魔法少女リリカルなのは ~その拳で護る者~   作:不知火 丙

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本編 第二十八話

― 作戦エリア ―

 

ドガアァァァーーーーン!!

 

「キャーーー!」

 

 上空で爆発音が鳴り響き、爆煙があたりを包む。

 その中から海面に向かってなのはが吹き飛ばされる。進路上にあったビルを突き破り、なのははそのままの勢いで海面にぶつかりバウンドする。

 

バシャ! バシャァァァン!!

 

 一回、二回と水しぶきをあげバウンドするが、何とか体勢を立て直しそのまま海面すれすれを飛行する。

 速度を上げたため、海面が割れ尾をひく。後ろからはなのはを吹き飛ばしたフェイトが迫って来ている。

 そのままビル群を縫うように低空飛行をするが、なのははフェイトを振り切る事が出来ない。

 

『フォトン・ランサー』

 

 フェイトが魔力を込め、バルディッシュが答える。フェイトの周りにスフィアが四つ浮かび上がる。

 

「ファイア!」

 

 低空飛行を続けるなのはの後方から鋭く、正確な射撃魔法が襲いかかる。

 

ガン、ガン、ガン、ガォン!!!

 

「きゃあ!」

 

 一発、二発、とかわすが三発目で当たってしまう。

 が、レイジングハートが張ったプロテクションで弾き、撃墜は免れる。

 なのはは進路上にあるビルに沿って、そのままの勢いで上空へ避ける。追尾しきれなかった四発目がビルにあたって轟音を立てる。

 なのははそのまま180度ループと180度ロールをしてフェイトの後方をとる事に成功する。インメルマンターンが成功した瞬間だった。フェイトを捉えたなのははレイジングハートに魔力を送る。

 

『ディバインシューター』

 

 それにレイジングハートが反応して、なのはの周りに5つのスフィアが浮かぶ。

 

「シュート!」

 

 今度はなのはがお返しとばかりに四発の射撃魔法を発射する。

 フェイトの様な鋭さは無いものの、狙いは正確で、不規則な弾道を描き追尾してくる。

 誘導弾、なのはがフェイトの高機動戦闘に翻弄されたため、その対策として覚えた魔法の一つだ。

 

『サイズフォーム』

 

 フェイトの後方から誘導弾が迫るが、フェイトはそのまま、大きく円を描く軌道をとり、バルディッシュを鎌に変形させて誘導弾をかわし、すれ違いざまに一発を斬る。

 

「フッ!」

 

ズガァーン!

 

 斬られた誘導弾は爆発し爆煙があたりを包む。

 しかし、残りの誘導弾は再びフェイトに向かって飛んでいくが、それを一太刀で斬り伏せる。

 そしてフェイトはバルディッシュを構えなのはに向かって飛んでいく。

 

「シュート!」

 

 なのはは一つ残しておいたスフィアを打ち出すが、フェイトは円柱の内壁をなぞるように飛行してかわす。見事なバレルロールだ。そしてフェイトはそのままの勢いでなのはに斬りかかる。

 

「ゼェイ!!」

 

「クッ!」

 

 フェイトの気迫に息をのむなのは。

 しかしそれも一瞬の事ですぐさま、右手を突き出しプロテクションを張り、フェイトの攻撃を防ぐ。

 

「ハァァァーー!!」

 

「クゥッ!」

 

 フェイトの斬撃となのはのプロテクションの接触面から火花が散る。

 どちらも引かず、膠着すると思われたが、なのはが最後に撃った誘導弾を再びフェイトに狙いを定めコントロールする。空中にとどまっていた誘導弾が反応しフェイトの後方から襲いかかる。

 しかし、フェイトはなのはの微妙な変化から何かを感じ取ったのか後ろから迫る誘導弾に気付く。

 

『サンダーバレット』

 

 フェイトが左手に魔力を集め、球状に形作る。

 

「ファイア!」

 

 フェイトは、それをなのはのプロテクションの上から叩きつける。

 プロテクションに弾かれると思われたソレは、その予想を覆しプロテクションを破りなのはに直撃する。その直後、フェイトに迫っていた誘導弾を首を左に傾げスレスレの所でかわす。

 

「ああぁぁーーーー!!」

 

 なのははそのまま吹き飛ばされ、後方にあったビルを突き破り、そのまま海面に激突して大きな水しぶきを上げる。

 誘導弾もコントロールを失いあさっての方向に飛んでいき霧散する。あたりは、爆煙と粉塵に覆われフェイトの視界からなのはが隠れ見えなくなる。

 フェイトはビルの屋上の手すりに静かに降り立つと、油断なくなのはが吹き飛んだ場所を注視する。

 煙が徐々に晴れていくなか、煙に桜色の反射光が見えた。それを見た時フェイトの感覚が危険と警報を鳴らす。

 すぐにその場を離れると、次の瞬間立っていた場所が消しとんだ。

 

ズドォォーーン!!

 

 フェイトは崩れた体勢を整え発射された場所を警戒する。

 煙が晴れたそこにいたのは油断なくレイジングハートを構えているなのはだった。

 肩で息をしていて、バリアジャケットは所々汚れているものの傷ついた様子はない。

 

『やはり実力的には彼女の方が上です。簡単には勝てません』

 

「知恵と戦術はフル回転中、切り札だって用意してきた。だから後は、負けないって気持ちで向かって行くだけ! でしょ?」

 

『オーライマスター』

 

 レイジングハートが光ってそれに応える。なのははフェイトに向かって行き、勢いよくそこから飛び立つ。空中で何度も交差して切り結ぶ。

 

ギャン!! ガキン!!

 

 そのたびに火花が散り、衝撃波が大気を震わせ、衝突の激しさを物語る。

 ビルの間を縫うように飛行し相手の後ろをとるために複雑な軌道を描く。魔力弾をかわす為にビルに沿って飛行すればその衝撃で窓が割れ、更に魔力弾がビルを貫き破壊する。フェイトの後ろをとったなのはが再び魔力弾を周囲に浮かべる。

 

「シュート!」

 

シュン! シュン! シュン! シュン!

 

 フェイトに向かって飛んでいく魔力弾。フェイトはそれを上空に上がることでかわしていく。

 フェイトは更に高度をとり雲の中に入る、なのはもそれを追って雲の中に入っていく。

 雲を抜けたそこには一面青一色の空に輝く太陽、雲を見下ろす形になり戦闘中でなければその景色を存分に味わいたいと思うほどのものだ。

 しかし今のなのはにその余裕はなく、必死にフェイトを追いかける。しかしそれが仇になった。フェイトがいきなり両手両足を広げ大の字になり、全身で風の抵抗を受け急激にスピードを落とす。

 なのはから見れば一瞬だっただろう。スピードを落としたフェイトが頭上を越え宙返りをして背後をとる。見事なクルビットを決められた次の瞬間にはフェイトからマシンガンの様に魔力弾が撃ち込まれる。

 

ドッ! ドッ! ドッ! ドッ! ドン!

 

 背後から迫る弾幕を回避し再び雲の中に入る。が、フェイトはそれを先回りし、なのはの上空からバルディッシュで斬りかかる。

 上空から迫るフェイトに気付いたなのはは、間一髪のところでレイジングハートで斬撃を防ぐ。そのまま二人はクルクルと回転し斬りむすび、一気に上昇。螺旋を描き更に斬りむすぶ。

 そして、一際大きな音がして、二人が左右に弾かれる。

 

「「はあ、はあ、はあ」」

 

 二人は睨み合いながら呼吸を整える。二人とも肩で息をしていて体力の消耗も激しい。

 無理もない、これだけの戦闘をして消耗しない訳がない。これだけの航空機動を行えば相当体力を持っていかれている。しかも二人はまだ小学生なのだ。発達しきってない未熟な身体、未熟な体力では限界が来るのも早い。

むしろこれだけの機動を行えること自体が異常なのだ。

 

「流石だね、フェイトちゃん」

 

「そっちこそ」

 

 短く言葉を交わす。現状お互いに手詰まり、決定的な一撃を加えられない。

 

「でも、私は負けられない。母さんのために勝つんだ!」

 

 その決意と共にフェイトは飛び出す。

 

(クロノ君! お父さん! まだなの!?)

 

 戦闘を開始して15分、一向に連絡が来ないなのはに焦りの色が見え始めた。

 

― フェイト・テスタロッサ ―

 

 もう何度攻撃しただろうか?

 10や20じゃ無い、それでもなのはに決定打を与える事は出来なかった。初めて会った時とはまるで別人だ。

 教え方が上手い人が向こうにはいるのだろう、私の攻撃を回避して、隙あらば攻撃してくる。何度もひやりとする場面があった。

 

(それでも、絶対に勝つんだ! そうすればきっと昔みたいに母さんも笑ってくれる)

 

 思いだすのは何時も優しそうに笑ってくれる母さんの笑顔。一緒にピクニックに行って、小高い丘の木の下でお弁当を食べる。母さんの手作りでとてもおいしいお弁当だ。

 

「沢山あるから大丈夫よ、アリシア」

 

 え? ……アリシア? 違うよ母さん……。

 

「ただいま」

 

 目を開けた先にいたのは母さんだった。

 毎日仕事で遅くなって、一緒にご飯を食べようと思ってソファーで母さんの似顔絵を描いてたらいつの間にか寝てしまっていた。

 

「ごめんね、待たせちゃったわね」

 

 ううん、そんな事ないよ。

 

「もう遅いから寝ましょうか」

 

 そう言って、母さんと一緒にベットに入る。私がお仕事何時まで掛かるのと聞くと、

 

「後一週間で全部終わるわ。そうしたら何時も一緒に居られるわ」

 

 良かった、後一週間我慢すればいいんだ。

 

「そうしたら一緒に色んなところに行きましょう」

 

 うん! いっぱい母さんと遊びたい!

 

「そうね、いっぱい遊びましょうね」

 

 うん、約束だよ。

 

「ええ、約束。じゃあ、もう寝ましょうか。おやすみアリシア」

 

 母さん? ……違うよ私はフェイトだよ……。

 

 そして一週間たったその日、何時も通りリニスと留守番していて絵を描いていると、ふと気になって窓から母さんの働いているところを見ていたら、その場所が光ってその光が私のところまで来たのは覚えてる。

 次に見たのは母さんの泣き顔だった。母さんに聞いたら、母さん仕事場で事故があってその影響で今まで私は眠っていたって教えてくれた。

 でも、その日から母さんはだんだん笑わなくなっていった。何時も一緒に食べてたご飯も一人になって、勉強した時も誉めてくれなくなって、夜も一人で寝るようになった。

 それと、特に魔法を初めて使った時はすごくつらそうな顔をしていた。それからは母さんと会う事自体が無くなっていった。

 それからは、ただ母さんの期待にこたえるように頑張った。たくさん勉強もして、魔法の訓練もたくさんした。それでも誉めてくれなかったのはきっとまだ足りないからだと思った。

 でも、今は昔の事はどうだっていい。このジュエルシードを集めてくれば昔の母さんに戻ってくれる。昔みたいに一緒にご飯を食べて、一緒に出かけて、一緒に寝てくれる。

 ただ私は母さんに笑ってほしい、だからこの戦いは負けられない。だから私は勝負に出る事にする。私はさっきまで打ち合っていたなのはから距離を置き向き合う。

 かなりの距離をとったからなのはもすぐには追ってこないで警戒している。

 

「これで終わりにしよう」

 

 そう言って私はバルディッシュを横に薙いで魔法陣を展開する。なのはの周囲にもいくつかのトラップを仕掛け、私の周りにもスフィアを浮かべる。

 その数は100を超え、一つのスフィアからは一秒間に3発の高速連射をして10秒間撃ちつづけ、約3000発近い魔力弾を叩き込む大技。

 

フォトンランサー・ファランクスシフト

 

 それを見てなのはが息をのむのが分かった。

 こっちを見て何かしようとしていたからそれをさせないために私はトラップを発動させる。

 

「ライトニングバインド!」

 

 私はバインドで両手を拘束する。そして一気に魔力を解放する。

 

「ファランクス……うち砕けぇーーー!!!」

 

 その号令と共にスフィアから一気に魔力弾が撃ち込まれる。

 なのはが防御している様で、弾かれた魔力弾が周囲の建物にあたって爆発する。

 あっという間に爆煙と、粉塵に包まれて見えなくなる。そして最後に左手を上げ周囲に浮かべていたスフィアを纏める。それは巨大な一本の槍になって浮かび上がる。

 

「スパーク……」

 

 そして全てのスフィアを纏めあげ槍を完成させるとそれを思いっきり投擲する。

 

「エンド」

 

ドシューーーーーン…………ドドドドガアァーーーン!!!

 

 それは周囲の建物をえぐりながらなのはのいた場所に突き刺さって爆発する。

 放電しながら周囲のビルを纏めて吹き飛ばして、海水を押し退け、海底を見せる。

 最後に一際大きな爆発をしてそれは終わった。正直これを耐えられたら打つ手がない。そう思いつつなのはのいた場所を見ていると、煙の中から白い影が落下していくのが見えた。

 なのはだ。それは、海面に激突する寸前で一樹が拾い上げる。そして、なのはをビルの屋上に寝かせてこっちに近づいてくる。

 

「凄い技だったな」

 

「い、いえそんな事は……」

 

「謙遜するな。なのははあの通り気絶したからな」

 

 そう言って一樹はさっきなのはを寝かせたビルの屋上を指さす。

 

「そ、それじゃあ……」

 

「ああ、この勝負フェイトの勝ちだ」

 

 一樹からそう言われた瞬間、胸の奥から熱いものが込み上げて来て叫びだしてしまいそうなのを必死に隠す。

 けどそれはほんの僅かしか味わえなかった。なぜなら、

 

「しかし、ジュエルシードは渡せないな」

 

 そんな言葉を聞いたからだ。

 

「……どうしてですか?」

 

「これは組織に必要なものでね。フェイトのお母さんにも回収を頼んでいたんだよ」

 

「ど、どういう……」

 

「なに、簡単な事だ。このロストロギアは私の物だ」

 

 一樹がそう言って私の喉を掴んで来た。

 

「ガッ!」

 

 とっさの事に反応出来ないまま首を掴まれてしまう。

 

「しかし、君が勝つとはな。予定が違ったから驚いたが、どちらが勝とうが私には関係のない事だ」

 

「な、なにを言って……」

 

「気にしない事だ。君には関係のない事だ」

 

 一樹がそう言うと首に掛かる力が徐々に強くなる。

 万力で掴まれた様な力にだんだん意識が遠くなっていく。ああ、もう駄目なのかな……。そう諦めかけたとき、

 

ガギャン!!

 

 と言う音と共にいきなり首の圧力が無くなった。

 

「ゴホッ! な、何が!?」

 

「フェイトちゃん!? 大丈夫!」

 

「あ、亜夜?」

 

 そこには亜夜がいた。亜夜は一樹の方を油断なく見ている。

 

― 斎藤亜夜 ―

 

「亜夜ちゃん、一樹君は一旦家に帰ったんだよね?」

 

 美由希さんが私に聞いてくる。私は顔を上げて美由希さんを見る。

 

「うん、家に帰ってやる事があるって言ってた」

 

「家に連絡した?」

 

「うん、でも誰も出なかった」

 

「え~っと念話だっけ? それは?」

 

「駄目。何度やっても返事がないです」

 

「そう、じゃあ私が確かめてくる」

 

「え?」

 

「もし人質になってたりしたら厄介だし、それに私じゃ空中戦は荷が重いしね」

 

 美由希さんは苦笑しつつ答えてきた。

 

「それなら私も一緒に行きます!」

 

 そうだ、それなら私も一緒に行った方が確実だ。

 

「ううん、私一人で大丈夫だよ。確認するだけだし、不味くなったら逃げるから。その代わり私の分まで頑張って来て」

 

 そう言って笑いかけてくれた。

 

「それに、一樹君がそう簡単にやられると思う?」

 

「……そうですね。それは無いですね」

 

 普段ふざけていても、実力は折り紙つきのお兄ちゃんだ。そう簡単にやられる様な事は無いと思う。

 

「うん、じゃあ私はとりあえず家に行ってみるよ。いなかったらとりあえず手当たり次第に探してみる。あ、連絡はどうすればいいかな?」

 

「それだったらこれを使ってくれ」

 

 リンディさんに報告しに行っていたクロノさんが手ひらサイズの黒い箱の様なものを美由希さんに渡してきた。

 

「通信機です。アースラとの連絡はそれでとってください。設定もされてるから後はこのボタンを押せば直接アースラに連絡が出来きます」

 

 そう言ってクロノ君がそのボタンを押すとウィンドウが出てきてエイミィさんが出た。

 

『クロノ君、感度はどう?』

 

「艦内に居るんだ、問題あったら困る」

 

『ははは、それもそうだね。あ、すいません。ちゃんとした自己紹介、まだでしたね。私はエイミィ・リミエッタです。よろしくお願いします。高町美由希さん。そのボタンを押せば私に繋がります』

 

「あ、はい。高町美由希です。お願いします」

 

『一樹をお願いします。あんなのでも友達だから』

 

 笑いしながら言ってくるエイミィさん。

 

「僕からも頼みます」

 

 そう言ってクロノさんも頭を下げる

 

「あ、美由希さん。とりあえず家の鍵渡しときます」

 

 そう言って私は家の鍵を渡す。

 

「うん、じゃあ行ってきます。お父さん、恭ちゃん後よろしく」

 

「ああ」

 

「こっちは任せてくれ」

 

「じゃあ、転送します」

 

 クロノさんがそう言うと地面に魔法陣が浮かび上がり美由希さんの姿が消える。

 

「後は連絡待ちか……」

 

「なのはも時間を稼いでいるが結構厳しそうだ」

 

 そう言ってみんなが見ているのはスクリーンに映っているなのちゃんの戦闘映像。

 どっちも一進一退の攻防だけど、余計な制限がなのちゃんにはあるから余裕がある訳でもない。

 

「頑張ってなのちゃん」

 

 応援の言葉がこぼれる。みんな真剣にスクリーンを見ている。

 

「魔力保有量自体はなのはが上だが、戦い方はフェイトが上か……」

 

「でもなのちゃんには切り札があるんでしょ?」

 

「ああ、ただそれを撃つためのチャージ時間がかかり過ぎるんだ。正直スピードで翻弄するフェイトにあてる事が出来るかどうか怪しいところだ」

 

「そ、そんなにチャージするの?」

 

 正直そこまでチャージしたらどんだけ強い砲撃になる事やら。

 

「ああ、シュミレーション上の事だから何とも言えないがまともに当たれば間違いなくKOだろう」

 

「いまいちぱっとしないけどそれはどれ程の威力なんだい?」

 

「そうですね、この世界のイメージでいうと戦略核5.5発分の威力です」

 

「「「…………は?」」」

 

 私達はそろってポカンとなる。

 因みにユーノ君とアルフさんは戦略核の威力が分からないのか、そのぐらいの威力が普通なのか、驚いている様子は無い。私は前者だったら良いなと思う事にした。

 

「ちょ、は? え~~~!?」

 

「「…………」」

 

 私は混乱して、士郎さんと恭也さんは頭を抱えている。

 それはそうだろう娘、妹がそんな高威力の攻撃をする事が出来るのだから。

 

「クロノ君、それは君達魔導師にとっては普通の事なのかい? 半径10㎞前後に壊滅的被害をもたらすのは?」

 

「「!?」」

 

 あ、ユーノ君とアルフさんが驚いた。やっぱり前者だったみたいだ。

 

「少なくとも普通じゃないですね。そんな事が出来るのは管理局全体で1%いるかいないかです」

 

「そうか……」

 

 それを聞いて何やら複雑な表情を浮かべる士郎さん。そして部屋に沈黙が流れる。

 

『あ、クロノ君! 美由希さんから連絡がきt……どうしたの?』

 

 そんな中エイミィさんから連絡がきた。

 

「ああ、いや何でもない。で、どうだったんだ?」

 

『え~っとね、結論から言うと一樹君は無事だったよ』

 

「ほ、ホントですか!?」

 

『うん、命には別状ないって』

 

「で、本人は何て言ってるんだ?」

 

『それがまだ起きないんだよね一樹君』

 

「は? 起きてない? どういう事だエイミィ?」

 

『それがね、ぐっすりみたいだよ? 何をしても起きないって美由希さんが言ってた。しかもこの顔で』

 

 そう言って画面に移されたのは、それはそれは幸せそうに寝ているお兄ちゃんの寝顔だった。

 

「「「「「「………………」」」」」」

 

『一応後頭部にコブがあるから今アースラに運んで検査する予定だけど……聞いてる』

 

「ああ、心配した結果がこれか……」

 

「く、クロノ!? なんか出てるよ!?」

 

 クロノさんから出ている何かに脅えるユーノ君。

 まあ、クロノさんの気持ちも分からない訳じゃない。自分たちが心配している時にこんな顔で寝られてたら……ねぇ。

 

「ちょっと起こしてくる」

 

 そのまま部屋を出ていこうとするクロノさん。

 

「ちょっと!? 駄目だって! あクロノ! あれ! あれ!」

 

 そう言ってユーノ君が指さした先にはフェイトちゃんが大規模な魔法を使おうとしているところだった。

 

「ここで、勝負を決めに来たか……、よし! こっちも仕掛けよう。なのは! 良く聞いてくれ……」

 

 そう言うとなのちゃんに指示を出し始めた。その内容にビックリした。

 なのちゃんに一通り説明し終わってクロノさんがみんなのところに近付いてくる。

 

「予想外の事が起きていますけどここが勝負どころになりそうです。気を引き締めていきましょう。それと亜夜」

 

「はい?」

 

 いきなり呼ばれて少し声が裏返る。

 

「トップバッター任せた。キツイ一発を奴にお見舞いしてやれ。ジュエルシードの回収も忘れるな」

 

「はい!」

 

 自然とアマテラスを握る手に力が入る。

 

『小娘、どう攻撃するのだ?』

 

 アマテラスに言われて考える。威力重視だとかわされたら無意味だし、そのほかだと威力が足りないかもしれない……あ、そうだあれで威力を底上げしよう。

 

「居合で行く」

 

『む、それだと威力不足ではないか?』

 

「その為の「鞘」でしょ?」

 

『成程、「鞘」を使うか。それならば威力の底上げも充分だろう。スピードも最速。問題無さそうだな』

 

「ん? 鞘に何かあるのかい?」

 

 気になったのかアルフさんが聞いてきた。

 

「秘密! それは見てからのお楽しみ!」

 

「アヤ! 準備はいいか!」

 

 クロノさんがそう言ってくる。

 モニターを見ればなのちゃんがフェイトちゃんの攻撃を受けて落下していくところだった。

 

「はい!」

 

 私は居合の構えのままその時を待つ。モニターにはフェイトちゃんに近付くカリウムの姿。

 

ギュウーー

 

 手に力が入って籠手から革の絞る様な音がする。

 カリウムがフェイトちゃんと話していると急にフェイトちゃんの首をつかみ締め上げ始めた。首に指が食い込んでいて相当な力で締められている。

 

「クロノさん!」

 

「転送!」

 

 私の声に反応して転送する。私が出たのはカリウムの真上、手を伸ばせば頭に手が届く程の近さだ。

 アマテラスは左腰にさしてある。狙うはカリウムの左の首筋。柄に右手を添えて右足を踏み込む、腰の回転と共に左手で「鞘」についているトリガーを引く。

 

バシュン!

 

 と空気圧によって勢いよく刀身が射出される。

 0の状態から一気に最大速になる。音でカリウムが気付いて避けようとするけど……

 

「遅い!」

 

 そのときすでにアマテラスはカリウムの首筋に直撃して、私は勢いを殺さずそのまま振りぬく!

 

ガギャン!!

 

 凡そ人を斬ったとは思えない音が出て、衝撃が右手を襲う。

 か、硬~い! 右手がビリビリ痺れてる。もし舞蹴壱拾弐號(まいけるじゅうにごう)で威力を底上げしてなかったら振りぬけなかったかも。

 

「ゴホッ! な、何が!?」

 

「フェイトちゃん!? 大丈夫!」

 

「あ、亜夜?」

 

フェイトちゃん咳き込みながら喉を押さえてこっちを見ている。

 

「亜夜! どういうつもりだ!?」

 

 吹き飛ばされたカリウムが怒鳴る。

 

「何時まで変装してるつもり? カリウムさん?」

 

「何の事だ? 俺は変装なんかしてないぞ?」

 

「嘘ね! もうネタは上がってるんだから!」

 

「なに?」

 

「こう言う事だ!」

 

バガン!!

 

 今度はクロノさんが現れてカリウムを吹き飛ばす。そして吹き飛んだ先には士郎さんが待ち構えている。

 

ギャ、ギャン!

 

 酷い金属音がしたと思ったらまたカリウムが吹き飛ばされ、それを今度は恭也さんが打ち落とす。

 

バシャーーーーン!!!

 

 大きな音と、水柱を立てる。

 

「フェイト!!」

 

 アルフさんがフェイトちゃんに抱きつく。

 

「ア、アルフ今までどこに?」

 

「ゴメンよフェイト、あいつに殺されそうになった所を一樹に助けられたんだ。それでそのまま管理局に保護されてたんだ」

 

「???」

 

「アルフ、それじゃあ説明が足りない。フェイトが混乱してるぞ。亜夜! 何個回収出来た!?」

 

クロノさんが聞いてくる。

 

「七個です!」

 

「こっちは十一個か、チッ! 三個回収し損ねたか! テスタロッサ事情は後で説明する。今は協力してくれ!」

 

「は、はい」

 

 いきなりの事でまったく事情が飲み込めてないフェイトちゃん。

 すると、海面からカリウムがゆっくりと海中から出てきた。

 

「此方に来るのはもう少し掛かると思っていたんだがな……。何処で気付いた?」

 

 その声に背筋が凍る。お兄ちゃんの声なのにすごい冷たい声だ。恐い。ただ恐い。

 

「はじめからと言いたいところだけど、気付いたのはブリーフィングの後だ。何時もの一樹とは明らかに違い過ぎた。それにデバイスもつけてなかった。これがほかの人間だったら危うく気付かないままだったよ」

 

「そうか、私の調査不足だった訳だ」

 

 そう言うとカリウムは首のあたりから何かバーコードの様なものをはずして、更に顎のあたりに爪を立てると何かを掴んで一気に引き上げる。

 するとお兄ちゃんの顔の下から、黒い覆面に、オッドアイの目が出てくる。服装も黒一色の服装に代わる。おそらくバリアジャケットだろう。

 

「観念しろ、「カリウム」逃げ場は無いぞ!」

 

 そう言うと周りから「ジャキ!」と音が聞こえる。いつの間にか周囲を武装隊が囲んでいる。

 

「これだけの戦力で如何にかなると思っているのか?」

 

 カリウムと言われた男がそう言った瞬間空気が一変した。

 声もお兄ちゃんのものじゃ無くなって、より冷たい声になっていた。 

 

恐い、恐い、恐い、恐い、恐い、恐い、恐い、恐い、恐い、恐い、恐い、恐い、恐い、恐い、恐い、恐い、恐い、恐い、恐い、恐い、恐い、恐い、恐い、恐い、恐い、恐い、恐い、恐い、恐い、恐い、恐い、恐い、恐い、恐い、恐い、恐い!

 

 周りを見ると他の人たちも顔色が悪い。隣にいるフェイトちゃんとアルフも震えている。

 ここからは少し距離があるのにも関わらずこんなに「恐い」一体これは?

 

「全員撃て!」

 

 クロノさんがそう言って指示を出して、全員が魔力弾を撃ち始める。

 カリウムの周囲が弾幕で埋め尽くされる。避ける隙間なんてない。けど、

 

ガン! ガン! ガン!

 

「ぐあ!」

 

「ガッ!」

 

「ぎゃ!」

 

 驚いた事に、カリウムは弾幕を受け流し、打ち消し、かわしながらその中のいくつかを選んで蹴り、殴って弾き返して武装隊の人達にあてていた。しかも弾き返した魔力弾は明らかに威力が上がっている。

 

「出鱈目な奴だ!」

 

「誉めても手加減はしないぞ?」

 

「言ってろ! 士郎さん、恭也さん!」

 

「「分かった!」」

 

「ユーノ、アルフ! 二人のサポートを! 亜夜、テスタロッサ、も援護を!」

 

「「「「はい! (はいよ!)」」」」

 

 クロノさんがそう指示をどんどん出していく。

 それでもカリウムは落ちる事なく攻撃をかわす。私も射撃魔法で援護するけどまったく当たらないで弾かれる。

 クロノさんも直接攻撃を仕掛けるけどまったく当たらない。

 

「チッ! 父さん!」

 

「任せろ!」

 

「チッ、厄介だな」

 

 士郎さんと恭也さんがカリウムに向かって行った。二人がカリウムを徐々に押している。

 流れるようなコンビネーション。カリウムに息をつく暇を与えない。合計四本の刀が上下左右様々な角度から襲いかかってくる。

 凄い、魔法も使わないのにあんなに強い。二人はユーノとアルフがつくった足場を巧みに使ってカリウムを攻め続ける。

 

「チッ、邪魔だ!!」

 

ズドン!

 

 カリウムの放った掌底は、カウンター気味に士郎さんの鳩尾に決まる。

 重い音を立てて士郎さんが吹き飛ばされる。

 

「ガッ!」

 

「父さん! 貴様!」

 

「クッ!」

 

ギャン!

 

 金属音の様な音がしてカリウムの腕で恭也さんの斬撃が防がれる。

 防いだ腕のバリアジャケットは斬り裂かれているけど腕は斬る事が出来なかった。

 

「なっ!」

 

「隙あり!」

 

「ちい!」

 

バガン!

 

 カリウムの攻撃を受けた恭也さんが吹き飛ばされる。でも防御が間に合ったみたいでダメージは無いみたいだった。

 しかし、信じられない。恭也さんは間違いなく手加減抜きで斬りかかったはずだ。その証拠にバリアジャケットが斬り裂かれているのだから。

 バリアジャケット自体かなりの防御力を持っている。なのちゃんの戦闘を見ても分かるように、ビルに叩きつけられたり、海面に叩きつけられたりしても身体にはかすり傷一つ負わないのだから。

 それを斬り裂いたにも関わらず、その下の腕には傷一つつかなかった。私が攻撃した時の感触も異常に硬かった事から、カリウム本人の防御力自体が高い事がうかがえる。

 

「おいおい、腕に何か仕込んでるのか? そんな感触は無かったんだが?」

 

「なに、人より身体が丈夫なだけだ」

 

「丈夫ってだけで刀で斬れないって非常識だな」

 

「……良く言われる」

 

「当たり前だ!」

 

 恭也さんは士郎さんと合流して再びカリウムに攻撃を仕掛ける。私はその攻防に加わる事は出来ない。

 レベルが違い過ぎる。精々出来る事といったら牽制の射撃魔法を撃つことぐらいだ。

 

(亜夜!)

 

 そう考えているとクロノさんから念話が来た。

 

(は、はい!?)

 

(テスタロッサと協力して、カリウムの周囲にトラップバインドをしかけられるか?)

 

 私は隣にいたフェイトちゃんを見る。すると目があった。どうやらフェイトちゃんにも説明があったようだ。

 

(フェイトちゃん、さっきなのちゃんに仕掛けたバインド、また仕掛けられる?)

 

(多分大丈夫)

 

(良し、じゃあ奴の後方に仕掛けてくれそこに追い込む)

 

(分かりました)

 

 言い終わるとクロノさんもカリウムに向かって、士郎さんと恭也さんに加り攻撃していく。

 クロノさんは杖の様なデバイスを棍の様に使って攻撃する。

 

「やるなークロノ君!」

 

「一樹の相手をしていたら自然とこうなりましたよ!」

 

「まあ、そうなるだろうなッ!」

 

 三人で会話をしながら戦闘をするという非常識な光景だけど徐々に戦況が傾き始めた。

 少しずつだけどカリウムが押され始めている。更に、周りの武装隊からの援護も勢いがつきはじめ、だんだんカリウムが被弾していく。

 

「グッ! ええい、ちょこまかと!!」

 

 被弾した時にバランスを崩すカリウム。その隙を見逃す程士郎さんは甘くない。

 

「御神流 貫!!」

 

「なっ! グハッ!」

 

 士郎さんが放った技にカリウムは腕をクロスして防御するけど、「貫」はその防御をすりぬけてカリウムに直撃する。

 今度は胸のあたりにうっすらと血がにじんでいる。防御が間に合わなかったようだ。

 そして、士郎さんの身体の真後ろにつけたクロノさんが士郎さんが退くと同時に魔法を放つ。

 

「ブレイズカノン!」

 

ズガァァン!

 

 ほぼ零距離の直射砲がまともにヒットしてカリウムを後方に弾き飛ばす。

 そして私達の仕掛けたトラップバインドに掛かって両手両足をガッチリ拘束する。

 

「なっ! チッ、こんなもの!」

 

 カリウムは抵抗してあっさりと壊すが、その上から更に二重三重にグリーンとオレンジバインドが絡みつく。

 アルフさんとユーノ君のバインドだ。両手両足に絡みついた上その上から更にグルグル巻きにされるカリウム。

 あれならしばらくは見動きは取れないだろう。

 

「今だ! なのは!」

 

 クロノさんがなのちゃんに合図を送る。そしてそれに答えるよう上空に綺麗な桜色の魔力光が現れる。

 よく見るとそれは常識外れの巨大な魔法陣に魔力の塊。それを中心にリングが回る。そしてそれを更に大きくする為にレイジングハートを構えているなのちゃん。

 その姿は所々煤けていたり、一部穴があいてたりしてる。そう、これが私達の作戦。全員でカリウムの注意を惹きつけてなのちゃんの切り札で仕留める。

 

『スターライトブレイカー!』

 

「使いきれずにバラまいちゃった魔力を、もう一度自分のところに集める」

 

「集束砲撃……!」

 

「嘘でしょ!? 何あの大きさ!!」

 

 私とフェイトちゃんが目を丸くして驚く。そして未だに周囲の魔力を集めて巨大化する魔力。

 

「レイジングハートと考えた知恵と戦術、最後の切り札!」

 

 そう言うと、周囲の魔力を集め終わった巨大な魔力の塊がが脈打つ。

 

「受けてみて、これが私の全力全壊!」

 

「があぁぁぁぁーー!!!!」

 

 カリウムはバインドを解こうとして足掻いている。一本一本千切れていくがバインドの数が多く抜け出せないでいる。

 

「全員速やかに退避しろ!」

 

 発射される直前にクロノさんが退避命令を出す。

 当然だ、あんなの掠っただけで意識を飛ばされること請け合いだ。

 

「スターライト、ブレイカーーーーー!!!!!!」

 

 なのちゃんが振り上げたレイジングハートを振り下ろす。

 

ヴォォ、ドドドドドズドォォォーーーーン!!!!!

  

 魔力の塊の前に出来た魔法陣から集束された魔力が発射される。

 通常では考えられない様な太さの砲撃がカリウムを襲う。誰もがカリウムの無残な姿を想像して、勝利を確信した時だった。

 

「がぁぁぁーー、うらあぁぁーー!!!!」

 

 直前でカリウムがバインドを引きちぎる。そしてカリウムは両手を突き出し、集束砲撃を受け止めた。

 

「「「「「なっ!!!」」」」」

 

 その場にいた全員が驚愕する。

 それはそうだろう。あんな砲撃プロテクションを何枚張っても防げる気がしない。

 にもかかわらずカリウムはその両手だけでそれを受け止めたのだから。

 

「こ、こんなものぉぉぉ!!」

 

「ヤアァァァァーーーー!!」

 

 しかし、それでも集束砲撃は止まらない徐々にカリウムを押していく。

 

「いっけえぇぇぇーーーーーーー!!」

 

「ちくしょうーーーーーーーーー!!」

 

 カリウムはそう叫ぶと桜色の砲撃に飲み込まれていった。

 そしてそ砲撃はのまま海に突き刺さり大爆発を起こし、あたりを爆煙が包みこむ。

 衝撃波が大気を揺らして、爆音が響く。しばらくして爆煙が晴れた時、私達が目にしたのは海に現れた巨大な「穴」だった。

 

 

 

 

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