魔法少女リリカルなのは ~その拳で護る者~   作:不知火 丙

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本編 第三十七話

― 斎藤一樹 ―

 

 ヴォルケンリッターを引き連れて我が家に行く。

 服ははやての両親の服と、はやて自身の服でちょうど良いのがあったのでそれを着て貰っている。

 玄関を上がりリビングに行くとすでに配膳は終わっていて、母さんと兄ちゃんが俺達を待っていた。

 

「戻りましたか一樹」

 

「いらっしゃいはやてちゃん。え~っとそちらの人達は?」

 

「おじゃましてます。え~っとですね、魔法関係なんですけど、どうも私を守ってくれる人達みたいなんです。詳しい事情はこれから聞きます。そんで、そちらが一樹兄ちゃんのお兄さんでいいやろか?」

 

「ええ、斎藤晃です。宜しく」

 

「こちらこそ。八神はやてです」

 

 兄ちゃんとはやての自己紹介が終わる。それを確認した母さんがはやてに聞く。

 

「あら、はやてちゃんも魔法が使えるの?」

 

「いや、まだ使えない」

 

「まだ、と言う事はそのうち使えるようになるんですか?」

 

「予定だとな」

 

「え? ホンマなん? 一樹兄ちゃん」

 

「おう、時間はかかるけどな。なのちゃんやフェイトちゃん、亜夜みたいに魔法も使えるようになるぞ。やったね! これではやても轟砲ロリの仲間入りだ!」

 

「魔法が使えるようになったら真っ先に一樹兄ちゃんを撃ち抜いたるわ」

 

「あ、賛成ー! 女の子に対して失礼だよねその言い方」

 

「なん……だと?!」

 

 どうやら自分で死亡フラグをおっ立ててしまったらしい。

 

「はいはい、それじゃあご飯を食べましょうか。そちらの方々も座ってくださいな」

 

「あ、いえ私達は……」

 

「良いから座れって、そうしないと食事が始まんねーんだから。それともそのままはやてを待たせるのか?」

 

「む、仕方ないか」

 

 そう言うとヴォルケンリッターの面々も席に着く。

 

「うし、じゃあ食うべ。全ての食材に感謝を籠めて、いただきます」

 

「トリコ乙」

 

「「「いただきまーす」」」

 

 そう言って食事が開始された。雑談をしながらみんなが思い思いに食べ始める。

 見る見るうちに天ぷらが減っていく。ヴォルケンリッターはその様子に唖然としていた。

 

「あ、母さん塩とって」

 

「はいよ」

 

 そう言って母さんは塩を渡してくる。

 

「一樹、天つゆをとってください」

 

「うぃ」

 

 俺はそばにあった天つゆの原液を渡す。

 

「一樹兄ちゃんエビとってーな」

 

「残念エビはこれが最後だ。うまうま」

 

「な、なんやて!」

 

「あー! 私まだ二匹しか食べてないのに!! お兄ちゃん食べすぎ!!」

 

「食事は戦いだ。強ければ食べられ、弱ければ食べられない。弱肉強食でござる」

 

「はあ、全く。二人ともこれをどうぞ」

 

「「良いの?」」

 

「良いですよ。私はもう十分食べましたから」

 

「「ありがとう!!」」

 

「全く一樹は。少しは妹に譲るという考えはないのかしら?」

 

「そんなものはとうの昔に捨ててしまった」

 

 母さんに聞かれちょっと遠い目をして答えると、はやての目が「カッ」と見開く。

 

「隙あり! これもろたで!」

 

「ぬぁ! 俺のかき揚げを!?」

 

「私も!」

 

「あ! 俺のイカ天!」

 

「では私も」

 

「おふぅ! 兄ちゃんまで! 俺の豚天を! つうかみんなで集中攻撃とかひどくね? いじめ?」

 

「自業自得やろ?」

 

「その通りですね」

 

「仕方ないよね」

 

「ふぇふふぉふぇー、ふぁれ? ふぉふぃふぁんふぁ? ふふぁふふぉふぁ?」

副音声(ですよねー、あれ? どしたんだ? 食わんのか)

 

 俺はいまだに手を食事に手をつけていないヴォルケンリッターに聞く。

 

「あかんよ好き嫌いは」

 

「はやてちゃん多分違うと思う。きっと箸が使えないんだよ」

 

「亜夜、それも違うと思いますよ?」

 

「なんだ違うのか?」

 

「……何時の間にフォークをとりに行ったんですか?」

 

「あ、いえ気にしないでください。なにぶんこう言った食事に慣れていないもので……」

 

「あら? 和食は駄目だったかしら?」

 

「母さん、それも違いますよ。シグナムさんが言っているのは「賑やかな食事」という意味では無いですか?」

 

 兄ちゃんがシグナムに聞く。

 

「……はい。その通りです。主と一緒に食事をする等今までありませんでしたので」

 

「そうなん?」

 

「ええ、こんなふうに食事をした事はありませんでした」

 

 ちょっとしんみりした空気になる。

 

「それやったらこれからはこんな感じになるで? 食事はみんなで食べた方が美味しいしな!」

 

「そうだな。ほれ、遠慮しないで食べちまえ。冷めたらせっかくの料理が不味くなっちまう。熱いうちに食え」

 

 そう促すと先ずヴィータが箸を握る。しょっぱなから上手く使える訳がないので握り箸だ。

 そして目の前の皿に分けてあった分の天ぷらに箸を刺して、天つゆにつけ食べる。その行動にみんなの視線が集中する。

 

モグモグ……

 

 何度か噛んだ後不意に動きが止まる。そのあと少し、ほんの少しだが顔が綻んだ。

 

「美味いか?」

 

 俺が声をかけると「ハッ」として周りを見る。自分に視線が集まっているのに気が付いたようだ。

 すると、少し顔を赤らめてから、

 

「う、うるせー!」

 

 と答える。まあ、そう言いながらも箸で食べ続けているので美味かったのだろう。

 その様子を見て他の三人も食べ始める。シャマルとザフィーラは俺の持ってきたフォークを使っているが、

 

「なあシグナム」

 

「……なんだ」

 

「何でおめーは箸が使えるんだ?」

 

「変か?」

 

「いや、他の三人が使えないみたいだから」

 

 そう言って他の三人と見比べる。

 

「見よう見まねだ。しかし、なかなか便利だな」

 

「はあ~、シグナムは器用なんやね」

 

「ありがとうございます」

 

「初見で箸を使いこなすとか……お前「騎士」じゃなくて「武士」だろ?」

 

「む、貴様! 騎士を愚弄する気か?」

 

「いや、シグナム誉めてもおらんけど愚弄はしてへんよ。うちもちょっと納得しそうになってしもたし」

 

「そうですか……」

 

 ちょっと「しゅん」となるシグナム。なぜだ?

 

「所で「ぶし」ってなんなんですか?」

 

 気になたのかシャマルが聞いてきた。

 

「武士と言うのは10世紀から19世紀にかけての日本、私達の国ですね。そこに存在し、戦闘を本分とするとされた宗家の主人を頂点とした家族共同体の成員ですね。古代末に発生した武士はその武力で古代を終焉させ、中世社会で主導的役割を果たし、近世で完成された社会体制を築き上げました。同義語として兵者(つわもの)、侍、武者などがありますね。「もののふ」の読みは物部氏が語源とされていますよ。こっちで言う騎士と武士は似たような部分もありますしね。決して悪い意味ではありませんよ」

 

「そうだな。極端に言えばベルカ式かミッド式かって違いかな」

 

「そうなのですか?」

 

「そやね。「武士道」って言葉もあってな。「恩義のある者に仕える心」とか「裏切りは卑怯」「主君と生死を共にするのが武士」って考えやね。「信・義・忠を重んじ、気高い振る舞いを行なうのが武士」っていうふうにも言われとるんよ。だから落ち込まなくてもええんよ?」

 

「お、落ち込んでいません! ですがその精神は確かに騎士に似ている部分もありますね」

 

 あ、表情が明るくなった。なんだ、武士の意味が分からなかっただけか。つうか、

 

「俺ははやての知識にびっくりです。普通小学三年生がそんな事知ってるか?」

 

「伊達に本ばっか読んどる訳じゃないんよ。歴史の本も好きやし」

 

「亜夜は分かった?」

 

「うっ! ……武士道のあたりはこう感覚的にそんな感じだっていうのは分かるけど……」

 

「後はちんぷんかんぷん?」

 

「う、うるさいな! しょうがないでしょ!」

 

「それでいいのか? 剣道少女よ。せめて武士あたりは知っておいた方が良いんじゃね?」

 

「う~、そんな事言ったらお兄ちゃんはどうなの!? 格闘技の歴史とか知ってんの!?」

 

「まあ、格闘技って言ったらここ100年位だしな。ビバ近代スポーツ!」

 

 そう言ったのだが、

 

「おや? 一樹は中国拳法もしてませんでしたか?」

 

「じゃあ、四千年分の歴史を知らないと駄目だね」

 

「/(^o^)\……ナンテコッタイ」

 

 ファッキン! 3900年も増えちまった。兄ちゃんみたいにチートじゃねーんだ。そんな事いちいち覚えてられっか!

 そんな事を思っているとヴィータの箸が止まっている事に気付いた。どうしたかと思ったらおかずは残っているのにご飯が空つまり、

 

「母さん、ヴィータがおかわりだって」

 

「あら、そう? まだあるからいっぱい食べてね」

 

 そう言って母さんにヴィータの茶碗を渡す。

 

「あ、……礼は言わねーかんな!」

 

「あー、まあ俺には良いけど他の人の時は言えよ? あとおかわりの時は、二杯目は元気よく! 三杯目はそっと出す。これ基本」

 

「そ、そうなのか?」

 

「ヴィータちゃんそれ嘘だからね? うちではそんな事しなくて大丈夫だよ」

 

「なっ! て、テメー!!」

 

「フゥーハハハハァ! ヴィータはからかいやすくて良いのう!! そして亜夜ばらすの早すぎ」

 

「ぶっ潰す!! アイゼン!!」

 

 ヴィータがアイゼンを起動し振りかぶる。

 

「ストップ!」

 

 俺が少し鋭く声を上げる。するとヴィータもアイゼンをあたる寸前でピタッと止める。

 

「なんだ? 命乞いか?」

 

「そうだな。からかった侘びとしてデザートを用意するが? いかがかな?」

 

 ヴィータがピクっと反応する。そして他の二人も反応する。

 

「あ、ずるい! 私も!」

 

「私も!」

 

「それなら私もお願いします」

 

 亜夜にはやて、兄ちゃんまでもがデザートを所望してきた。

 

「待て! それじゃあ侘びの意味がなくなる! 俺がヴィータにぬっ殺される」

 

「全員に用意するんならうちがヴィータを止めたるで?」

 

「……了解、それで頼む」

 

 取引完了。はやてがヴィータに声をかける。

 

「ヴィータ、今から一樹兄ちゃんがデザート作るからその辺にな」

 

「ち、命拾いしたな。美味くなかったら承知しねーからな」

 

「……頑張ります」

 

「じゃあ、よろしくな一樹兄ちゃん」

 

「はいよ」

 

 そう言って俺はヴィータにおかわりのご飯を渡し、台所にむかう。

 さてと、作るデザートは…………ガトーショコラのアイス添えにすっか。メニューを決めさくさくととりかかる。

 リビングでは楽しそうな声が聞こえ、その声を聞いていると若干疎外感を感じる。そんな事を思いながらデザートを作っていくのだった。

 

― 斎藤亜夜 ―

 

 今台所でお兄ちゃんがデザートを作っている。料理は普通だけど、お菓子は桃子さんからも教わっているから家で一番お菓子作りが上手い。もっとも桃子さんと比べるとまだまだだけど。

 それでも美味しい事には変わりない。食事も終わったから、私達は出来上がるまでの時間を使って自己紹介をする事にした。

 

「じゃあ、始めは私ね。斎藤亜夜、九歳! 聖祥の小学三年生! はやてちゃんとは同い年です! 魔法も使えます! デバイスはこれ「アマテラス」です。形態は「刀」です」

 

《アマテラスじゃ。宜しく頼む》

 

 アマテラスもそっけないが返事をする。また何か言われるかと思ってちょっとドキドキしていたけどなくてよかった。

 

「次は私や! 八神はやて、九歳! 学校は今休学中やけど勉強はちゃんとしとるで。一樹兄ちゃんと偶然知り合って亜夜ちゃんと友達になれたんや。そんで今日は新しい家族ができたんよ!」

 

 はやてちゃんはすごい笑顔で言ってきた。

 

「え~っと、この「闇の書」って言うのを守る守護騎士のヴォルケンリッターって言うんやて。はい順番に自己紹介!」

 

「はい、ヴォルケンリッターが将、烈火の騎士シグナム。闇の書の起動により主はやてを守護するため参上しました」

 

「同じく、鉄槌の騎士ヴィータ」

 

「湖の騎士シャマルです」

 

「盾の守護獣ザフィーラだ」

 

「五人そろって?」

 

「八神戦隊ヴォルケンジャー! って何やらすんや! 一樹兄ちゃん!」

 

「おしい! どっかの特戦隊みたいに全員がポーズをとれば尚よかった!」

 

「む、それは確かに一発芸としてはアリやね」

 

「無しだよはやてちゃん?! お兄ちゃんも黙って美味しいデザートを作る!」

 

「へーい」

 

 お兄ちゃんに釘を刺して、危険な方に進もうとするはやてちゃんを引き止める。

 お兄ちゃんはカシャカシャと何かをボールでかき混ぜている。

 

「主、流石にそれは……」

 

 流石にそんな事をしたくないのかザフィーラさんが止める。

 

「冗談や、冗談。あ、それとあと一人おるんやけど何故か怪我した状態で出てきてな。今はうちのベッドで休んどるんやけどまだ目が覚めてないんよ。名前も分からんし」

 

「ん? その人もヴォルケンリッターなんですよね?」

 

「そうだと思うんですけど……」

 

「そうだと思う?」

 

「知らないんです。いつもヴォルケンリッターは四人なんですけど、今回の起動では何故か一人増えてました」

 

 首をかしげながらシャマルさんが答える。

 

「その様子だと過去に例はないんですよね?」

 

「メンバーが増えたのは今回が初めてだ」

 

「そうですか……その人を一人にして大丈夫なんですか?」

 

「あ、それは大丈夫だよ晃お兄ちゃん。お兄ちゃんが自分のデバイス置いてきたから。何かあったらすぐ連絡が入るって」

 

「それに結構な怪我でしたからすぐに動けないと思いますよ」

 

「しっかし何であんな怪我してたんだ? あいつ」

 

「それは本人に聞くしかあるまい。ここで話し合っても答えが出る訳ではないからな」

 

「それはそうだけどよ」

 

「まあ確かにそうだよね。気になるけど本人から聞かないと分かる事でもないしね。と言う訳で自己紹介続き!」

 

 私は晃お兄ちゃんに振る。

 

「次は私ですね、斎藤晃です。19歳、ハーバード大学に通っています。今はこっちに用が出来たので帰って来ています。魔法は使えません。リンカーコアと言うのは有るみたいですが、戦闘が出来る程魔力はありませんね」

 

 続いて兄さんが自己紹介をする。

 

「は、ハーバード大学やて!? めちゃくちゃ頭ええやん!!」

 

 はやてちゃんが驚く。

 

「はやてちゃん、その大学ってそんなにすごいの?」

 

「すごいも何も、国内やなくて世界でもトップクラスの大学やで!?」

 

「へ~、すごいんですね」

 

「……シャマルほんとに分かっとるんか?」

 

「いえいえ、私より頭のいい人なんて沢山いますよ? あそこはほんとにすごいところです」

 

「マジ!?」

 

 私、兄さんより頭良い人見た事ないんだけど……。

 

「マジもマジ、大マジですよ。各分野で専門家(スペシャリスト)がそろってますからね。その人達から毎日色んな話しを聞けるから毎日が楽しいですよ」

 

「あ~、私無理だ。そこまで好きになれないなあ~。て言うかこれ以上頭の良くなる兄さんに吃驚だよ」

 

「うちはちょっと興味あるなあ~」

 

「それでしたら夏になったら此方に来ますか? 確かサマースクールがありますから連絡していただければ話してみますよ?」

 

「せやけど、うちこの足やし……」

 

「一樹がいれば大丈夫じゃないですか?」

 

「まあ、確かにお兄ちゃんがいれば大丈夫そうだけど……」

 

「あ~、すまん兄ちゃん。行けるかどうか分かんねー」

 

 台所から聞いていたのかお兄ちゃんが言ってくる。

 

「おや? そうですか。向こうでみっちり勉強を教えようと思っていたのですが」

 

「嬉しい提案だけど厳しいかも。もし時間が出来たら考えるよ」

 

「そうですか……しかし来る時はくれぐれも正規のルートでお願いしますよ」

 

「……善処します」

 

「ちょとお兄ちゃん? 聞き捨てならない内容なんだけど?」

 

「黙秘権を行使する」

 

「ああ、私がこっちに忘れ物をしたので送ってほしいと言ったら文字通り飛んできましたよ。一樹が」

 

「ちょっと兄ちゃん!?」

 

「どういう事?」

 

「……つい最近なんだけどな。ここからアメリカまで飛んでった」

 

「「はあ?」」

 

「いや、兄ちゃん普段忘れものなんかしねーからさ、どんな顔してるか気になって気になって、そしたら何か変にテンション上がってな。アメリカまで飛んでっちまった。いやー楽しかったぞ? 途中イルカの群れを見かけたり、アニメや漫画よろしく自分が通った後は水しぶきが上がるし。終いには戦闘機から追いかけられるし」

 

「「「なっ!!!」」」

 

「調子ぶっこいて高度をとったのが不味かったな。どうもレーダーに引っ掛かったみたいでな? F‐22がスクランブルで発進したみたいで追っかけっこだったよ。捕まる訳にもいかないし攻撃なんかもっての他だろ? だからずっと無視してたんだけど陸地が見えてきたらミサイル攻撃してきてな。流石にスサノオが教えてくれなかったら危なかったかもしれない。で、とりあえずミサイルを防御してそのまま海に逃げたってことだ。やっこさんから見たら撃墜したように見えたんじゃね?」

 

「それであの時ずぶぬれだったのですか……」

 

「いやーちょっとヒヤヒヤしたけど楽しかったし、兄ちゃんの吃驚した顔が見れたから良いんだけどな」

 

「よくありません! あの後色々調べたら米軍内で問題になってたんですよ?」

 

「……え?」

 

「当たり前でしょう? 人型の偵察機だとか有人単独飛行が可能な新装備とか宇宙人とか、しかも最新鋭機であるF-22が機動性能で完璧に負けたんですよ? 今米軍では撃墜地点で血眼になって残骸を探していますよ。それに伴い特別予算が組まれ、戦闘機の機動性の見直しに、新技術開発といったプロジェクトが立ち上がっています」

 

「何それ怖い」

 

「自分でやっておいて何を言ってるんですか?」

 

「いや、そもそも忘れ物をした兄ちゃんが悪い」

 

「私はちゃんと宅配で良いからと言いましたが? 急いでいた訳でもありませんでしたし」

 

「……まあ良いじゃん。身元がばれてる訳でm「ピンポーン」……え?」

 

(((あ、結構動揺してる)))

 

 お兄ちゃんがあからさまに動揺する。けど、すぐに携帯電話を取り出して、

 

「……私だ、例の件が組織にばれた。緊急事態に付き拠点を破棄してすぐに逃げろ。合流地点はB-3で。……ああ分かっている。すべては運命石(シュタインズ)の扉(ゲート)の選択のままに。エル・プサイ・コングルゥ!」

 

「動揺してると思ったらそれかい!」

 

 すぐにネタに走るのはすごいと思う。

 

「む、敵か?」

 

「おもしれー。あたしたちに挑むとはいい度胸だ」

 

 シグナムさんとヴィータちゃんがデバイスを起動する。

 

「怪我しても大丈夫ですよ!」

 

「主には指一本触れさせん」

 

 シャマルさんにザフィーラさんも後衛は任せろって感じで言ってきて、立ち上がるヴォルケンリッターのみんな。

 

「「あんたらもか!!」」

 

「はぁ……」

 

 私とはやてちゃんが突っ込んで兄さんがため息をついている。

 

「しかし先ほどの会話のだと「ええんよ、シグナム。敵だとしても一樹兄ちゃんを突き出して終わりやから」……そうですか」

 

「……ひどくね?」

 

 そう言いながらもデザートを作っているお兄ちゃんも大概だと思う。あ、オーブンに入れたそろそろかな?

 

「それは兎も角、誰かしら?」

 

 そう言ってお母さんが玄関に向かう。そう言えば誰だろう? こんな夜中に。

 

「あら、こんばんわ一樹ですか? いますよ。ちょっと待ってください。一樹~!」

 

「…………俺ちょっと姿くらますわ」

 

 そう言って窓から出て行こうとするお兄ちゃん。

 

「こら一樹。観念して逝ってきなさい」

 

「嫌でござる! 豚箱にはまだ行きたくないでござる! しかも兄ちゃん字が違う!」

 

「おや? よくわかりましたね」

 

「シグナム! ヴィータ! シャマル! ザフィーラ! 取り押さえるんや! 武器は使用禁止や」

 

「「「「ハッ!!」」」」

 

 お兄ちゃんとヴォルケンリッターの追いかけっこが始まった。

 

「おいこら! 大人しくしろ!」

 

「テメー! いい加減捕まれ!」

 

「ザフィーラ! そっち行きました!」

 

「任せろ!」

 

 四対一で逃げまくるお兄ちゃん。これだけ逃げてるのに物が倒れたりしないから不思議だ。

 

「あ! お兄ちゃん! 天井走らないでよ!」

 

「一樹、逃げるなら床の上だけにしなさい」

 

「……この異常な光景は何なのよ?」

 

「あれ? アリサちゃん?」

 

 そこに現れたのはアリサちゃんだった。どうやらお兄ちゃんが行かなかったから上がってもらったみたいだ。

 

「こんばんは、亜夜、はやて。上がらせてもらったわ」

 

「ん? 何だ、バーニングだったのぉぉぉぉ!!!!!」

 

 アリサちゃんに気付いたお兄ちゃんが立ち止まる。そこにヴォルケンリッターが飛び込んで捕獲する。

 

「バニングスよ!……って相変わらずね一樹は。また何かやったの?」

 

「ははははは……はぁ」

 

 私は乾いた笑いとため息しか出なかった。

 

「亜夜? 此方のお嬢さんは?」

 

「あ、え~っとね私の同級生のアリサちゃん。同じクラスなんだ」

 

「そうですか。こんばんはアリサちゃん。亜夜と一樹の兄の晃です。亜夜が何時もお世話になってます」

 

「あ、いえ、こちらこそ」

 

「……そうだよね。これが普通の自己紹介だよね」

 

「何かあったの?」

 

「うん、いつもの如くね」

 

「……大体分かったわ」

 

 アリサちゃんに納得してもらったところにお兄ちゃんがバインドでぐるぐる巻きの状態でほうり投げられる。

 

「おし! 捕まえたから持って帰っていいぜ!」

 

「……いらないわよ」

 

「ひどい! 私との事は遊びだったのね!」

 

「遊びにすらなってないわよ?」

 

「ぎゃふん。所で何用かね?」

 

「あんた、人に用事頼んどいてそれ?」

 

「ん? もう見つかったのか? 早くね? 頼んだの昨日だぞ?」

 

「うちの鮫島ならこの程度片手間で終わるわよ」

 

「鮫島さんパネェっす。……資料は?」

 

「これよ」

 

「サンキュ!」

 

「礼の件忘れないでよね」

 

「おう。あ、そうだそろそろ出来上がるから食ってけ」

 

「何を?」

 

「食後のデザート」

 

チーン

 

 とタイミングよくオーブンの音が響く。

 

「あんたが作ったの?」

 

「うむ、まだまだ桃子さんには遠く及ばんがな」

 

「当り前よ。そう簡単に辿り着けるレベルじゃないわよ。あれは」

 

「そうなんだよな~。でも桃子さんが背中で「ついて来れるか?」って言ってる感じがする」

 

「……何でそんなに男前なのよ?」

 

「何処のエミヤやねん!」

 

 はやてちゃんが突っ込む。

 

「ヴィータ、バインドといてくれ。ほれ、亜夜。手伝え」

 

「は~い」

 

「ち、しかたねーな」

 

 そう言ってバインドを解かれて自由になったお兄ちゃんがケーキを切り分けていく。

 リビングにチョコレートの良いにおいがたちこめる。丁寧に粉砂糖を振って、アイスを乗せる。

 ちょっとしたアクセントにミントを乗せて完成みたい。テーブルまで運んで準備完了!

 

「さあ食え!」

 

「見事なものですね」

 

「ホンマやな」

 

「ほんとだね」

 

「これで普段がまともなら……」

 

「「「「はぁ……」」」」

 

「仕方ねーべこういう性格なんだから」

 

「あんたね……直そうと思わないの?」

 

「うんにゃ、これっぽっちも。んなこと良いからさっさと食べれ。感想が気になるんだから」

 

「分かったわよ」

 

 お兄ちゃんがそう言うとみんなが一口食べる。うん、美味しい。

 

「む!」

 

「あら!」

 

「ほう」

 

「……美味い」

 

 ヴォルケンリッターのみんなにも好評のようだ。みんなあっという間に食べてしまった。

 

「ふむ、好評のようでなによ……ん?」

 

 お兄ちゃんが不意に黙り込む。

 

「どうしたの?」

 

「どうやら怪我人が起きたらしい」

 

「本当か?」

 

「ああ、スサノオから連絡が入った」

 

「ほんなら行こか。事情も気かなあかんしな」

 

「じゃあ、聞きに行くか。みんなはちょっと待っててな。あんま大勢で行っても仕方ないし」

 

 そう言うとお兄ちゃんは、はやてちゃんとヴォルケンリッターと一緒に出て行った。

 ちょっと気になったのはお兄ちゃんの顔が「P・T事件」の時に見せた顔をしていた事だ。

 

「これから何が起こるんだろう?」

 

 ちょっと不安になる私だった。

 

 

 

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