幻影のエトランゼ   作:宵月颯

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決めたのならばそれでいい。

だが、決めたのならば覚悟を決める事。

それだけの重荷を背負う事を。

逆に共に立ち向かう仲間が居る事を忘れない様に。


繋の付箋

デボネアの覚醒と一度目の敗走が発生する少し前。

 

セフィーロの城では…

 

 

******

 

 

「光、こんな夜遅くに呼び出して申し訳ありません。」

「エメロード姫、二人だけで一体?」

「…貴方に大切なお話があります。」

「話?」

 

 

エメロード姫は静かに答えた。

 

 

「光、貴方に次代の柱を担って欲しいのです。」

「私が…柱に?」

「はい、勿論今までの私達が行って来た柱制度ではなく…貴方達、地球の人々の考えを取り入れたものを元に次の柱へなって貰えませんか?」

「待ってください、私に柱の資格は…」

「私が持つ柱の資格が貴方を選んだのです。」

「…(また私が柱に?でも…私は。」

「迷うのも無理はないと思います、ですので…私の方で時間を下さるようにお願いしました。」

「エメロード姫。」

「御免なさい、貴方に酷な事を二度も押し付けてしまって。」

「それはエメロード姫のせいじゃない、誰にだって…誰かを愛する事を止める事は出来ないもの。」

 

 

セフィーロの為に大切な人を愛していてもその愛した人の為に祈れない。

 

それがかつての柱に架せられた運命。

 

 

「光、貴方がランティスの事を愛している様に私もザガードの事を愛しています。」

「姫。」

「私が犯してしまった過ちを貴方にして欲しくない、だからよく考えて選んでください。」

「判りました、すぐにその答えは出ないかもしれない…だからもう少し待っててほしい。」

「はい、光…待っています。」

 

 

晴れない曇天の空の夜の元、エメロード姫は柱への選択を光に伝えた。

 

しかし、これが原因で光の心に淀みが産まれた。

 

知っていてもそれに手を伸ばす事への躊躇い。

 

そして翌日、デボネアの覚醒に伴う侵攻とエオニア一行の戦闘不能による敗走を余儀なくされたのだった。

 

その後、いろいろとあってデボネアを倒し北米大陸における決戦を終わらせた私達。

 

光はランティスに自らの思いを告げた後、光はエメロード姫に答えを伝えた。

 

光が告げた答えは『柱になる』と言う選択だった。

 

だが、その選択が次なる戦いで大きな役割を持つ事をまだ誰も知らない。

 

 

♱ ♱ ♱ ♱ ♱ ♱

 

 

そしてここでも。

 

中国大陸奥地に座する梁山泊。

 

そこへ因縁の来客が訪れていた。

 

 

「久しぶりだね、黄帝ライセ。」

「ビッグファイア。」

 

 

BF団を纏め上げるビッグファイア。

 

国際警察機構の総司令であり梁山泊の長である黄帝ライセ。

 

その二人が互いに顔を会わせたのだ。

 

 

「戦いに来た訳じゃない、話し合う為に来た。」

 

 

ビッグファイアは『信用できないとは思うが、君の影に隠れている者達の武器を収めてくれるかな?』と付け加えた。

 

それに対しライセも片手を少し上げると周囲に隠れていた者達は武器を収めて引き下がった。

 

 

「話し合うだと?」

「…そちらも気が付いているのだろう?」

「例の者達の事か?それともあの花の事か?」

「どちらもであるが、今回は違う。」

 

 

ビッグファイアは『僕がいつまでも知らぬ存ぜぬを認めると思っていたかな?』と付け加えた。

 

 

「…彼女の事か?」

「察しの通り、彼女の事だよ。」

 

 

ビッグファイアは何処か嬉しい様で軽い悪戯に困った表情で答えた。

 

 

「私も感じた、あの娘が動き始めたのだろう?」

「恐らくは…必要と考えた上でだろうね。」

「必要?例の者達へのか?」

「そう考えている、正確にはこれから起こる戦いを早期に終わらせる為の下準備。」

「薄々と何かしていると思っていたが、そこまで進行していたとは…」

「君は知っていたのだろう、彼女が…蓮華が死した後、幼いあの子が次代の巫女となった事を?」

「…ある例外を除いてはな。」

「例外?」

「あの娘…ハスミは歴代のアシュラヤーの巫女の中でも特に力の強い者だった。」

「だから封じたのか?その力を使いこなせるその時まで?」

「自ら望んでの事だ、あの娘も自分で判っていたのだろう。」

 

 

幼き身で強い力を持つ事はどの様な結果を生み出すか。

 

だからこそ来たるべきその日まで隠し通した。

 

 

「元々遺伝上の父親が不明の娘だ、一体何処からあれだけの力を持ったのか見当もつかん。」

「生前の蓮華が隠し通した秘密、ハスミの父親が一体誰なのか?」

「私の考えでは恐らく…」

「彼女は念者同士の子…だろうね?」

 

 

その場へ道化の様に現れた孫光龍。

 

 

「孫光龍。」

「アシュラヤーの護り手の僕を省いて密談とは中々頂けないな。」

「君がナシムを見限ったと言う事は本当らしいね。」

「そ、彼女の予言した通りナシムの考えでは本当にこの世界を救えないからね。」

「予言?」

「例の連中が動いているのは確認出来た、そして『聖戦』が始まってしまった事もね。」

「とうとう十二の宝玉の覚醒が始まったと言う事か。」

「今の所、僕が確認出来たのは『獅子座』と『乙女座』だけだよ。」

「ふむ…」

「話を戻すけど…くれぐれも彼女の邪魔だけはしないでくれよ。」

「そのつもりはない。」

「あの子から今の状況では奴らの思うツボと話しを聞いているからね。」

「ふうん、つまり長年の因縁をそっち置きにして手を組む事をにした訳か?」

 

 

ライセの発言にビッグファイアは自身の提案を受け入れたと受け取った。

 

 

「僕らの提案を受け入れてくれると?」

「あ奴らを倒す為には致し方ないのだろう?」

 

 

 

長き歴史の中で梁山泊とBF団はこの時休戦協定を結んだ。

 

 

(蓮華、本当にあの子は凄いよ…さすがは僕らの自慢の娘だ。)

 

 

その光景を眼にした孫光龍は普段着用している帽子の鍔を掴み目元を隠した。

 

 

=続=

 

 


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