幻影のエトランゼ   作:宵月颯

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再び始まる白き魔星での決戦。

戦いを変異させた存在は嘲笑う。

だが、諦めると言う言葉は今の彼らに存在しない。



第三十五話 『来星《ライセイ》前編』

セフィーロの激戦を終わらせたものの参戦する事が出来なかったジェネシス奪還作戦。

 

そのジェネシスは地球への発射直前と言う危機を孕んでいた為、即時破壊で終結した。

 

ノードゥスはその傷を引きずりながら奇襲を仕掛けて来たアインストと交戦。

 

救援に駆け付けたシロガネと合流し奴らを退けて今に至る。

 

そしてアインストに連れ攫われたエクセレンの奪還も成功し次の戦いに備える事となった。

 

この備えの為に修理と補給物資を積載したハルバートン率いる連合艦隊と合流。

 

その間に月と木星で無事勝利を収めたメンバーとも再会する事となった。

 

それぞれが無事であった事が何よりも救いである。

 

月ではラダム母艦と螺旋城は破壊されイバリューダーは前線司令官であるゾア総司令が倒された。

 

ラダムとガルファは地球侵略の要である中継基地を失った為に太陽系から撤退。

 

イバリューダーは復活したオーガンとリーブがその戦力を纏め、同じ様に地球から離脱していったそうだ。

 

木星では木星そのものを乗っ取った機械31原種の主が浄解した原種のコアを強奪。

 

木星のザ・パワーを吸収し猛威を振るった事により勇者一行は苦戦を強いられた。

 

だが、犠牲を出す事もなくその戦いを終わらせ地球へ侵攻しつつあったバルドーを打ち倒した。

 

双方もその戦いを終えて、こちら側へ移動を開始し修理と補給を受けていた。

 

この一連の行動に関して大統領であるエーデル・ベルナルはアラスカで手に入れた例の情報を元に戦線混乱を引き起こした罪で国際警察機構にその身柄を追われている。

 

現在解決すべき問題はインスペクターとアインストである。

 

エクセレン少尉は無事助けられたが、あのアルフィミィの事もあるので気が抜けない。

 

この数奇な巡り遇わせが何を生むのか…それはまだ誰にも判らない。

 

 

******

 

 

「ふう…」

 

 

私はブルーロータスから各方面へ派遣したエージェント達が無事目的を達成したと報告を受けて安堵していた。

 

Dボゥイの御兄弟であるケンゴさんはラダム母艦と同化していた為、ホルトゥスで預かる事にした。

 

同化部位を再生治療と組み合わせて除去したりと高度な医療技術が必要になってくる為である。

 

付き添いとして恋人であるフォンが同行している。

 

イバリューダーは治療を終えたオーガンとリーブが駆けつけた事で戦局は変異した。

 

彼らの定められた寿命を延ばす事は出来ないが、それでも寄り添って生きて欲しいと願う。

 

木星は心臓原種を木星のザ・パワーから引きはがす為にちょっとした荒業を披露して貰った事でJ一行の行方不明にならずに済んだ。

 

これはGGGに早期合流したルネ・カーディフ・獅子王…彼女の事があった為である。

 

恐らく、彼女はこの先に待つ結末を望まないだろう。

 

私はまた間違った選択を犯そうとしている。

 

それでも違う結末を見て欲しいと思ってしまうのだ。

 

バルドーに関しては完全に復活していなかった事もあり、再封印ではなく消滅に持ち込んだ。

 

再封印ではかつての繰り返しになってしまうので消滅させる方法を探していた。

 

結論から言えばそれが可能なのが『無垢なる刃』の力であり、二人を木星へ派遣したのだ。

 

これで永遠に戦い続ける運命を背負いそうになった彼らも少しは変わった未来を送れると信じたい。

 

流れは誰もが変えたいと願った未来へ突き進んでいる。

 

それでも手を伸ばしても届かなかった事もあった。

 

ここまでが人としての限界なのだろうか…

 

 

「ハスミ。」

「ロサ、どうしたの?」

「うん、ちょっと…」

 

 

メンバーが次の作戦までの間、一時の休憩に勤しんでいた頃。

 

例のくまさんパンツとかのアレです。

 

私は少しばかりの飲食を持って席を離れていた。

 

この時、展望エリアで私はロサと共に作戦前の話し合いを始めていた。

 

 

「それは本当なの?」

「うん、間違いないわ。」

「確かにダ・ガーン達は地球の意思によって生まれた勇者…アニムスの花を知っていても可笑しくは無いか。」

「それと命さんの事なのだけど…」

 

 

GGGの命さんが木星からの帰路の道中で体調を崩していた。

 

現在も病室で休んでいるとロサから聞かされた。

 

私はその事に眼を瞑った。

 

 

「そう、機界新種行きは免れないか…」

「…本当に大丈夫だよね?」

「それは凱さん次第よ、私達は彼らが浄解出来る様にサポートするしかないわ。」

「うん。」

「問題は次の作戦の事よ。」

「アインストだったね。」

「これから戦うアインスト達は恐らくアクセル中尉達の故郷である向こう側の戦力を複製してくる可能性がある。」

「エンドレスフロンティアで遭遇したアインストもそうだったよね…」

「一番恐ろしいのは向こう側の記憶を持つ人達を傷つけかねないと言う事よ。」

「傷つけかねない?」

「ロサ、貴方は…自分と親しかった人達と戦える?」

「…正直言うと怖い、でも止めなきゃいけないのなら戦う。」

「そう、なら…覚悟して置いて。」

 

 

私は覚悟を決めてロサに答えた。

 

 

「恐らく次の戦いでアインストが駒として動かすのは…」

「えっ!?」

 

 

それはハスミとロサの跡を追って隠れて会話を聞いていた者にも聞こえた。

 

ハスミは助言がてらに泳がせて置いたので特に気にしてはいない。

 

 

(何だと…!?)

 

 

同時に第一種戦闘配備の連絡が響いた。

 

 

♱ ♱ ♱ ♱ ♱ ♱

 

 

本来ならインスペクターとアインストの混戦の最中を狙ってホワイトスターに奇襲をかける作戦であったが…

 

今回は様子が違っている。

 

理由はインスペクターが仲間同士で混戦していた為であった。

 

恐らくは既に彼らの司令官がアインストしての頭角を現したのだろう。

 

直接の確認が出来ない以上は接触するしかない。

 

出撃後、私達はインスペクターの幹部が搭乗していると思われる機体に接触を試みる事となった。

 

 

「…お前ら手を出すなよ。」

 

 

アインストに乗っ取られていない彼らの代表としてメキボスと言う青年が話し合いに応じてくれた。

 

他の三人は腑に落ちない様な様子であったが、自分達が追い詰められている状況は理解しているのだろう。

 

手は出さず、傍観を続けている。

 

なお、メキボスの話し合いに応対しているのは今回の戦いの中で交戦経験のある万丈とイルム中尉である。

 

 

「つまり君達の司令官がアインストに変異し暴走を始めたと言う訳か?」

「ああ、そっちには好都合な展開だろうがな…」

「…そう言う訳で言った訳じゃないんだけどよ。」

 

 

ホワイトスターに乗り込む準備の為に出撃準備を済ませていたノードゥス。

 

月と木星で合流した地球防衛軍や駆けつけた前回のL5戦役メンバーも多い為、大所帯は相変わらずである。

 

 

「見る限り、色んな星系の連中を取り入れているらしいからな…話し合いに応じてくれて助かったぜ。」

「中には君達に故郷を奪われた事で敵意を持つ者も居る事を承知して置いて欲しい。」

「その件はこっち側で色々と事情があるんでな、今回は省かせて貰うぜ。」

「…(情報通りインスペクターは複数の組織が絡んでいるのか。」

「俺達は先遣隊の誤情報が原因でお前達に戦争を仕掛けちまった、追々正式な通達があると思うが謝罪させてくれ。」

 

 

メキボスの謝罪告白に動揺するインスペクター側の幹部達。

 

 

「メキボス…!」

「そう怒んなよ、ヴィガジ…今回の戦闘は俺達側に非がある。」

「…しかし。」

「俺達は銀河の法を司る惑星ブレイブの住人達に手を掛けちまった時点で各方面から問題視されているんだぜ?」

「アタイ達も下手すれば奪われた命だったのに地球人に助けられたからね。」

「…」

「シカログもそうだってさ。」

「アギーハ、シカログ…お前達まで。」

 

四人中三人が共闘の意志を見せている以上、不本意ながらヴィガジはその提案を受け入れた。

 

 

「だが、ホワイトスターや一部の軍事施設占拠の尻拭いだけはさせて貰う。」

「つまり、僕らの戦列に加わると?」

「虫が良過ぎるが…そうなるな。」

 

 

戦いは更なる奇跡を呼び込み。

 

そして繋ぎ合う。

 

 

******

 

 

一方、ホワイトスターでは…

 

 

「クッ!」

 

 

たった一機でアインストの大群を退けている者が居た。

 

 

「…アクセルの言葉が正しければ我らの世界を滅ぼしたのは貴様らか!」

 

 

シャドウミラーの最後の一人となったヴィンデルは蒼き影に叫ぶ。

 

 

「アインスト…ベーオウルフ、そして…マーチウインド!!」

「各機、噛み砕け…!」

 

 

=続=

 

 




純粋に染まった者達は鏡合わせの自分達と戦う。

それが己の真意で在ろうとなかろうと。

次回、幻影のエトランゼ・第三十五話 『来星《ライセイ》後編』。


呼び込んだ奇跡の多さは禍をも呼び込む。

抗うのは己自身。

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