― 高町なのは ―
『最高の一撃です。マスター』
「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ……」
なかなか呼吸が安定しない。全身が呼吸するたびに肩が上下する。身体が重くて今にも飛べなくなりそうな程疲れてる。それだけの砲撃だったし、レイジングハートの言うとおり最高の一撃だと思う。
その証拠に、周りにあった建物は殆ど無くなっていて、海に開いた穴に海水が流れ込んでいる。フェイトちゃんが最後の攻撃をする前いきなりクロノ君から作戦変更の連絡が来た時はもの凄く焦った。
「カリウムが一樹と入れ替わっている」
クロノ君は初めに短くそう言ってきた。
「恐らく、そっちの決着がついたらジュエルシードを奪う為に動くはずだ。だから魔力を温存して向こうに撃墜されたと思わせるんだ」
いきなりの事で混乱したけど、混乱しなかったのはフェイトちゃんのおかげかもしれない。目の前であんな大技の準備をされたら嫌でもそっちに注意がいく。だから表情に出さずに済んだと思う。
「向こうが動いたら、こっちも全員で逮捕に向かう。総力戦だ。それとなのはは気付かれないように切り札の準備をしてくれ」
切り札、レイジングハートと一緒に訓練して身に付けた大技。ただ準備に異常なほど時間がかかる。
「その時間は僕達が稼ぐ」
それを聞いて安心する。私一人じゃ絶対にあてる事は出来ないだろうから。でも、
「一樹お兄ちゃんは?」
気になっていた事だ。入れ替わったって言う事はここにはいないって事だから……。
「一樹なら無事だ。美由希さんが確認した」
良かった、それを聞いて安心出来た。
そして丁度フェイトちゃんの方も準備が出来たみたいで、それを見て反応したらいきなり両手をバインドで拘束されてしまった。
に゛ゃ! いくらなんでもこの状態からあんなの受けたら本当に負けちゃう!
「ファランクス……うち砕けぇーーー!!!」
(フェイトちゃん! ちょっと待ってぇーーー!)
そんな私の心の声が聞こえるはずもなく、情け容赦なく攻撃を開始するフェイトちゃん。
でも間一髪のところでプロテクションを張る事が出来た。けどそこからがとても長く感じた。絶え間なく襲う衝撃と爆音。ビシ、ビシとプロテクションにひびが入っていく。しかもバインドも解けていない。
その状態で良く耐えたと思う。どの位経っただろう? 攻撃がやんだ。
プロテクションもヒビだらけだ。後から思うとここで気を抜かなければ良かったと思う。
ホッとした瞬間今までの比じゃない衝撃が襲ってきた。ヒビだらけのプロテクションは砕けて、続いて起こった爆発で気を失ってしまった。
ただ、どこかで意識をつなぎとめていたのか、誰かに運ばれる様な感覚だけは感じた。
次に目を覚ましたのはビルの上で、レイジングハートが必死に私を呼ぶ声が聞こえた。幸いな事に気を失っていたのは数分だったみたいで、カリウムさんをみんなで取り囲んでいる。
(なのは! 気付いたか!?)
(く、クロノ君!?)
(時間がかかるんだろ!? 早く準備をしてくれ! 僕達がこいつを引きつける!)
(は、はい!)
そう言ってクロノ君達がカリウムさんと戦い始めた。
すごい、武装隊の人達と亜夜ちゃんとフェイトちゃんが弾幕を張って、その中をお父さんとお兄ちゃんとクロノ君が仕掛けている。
それでも互角だった。カリウムさんは弾幕を弾き返して反撃しながらお父さん達の攻撃を、避けて、受け止めて、そこからさらに反撃している。
信じられない。お父さん達が強いのは知ってたけど、それ以上に強いカリウムさんを見て勝てるのかな? って考えちゃう。
『マスター』
「あ、レイジングハート……」
『大丈夫です。みなさんは必ず勝てます。しかしそれはマスターの切り札が決まってこそです』
「……出来るのかな?」
『出来ます。マスターとみなさんなら。あんなに訓練したのですから』
「そうだね、ありがとうレイジングハート!」
『どういたしまして』
レイジングハートに激励されて私はカリウムさんに気付かれないように空に上がっていく。
そして十分な高度をとったらゆっくり、気付かれないように周囲に散らばった残留魔力を集めていく。少しづつ、少しづつ、集めていく。
魔力の粒子が集まって、それはだんだんと大きくなっていく。ゆっくり、ゆっくり大きくなっていく。
下ではみんながカリウムさんをじりじり追いこんでいる。私は常にカリウムさんをロックして、更に魔力を集めていく。
「今だ! なのは!」
クロノ君から合図がきた。それを聞いてレイジングハートに合図する。
「行くよ! レイジングハート!」
『スターライトブレイカー』
私はそこから一気に周囲の魔力を集めていく。
私と、フェイトちゃんが戦った時の魔力と、クロノ君や武装隊の人達の使いきれなかった魔力が一気に集束して、巨大な魔力の塊が出来あがる。
「使いきれずにバラまいちゃった魔力を、もう一度自分のところに集める。レイジングハートと考えた知恵と戦術、最後の切り札!」
周囲の残留魔力を残らず集めてそれが完成した。
「受けてみて、これが私の全力全壊!」
カリウムさんがどんどんバインドを壊していく。けど、私の方が早い!
「スターライト、ブレイカーーーーー!!!!!!」
それは凄い音と一緒に発射されてカリウムさんに直撃した。
けど、伝わってきた感触は受け止められたものだった。手で壁を押している感じでそれ以上前に進まない。そんな感じの感触。
しかもカリウムさんはあれだけの砲撃をプロテクションを使わないで素手で受け止めている。でも!
「ヤアァァァァーーーー!!」
負けられない! みんなが頑張ってつくってくれた絶好のチャンス。これを返されたらきっと勝てない。
これは私だけの力じゃない! みんなの力が、魔力が、思いが詰まってる! だから絶対に負けない!
「いっけえぇぇぇーーーーーーーーーーーーー!!」
そう叫ぶと更に強く魔力が流れる。
そして先に進めない壁みたいな感触が綺麗に消えて、直進したのが分かった。
そしてその瞬間はっきりと目にした。カリウムさんが砲撃に飲み込まれたのを。
― クロノ・ハラオウン ―
「……なんつー馬鹿魔力」
そう思ったのはきっと僕だけじゃないはずだ。
周囲の訓練用建造物の九割近くを破壊しただけでは飽き足らず、海に大穴をあけた。その大穴には海水が流れ込んでいたが、いましがたやっと満たされた様だ。
「……カリウムは生きてるのか?」
そう呟いたのは恭也さんだった。
確かに、今まで非殺傷設定で攻撃されて死んだ人間はいないけど、これは「そんなの関係ないんじゃないか?」と思わずにはいられないほどの一撃だった。
まあ、それはこれから確認すればいい。
「小隊長、何人か連れて確認を頼む。大丈夫だと思うが油断はするな」
「了解! 第一分隊ついてこい!」
『ハッ!』
そう言って小隊長が三人ほど連れてカリウムが落とされた場所に行く。
しかし武装隊もかなり落とされたな、今は三分の一程しか残ってない。残りは落とされた順にアースラに転送されていった。ホントにギリギリだ。
管理局だけで対応してたら間違いなくアウトだった。しかし一樹の奴、肝心なときに役に立たないなんて……。
あの後、美由希さんを一樹の家に向かわせた。亜夜の話だと今日は家に誰もおらず、直接行く以外確認は出来なかった。結果、一樹は無事だった。
人質になっていた訳でもなく、致命傷の傷を負っていた訳でもなく、部屋で簀巻きにされ、まったく動く事が出来ないうえに薬物を使われたようでぐっすり寝ていた。
その時の寝顔の画像を見たがホント腹が立つぐらいに幸せそうな寝顔だった。
まあ無事だった事にホッとしたが、未だに目を覚まさないというのは腹立たしいものがある。
とりあえず今はアースラの医務室に運んで美由希さんに見てもらっている。目が覚めたらさっそく尋問……じゃ無かった事情を聴きださないといけない。と考えていた時だった。
ドパァァーーーーーン!!!!
と立て続けに海中から何かが飛び出し、四つの水柱があがり周辺に水しぶきが飛び散る。
反射的に飛び出た何かを見ると、それはさっきカリウムを拘束しに行った四人だった。
「なっ!?」
一瞬何が起こったのか分からなかったが、すぐに四人の救助に向かう。全員ピクリとも動かず気を失っているようだ。
嫌な予感がして四人が出てきた海面を見ると、そこから腕を組んでゆっくりと出てきたカリウムの姿を確認した。
そのままゆっくり上昇してきて僕の目の前に来る。カリウムのバリアジャケットはボロボロになっていて、肌も所々煤けている。覆面はとれてオッドアイのほかに金髪に整った顔の20代ぐらいの青年の顔がそこにはあった。
「やってくれたな」
「……まだ抵抗する気か?」
「いや、正直これ以上は殺さずに戦う自信がない」
「なに?」
その言葉に反応する恭也さん。
「だから此処は別の手段で貴様らを痛めつけようと思う」
「どういう事だ?」
「なに、簡単な事だ。見ているんだろう?プレシア」
『……何かしらカリウム?』
カリウムがプレシアに呼び掛けるとカリウムの前にウィンドウが現れプレシアが応える。
「ああ、大変申し訳ないのだが例の約束は御破談にさせてもらうよ」
『そんな勝手な言い分が通ると思っているの? 現にあなたはジュエルシード全てを手にしたでしょう?』
「確かにそうだな。君とフェイトの協力があって確かに手に入れる事は出来た。まあ、取り返された上にボコボコにされて、手元には三個しか残っていないがね」
『じゃあ、交渉は成立したはずよ? あの薬を渡しなさい』
「……あの薬?」
やはりプレシアは何らかの取引をしていたのか? 一連の会話を聞きそう思う。
「ふ、フッフッフ、プレシア君は本当によほど切羽詰まっている様だな? この状況ではいそうですかと本当に渡すと思っているのか? だとしたら相当おめでたいな。冷静な状態であるならこのような事は無かっただろうに。いいかプレシア、この交渉自体初めから対等なものではないのだよ。君は私が持っている薬を是が非でも手に入れたい。あらゆる病気を治し、死者すら蘇生する可能性を秘めているこの薬を」
そう言うとカリウムが懐から小瓶を取り出す。
「しかし君は、フェイトという人形がいなければ何もできない身体だ。此方がフェイトを人質に取っている以上君はジュエルシードを渡すという選択をせざろうえない。そして此方はジュエルシードを手に入れさえすれば君たちに用はない。まあ、お礼としてフェイトは殺さずに生かしておくぐらいはするかも知れんがね。更に言ってしまえば、私はジュエルシードを是が非でも手に入れたいと言う訳でもない。あれば事は楽に進むだろうが、別段無くてもいいものだ。まあ、此方の致命的な弱点を握っているであれば交渉ぐらいはしたかもしれんが、結果は君を殺して終わりだろうがね。早い話、こっちは初めからこの薬を渡すつもりは無かったのだよ。それぐらい何時もの君ならすぐに気付いて対策ぐらいすると思うのだがね? 人形遊びに夢中だったのかな?」
『……(ギリッ』
プレシアは悔しそうに顔を歪め、噛んだ唇から血が流れる。そんな中プレシアに声をかける人物がいた。
「……母さん? 私がいないと何もできない身体ってどういう意味なの? それに、人形って?」
フェイトだった。
『………………』
しかしプレシアはその問いに答えない。が、
「おや? 管理局の人たちは教えてくれなかったのかね?」
その問いに対してカリウムが答えはじめた。
「プレシアは病気を患っていてね、本来ならば絶対安静の身だ。もっとも現在の病気の進行状況では手の施しようがないだろうがね。そして君を人形といった理由はな、君がアリシア・テスタロッサのクローンだからだよ」
「……アリシア・テスタロッサ?」
「そう、プレシアの愛娘の名前だ。26年前、プレシアの研究していた新型の大型魔力駆動炉が暴走してね。その時に巻き込まれて死んでしまったんだ。まあ、自分で殺したようなものだな。それ以来プレシアは我が子を蘇らせようと研究を始めた。そう、人造生命の研究だ。アリシアの細胞を寸分たがわぬ入れ物にアリシアの記憶をコピーする。初めこそ成功したかに思えたが、時が経つにつれ徐々にそれは食い違ってくる。何気ないしぐさや行動、利き腕や魔力資質。初めこそ小さなものだったそれは、やがて大きくなりこう結論をだす。「アリシアではない」とね」
カリウムが語る内容に全員が聞き入っていた。
「そしてプレシアは決断する。多くの次元世界の中で唯一死者蘇生や時間操作の魔法があるといわれるある世界を探しだし、そこにたどり着くのだと。失われた世界「アルハザード」に。しかしそのときすでにまともに動けるような健康状態で無かったプレシアは一つの駒を用意した。アリシアの出来損ない、愛娘の搾りカス、プロジェクト「F・A・T・E」の失敗作。いや、この場合は成功なのかな? まあいい、ここまで言えば分かるかな? そう君の事だフェイト。これが君の生まれた経緯だよ」
カリウムが説明し終えると、
『……り……い』
「ん?」
『だまれぇぇーー!!』
そうプレシアが絶叫して、カリウムの上空から雷が落ちる。
「なっ! 次元跳躍法!?」
ほぼノータイムで打ち出された魔法に驚愕し見る事しかできなかった。
しかしカリウムに直撃するかに思われた雷は、直前でカリウムが魔力を纏った拳で殴りつけ消滅させた。
「静かにしていてもらえるかな?」
『ぐ、……ゴホッ!』
プレシアは咳き込みその場に座り込んでしまう
「母さん!」
フェイトがプレシアの事を心配するが、
「……う、嘘だよね。母さん?」
『………………』
「プレシア、答えてやったらどうだ? 「あなたはアリシアのクローンで唯の駒」だと」
「嘘だよね? 嘘だって言ってよ……」
『………………』
フェイトが懇願する様に聞くがプレシアは答えない。答えられない。
「だんまりかね? まあそれでも「五月蠅い!」……む?」
「私は、あなたの言う事なんか信じない! そんなの絶対に嘘だ!」
「ふむ、まあ確かに確固たる証拠がある訳でもないからな。信じる信じないは君の自由だ。まあ、過去の資料なんぞ山ほどある。自分で調べてみればいい。さて、もういいかな。そろそろ退席するとしよう」
「逃げられると思っているのか?」
「勿論だ。私は君たちの事はそれなりに知っているのでね」
そう言うとカリウムは持っていた三つのジュエルシードに魔力を込め始めた。
「さて、これにこのまま魔力を込め続けるとどうなるかな?」
「やめろ! そんな事をしたらこの星が無くなるぞ!?」
「まあ、正解だな。ただ私はこれをここで暴走させる事はしない。暴走させるのはあっちだ」
そう言うと、手のひらに魔法陣が現れて三つのジュエルシードが消える。
「転移魔法!? 貴様! 何処に送った!?」
「そのぐらい管理局自慢の次元航行船なら分かるだろう?」
「チッ! エイミィ! ジュエルシードの転移先は!?」
『はいはいはい! ちょっと待っててね~! 来た! 来た! k…………う、嘘、拙いよクロノ君! ジュエルシードが「時の庭園」に転移してる!』
「じゃあ、あいつが暴走させる場所って言うのは!?」
『間違いないよ「時の庭園」で暴走させる気だよ!』
「「「「「なっ!」」」」」
「さあ、クロノと言ったかな? この状況で君ならどうする? 私を逮捕して、プレシアを見殺しにするか? それともプレシアを助け私を逃がすか? どっちを選ぶ? ああ、忠告すると両方取ろうとするのはやめておけ。私を捕まえる前にプレシアが死ぬぞ」
「カリウム……貴様!」
「さあ、悩んでいる時間は無いぞ? 私か、プレシアか? 民間人か、犯罪者か? どちらだ?」
『クロノ君! ジュエルシードの暴走が確認されたよ! 早くしないと!』
時間がない、早く決断しなければ手遅れになる。いくら「時の庭園」で暴走しているからと言ってこの世界に影響が出ない訳じゃない。それこそ巻き込んで一緒に消滅っていう可能性だってある。
しかしこいつを逮捕できるチャンスがこの先あるか分からない。これほどの手練を飼っている組織がどれ程の規模なのかすら把握できていない。
しかし目的ははっきりしている。どちらをとる? どっちが正解なんだ!? たった数秒がとても長く感じる。そうしていると一つ念話が飛んできた。
(クロノ! 何悩んでんだ!)
「一樹!?」
(さっさとプレシアさんを助けに行け!)
(カリウムはどうするんだ!?)
(後で俺が何とかしてやる! あいつらの目的はミッドチルダだ! そうなると地上本部に所属している俺とはそのうちかちあう事になる。それまでに腕を上げて必ず奴を仕留めてやる)
(しかし……)
(しかしも案山子ねーよ。俺も奴には借りが出来た。俺が漫画とアニメやその他もろもろを思う気持よりでっかいやつがな)
(…………それは大きそうだな)
(だから安心していいぞ。かみに誓って奴を仕留めてやる)
(お前のが誓う神様ってどんな神様だ?)
(さあ? 俺、無神論者だし)
(一体何に誓ったんだ!?)
(「髪」かもしれないし「紙」かもしれないぞ? 俺の未来の嫁さんの名前が「香美(かみ)」かもしれんしな)
(お前は! (まあ、いいからさっさと行け行け。因みに俺はもう向かっているぞ)んな!?)
そんな会話をしているとエイミィからすぐに連絡が来た。
『く、クロノ君! 一樹君が美由希さんと一緒に「時の庭園」に行っちゃったよ!? 一樹君やたらとフラフラだったけど大丈夫なの? クロノが行けって言ったの一点張りだったけど……』
「僕はそんな事言ってない!」
『え゛?』
「ああもうあの馬鹿は! 全員に連絡! 一時アースラに撤退する。その後「時の庭園」に転移してプレシア・テスタロッサならびに一樹臨時三等陸士、美由希・高町の救助にあたる!」
「おや? いいのか? 私を逮捕できる最後のチャンスかもしれないぞ?」
「うっさい! 黙ってろ! 僕は今すぐあの馬鹿をぶん殴らなきゃ気が済まない!」
「…………」
「邪魔だからさっさと消えろ!」
「……ならば、そうさせてもらおう。まあ精々足掻くがいいさ。では諸君また会おう」
カリウムはそう言って転移魔法を使ってその場からいなくなった。
「エイミィ、みんなの回収を頼む」
『了解、でもよかったの?』
「ああ、もしかすると見逃されたのはこっちかもしれない」
『そうなの?』
「あのまま戦ってたらジュエルシードの暴走でこっちも巻き込まれるかもしれなかったんだ。結局僕達はプレシアの救助に向かうしか無かったんだよ。念のため聞くけどエイミィ、奴の転移先は?」
『駄目だった。全然転移先がつかめない』
どこか「しゅん」として答えるエイミィ。
「やっぱりか。仕方ない、この件に関してはこれで終わりだ。さっさとあの馬鹿を殴りに行く」
『クロノ君、一応助けに行くって言おうよ』
エイミィはそう言うが実際あの馬鹿と会った時殴らないでいられる自信がない。
そんな事を思っていると全員の転送が終わり、最後に僕がアースラに転送された。
「艦長! 状況は!?」
「慌てないでクロノ、まだ幾分余裕があ「時の庭園内に魔力反応確認! 数は……10……20……まだ増えます!」……る訳では無さそうね」
「艦長! 時の庭園の駆動炉が異常数値を示しています!」
「なんですって!?」
「駄目です! このままだと駆動炉も暴走してしまいます!」
『クロノ! なんか変な鎧が出てきて足止めを食らってる! 俺と美由希さんだけじゃ厳しい!』
そんな報告が矢次に上がってくる。
「一樹! その鎧は美由希さんでも倒せるのか?」
『大丈夫だ。でかいやつは流石に無理だけど、人間サイズの奴なら問題ない。ただ数が多すぎて前に進めん!』
「お前の調子は?」
『身体が思うように動かない、よくて六割だ』
「分かった。士郎さん恭也さん行けますか?」
「勿論だ」
「問題ないよ」
「ユーノ、アルフ、アヤ二人のサポートを頼む」
「分かった」
「勿論だよ!」
「うん!」
「小隊長! 武装隊は後何人残っている!」
「全員魔力が殆ど残ってない。これであの鎧を相手にはできない」
「分かった。よし、このメンバーでい「クロノ君!」……なんだなのは?」
「私とフェイトちゃんは?」
「……あれだけの戦闘をして魔力が残ってるのか?」
「「うん!」」
「………………」
『あ~、クロノ? その目の前に居る二人のロリっ娘は規格外だぞ?』
「今それを実感したところだ」
『とりあえず増援なるべく早めに頼む』
「分かった、今から行く。よし、全員転送ポートに! 時間がない急ぐぞ!」
そして僕達は「時の庭園」に転送された。
― 高町美由希 ―
「はあっ!」
掛け声と共に小太刀を一閃して鎧を一体斬り伏せ、すぐにその場を離れて次の獲物を探す。
そうしている間に斬り伏せた鎧が爆発する。さっきっからこの繰り返しだった。もう十体以上倒している。
出てきた時はあんなの倒せるのかと思ったけど、意外に何とかなるものだ。
胴体があって、間接のところが無くて、手足が浮いているので動きは人間の動きを完全に超える動きをしてきた。
関節が無いから変な角度から攻撃が飛んでくるし、いちいちリーチまで変わってくる。
挙句、ロケットパンチまでしてくるのだから慣れるのに随分かかった。
でも慣れてしまえばこっちのものだ。接近して身体の中心あたりにあるボールの様なものを斬りつければあっさりと倒す事が出来た。
私が担当しているのは小型の鎧だ。大型の鎧は一樹君が担当しているけど、どうも調子が良くないみたいだ。動きは鈍いし攻撃は軽い、やはり何かあったのではないかと思ってしまう。
「一樹君、あまり無茶しないでよ? 動きが鈍いよ?」
「大丈夫ですよ。このぐらい」
「まあ、そう言うなら任せるけど……」
実際こっちに攻撃は来てないからいいのだけれど。危ないと思ったらすぐに下がらせるしかない。
もう少しで増援も来るのだからその間くらいならもつ自信もある。
「ちっ、中々硬いな」
「こっちは中心のボールを壊せばいいから簡単だけどね」
「こっちも同じなんだけど大きい分硬くって」
「何か持ってきてないの?」
「ん~、あるにはあるけどどうも火力不足っぽいものばっかりなんだよね」
「う~ん、ここ一番で使えないね」
「事実で言い返せないのが悔しい」
一樹君はそう言いながら悔しそうな表情をする。珍しい顔を見たので思わず目を丸くしてしまう。
「どうしたの? 美由希さん?」
「え? いや、一樹君がそんな表情をするからちょっと意外だっただけだよ」
「そうですか?」
「そうだよ」
何て軽口を叩きながら増え続ける鎧を迎撃していく。流石にこれ以上はまずいと思い始めた時、
「ディバイーーンバスターーー!!」
聞きなれた声がしたと思ったら、後ろから来た桜色のビームが私の横を通り過ぎて、わき出てきている鎧を一蹴する。
一気に半分以上があっさりと消え去った。その威力を目の当たりにして私の苦労はなんだったんだろう? と考えてしまったのは仕方ないと思う。
「お姉ちゃん! 一樹お兄ちゃん! 大丈夫?」
「ありがとう、なのは」
「サンキュー! なのちゃん」
私と一樹君はなのはにお礼を言って、まだわいて出てくる鎧に向き直る。
「一樹!」
「よっ、クロノ」
「お前と言うやつはこの大事な時にヘマしてどうするんだ!」
「それに関してはすまんかった。こっちも油断してた」
「その話は後でじっくり聞かせてもらう! 今はプレシアの救助が先だ」
「そうだな、亜夜、なのちゃん、フェイト。三人であのジュエルシード封印出来るか?」
「う~ん、三人でやれば多分出来るんじゃないかな?」
一樹の質問になのはが答える。
「そうか、……よしクロノ俺が駆動炉に向かう。そっちはなのちゃん達とプレシアの救助を頼む」
「待て、そんな身体で大丈夫なのか?」
「ああ、戦闘はしないで突き進む。幸い駆動炉までの道のりに敵は少ないみたいだからな」
「その後はどうするんだ?」
「スサノオに任せる」
「……大丈夫なのか?」
「ああ、どうも駆動炉の制御プログラムがウィルスにやられたみたいなんだ。そのウィルスの削除とプログラムの復旧がスサノオは出来るみたいなんだ」
『はい、問題ありません。以前来た時に色々見ていたので』
「……一樹の指示か?」
『はい、半分は「クソ野郎」の指示です。言われた事が終わり暇だったので他の所も見て回っていました』
「ひ、暇だったのでって……」
それを聞いたフェイトちゃんが脱力している。
まあ、暇だからって自分の家のシステムを把握されたらたまったもんじゃない。
「それじゃあ、一樹と「あ~、いいよ一人で」しかしだな」
「どうせ戦闘なんてしないで駆け抜けるんだ。一人の方が速い」
「……分かった。じゃあさっさと暴走止めて合流しろ」
「ああ、じゃあ行ってくる」
一樹君はそう言ってさっさと進んで行ってしまった。
確かに戦闘なんかしないで進んでいくからあっという間に姿が見えなくなった。
「よし、こっちも行くぞ! 亜夜、なのは、フェイトは後方で温存。露払いは僕達でする」
クロノ君がそう指示を出し、それにしたがって私達は鎧の敵を倒し突き進んで行った。