魔法少女リリカルなのは ~その拳で護る者~   作:不知火 丙

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本編 第三十八話

― ??? ―

 

 そこは次元航行艦のブリッジであった。

 目の前のモニターには自分の部下であり、その艦の艦長が映っていた。

 しかし、そこに映っている映像は普通では無かった。部下の後ろでは火の手が上がっており、ブリッジであろうその場所は煙で充満している。

 さらには部下も怪我をしているようで。頭部から出血しており、左目が頭部から流れる血でふさがれている。その部下が通信で聞いてくる。

 

「提督、部下は回収出来ましたか?」

 

「ああ、……君の部下は全員無事回収した。だから早く……」

 

「君も早く脱出しろ」そう言おうとしたが言葉が続かない。

今部下の乗っている艦の状態は略全ての場所から警報が出ており、モニターでは艦全体が赤く染まっていた。

何時爆発してもおかしくない。奇跡でも起きない限り脱出する事は無理だろう。それを分かっているのだろう、部下は静かに首を振る。

 

「提督、この状況では脱出は不可能です。「闇の書」がこれ以上被害を出さないうちに主砲で撃ってください」

 

「………………」

 

 私はかぶっていた帽子を深くかぶり直す。

 

「提督、お願いします。今すべきことは暴走した「闇の書」を止める事です。このままにすれば他の艦もどうなるか分かりません。そうなる前に主砲で暴走を止めてください」

 

 自分の死が迫っているというのに穏やかな声で部下が言ってきた。

 

「しかし、それでは「闇の書」がまた転生してしまう。まだ他に方法があるはずだ! ここで何とかしなければまた悲劇が繰り返される!!」

 

 悲劇を止めたいのも事実だが、部下を助けるための建前にしているようにも思えた。実際亡くすには惜しい部下だ。

 周りからの信頼も厚く、勤勉で正義感が強い。このまま行けば正に管理局の次世代を担う人物であろう。

 

「提督、確かにその通りですが、現時点ではもはや手の施しようがない。今出来る事は「闇の書」を消滅させ、次の起動までの時間を稼ぎ、それまでに解決の手段を見つける事です。幸い一度消滅した後は次の起動までに時間が確保できる事は分かっています。提督、お願いします!」

 

 私は帽子のつばを抑え決める。

 

「……主砲、アルカンシェル発射準備」

 

「提督!!」

 

 火器管制官が声を上げる。

 

「早くしろ!!」

 

 しかし私はそれを黙らせる。

 

「……はい。アルカンシェル発射準備、エネルギー供給良し、充填開始」

 

 モニターに主砲の充填率が表示される。一、二分もあれば完了されるだろう。

 

「クライド艦長、何か伝える事はあるか?」

 

「……妻に、リンディにすまないと、クロノを頼むと伝えてください」

 

「分かった」

 

「私は提督の下で働けた事に感謝しています。素晴らしい仲間と共に最後まで働けた事を誇りに思います」

 

「……そうか」

 

 ブリッジの至るところから嗚咽や、泣き声が聞こえてくる。この艦にも彼を慕う者は多くいる。

 

「最後に、これは私の我がままなのですが……「闇の書」の悲劇を止めてください。こんな思いをする人を無くしてほしい。お願いします」

 

「……約束しよう」

 

 私はそう答えた。

 

「ありがとうございます」

 

「充填率……100%、アルカンシェル発射シーケンス完了。……コントロール移します」

 

 火器管制官が涙をこらえそう告げると、私の前に鍵穴のついたキューブ状の物が現れる。

 私は懐から鍵を取り出し、艦長席から立ち上がり号令をかける。

 

「総員気をつけ!……クライド・ハラオウン艦長に最大の敬意をもって、敬礼!!」

 

 その号令と共に全員が一糸乱れぬ敬礼をする。

 目に涙を浮かべる者、泣くまいと必死にこらえる者、既に涙でグシャグシャの顔をした者全てが見事な敬礼をした。

 

「私は最高の仲間を持てて幸せです」

 

 それを見たクライド艦長も敬礼を返した。こんなときでも彼は笑顔だった。私は取り出した鍵を差し込み、

 

「アルカンシェル発射!」

 

 その号令と共に鍵をひねった。

 艦から発射されたアルカンシェルのエネルギーはクライド艦長の乗っている「エスティア」を呑み込み消滅させる。

 

「……エスティア……反応……ロスト。周囲に……反応……ありません」

 

「闇の書は?」

 

「同じく……反応ありません」

 

「そうか……。各員警戒レベルをレッドからイエローへ移行。周囲を警戒しそのまま本局へ向かえ。回収した「エスティア」船員の手当てと事情聴取を行え。以上だ」

 

「了解、各員に告げる。当艦はこれより……」

 

 私が告げるとをれをすぐさま通信担当が各員に告げる。

 をれを確認して私はそのままブリッジを出て、自分の部屋に向かう。その時歩いた廊下が何時もより長く感じた。

 

「……あ」

 

 そこで私は目が覚めた。

 何時もみる夢、普通の夢のように目が覚めたら忘れる様なものではなく、非常にリアルな夢だ。現に私の手にはあの時アルカンシェルを発射した感触が今の鮮明に残っている。

 

「お父様?」

 

 私の異常を感じたのか、部屋に入ってきたアリアが声を掛けてきた。

 

「大丈夫だ。何時もの夢だ」

 

「……そうですか」

 

 アリアは悲しそうな顔をして近づいてくる。

 アリアにロッテ、私の使い魔は夢の事は知っている。何度となくうなされれば気付かない方がおかしい。もう十一年になるというのに未だに引きずっているのだから。

 

「お父様、無理はしないでください」

 

「ああ、分かっているよ。ロッテはどうした?」

 

 何時もは二人で来るのに今日はアリア一人だけだった。

 

「今日の事とお父様のお説教が効いたんでしょう。ウーウー唸りながら寝てますよ。大方一樹にからかわれている夢でも見ているのでしょう」

 

「そうか」

 

「言いくるめられたのが余程悔しかったのでしょう。昔もあの子にやられた事がありますからね」

 

「ああ、あの時のか」

 

 何年か前に顔色を悪くして返ってきた事がある。

 聞いてみれば模擬戦で初心者に引き分けたというのだから驚いた。しかも得意のはずの近接戦闘で反応もできなかったというのだから。

 

「ええ、まあロッテいには良い薬です。あまり予定外の事をして此方に感づかれても困りますからね」

 

「しかし、どうしたものか……」

 

「ええ、予定外ですね。まさかこんな方法をとる人物が出てくるとは思いませんでしたから」

 

「今、公開されている情報の真偽は確認取れたのか?」

 

「いえ、まだです。無限書庫に入ったのですがなにぶんとんでもない量がありますから、全ては確認できてませんが、確認の取れた情報に誤りはありませんでした」

 

「そうか……」

 

「これからどうしますか?」

 

「下手には動けないな。上層部は相変わらず修復には否定的で、マスコミに働きかけ世論を味方につけられた分まだ動きようはあるが、向こうも馬鹿では無い。そのあたりは百も承知だろう。なかなか隙を見せてはくれないよ。流石レジアスと言ったところか」

 

「それでは?」

 

「しばらくは、様子を見るしかないだろうな。闇の書はどうなっている?」

 

「はい、起動したのは確認が取れています。守護騎士も四名確認しました」

 

「なら守護騎士を張るか、彼らが動いたのであれば何か掴めるかもしれん」

 

「はい、もし何らかの犯罪を犯したのであれば……」

 

「ああ、それを理由に主の永久封印を行う。デュランダルの完成はあとどれくらい掛かる?」

 

「はい、少なくとも後半年はかかりそうです」

 

「遅いな、早められないのか?」

 

「早めて土壇場で使い物にならくなっても困ります」

 

「そうだな、とりあえず圧力は掛けておくか」

 

「そうですね。手配しておきます」

 

「すまんな」

 

「気にしないでくださいお父様」

 

「闇の書の悲劇はもう繰り返さない。これで最後にしなくてはな」

 

「はい」

 

 アリアがそう答え沈黙がおりる。

 

「起こしてすまなかったな。私ももうひと眠りする」

 

「分かりました。おやすみなさいお父様」

 

「ああ、お休み」

 

 そう言うとアリアは部屋から出て行った。しかし寝るとは言ったものの今夜も寝れる気がしなかった。

 

― 斎藤一樹 ―

 

 はやての家に行き、はやての部屋の前まで来た。

 そこで話し合い、まずは俺とはやてとシグナムが入り事情を聴くことにした。あんまり大勢で行って不安にさせても仕方ないという事だからだ。

 ベッドの上に寝ていた男が体を起こし顔を此方に向けて話しかけてきた。ん? あれ? どっかで見たような……?

 まあとりあえず話を聞いてみるか。

 

「君が、一樹君か? すまないが此処が何処だか教えてもらって良いかな?」

 

「はい、そうっすけど。スサノオから何処まで説明受けました?」

 

「え? いや、全く何も聞いてないが?」

 

「……おい、ファッキンデバイス。なんも説明しなかったのか?」

 

《はい、クソ野郎。私が説明してもまた同じことを説明するでしょうからしませんでした》

 

「……本音は?」

 

《正直めんどくさかったので》

 

 スサノオがそう言うと周りが唖然とし沈黙してしまった。

 

「んな事だろうと思ったよ、ったく。まあいい。うし、それじゃ話すか。まずここは日本。第九十七管理外世界「地球」です。分かりますか?」

 

「いや、地球という所は分からない。しかし、その言い方だと君は管理局を知っているのかい?」

 

「ええ、俺は管理局地上本部、首都防衛隊所属、斎藤一樹三等陸士です」

 

 そう言って俺は自己紹介を済ませてしまう。

 

「そうか、ああ、そうだまだ名乗ってなかったね。私は管理局本局、次元航行部隊所属、L級次元航行艦「エスティア」艦長、クライド・ハラオウンだ」

 

「そうで……ん? クライド・ハラオウン?……あーーーー!! 思い出した!! クロノの親父じゃねーか!!」

 

 俺が突然大声を出したので全員が驚いていた。

 

「へ? クロノを知っているのかい?」

 

「知っているも何も俺の同期っすからね」

 

「え? そんなはずないだろ? クロノはまだ三つだよ? 管理局に入れるわけがない」

 

「あ~、クライドさん? 今新暦何年だと思います?」

 

「……僕の記憶が確かなら今は新暦五十四年のはずだが?」

 

「所がどっこい今は新暦六十五年。クライドさんの記憶より十一年未来ですね」

 

「……それじゃあ、僕は十一年もここで眠っていたという事か?」

 

「あ~、眠っていたというのは正しいのかな? ここでと言うのもあながち間違えじゃないな」

 

 俺ははやてが持っている闇の書をチラっと見ながら答える。

 

「それはどういう……」

 

「クライドさん、あれに見覚えはありますか?」

 

「そ、それは!!」

 

「ええ、闇の書です。そして今回のマスターが彼女、八神はやてです。それと彼女がヴォルケンリッターが将、烈火の騎士、シグナムです」

 

「あ、八神はやてです」

 

「…………」

 

 はやては名乗るがシグナムは答えない。管理局だという事で警戒しているのだろう。分かりやすい。

 

「む、シグナムあかんよ。ちゃんと名乗らな」

 

「烈火の将、シグナムだ」

 

「ん、よろしい」

 

 そんなやり取りに目を丸くする。

 

「い、一体どういう事なんだい?」

 

「クライドさん、あんたは闇の書からヴォルケンリッター、守護騎士と一緒に出てきたんですよ」

 

「なっ!?」

 

「それは間違いない。我々も確認している」

 

 俺に言われるまで気付かなかったけどね。

 

「クライドさん。一体何があったんですか?」

 

「……分からない。あの時、エスティアで闇の書を輸送中、闇の書が暴走し艦の制御系を全て奪われた。部下を退避させるため艦に残り、旗艦のアルカンシェルで闇の書ごと消滅させられたはずだ。アルカンシェルが撃たれてエスティアに当たった所までは覚えているがそれ以降は覚えていない」

 

「「なっ!!」」

 

 それを聞いて二人が驚く。ん? なして?

 

「管理局は仲間を見捨てたのか!」

 

「ひどいやんか!」

 

 あ~、なるほど。それでか。確かにそう聞こえるな。

 二人の誤解を解こうと説明しようとしたらクライドさんが説明し始めた。

 

「二人ともそれは違う。あの時はもう私を救助する事は出来なかったんだ。見捨てたというのも間違いじゃないかもしれないけど、私がそれを進言したんだ。少なくともあの時私の仲間は、私を助けようと方法を模索してくれていたよ」

 

「「…………」」

 

「あの決断は仕方なかったんだよ。そうしなければどんな被害が出ていたか分からない。闇の書と言うのはそれ程のものだったんだ。だから、私の仲間を悪く言わないでくれないか? 仲間もつらかったはずだ」

 

 やさしく、仲間達を思い説明するクライドさん。

 

「すいません。事情も知らずにそんな事いうて……」

 

「そうだったか、すまない」

 

 二人が素直に謝る。それがまるで以外だったかのようにクライドさんが驚く。

 

「あ、いや、分かってくれたなら良いんだ。しかし、以外だな。守護騎士もこうして話してみると普通なんだね。もっと機械的なイメージがあったから」

 

「ん? そうか? 結構感情豊かだぞシグナムは。落ち込んだり、機嫌が直ったり、怒ってる所に冷めた表情とか、それぐらいしか見てないけど。あ、でもヴィータは美味いもん食って顔が綻んだな」

 

「あ、そうやね。あれは可愛かったな~」

 

「……そうなのかい?」

 

「おう、なんだかんだいって管理局の情報って曖昧なんだよな。実際こうやって話してみれば普通だし」

 

「貴様と普通に話した覚えはないがな」

 

「なん……だと?!」

 

 そんなはずは…………あった。

 

「え~っと、それで私はどうすればいいのかな? 守護騎士と一緒に出てきたという事は私も守護騎士になったという事なんだろうか?」

 

「それは調べてみないと分かんないんすよね。ヴォルケンリッターもこんなことは初めてみたいだから分かんないみたいで」

 

「そうか……。闇の書の事で管理局はどう動いているんだい?」

 

「現在、地上と本局合同の闇の書修復プロジェクト実行中」

 

「は?」

 

「闇の書を直すんですよ。ぶっ壊れてるから」

 

「しつこいぞ貴様。闇の書は壊れてなどいない」

 

「って言ってるけど?」

 

「説明は準備が整ってからします。プロジェクト開始するときにね。全員まとめて。それまでゆっくりしててください」

 

「……そうか。まあ、しばらくまともに動けそうにないからね。ゆっくりさせてもらうよ。って言うか色々ありすぎて訳が分からないから考えさせてくれるかな?」

 

「そうしてください」

 

「……一樹君。クロノとリンディは元気かい?」

 

「ええ。これでもかってぐらい元気ですよ」

 

「そうか。……ありがとう」

 

「まあ、気にしないでください。連絡はどうします?」

 

「少し待ってくれ。言い方は変かもしれないがまた死ぬかも知れないんだろ?」

 

「……はい」

 

 クライドさんの場合完全なイレギュラーだ。現状で守護騎士なのかどうかも分からない。

 最悪リインフォースと一緒に消滅する可能性もある。死なないとは言い切れない。

 

「ならまだいい。また辛い思いをさせたくはない」

 

「了解。じゃあ、変装しなきゃならないっすね」

 

「え? 変装?」

 

「はい。だって正体ばれたら意味ないじゃないですか。だから変装です。はやて!」

 

「なんや!」

 

「この場合変装させるにふさわしい恰好は!?」

 

「身内が事件にかかわっとる、過去に死んどる。となるとあの男しかおらん!!」

 

「よく分かっているなはやて」

 

「当たり前や!」

 

「と言う事で外ではこれを被ってもらう!!」

 

 そう言って俺が取り出したのは縦に黒、赤、黄色とドイツカラーに色分けされ、額の所にV字のアンテナの様なものが付いたマスクだった。そう、某ゲルマン忍者のあのマスクだ。

 

「なあなあ一樹兄ちゃん! どうせだから口調も変えへん?」

 

「ナイスアイディアだ! はやて!」

 

《おや? 私のデータの中に偶然シュバ○ツが出るシーンだけ集めたMADがありますね》

 

「流石俺のデバイス! 良いセンスだ! ついでだから明日ヴォルケンリッターの日常品買うのと一緒に衣裳もそろえちゃおうぜ!」

 

「おお! ええな! それやったら明日みんなで買い物や!」

 

 ノリノリで話を進めていく俺とはやて。しかしクライドさんは、

 

「え? あ、いや、そこまでする事ないんじゃないかな~」

 

 変装が嫌なのか苦笑いで否定的な意見を出す。

 

「む、馬鹿を言っちゃいけません! リンディさんならクライドさんの癖、それこそ歩き方や仕草、はたまた背中を見せただけでクライドさんが脳内にフラッシュバックする事請け合い! そんな事でばれたらどうするんですか!?」

 

「うっ!」

 

 リンディさんはあれでいて結構鋭い。ちょっとした仕草でばれる可能性は大である。

 

「なので徹底的にすべきです!」

 

「しかしだな」

 

「……またリンディさんを悲しませたいんですか?」

 

 ぼそぼそと耳元で囁く。

 

「…………はあ。分かったよ。やればいいだろやれば!! しかしあれだな、階級で言えば私が上なのにそういう態度はとらないんだね」

 

「ん? 俺は誰にでもこんな感じですよ? レジアスのおっさんにもこんな感じだし。しかもクライドさん今階級ないじゃないですか」

 

「確かにそうだが……ってレジアス大佐にもなのかい?」

 

む? どうやら十一年前は大佐だったようだ。

 

「はい。因みに今は少将です」

 

「……少将にその態度でよく平気だね」

 

「何時もの事ですから」

 

「それで済む事自体が異常なのだけど……」

 

「まあ細かい事は気にしない方が良いですよ。そんな事よりはやて! 明日は土曜日つまり休みだ! 何をするか分かっているな!」

 

「もちろんや! 明日はハイパー守護騎士歓迎タイムや! 騒ぐで~! モンハンで、Wiiで四人プレイのやり放題や!! ポケモンでトーナメント戦が出来るで!!」

 

「ヒャハー! 資金は特別に俺が持ってやる! ドンと買い込め!」

 

「太っ腹やな!」

 

「実際はシックスパックに割れているがな!」

 

 上着を脱ぎ、上半身を見せつける。そこには見事に割れた腹筋があった。

 

「あ、主?」

 

「一樹君?」

 

 見かねたシグナムとクライドさんが声をかけてくる。

 

「なんだ(や)!?」

 

 俺とはやてが良い感じにぶっ壊れて、ハイテンションになる。

 

「そこまでしていただかなくとも……」

 

「愚問やねシグナム! 家族が出来たんや! お祝いせんでどうするんや!」

 

「その通りだ! 明日は飲めや歌えの大宴会だぜ! どうせだから高町家とテスタロッサ家、月村家にアリサも呼んじまおうぜ!」

 

「大宴会や! 資金は一樹兄ちゃん持ちの大宴会や!!」

 

「これだけの人数だとそうだな……月村家かアリサの家か高町家の道場だな」

 

「そうやね!」

 

「そうと分かれば連絡だ! ヒャッハー! テンションあがってきた!!」

 

 俺は携帯を取り出して連絡を始める。

 

「あ、なのちゃんか? 今大丈夫? 明日宴会するけど来れるか?」

 

『え、え? いきなりどうしたの? 明日は用事があるから無理だよ?』

 

 ピッ。その言葉を聞いた瞬間間髪いれずに切る。そして次の相手に電話をする。

 

「お! フェイトか? 明日宴会すっぞ!」

 

『ただいま留守にしています。御用のある人は発信音の後にメッセージを』

 

 ピッ。プレシアさんの音声で留守電のメッセージが流れるが最後まで聞かず切る。

 

プルルルル、ピ。

 

『どうしたの一樹さん?』

 

「明日宴会するんだけど参加できる?」

 

『ご、ごめんなさい。明日アリサちゃんと一緒にパーティーに行かなきゃいけないんだ。だからちょっと無理かな』

 

「ああ、うん、何か予想してたからいいや」

 

『え? ど、どういう』

 

 ピッ。すずかちゃんに電話したらアリサの予定まで分かってしまった。

 

「(´・ω・`)」

 

「ああ、分かった。分かったからその顔やめとき明日は私らだけで騒いどこ、な! 今回はホンマに行きあたりばったりやったんやね」

 

 はやての優しさが身にしみる。さっきまでのテンションはどこえやら、一気に鬱になる。

 

「鬱だ、死のう」

 

「良し、私が介錯をしてやろう」

 

「冗談だからね?! だからレヴァ剣を起動するのはやめましょう!」

 

「れ、れヴぁ!? 貴様! そこになおれ! 私の相棒を馬鹿にした罪払ってもらおう」

 

「だが断る!」

 

「いい度胸だ。レヴァンティン!」

 

《了解》

 

「こっちだって! スサノオ!」

 

《だが断る》

 

「うそぉ!?」

 

 スサノオのまさかの裏切り。シグナムはその隙を逃さず、

 

「はあぁぁぁぁ!!!!」

 

 大上段がから振りかぶったレヴァンティンを気合いと共に振りおろす。

 

「アッーーーーーーーー!!」

 

 頭部に衝撃を感じ俺の意識はそこで途切れた。

 

― 八神はやて ―

 

 あ~あ、ついに一発もろってしもたか。とんでもない音がしよったな。大丈夫なんやろか?

 

「シグナム、加減したん?」

 

「……いえ」

 

「う~ん、まあええか。一樹兄ちゃんの自業自得やし」

 

「よろしいのですか?」

 

「かまへん。何時もの事や」

 

「そ、そうですか……」

 

 シグナムと話していると部屋のドアが開いた。

 

「シグナム、何かすげー音が聞こえたけど?……お? どしたんだこいつ?」

 

「すごいたんこぶですね」

 

「何かしたのか?」

 

 そう言ってヴィータがツンツンとつついている。一緒にシャマルとザフィーラも顔を出して覗いとる。

 

「やんちゃし過ぎてシグナムに成敗されたんよ」

 

「追い打ちして良いか?」

 

 ヴィータが武器を取り出してジャキンと物騒な音を上げる。

 

「ヴィータ、それは流石にそれはあかん」

 

「……わかった」

 

「君達が残りの守護騎士かい?」

 

 ヴィータ達を見て気になったのかクライドさんが聞いてきた。

 

「そや、ヴィータとシャマルにザフィーラや!」

 

「そうか、クライド・ハラオウンだ。宜しく頼む」

 

 そう言うとクライドさんは手を出して握手を求める。

 

「あたしはまだあんたを信用した訳じゃない。でも、そこに転がってるやつよりまともそうだ」

 

「ヴィ、ヴィータちゃん!」

 

「ふむ、確かにそうだな。ヴォルケンリッターが増えて嬉しく思う。共に主を守り抜こう」

 

 二人をしり目に、クライドさんの手を握り返すザフィーラ。

 

「あ~、まだそうなのか分からないけどはやてを守るのは同感だ。宜しく」

 

 クライドさんも握り返す。

 

「まあ、そんな危ない目に遭うとは思えへんけどみんなこれからよろしゅうな。今日から私らは家族や!」

 

「しかし、いいのですか主はやて。あなたが望めば絶大な力に、足も治るはずです。私達に一言命令して「シグナム」……は」

 

「私はな、小さいころから一人ぼっちだったんよ。お父さんとお母さんが事故で死んでしもうてな、こんな足やから学校にも行けへんかった。食事するんも一苦労や。包丁の持ち方も分からへんし、調味料も何をどう使えばええんかもわからへん。いっつも一人で毎日毎日、本読んで、食事して、寝て、図書館行って……ほとんどその繰り返しやった。何でうちは生きとるんやろ? って毎日のように思っとった。しかも不思議と家に来る人はヘルパーさん位しかおらんかっし、それもうちが一人で暮らせるようになったら来なくなってしもたけどな」

 

「「「「「………………」」」」」

 

「そんな時や、一樹兄ちゃんと会ったんよ。私が車椅子のタイヤを溝にとられてしもうってな、一人では如何し様も無かった時に声をかけてきたんよ「大丈夫?」ってな。始めは強がって「大丈夫です」っていうてしもたんやけど、その場から動かないで後ろから見とるんよ。じーって感じで、それでな一人じゃどうしようもないって分かってもう一度声をかけたんよ。そしたら嫌な顔一つしないで笑って助けてくれたんよ。たいていの人は声すらかけへんからな。そんときやったかな? 人と久しぶりに触れ合った気がしたんは。」

 

((((こいつが笑いながら?))))

 

 ヴォルケンリッターの思い浮かべたのは一樹が「ニコッ」では無く「ニヤ~」と笑う姿だった。

 

「そんでな、お礼しようと思って私の家まで行ったんよ。そしたら何とお隣さんやったんや! それからやった、一人やなくなったんは。そこからは毎日が楽しかったんよ。一樹兄ちゃんは毎回馬鹿な事ばっかりやって、亜夜ちゃんは学校から帰ってくると何時も家に来てくれた。みんなで食べるご飯はホンマ美味しかったし、明子さんも、亜夜ちゃんと一樹兄ちゃんのお母さんなんやけど、色々教えてくれたんよ。それまで一人で寂しかったんが嘘のようやった。そしたら今度は私にも家族が出来る言うんや! これほど嬉しい事はあらへんよ。それ以上望んだらバチがあたってまう。だからシグナム、蒐集なんかせんでええんよ。そやから私と一緒にいてな? それが私の闇の書のマスター、八神はやての願いや」

 

「「「「分かりました、主はやて」」」」

 

 ヴォルケンリッターはそう答えてくれた。

 

「ん~、じゃあクライドさんしばらくそのベッドで寝ててええからな。何かあったら教えてな」

 

「ああ分かったよ」

 

「シグナム、一樹兄ちゃんを運んでくれるか? 足掴んで引っ張るだけでええから」

 

「了解しました。主はやて」

 

 そういうてシグナムは一樹兄ちゃんを引きずっていく。途中で壁にゴッ! ガッ! と当たっとるけど一樹兄ちゃんなら平気やろ。

 

「ほな、お休みなさいクライドさん」

 

「……お、お休み」

 

 ちょっと引き攣りながら挨拶を返してくる。これから毎日が楽しくなりそうや。

 って言うかさっき私は何を語っとるんや?! 最後なんか効果音が付きそうやん!! 恥ずかし~~!!

 一樹兄ちゃんが聞いとらんかったからよかった~~!!あんなん聞かれとったらホンマ恥ずかしいわ。

あ~よかった。シグナムに感謝やな。

 

 そんなふうに一人はやては悶えるのだった。

 

 

 

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