幻影のエトランゼ   作:宵月颯

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黒の道化は己の遊戯の為に踊る。

だが、それを許すつもりなど無い。

私達が進む未来はより困難な道へと向かっているのだから。


第三十六話 『天災《ジ・エーデル》』

アインスト空間での戦闘後、元の宙域に戻ったノードゥス。

 

しかし目処前では最後の戦いが始まっていた。

 

地球への落下軌道に乗ったフィフス・ルナ。

 

それを破砕する為に各方面から集結した各組織の連合艦隊。

 

しかし、それを防がんとカイメラ隊の残存部隊や状況を見ても反応を示さない強硬派の艦隊が立ちはだかっていた。

 

だが、救いの手は差し伸べられた。

 

破砕を阻止しようとする敵勢力に対してホルトゥスが破砕妨害を行う敵勢力への攻撃を開始したのだ。

 

遅からず、阻止限界時間までに破砕活動は完了するだろう。

 

一方でノードゥスはUNステーションより離脱した黒のカリスマへの追撃命令が下っていた。

 

そこでノードゥスは地球防衛軍傘下の勇者部隊に破砕活動への参加を依頼。

 

残りは黒のカリスマの追撃へと向かったのであった。

 

 

******

 

 

しかし、航行道中にて…

 

往く手を遮る様に現れた黒い機体。

 

 

「あれは…!」

「照合確認、シュロウガで間違いありません。」

「周囲の機影はシュロウガ一体だけの様です。」

 

 

ハガネのブリッジにて行われる戦況報告。

 

 

「アサキム・ドーウィン、この期に及んでまだ我々の妨害をするのか?」

「黒のカリスマとの約束があるからね、邪魔はさせて貰うよ。」

「艦長、このままでは…」

「くっ!」

「ただ僕もそこまで愚かではない、君達に一騎打ちを申し込みたい。」

「一騎打ちだと?」

「ハスミ・クジョウ、彼女との一対一の決闘を申し込む。」

「名指しとは…。」

「彼女一人を置いて行けば、この場を通しても構わない。」

「艦長、どうされますか?」

「…」

 

 

アサキムの申し出に静まり返るブリッジに通信が入る。

 

格納エリアの待機室で待機していたハスミ本人からである。

 

 

『艦長、私からもお願いします。』

「ハスミ少尉。」

『このままここで立ち往生する訳にはいきません、お願いします。』

 

 

所々から反対の声も上がったが、緊迫した状況の為に納得せざる負えなかった。

 

 

「艦長…」

「判った、ハスミ少尉…アサキムの申し出を受けて貰いたい。」

『了解しました。』

 

 

私は念神エクリプスで出撃後、黒のカリスマ追撃の為に移動した艦隊を見送った。

 

 

「…アサキム・ドーウィン。」

「やっとだよ、君と本気で戦える…君もまた聖戦へ参加する者だからね。」

「成程、そこまで看破されてましたか…これも貴方の持つ『夢見る双魚』の力かしら?」

「知っているのなら話は早い、君の持つ『知りたがる山羊』を手に入れさせてもらうよ。」

「こっちが半殺しにしても飽き足らず、どこまでも風の様に自由な人ね…」

「さあ、始めようか!」

「どこまでも聞き分けの出来ない奴は嫌いなのだけど、仕方がないわね!」

 

 

互いに剣と刀を構えた後、黒き悪魔と白き武神は斬り合いを始めた。

 

 

 

♱ ♱ ♱ ♱ ♱ ♱

 

 

 

「全く、君もしつこいね。」

「それはお互い様と言う奴さ。」

 

 

黒のカリスマが逃亡先である宙域では既に戦闘が始まっていた。

 

黒の道化であるジ・エーデル・ベルナル。

 

白の道化である孫光龍。

 

 

「地上でも話した通り、僕は君に恨まれるような事を一切していないのだけどね?」

「君にその気は無くても君は既に僕の逆鱗に触れていたのさ。」

 

 

孫光龍はいつものポーカーフェイスで話しているが、その腸は煮えくり返っていた。

 

 

「僕の考えが正しければ君は世界を面白可笑しく壊す事だろう?」

「そーだよ、その考えに至ったって事は君も同じ考えを持っていたんだね。」

「以前の僕なら君の考えに賛同していただろうね。」

「ん?今は違うって事?」

「そう、君と僕の違い…それは僕にも護るべき者が居る、ただそれだけだよ。」

 

 

長き時の中で怠惰に生きるだけの生。

 

そんな中で護るべき者が出来た以上、僕は別の未来を探す。

 

それを教えてくれたのは亡き妻レンゲと愛娘のハスミだ。

 

僕にまた熱い血潮を滾らせてくれた二人には感謝しきれない。

 

だからこそ僕らも本気をだそう。

 

応龍皇!

 

 

「これは…?」

「応龍皇…君は?」

 

 

この時、応龍皇の手に蘇ったものがある。

 

遥か遠き過去の大戦で失われた筈の龍玉。

 

それも一時の復活かもしれない。

 

それでもこの先の未来を目指す事を…

 

明日へ希望を見出す事を決意した彼に与えられた力なのかもしれない。

 

 

「応龍皇…判ったよ、僕もこの世界の未来の為に戦おう。」

「こんな時に限ってパワーアップアイテムを手に入れちゃうの?」

「君の表現で言うならそう言う事だろうね。」

「面白い展開だけど、そうは問屋が卸さないってね。」

 

 

怒涛の展開に痺れを切らせたジ・エーデル・ベルナルも乗機カオス・レムレースで攻撃を開始しようとしたが…

 

 

「天に昇れ、応龍皇!」

「天に上るって…ここは!?」

 

 

応龍皇ご自慢の天候を操る術である祈雨興嵐。

 

その力も龍玉を手に入れた事により疑似結界を生み出し、カオス・レムレースを閉じ込めていく。

 

 

「龍雲海にようこそ。」

 

 

更に雲の結界よって身動きが取れなくなったカオス・レムレースに龍の雷撃が轟く。

 

 

「受けたまえ、応龍の雷槍を!」

 

 

カオス・レムレースを応龍豪雷槍が貫き、その姿を掻き消す。

 

だが、カオス・レムレースに搭載された疑似スフィアの力によって少なからず原型は留めた様だ。

 

 

「あの一撃でも倒れないとはね、流石は次元力と言うべきか。」

「ふふっ…アッハハッハハハ!」

「頭でも打ったかい?」

「いや~随分と面白いものが見れたよ、これが超機人の力かい?」

「君が知る必要はない。」

「なら、僕も本気をだそうかな?」

 

 

ジ・エーデル・ベルナルは疑似スフィアの力を発動させ並行世界の自分を呼び出した。

 

その数は三機。

 

流石の応龍皇も疑似スフィアとは言え搭載機が四機となると分が悪い。

 

 

「成程、君も隠し玉を持っていたって訳か…」

「さあ、仕切り直しと行こうか?」

「君にその必要はない。」

 

 

この宙域に現れた機影。

 

数は三機、順にシュロウガ、念神エクリプス、エリファスことカオス・カペルである。

 

 

「アサキム、それにツィーネ…君達、裏切るつもりかい?」

「裏切ると言うよりは僕にとって君の考えが邪魔になっただけさ。」

「ジ・エーデル・ベルナル、アンタは私が倒して見せる。」

「ツィーネ、その様子だと真実を知った様だね。」

「お陰様でね、アンタの絡繰りを知った以上は止めさせて貰う!」

「…(ノードゥスがまだ来ていない、となるとエウレカの件で足止めを喰らっているのか。」

「おや、君も生きていたんだ。」

「お陰様で、色々と遠回りになりましたがね。」

「まあ、もう一度倒…!?」

 

 

呼び寄せた並行世界のカオス・レムレース三機が突如爆散。

 

その事にジ・エーデルは顔を歪めた。

 

 

「ノードゥスがこの場に到着していないのなら本気を出してもいいと思ったので…」

「!?」

 

 

念神エクリプスの背後に現れた巨大な機影。

 

 

「ナシムが護女神ならアシュラヤーは戦女神……貴様の言う娯楽とやらに付き合うつもりはない。」

 

 

この時、ジ・エーデルは娯楽に満たされていた筈の心に恐怖が芽生えた。

 

だが、愚かにも目覚めさせてしまったのだ。

 

聖戦に語られた御使いと対峙した人の手によって生み出された四体の神々。

 

その一体である蒼き女神を降臨させてしまったのだ。

 

 

「あ…アッハハハっ!ハハハッ!」

「鎮め、重力の水底に。」

 

 

蒼き女神の一撃。

 

それが最後の一体となったカオス・レムレースを超重牢の水底に沈めた。

 

 

「…」

 

 

ハスミが呼吸を落ち着かせるとその様子を見ていたツィーネから言葉が漏れた。

 

 

「アンタ一体…」

「伝承に語り継がれた四体の機械仕掛けの神々…その一体か。」

「伝承って…アサキム、貴方が前に話していた?」

「…それ以上は口を噤んで貰いたいのですが?」

 

 

アサキムがツィーネに事前に説明したのか続きを話そうとしていたのでハスミが制止させた。

 

 

「それよりも奴の分身を倒した位で過大評価はして欲しくないですけどね。」

「分身?」

「正確には奴の疑似スフィアから発生した次元力で奴自身が並行世界の自分を呼び出したが正解ですね。」

「じゃあ、奴は…!」

「まだ生きているって事かな?」

「やれやれ、あの道化君が一体何人出て来るのやら…」

 

 

孫光龍の発言に対して似た者同士に言われたくもないと思うハスミ。

 

 

「奴の本体は何処へ消えたって言うんだい?」

「今頃、司令クラスター救助中のノードゥスが鉢合せしている頃でしょう。」

「例のコーラリアン達が守っている場所だったわね?」

 

 

レントン達の世界にあったスカブ。

 

ブレイク・ザ・ワールド後、第五エリアにあったのがベルターヌ解放後に不安定宙域に引っかかった状態で再出現。

 

早く次元修復を行わなければスカブは崩壊。

 

例え次元修復を行ってもスカブを失ったレントン達の世界は滅びるしかない。

 

それにフィフス・ルナの落下も何とか破砕活動を続けているが妨害のせいで遅々として進んでいない。

 

どちらもタイムリミット付の総力戦。

 

これはジ・エーデル・ベルナルの思惑だけで出来る代物ではない。

 

とうとう奴らも手を出してきたか…

 

 

「所で…この後はどうしますか?」

「出来る事なら私は奴との決着を付けたいけどね。」

「…僕も同意見だ。」

「おやおや、こうも早く纏まるとはね…」

「今は利害一致が成立しただけです、お二人は大元が倒されればスフィア狩りと復讐の為に動くで合ってますか?」

「それはないね、ランドやセツコも覚醒を果たしたが望んだ力は発揮していない。」

「…(せめてサード・ステージに上がってからって事ね。」

「私はもう誰かに振り回されるのは御免だからね、ケジメは着けさせて貰うよ。」

 

 

アサキムもツィーネにも敵意は無いと判断し話を続けるハスミ。

 

 

「…判りました。」

「僕はどうすればいい?」

「孫光龍、貴方は先んじて地球へ戻ってください。」

「どう言う事かな?」

「奴以上に厄介な案件が始まる可能性があるからです。」

「……了解したよ。」

 

 

ハスミは孫光龍に命令を下した後、アサキム、ツィーネと共に決戦の地へと向かった。

 

 

(今は祝杯でも挙げていればいい、いずれ潰してやるわ…クロノの道化共。)

 

 

その後、私達はノードゥスと合流。

 

少々問題もあったが、何とか受け入れて貰えた。

 

そのジ・エーデル・ベルナルも最後の一人だったらしく怒り心頭のノードゥスに勝てる見込みはゼロに等しかった。

 

その断末魔もお粗末なモノであったし…

 

ジ・エーデル・ベルナルが仕組んだスカブ崩壊のカウントはシュウ博士の機転で妨害されており、レントンはエウレカを救出する事が出来た。

 

しかし、二人は月に相合傘を描いた後に姿を消してしまったとの事。

 

同時に襲撃を仕掛けて来た頭翅と共に消えてしまったアポロとシリウス。

 

急な別れは辛いだろうが致しかたないだろう。

 

地球へ落下しつつあったフィフス・ルナも破砕が完了し敵勢力も散り散りになったとの事だ。

 

流れ流れた結末は様々な要因を残して静かに戦いの終わりを告げようとしていた。

 

同時に新たな波乱もやって来る事を誰も知らずに。

 

 

=続=

 




世界は滅びる運命なのか?

否定する意志もまた未来に繋がる。


次回、幻影のエトランゼ・第三十六話 『浄解《ジョウカイ》』。


勇気ある誓いを胸に前へと進め。
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