幻影のエトランゼ   作:宵月颯

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秘密は漏れるもの。

だからこそ決意した。

これはその為の再会。

紅と蒼の会合の一端である。


決の付箋

Gアイランドでの一件から一週間後。

 

私は再び梁山泊へ出向する事となった。

 

それは望んでいた兆しが訪れる事を教えるかの様な出来事だった。

 

 

******

 

 

入室の際に断りを入れてから入室した私とテンペスト少佐、ロサ。

 

中では黄帝ライセを筆頭に九大天王の方々、孫光龍、BF団首領のビッグファイアと十傑集の数名が待機していた。

 

残りは恐らく本部警護の為に残っているのだろう。

 

色んな意味で修羅場中の私はにこやかな笑顔のビッグファイアに声を掛けられた。

 

 

「やあ、久しぶりだね。」

「お…お久しぶりです、ビッグファイア。」

 

 

梁山泊の執務室に入ったら既に爆弾設置済の有様です。

 

いや、最早…核弾頭とか次元震動弾投下済の様な修羅場へ突入する事となった。

 

 

「ハスミ君、済まない……今回ばかりは目を瞑る訳には行かなくなったのでね。」

「いえ、想定内の事です…十中八九こう来ると思ってましたのでお気に為さらず。」

「ハスミ、如何言う事だ?」

「秘密は漏れるもの…その時が少し早まっただけです。」

 

 

私は黄帝ライセの謝罪の言葉に謝罪で返した後、テンペストお義父さんの質問に隠していた事を話す意味合いで言葉を返した。

 

 

「既にお察しの通り、私がアシュラヤー・ガンエデンの巫女です。」

「そしてホルトゥスの真のリーダーでもあるかな?」

「…間違いはありません。」

 

 

私は自身がアシュラヤーの巫女である事、ホルトゥスのリーダーである事を肯定した。

 

 

「…ハスミ。」

「ホルトゥスの動きに手際が良く思えたのはそう言う事だったのか…」

 

 

何処かで真実でない事を祈りたかったテンペストだったが義娘の言葉を信用した。

 

国際警察機構とBF団、双方共に事前に説明がされていたのか腑に落ちない表情をされた。

 

 

「ネタ晴らしをした所で私達を呼び寄せた理由をお聞かせ願いたいのですが?」

「君が警告してくれていた組織が動き始めた。」

「結局そうなってしまいましたか…」

 

 

私が事前に警告していた組織や企業。

 

バイオネット、超人同盟、BPL、ウォン重工業、GAIL、そしてクロノ。

 

クロノに関しては構成員が既に各組織や企業に潜伏している。

 

一時期、国際警察機構やBF団にも工作員が入り込もうとしていたので助言して置いた次第である。

 

勿論、ホルトゥスの方も処理済みである。

 

 

「ハスミ君、クロノとは一体?」

「ガンエデンの名を継ぐ者にとって因縁の存在に関連する組織の名です。」

「そして人類が月に到達した時点で監視を始めた者達と言うべき者。」

「クロノとは神の名を語る曲者でエゴイストの塊の様な連中の下っ端の組織の事です。」

 

 

黄帝ライセの質問に私と助言がてらにビッグファイアが説明を始めた。

 

 

「彼らの上に立つ者の名は『御使い』、元は僕らの様に人だった者達だ。」

「最初は人々を見守る側だったのですが、何時しか自分達が神と判断し人類を滅ぼし始めたのです。」

「過去の大戦で古き民達は四体のガンエデンを創り上げ、御使いに対抗しようしたが…」

「彼らの生み出したZと呼ばれる神の誤作動に巻き込まれ双方共に痛み分けで終わりました。」

「それが四つの死海文書に刻まれた史実、僕らがその時まで護り続いていた人類史の秘密でもある。」

 

 

ビッグファイアは死海文書に刻まれた秘密の一端だけを説明したようなので、私もそれに続いた。

 

 

「つまり、クロノとは御使いの私兵と覚えて下されば結構です。」

「しかし、奴らがこちら側の世界に監視を入れ始めたのに変わりはないのだろう?」

「その通りです、こちらでも奴らの跡を追っていますがこちら側の世界に送られてきたのは下っ端の下っ端ですので有力な情報は得られないでしょう。」

「成程、敵も一筋縄ではいかないという訳か。」

「ですが、今回の空白事件の戦いでスフィア・リアクターが現れた以上…奴らの監視はより強くなるでしょう。」

 

 

空白事件。

 

原作のインスペクター騒動の名前が変わったものである。

 

今回はブレイク・ザ・ワールドやベルターヌ事件に転移騒動まで発生。

 

しまいには次元修復後に緩やかに戻りつつあるこの世界は何事もなかったの様にベルターヌ発生の日に時間が戻ってしまったのだ。

 

政府は一連の事件を空白事件として扱う事になった。

 

インスペクターも司令官の暴走やそちら側の調査師団の虚偽報告の問題もあり、正式な報告の為に本国へ戻った。

 

シャドウミラーは事実上の壊滅。

 

書類上では構成員は全員戦死したと言う公式記録にされており、密かに生き残った構成員はこの梁山泊に拘留中である。

 

ザフトはパトリック・ザラが今回の戦いの責任を取り議長の座を降りた。

 

後任としてアイリーン議長が代表に選ばれたが時間の問題だろう。

 

いずれ彼が表舞台に立つのだから…

 

連合政府はブライアン・ミッドクリッド大統領が再度大統領の座に落ち着いた。

 

どこまでこの状況が続くが判らないし未だ不安定な状況は続いている。

 

 

「今、解決すべき問題は闇黒の賢者に修羅、アルジャーノン発生の原因であるベストマンでしょうか?」

「闇黒の賢者…確か名前は。」

「…ダークブレイン、負の無限力の一端を担う存在です。」

 

 

ロアの宿敵であるダークブレイン。

 

奴がこちら側の世界に転移してくる事は確認済みだ。

 

この結果が今後どう響くかも…

 

 

「ダイブインスペクション計画の失敗で生まれたベストマン、いずれ人類に牙を剥くでしょう。」

 

 

計画失敗後、尊者ヤクスギを依代に顕現したベストマン。

 

生と死の循環の摂理に反した行いの結果に産まれた存在。

 

命ある全てを滅ぼす者。

 

捨て置けば多大な被害が予測できる。

 

 

「修羅の件はどうするつもりかな?」

「これは鋼龍戦隊に任せます、いずれ修羅の一人と接触する予定なので…」

 

 

手を出す事も可能だが、それでは後手に回ってしまうし…

 

この戦いで出る犠牲者の数が多すぎる。

 

 

「後はバイオネットが近々大規模行動を行う動きを見せています。」

「…彼らも懲りないね。」

「人を人として扱わない奇人変人の集まりです、慈悲の必要はないでしょう。」

「バイオネットに関しては僕らに任せて貰っても?」

「はい、再起不能になるまで追い込んで構いません。」

 

 

バイオネットは完膚なきまでに潰す気でいました。

 

精々十傑集の餌食となってください。

 

 

「その代わり、奴らと手を組んでいる曲者様方はこちらで後始末して置きます。」

「ハスミ君、後で所在を割り当てた情報をこちらにも渡して貰えるだろうか?」

「最初からそのつもりです、曲者様達も何かしらの手を打ってくる可能性があるので。」

 

 

まだ調査中で確信に至っていない情報もあるが、調べておいて損はないだろう。

 

どんな情報でも調べると真っ黒い情報がボロボロと落ちて来る。

 

知りたがる山羊には感謝しなければならないが…

 

検索エンジン並みの膨大な情報量を何とかしなければならないと言うデメリットがある以上は多用は出来ない。

 

それでもやるしかない。

 

情報の流れに飲まれず真実を追い求める事こそがこのスフィアの試練。

 

私は乗り越えて見せる。

 

 

「ハスミ君、前に話して置いた件だが…」

「そのお話ですが…お受けしたいと思います。」

「判った、先方にはこちらから伝えて置こう。」

 

 

前々から中条長官より長期出張の件が出ていた。

 

私はこれから起こる事件に対処出来る様に長期出張の件を受ける事にした。

 

暫くはATXチームの皆とお別れになるが致し方ない。

 

私は前に進むと決めたのだから…

 

 

=続=


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