魔法少女リリカルなのは ~その拳で護る者~   作:不知火 丙

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本編 第十五話

― 高町なのは ―

 

 昨日、一樹お兄ちゃんから色々と突然すぎる説明を受けてから一晩たって、朝私はユーノ君と一緒に丘を少し登った公園にいる。周りに人気は無くて、公園と言っても遊具なんかはなくて広場の様な感じの所なの。

 ユーノ君はフェレット状態で、怪我は一樹お兄ちゃんが治したんだけど魔力がまだ十分溜まってないみたい。

 

「でもなのは、ホントに良いの?」

 

「うん。ていうか私にも手伝わせてジュエルシード集め」

 

「分かってると思うけど凄く危ないよ?」

 

「うん、でもやっぱり私に魔法の力があって一樹お兄ちゃんやユーノ君を手伝えるんなら手伝いたい。それにあの子、フェイトちゃんとも直接話してないし」

 

 まあ、正確には話す間もなくと言った方が良いかもしれないけど。

 

「だからユーノ君、私に魔法の使い方を教えてほしいの!」

 

 私はそうユーノ君に伝えた。

 

「分かった。じゃあ、一つずつゆっくり行こうか」

 

「うん、よろしくねユーノ君」

 

「此方こそよろしく。じゃあ、まず基本的な事から。え~っとなのはは魔法についてはどの程度聞いてる?」

 

「まだ詳しくは聞いてないよ」

 

「じゃあ、まずはそこから説明するね。まず魔法は「リンカーコア」っていう魔力の生成器官がないと使えない。この器官が大気中にある魔力を体内に取り込んで蓄積したり、外部に放出したりするのに必要なんだ。これがないと魔法は使えないね」

 

 私は頷いてユーノ君の話を聞く。

 

「次にデバイス、これは魔法を使う際の補助の為の道具だね。レイジングハートは「インテリジェントデバイス」といって、ある程度意思があってレイジングハート自体が魔法をつかったりも出来るんだ。相性とかもあるけど、使えば使うほど魔法の威力だったり、無詠唱で魔法が使えるようにもなるんだ。インテリジェントデバイスを使いこなす事が出来れば、1+1が2じゃなくて1+1が5にも10にもなるんだ。なのはとレイジングハートは相性はバッチリ見たいだね」

 

「そうなの? レイジングハート」

 

『ええ、マスターは私との相性は非常に良いようです』

 

 それを聞いて私は嬉しくなった。

 

「じゃあ、次は実践して見ようか。なのは、リンカーコアに魔力を集めてみて。その時自分の魔力じゃなくて空気中から集めて固める感じでイメージして見て」

 

「うん、やってみる」

 

 私は自然な感じで立って、余計な力を抜く。そして魔法を初めて使った時の感覚を思いだす。そうすると胸のあたりが暖かくなり、身体から桜色の光がたち始める。

 

「わ、わ~。ユーノ君胸のあたりが暖かいよ?」

 

「……僕としてはあっさり出来た事がビックリだけどね。まあ、それは兎も角、その暖かい所に「リンカーコア」があるんだ。そして今なのはがしているのが「魔力運用」コレを練習すれば、魔法を早くスムーズに使えるようになるし、無駄な魔力を消費しないで済むようにもなるんだ」

 

「へ~、そうなんだ」

 

「うん、だから当分は慣れる意味も込めてコレをすると良いよ。基本だしね。」

 

「うん!」

 

「とりあえずはそれぐらいかな? 僕はあんまり砲撃系の魔法は使えないけど、防御系の魔法は得意だからわからなかったら聞いて。基本補助役だから戦闘に関してはあんまり教えられないけどね。後、レイジングハートとイメージトレーニングも出来るからその辺はレイジングハートに任せるよ。でも無理しすぎたら駄目だよ?」

 

「大丈夫だよユーノ君。そんなに無理はしないから。レイジングハート、これからよろしくね!」

 

『はい、マスター』

 

 私はそうユーノ君とレイジングハートに言った。そしてふと時計が目に入ったから時間を見てみると、

 

「いっけない! もうこんな時間になっちゃった! ユーノ君、戻ろう!」

 

「分かったよ、なのは」

 

 そう言って私とユーノ君は公園を後にした。

 それからいつも通り朝ごはんを食べて学校に行く。バスに乗ってアリサちゃんとすずかちゃんに挨拶して、途中から乗ってきた亜夜ちゃんも加わっていつものメンバーがそろった。

 いつも通りの登校で、学校に着き授業が始まった。そこから私の日常が少し変わり始めた。

 授業中にレイジングハートが念話で訪ねてくる。

 

『マスター、魔法のトレーニングをしますか?』

 

(う~ん、したいけど今授業中だよ?)

 

『問題ありません。マルチタスクをしてもらいます』

 

(まるちたすく? それって何?)

 

『マルチタスクと言うのは、複数の事を同時に処理する事です。簡単に言えば私と会話をしながら他の人と会話をするという事です』

 

(ふぇ? わ、私そんなこと出来ないよ!?)

 

『大丈夫ですマスター、初めは私がサポートします。それに魔導師にとってマルチタスクは必須です。早く出来るようになった方が良いでしょう』

 

(そ、そうなの?)

 

『勿論です』

 

(じゃ、じゃあ、お願いします!)

 

『了解しました。では開始します』

 

 そう言うと私はいつの間にかバリアジャケット姿になっていて、空に浮かんでいた。そこからの景色は綺麗だった。下に広がるのは海、上には青い空、それは普段では見れない景色、遮るものは何もなくて水平線がはっきり見える。水面は太陽の光を反射してキラキラ輝いている。

 

「ふぁ~、凄~い!」

 

『どうですか? マスター』

 

「あ、凄いね! 全然違和感がないよ! 本当に空を飛んでるみたい」

 

『それは何よりです。これは仮想データですので状況に応じて様々な空間をつくる事が可能です。それではトレーニングを開始しましょう』

 

「はい! お願いします!」

 

『ではマスター、戦闘には速度やパワーも必要ですが、それより必要なものがあります。なんだか分かりますか?』

 

「う~ん、負けないっていう気持ちとか?」

 

『良い答えですがそうではありません。戦闘で必要なものそれは「戦術」と「知性」です。そしてこれからそのトレーニングをします』

 

 レイジングハートがそう言うと、空中に魔方陣のような丸い物が沢山出てくる。

 

『それでは始めましょう』

 

 そして、初めての魔法の訓練が始まった。

 

― 斎藤一樹 ―

 

 なのちゃんが学校から帰って来てからジュエルシードの捜索を始めた。

 そして昨日決めたグループに分かれ探し始める。出発前に亜夜が俺に聞いてきた。

 

「お兄ちゃん、なのちゃん何かあったのかな?」

 

「何かって?」

 

「う~ん、なんだかね今日の授業中変だったんだ。なんか心ここにあらずと言うか、ボーっとしてると言うか、でもその割にはちゃんと指されたら答えてるんだよね。アリサちゃんとすずちゃんも不思議がってた」

 

 とそんな事を言ってきた。

 

「ふ~ん、もしかしたら魔法の訓練でもしてたのかもしれないな」

 

「え? でも授業中だよ?」

 

「ああ、なのちゃんレイハさん着けてたろ? 多分レイハさんがつくった仮想データの中で訓練でもしてたんだろ」

 

「へ~、そんな事も出来るんだ~」

 

「うん、スサノオも出来るしな。っと、そうだ忘れるとこだった」

 

 出発前に亜夜に渡すものがあったんだ。

 

「亜夜、コレ渡しとく」

 

 そう言って俺は亜夜に向かってそれを投げる。それは山なりに放物線を描き亜夜の手に収まる。

 

「わ、お兄ちゃん何これ?」

 

 そう言って亜夜は首を傾げ手の中のそれを見るそれは日本刀のアクセサリーだった。

 

「父さんからだ。亜夜のデバイスだってよ」

 

「……え?」

 

「亜夜のデバイス、インテリジェントの豪華仕様になってるってさ。形状は日本刀、待機状態はその状態だそうだ」

 

「これが、私の?」

 

 そう言って、亜夜はそのデバイスを眺める。すると、

 

『お主が、主か?』

 

 そう言って女性の声が話しかけてきた。

 

「うわ! わわわわ、っと、そっか喋れるんだっけ、うん。まあそうなるかな」

 

『そうか、このチンチクリンがそうなのか。仕方がない、次の使用者が決まるまで我慢するか』

 

ビシッ!

 

 …………あ、なんかデジャブ。

 

「へ~、御主人様に対して中々素敵な言葉遣いじゃない?」

 

『御主人様? ハッ、笑わせるでない。お前みたいな小娘がワシを扱えるわけなかろう』

 

 笑い声が聞こえそうな言い回しである。

 って言うかこいつは何でこんなにペラペラしゃべっているのだろう? 普通、レイハさんみたいな感じで喋るんじゃないのか? 年数がたったヤツならいざ知らず…………。もしかして…………。

 

「なあ、ちょっと聞きたいんだけど、お前って前に誰かに使われてた?」

 

『何じゃ、お主は藪から棒に。まあ確かについ最近まで使われておったが?』

 

 何かやな予感がしてきた。

 普通であればインテリジェントデバイスを手放す魔導師なんぞそうそういない。非常に優秀なうえに値段も馬鹿みたいに高いからだ。

 しかしそれに見合った働きをする。手放す事なんてそれこそ引退するか、使用者が死亡するかぐらいだ。例え引退したとしても、魔力資質のある身内に受け継いだり、信頼する人に譲ったりするし、死亡した場合でもデバイス本体が次の使用者をその前使用者の近に人間や親友に頼んだりするので此方もそうそう来る事は無い。

 しかもメインデバイスとしなくても補助専用にしても良いのだ。だからこそ、そういう繋がりがなければ普通インテリジェントデバイスはまっさらな状態で手元に来る。

 こういう風に自我があると言うのはあり得ないのだ。

 しかし何事にも例外がある。極稀に初めからこのレベルで自我を持っているインテリジェントデバイスが出来るのだ。原理はまったくもって不明。

 性能自体は通常のものと比べるとはるかに優秀なのだが、いかんせん性格がひん曲がっていたりするのが多いのだ。

 使用者を貶(けな)す、罵るは当たり前。最悪なものになると四六時中罵詈雑言を浴びせるモノまで出てくる始末。

 ノイローゼになった者もいるそうだ。冷や汗を流しつつ更にそのデバイスに聞く。

 

「もしかしてお前、高性能欠陥機?」

 

『無礼な! 今までの使用者がワシを上手く使えないだけじゃ!! どいつもこいつも戦闘中にワシがサポートせんと何もできん愚図共だったのだ! 腕に自信があると言っておきながらボコボコにやられおる!! そんな奴らになんぞ使われとうないわ!!』

 

 …………父さんは何でこういうデバイスを送ってくるのだろうか? こいつしかり、スサノオしかり。まあ、父さんが送ってくるのだから性能の部分では文句なしなんだろうけど。

 

「ふ~ん、つまりあんたはそういうやつらじゃなければ良いのね?」

 

『まあ、そうじゃな。とは言っても、お主の様なチンチクリンのお子様にワシが使えるとはとても思えんがな』

 

「まあ、魔法に関しては初心者だから訓練しないと何とも言えないけど、絶対あんたが納得する力を付けてやるわ!」

 

『ふん、威勢は良いようじゃな。後はワシの訓練にどこまで付いてこれるかじゃな』

 

「ふふん、見てなさい。あんたになんか負けないわよ」

 

『言っておれ』

 

 そう言うと黙り込んでしまった。それを見かねたのか、恭也さんが話しかけた。

 

「まあ、言い合いも終わったんだろう? 自己紹介でもしたらどうだ?」

 

 恭也さんの言うとおりだ。普通だったらそれが一番最初だろう。俺とスサノオだってそうだったのだ。

 

「……そうですね、私は亜夜、斎藤亜夜よ。あなたは?」

 

『ワシの名前は無い。好きに呼べば良い』

 

「そう、じゃあね~、天照(アマテラス)にしよう」

 

「へ~、何でまたその名前を?」

 

 天照(あまてらす)、日本の神様の名前。正確には「天照大神」(あまてらすおおみかみ)日本神話に登場する神である。自然神として神社などに祀られたりもしている。伊邪那岐(いざなぎ)より生まれた三貴神の内の一柱。かなり有名な神様である。

 

「え~っとね。お兄ちゃんのスサノオの名前を聞いた時調べたのよ。姉弟なんだよね? まあ、これだとアマテラスの方がお姉ちゃんになっちゃうらしいけど」

 

 理由はとてもシンプルだった。

 なのちゃん家のレイハさんみたいなそれらしい名前を付けると思いきや俺の真似? をしてきた。なんだかとってもこそばゆい。

 

「ま~あ~、名前負けしなければ~良いんだけど~」

 

 ニヤニヤしながらアマテラスにむかって言い放つ。が、

 

『ふん、何を偉そうにしておるか。そもそも貴様、魔法を使った事がないのであろう? そのようなガキがワシに偉そうに言うでないわ。ワシがいなければ何にも出来ない極潰しが。そんな事言うのは千年早いわ! いくら素質が優れていようともそのような心構えでは碌な魔導師にならん。今のうちに魔法なんぞ忘れて元の生活に戻った方が良いぞ? 半端物の魔導師なぞいても邪魔なだけだからな。そんな事も分からん馬鹿は、今のうちに百万回死んだ方が良いのではないか? もしかしたらその低能が治るかもしれんぞ? さっさと母親のところに行って慰めてもらえ、まだ乳離れも出来ておらんのだろう? 乳臭さが匂っておるわ。だいたい「もうやめてー! 亜夜のライフはとっくにゼロよ!!」む?』

 

 見てられないし、聞いてられなかったのでアマテラスを止める。

 既に亜夜は「燃え尽きたぜ」と言わんばかりに真っ白である。目には涙をためている。

 ちょっとからかっただけで此処まで反撃を食らうとは思っていなかったのだろう。

 それにしてもこれなら使用者がノイローゼになるのもうなずける。これ以上の罵詈雑言を四六時中聞いていたらおかしくもなる。

 

『ふん、この程度でダウンとは情けない』

 

 さらりと言ってのける当たりまだまだ上があるようだ。

 まあ、それは兎も角俺は亜夜からアマテラスを渡してもらい小声で話しかける。

 

「まあまあそう言うなよ、まだ小学生何だから。でも意外だな。亜夜の事少し認めてるのか?」

 

『……何故そう思う?』

 

「だってさっき、「いくら素質があろうと」って言ってたじゃん。それって亜夜が素質あるって事だろ?」

 

『ふん、亜夜には黙っておれ。天狗になられては適わん。それに初めの内に主従関係をはっきりさせておいた方が良いのでな』

 

「いやいやいや、お前が主になってどうするんだよ」

 

『知れた事。主を駒としワシが管理局の頂点に、待て待て待て! 冗談じゃ! そんな面白い事はせん!』

 

 俺が拳に気と魔力を籠めて振り上げると慌てて訂正してきた。

 

『まあ、小娘が一人前になるまでと言ったところか。それまで耐えられるかは知らんがな』

 

 フッフッフ、と不吉な笑いをしている。そんなアマテラスを見て俺は呟く。

 

「亜夜、こんなデバイスで大丈夫か?」

 

「……一番良いやつをお願い」

 

 俺の質問に答える亜夜。ただ残念な事に、このデバイスが一番良いやつだった事だ。

 

― 高町なのは ―

 

 私とユーノ君とお父さんは、海鳴市街を捜索していた。

 近くにジュエルシードの反応はあるけど、どうも正確な位置がつかめない。三人で探しているけど、なかなか見つからない。う~ん、どの辺にあるんだろう?

 

「ユーノ君、まだ場所は分からないかい?」

 

 お父さんがユーノ君に聞く。

 

「すいません。正確な位置はまだ……このあたりのはずなんですが」

 

 そう探していると、突然ビルの屋上から魔力流が広がっていった。

 ユーノ君と私は同時にそのビルを見上げる。ビルの近くは風が吹き荒れ、暗雲が集まって来ている。

 街を歩いている人達も異変に気付いて空を見上げていた。

 

「どしたんだ急に」

 

 そうお父さんが言ってきた。お父さんは魔力を感じてはいないけど、周囲を警戒し始めたみたい。

 

「そんな! こんなところで強制発動!? 広域結界!」

 

 ユーノ君がそう言うと私たちを中心に結界が広がっていく。周囲から人気が消えて私達三人しかいなくなる。

 

「……凄いな。魔法ってのはこんな事も出来るのかい?」

 

 お父さんが周囲を見ながらユーノ君に聞いていた。

 そっか、お父さん魔法を間近で見るの初めてなんだっけ。

 

「ええ、空間の一部を切り取って特殊な性質を付けるんです。僕の得意な魔法の内の一つです」

 

 ユーノ君が胸を張って説明していたら、

 

ドォーーーーン!

 

 そう音がして、近くから魔力の柱が空に向かって一直線に伸びていく。

 

「あそこだ! レイジングハートお願い!」

 

『スタンバイ、レディー!』

 

 そうレイジングハートが答えると私は一瞬でバリアジャケットを着て魔力の柱のある処に急いで向かう。

 下からは、お父さんとお父さんの肩に乗ったユーノ君が追いかけてくる。そうするとユーノ君から、

 

「なのは! すぐに封印を! このまま放っておいたら街が無くなっちゃう!」

 

 ふぇ!? そ、それは駄目なの! 私は急いでジュエルシードの場所に行く。そして見通しの良い直線にでると、その先の交差点にジュエルシードがあった。

 

「あった! レイジングハート!」

 

『カノンモード』

 

 私は、空中で止まって魔力を溜めて、レイジングハートに魔力を集中させる。

 どんどん魔力が集まっていって直ぐに溜まった。前を見るとジュエルシードの更に向こうに、金色の光が見えた。 

 きっと一樹お兄ちゃんの言ってたフェイトちゃんだ。そう思っていると、

 

『ディバインバスター』

 

 レイジングハートの合図、それと同時に魔力を撃ち出す。

 

「あああっー!!」

 

 気合いと一緒に振り上げたレイジングハートを振りおろしてトリガーを引く! 撃ち出した砲撃がジュエルシードに向かって一直線に進んでいく。

 そして反対側からも金色の魔力が一直線に向かってくる。そしてほとんど同時にジュエルシードに命中する。でもジュエルシードの魔力が強くてなかなか本体にあたらない。

 

「う~~~!」

 

 私はさらに魔力をこめて、

 

「ジュエルシード封印!!」

 

 と叫んだ。そうしたら砲撃の威力が上がってジュエルシードの所で爆発した。

 周囲には土煙が上がってどうなったか分からない。少し経つと、そこには魔力の暴走が治まったジュエルシードが浮いていた。

 それを確認して私は地面に着地した。ちょっと頑張り過ぎちゃったみたいで息が荒い。

 

『デバイスモード』

 

 レイジングハートが始めの形にもどる。そしたら後ろからお父さんが声をかけてきた。

 

「凄いじゃないか! なのは!」

 

 お父さんはそう言って頭を撫でてくれた。それがとても心地よかった。

 

「それじゃ、なのはジュエルシードを確保しよう」

 

 そしてジュエルシードに向かうと、

 

「待ってください」

 

 声のした方を見ると、ジュエルシードを挟んで正面の看板の上にこの間の女の子、フェイトちゃんが立っていた。

 

― フェイト・テスタロッサ ―

 

 今私はアルフと一緒に街を一望できるビルの上にいる。

 ジュエルシードの気配を感じたから正確な位置を掴むため今アルフが更に細かいサーチしている。

 

「駄目だよフェイト、正確な位置が特定できないよ」

 

 しばらくサーチを続けていたアルフがそう言ってきた。

 

「そう、じゃあちょっと乱暴だけど魔力流を撃ち込んで強制発動させよう」

 

「でも、大丈夫かい?」

 

「大丈夫、私は強いんだから」

 

 そう言って私はバルディッシュに魔力を込めて周囲に開放する。

 そうすると、暗雲が集まりゴロゴロと雷が唸りをあげる。そうしたら、街の中から魔力を感じる。

 一瞬ジュエルシードかと思ったけど結界が張られただけだった。

 

「むこうも気付いてる。フェイト向こうより先にジュエルシードを回収しよう」

 

 アルフがそう言ってきた。

 一樹との約束でジュエルシードは先に回収したら、回収した人に任せるってなってるから、先に回収すれば、向こうも手は出してこないはず。そう考えていると

 

ドォォォーーーーン!!

 

 と音がして、街の中にカミナリが落ちてその場所から魔力の柱が空に向かって伸びあがった。

 

「あった! あそこだよフェイト!」

 

「うん、行こうアルフ! バルディッシュ!」

 

「あいよ!」

 

『イエッサー』

 

 私は二人にそう言って、ビルの上からジュエルシードに向かって飛んでいく。

 立ち並ぶビルの上を飛び最短距離でジュエルシードに向う。そして、砲撃の邪魔になる建物がなくて、ジュエルシードが見える位置に到着した。

 

「バルディッシュ」

 

『イエッサー』

 

 バルディッシュが短く答えると、私の足元に魔法陣が広がる。

 バルディッシュに魔力を込めるすると魔法陣から雷光がたちあがる。どんどん魔力が溜まっていき規定値に達する。私が魔法を打とうとした時、反対側に桜色の魔力光が見えた。

 

(あの光……確か、あの時の)

 

 その光は、私が最初のジュエルシードを回収するために戦闘した時、途中から戦闘に加わってきた魔導師の魔力光だ。

 まずい、向こうも準備は出来ているみたいだ。私は振り上げたバルディッシュを振りおろし、

 

「スパークスマッシャー!!」

 

 ジュエルシードを封印するために砲撃した。

 

「くっ!!」

 

 でも思ったよりジュエルシードの魔力が強くて砲撃が通らない。

 でもここで諦める訳にはいかない。ジュエルシードは母さんが必要だと言ったんだから、母さんの為に集めるんだ!

 そして私は更に魔力をバルディッシュに流す。そうすると一回り大きくなった砲撃がジュエルシードの魔力を上回る。

 

「ジュエルシード封印!!」

 

 そう言うと同時に、ジュエルシードのあった場所から爆煙があがる。

 土煙が上がってジュエルシードがどうなったかは確認できない。でも、今まで荒れ狂うような魔力が落ち着き、静かになっている。どうやら封印には成功したみたいだった。

 私は直ぐにジュエルシードの近くまで飛んでいくと、そこにはこの間の魔導師の女の子とその使い魔の獣と男の人がいて、女の子が男の人に褒められ頭を撫でられ ていた。女の子はとても幸せそうな笑顔だった。

 それを見ていて昔を思い出す。母さんが家にいて、私の大好きなおやつをつくってくれた。私はとてもうれしくてリニスと一緒にお母さんに近付いて「早く食べよう」とせかす。そうすると母さんが優しい笑顔で笑ってくれた。

 ジュエルシードを回収して持っていけばきっと母さんも笑ってくれる。昔みたいに優しくしてくれる。リニスも戻ってきた、そうすればまたみんなで昔みたいに一緒に暮らせる。

 そう思っていると魔導師の女の子がジュエルシードに近付いて行く。そこに私は声をかけた。

 

「待ってください」

 

 その声を聞いて女の子はこっちを見る。

 

「あ、え~っとフェイトちゃんだよね? この間は自己紹介出来なかったけど、私高町なのは。私立聖祥大付属小学校の三年生。フェイトちゃんの事は一樹お兄ちゃんから聞いてるよ」

 

そう言って自己紹介してきたので私も自己紹介をする。

 

「……フェイト、フェイト・テスタロッタ。そのジュエルシードを渡してください」

 

「え、でも……これはユーノ君が探してる物だし……」

 

「……それじゃあ、実力で行きます」

 

 戦闘はしないようにと思ってたけど仕方がない。そう言って私はバルディッシュを構える。

 お互いに視線がぶつかる。私が踏み出そうとした時、

 

バシャン

 

 と音がする。あたりがなぜか暗くなってしまった。ジュエルシードの光も見えない。

 

「わ!! な、何!? なんなの? フェイトちゃん! 何かした!?」

 

 前からなのはの声が聞こえてくる。相当混乱しているみたいだった

 

「わ、私は何も」

 

 それに正直に答えた私も混乱していたのだと思う。そうするともう一度音が聞こえた。

 

ガシャン

 

 その音が聞こえた瞬間、ジュエルシードのあった場所の近くに円錐状の光が降っていた。

 どうもさっきの音は光をつけたか何かの音だったみたいだ。その光を見るとその中心に誰かがいた。

 背もたれのない丸椅子に足を組んで腰を掛けている。上下赤いスーツにピンクのシャツ、青の蝶ネクタイ、髪の毛はオールバックになっていて右目には眼帯をして口ひげをはやしている。

 誰だろう? と思って良く観察すると、昨日リニスと一緒にいた人だった。

 

「な、何してるの一樹お兄ちゃん?」

 

 そう、なのはが聞いているけど返事は無い。二人で呆然としていると静かに語り始めた。

 

「本日の対戦カードは、高町なのは対フェイト・テスタロッサ。先日フェイトに敗れ猛特訓をし、リベンジマッチに挑むなのは。ジュエルシードを賭け、お互いに譲れないもの為に少女達はまた戦おうとしている! 少女達の間でぶつかる力と力、技と技、思いと思い!! その先には一体何が待ち受けていると言うのでしょうか!!!……今日皆さんはそれを目撃することになるでしょう」

 

 一樹? は語る内にどんどん熱くなっていって、抑えきれないと言わんばかりに椅子から立ち上がった。

 

「それでは!」

 

 そう言って、スーツの上着を片手に掴んで一息に腕を振りぬいた。

 どういう原理か分からないけど上着が脱げてどこかに飛んで見えなくなる。それと同時にいつの間にか右手にマイク(小指がピン! と立っている)、左手に眼帯を持ち、声高らかに宣言した。

 

「MSファイト! レディィィィィッゴォォッ!!!!!!!」

 

― 斎藤一樹 ―

 

 はやての希望だった、某ガンダムのナレーション役で戦闘開始の合図をする。

 子供のころ何度も見ていたので懐かしさも込み上げてきた。良い作品だよねGは。

 元の姿に戻りながらそう思っていると二人が戦闘を開始した。先制したのはフェイトちゃんだった。

 周りにスフィアを浮かべて、そこから魔力弾を撃ち出す。確か「フォトンランサー」だったかな? 多数の魔力弾がなのちゃんに向かって行く。

 それをなのちゃんは空に飛びかわす。そのすきにフェイトちゃんが後ろをとりなのちゃんの後ろから魔力弾を発射する。

 

バシュン! バシュン! バシュン! バシュン!

 

発射された魔力弾はなのちゃんに襲いかかる。

 

「くぅ!」

 

 それをなのちゃんはフェイトちゃんの方を向きつつ、横に回り、宙返りをしかわしていく。

 つーかなのちゃんホントに初心者か? 何でこんな見事に空戦が出来る? こんなの士官学校の教官が見たら卒倒するぞ? まあ、五味教官あたりは動じなさそうだけど。

 自分の担任教官だった人物を思いだし苦笑する。そんな事を思っていると今度はなのちゃんが攻撃する。フェイトちゃんと同じように周りに魔力弾が浮かび上がる。

 

『ディバインシューター』

 

「シュート!」

 

ヒュン! ヒュン! ヒュン!

 

 魔力弾がフェイトちゃんに向かって行く。そのまま直進するかと思ったがフェイトちゃんに向かって軌道を変えている。どうやら誘導タイプの様だ。

 そしてすぐさま高度をとり魔力を溜め始める。一方フェイトちゃんの方は、なのちゃんの攻撃を危なげなくかわしているが、一瞬なのちゃんを見失ったようだ。そこになのちゃんが、

 

『ディバイン・バスター』

 

「ヤァァーー!」

 

 気合いと共に撃ち出される砲撃。シューターを囮としてバスターを撃つ為の時間を稼ぐ、良い攻撃だ。

 

「クッ!」

 

 しかし、その攻撃はフェイトちゃんのディフェンサーによって防がれる。フェイトちゃんもまともに防御せずに受け流す感じだ。

 しかしホント上手くなってるななのちゃん。天才ってのはホントにいるもんだ。

 普通はこんな短時間にこんな空戦出来ません! 俺の同期にもいなかったぞ? 流石戦闘民族だな。

 なんて思っていると二人は向かい合い停止する。

 

「お互いに目的があって競い合うのは仕方ないけど、理由も知らないで戦いなんかしたくない!」

 

そうなのちゃんがフェイトちゃんに向かって言う。が、

 

「……あれ? 一樹から聞いてないの?」

 

「……え? ど、どういう事なの!?」

 

「あれ? なのちゃんに話してなかったっけ?」

 

「き、聞いてないよ! 何で言ってくれないの!?」

 

「いや~、すまんすまんうっかりしてたわ~。最近お「ヤァァァーー!!」え゛?」

 

 俺となのちゃんが話しているとフェイトちゃんがなのちゃんに向かって突っ込んでいく。そして、

 

バキャン!

 

「きゃ~~~!!」

 

 フェイトちゃんの攻撃をよけれずまともに受け、吹っ飛ぶなのちゃん。

 ドガァァーーン!! と凄まじい音を立てて地面に激突する。土煙が晴れ、そこには地面にクレーターをつくり目を回しているなのちゃんがいた。

 

「勝った」

 

 グッとガッツポーズをするフェイトちゃん。

 あるぇ~? こんな事する子だったっけ? あまりに予想GAIだったので何が 起こったか分からんかった。アルフですら唖然としてるぞ。

 

「あ~、フェイトちゃん? 今のは流石にどうかと思うぞ?」

 

「ご、ごめんなさい。隙だらけだったからつい……」

 

 …………ついって、あんたどこぞの戦闘民族見たいなことをおっしゃいますか。あ~あなのちゃん完璧にダウンだよ。こりゃまた機嫌悪くなるな。

 地面に若干埋まっているなのちゃんを抱え、フェイトちゃんに近付く。

 

「はぁ~、まあ仕方ないか。はいよ、これが今回の賞品だ」

 

そう言ってフェイトちゃんにジュエルシードを渡す。

 

「あ、ありがとうございます」

 

 お礼を言って受け取るフェイトちゃん。そこで、フェイトちゃんに聞いてみる。

 

「フェイトちゃん。ジュエルシードはいつお母さんに届けるの?」

 

「あ、そろそろ届けようと思ってます」

 

「じゃあ、その時に理由聞けるかな?」

 

 俺がそう言うと俯いてしまった。

 

「分かりません。聞いてはみますけど……」

 

「まあ、出来たらで良いからさ」

 

「……分かりました」

 

 そう話していると、スサノオが俺に話しかけてきた。

 

《「クソ野郎」通信が入っています》

 

「ん? 誰からだ?」

 

《クロノ執務官からです》

 

「お! ついに来たか! つないでくれ」

 

《了解しました》

 

 そう言うと俺の目の前にウインドウが開かれる。

 

『聞こえるか? 一樹』

 

「此方一樹だ。感度良好、久しぶりだなクロノ」

 

『ああ、しかし今回はまた厄介な事に巻き込まれているな』

 

「な~に、いつも通りだよ。イベントが多くてありがたくて涙が出るね」

 

『相変わらずだな君は、それはそうとその二人は?』

 

「ああ、こっちの金髪の子がフェイト・テスタロッサ、俺が抱えてるのが高町なのは、二人とも現地協力者だよ」

 

 それを聞いたフェイトが若干驚いた顔をしたが俺が手でジェスチャーして黙っててもらう。

 

『そうか、しかし感心しないな。このレベルの事故の手伝いを民間人にさせるのは』

 

 そうクロノが言ってくるがそんなのは関係ない。

 

「しゃーねーだろ、俺一人じゃ確実に次元震が起きてたぞ? そこに封印処理が出来る魔導師が二人も出てきたんだ手伝ってもらうほかなかったよ。第一、管理局自体がもっと早く動ければこんな事態にはならなかったぞ?」

 

『確かに、それを言われると耳が痛いな。それはそうと先ほど戦闘行動が確認されたが?』

 

「ああ、それはフェイトとなのちゃんの模擬戦だ。ジュエルシードを封印した方には御褒美があるからな」

 

『御褒美?』

 

 クロノが聞いてくる。フェイトちゃんも何の事? と聞きたそうだ。

 

「なのちゃんのお母さんの桃子さんは腕の良いパテシエールでな、頑張った方に特製ケーキが与えられ『それは本当なの!』……リンディー艦長、聞いてたんすか」

 

 突然画面に割って入ってきたのはクロノの母親のリンディさんだった。

 この御婦人、大の甘党である。俺もかの有名な「リンディ茶」を飲んだ被害者の一人だ。

 その後リンディーさんには「抹茶オレ」を勧めてみたのだがどうもお気に召さなかった様だ。何でだろう?

 まあ、それは兎も角、

 

『ねえ、一樹君その御褒美って私達にも適応されるのかしら?』

 

 …………おい。あまりの事にクロノを見ると、クロノも頭を抱えていた。

 

『かあs、艦長! 私欲で部隊を使わないでくださいよ!?』

 

「ていうか、俺らはそれが仕事でしょ!? 御褒美出る訳ないじゃん。もし出たとしても封印処理する人達だから隊員の人達に出るんじゃね?」

 

『なん……ですって!?』

 

 リンディーさんの後ろに「ガーン!!」って見えたのは気のせいだ。しかもこの世の終わりみたいな顔をしている。そこまで食べたいのかよ。

 

「分かった、分かりました! 差し入れで持っていくのでそんな顔せんでください!!」

 

 お手上げとばかりに両手を挙げ観念する。その瞬間リンディさんの顔が笑顔になったのは言うまでもない。

 

『あ、じゃあ私の分もお願い!』

 

 更に割り込んで来たのはエイミィだった。

 

「安心しろ、とりあえず人数分は持っていくから。それと久しぶりエイミィ」

 

『うん、久しぶりだね。元気にしてた?』

 

「おう、エイミィも元気にしてるようだな。クロノとはよろしくやってるのか?」

 

『もう、そんな当たり前事聞かないでよ!昨日だってクロノ君が寝かせてくれなかったんだから♪』

 

『なっ!! 何を言ってるんだエイミィ!!』

 

 そう言って、慌てて否定してくるクロノ。リンディさんは「あらあら」とニヤニヤしている。

 

「ん? 何を言っているんだ? 書類整理で徹夜したのだろう? 眼の下にクマが出来ているぞ?」

 

『そうだよ。クロノ君徹夜で処理したじゃない』

 

『……あ』

 

「やれやれ、クロノ一体何を想像したんだ? まあ、男の子だから仕方ないと思うが」

 

『そうだよクロノ君、何を想像したの?』

 

 俺とエイミィでニヤニヤとクロノを見る。クロノはプルプルと震えていた。

 ああ、やっぱ久しぶりだなこの感覚は。ちなみに画面の後ろに映っているオペレーターやら操舵士の人たちも、口元を隠し笑いをこらえていたり、ヒソヒソ話をしている。

 

『き、君達は!! しかも一樹は何でその事を知っている!?』

 

「フッフッフ、情報出所は明かせません! まあ、それは兎も角ようこそ日本へ。こんな事故がなければ観光案内の一つでもしたいんだけどね今はジュエルシードが先だな。それが終わったらゆっくりして行ってね!!」

 

 御丁寧にスサノオに記録した「ゆっくりボイス」で答える。

 

『はあ、あと少しでそちらに着く。事情はその時に話してもらうよ』

 

「ああ、それまでゆっくり休んでおけ」

 

『……そうさせてもらうよ』

 

「では、リンディ艦長またの連絡を待っています」

 

『分かりました。そちらに着いたら連絡を入れます。それまでよろしくね一樹君』

 

 そう言って通信を切る。さて、これからが正念場か、俺はプレシアとアリシアを助けて尚且つ罪を軽くするためにどうすればいいか頭をフル回転させるのだった。

 

 

 

 

 

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