がアシュラヤーに選ばれたと発言していたとの事だ。」

 

 

「「「!?」」」

 

 

「それじゃあ…!」

「既に彼女が接触しているのであれば、蒼のガンエデン…アシュラヤー・ガンエデンの巫女は彼女と言う訳だ。」

「彼女が…!?」

「確かに強い強念者である彼女なら可能性はありますが…」

「ただ、これにはまだ続きがある。」

「続き?」

「このガンエデン達は古き時代に『御使い』、あの喜びのアドヴェント達から銀河を護る為に戦っていたらしい。」

「そんな事が…!」

「恐らくこの集約された事象の世界で過去にガンエデン達が戦っていたのが『御使い』もしくは『バアル』だった可能性もある。」

「正直、スケールが大き過ぎて追いつきません。」

「そのガンエデンとは一体?以前も説明を受けていますが自分にはどうも理解が。」

「後で説明するよ、とにかく彼女には十分注意しておいた方が良い。」

「敵かもしれないと?」

「それもあるが、イルイの事も含めて彼女がアシュラヤーに取り込まれる可能性もある事を危険視した方が良いね。」

「彼女、敵に回したくもない程に強くなりましたからね。」

「ましてや、戦闘経験が乏しいイルイとは違い…彼女はL5戦役を生き抜いた実力者だ。」

「つまり取り込まれたら最後、僕らで止めるのは至難という訳ですか?」

「最悪、そう言う事だよ。」

「本人に問いただそうにも彼女は遠回し程度に助言するばかりかはぐらかしている。」

「それは彼女にある制約が設けられているからだよ。」

「制約?」

「その為に僕らが記憶を持つ者である以上、彼女から直接話を聞く事は出来ない。」

「例の話したら宇宙崩壊の件に関わる事ですか?」

「そう、その要因でもある。」

「それならどうやって情報を?」

「記憶を持たないモノに情報を与えて代役に話を行って貰えばいいだけの事さ。」

「それが遠回しの助言ですか?」

「正解だよ。」

「それでも話せない事もあると?」

「恐らくは僕ら以上に今後の混乱に関して彼女は知っていると思う、確かな証拠はないけどね。」

 

 

話の最中に第一種戦闘配備のアラームが鳴り響く。

 

どうやら標的のネクロを発見したらしい。

 

彼らは奴を倒して今も戦い続けているGGGの救援に間に合うのだろうか?

 

 

=続=

 




人の心の闇。

闇の牢獄でそれは問われる。

次回、幻影のエトランゼ・第三十一話 『決心《ケツイノココロ》後編』

闇の中の光を見つけよ。

次の章に移る関係で見たい話。

  • エンデ討伐
  • アンチスパイラル戦
  • オリ敵出陣

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