pixivで連載していた『そうだ、神殺しで宝具を強化しよう』をプチリメイクして投稿してみることにしました。
拙い物語ではありますが、楽しんでもらえれば幸いであります(-_-;)
pixiv版のタイトルは単純に宝具が中々強化されないアルテラ嬢の対応に業を煮やして書こうと思った感じです。(完結済みです)
内容的には4~5章の間で監獄棟イベントのようなノリで進んでいくと考えていただければ有り難いですm(__)m
※ジャンルとしては、かなりアクションメインです。
設定の整合性も半端ですし、原作とはかけ離れた道楽作品であることを前提に読んでもらえれば助かります。
これまで数多くの場所へレイシフトを経験したが、今回飛ばされた場所は一段と冷えた。
そこは雪が降り積もる雪原でもなければ、大雨の降りしきる荒野でもなかった。
体全身が砂だらけ。
身を起こしてみるが見当たる景色は砂丘と夜空のみ。
つまるところ、今回飛ばされた場所は夜空が広がる砂漠のみ…
ということは、これはレイシフトではなく―――
「ようやく、目を覚ましたか…マスター」
振り返ると、白い長髪のような礼装を纏った褐色の美少女がいた。露出度の少ない水着のような白いドレスを纏い、ルビーのような赤い両眼でこちらを見下ろしては独特の威圧感を与えてくるサーヴァント…つまり――
「やっぱり、お前か…アルテラ」
アルテラ――かつて欧州において最大規模の騎馬民族を率いた戦闘王であり、多くの国、文明を滅ぼし続けた彼女は人々に消えない恐怖を植え付けた。
軍神マルスの剣を持つ彼女の力は「神殺しの力」とあだ名され、真向からの戦で敗れることはなかった。
追い詰められた人々は人の心を持たない彼女に和解ではなく、謀殺を諮った。
戦ではなく、謀略によって散った彼女は自らが死したことすらも理解できずに英霊の座を彷徨い続けた。
そんな中、自分以外の何物かが人類史を破壊しようとする異変を察知し、そうはさせまいと召喚に応じ、カルデアのマスターでもある自分と共に戦い続けた。
何故破壊衝動の塊である彼女が人類史を守るために定かではないが、破壊の権化たる己を差し置いて、人理を焼却する者は最優先で破壊する―――という、いまだ謎が残る理由の元、協力をしてもらっている…という解釈であってればいいのだが―――
そんな彼女は自らの力を開放する為にマスターである自分に試練を与え、静寂に包まれた空間へ連れ込むのである。本人曰く、精神世界に連れ込んでいるそうだが詳しい原理は自分にも彼女にもわかってはいない。
少なくとも、人のように考えられず、何も感じられないままに破壊の限りを尽くした彼女の心象風景はどこでまでも空虚な世界が続き、それを共有していることだけはお互いの共通認識であった。
友もなく、家族もなく、誰の声もない…破壊しつくされた空間には風だけが吹き荒ぶ。
多くの仲間を率いながらも、その記憶をもとにした世界には一人として彼女の前に現れない。
星の生命の絶対原則――生存目的が繁殖であることからはずれてしまった少女…
根底に破壊の因子が刻まれ、殺さずとも壊さずにはいられない性。結果として人は死に絶え、屍の山を築く。
それでも、彼女の中に何もないわけではない。
この薄い空間には彼女の心の住まうケモノがいる。
彼女と戦い、その果てに命を落としたケダモノタチ。もの言わぬ彼らとの死闘の中で何度も彼女――アルテラと乗り越えてきた…
そして、今回もまた、彼女の開放されていく力を制御するために死闘に挑戦しなければならないと憂鬱な気分を抑える。
魔力の供給をアルテラに集中させながら、周囲を魔力探知する。周囲は囲まれているか否か、魔力の大きさはどの程度か…
一瞬、怪しげな反応が触れた。
強大かつ暴力的な魔力。
「この魔力量…今度はいったい何を呼んだんだ!?」
「ほう、もう気付くとはな…アレを見るといい。マスター」
アルテラが指した方向。遥か彼方に見える影――遠目でもはっきりと見える巨大な肉塊。
「あれは――――ヘラクレス!?」
「あぁ、そうだな」
「そうだな…ってなんでお前の記憶にあんなヤツが!?」
そう、ここは彼女の記憶によって生み出される仮想空間。彼女が闘い、屠った者のみしか現れないはずである。
ましてや、彼女が滅ぼしてきた者達と一切関わりのないギリシャ神話の大英雄が現れる筈がない。
「確かに私は生前にヤツと闘ったことはない。何故、奴がここにいるかもわからない…だが、あれが本物となんらかわりのない正真正銘の大英雄であることはマスターであるお前が一番理解できる筈だろう?」
そんな無茶苦茶な―――と呟こうとしたが呆れて何も言えない。
仕方がないので例のごとく召喚サークルを起動しようとしたが…
「どうした、マスター。戦う前に呆けた顔をしても奴は待ってくれんぞ?」
「あのーアルテラさん?召喚サークルが起動しないんですけど…」
「そうか」
真顔で返事をされ、思わず絶句する。
かの大英雄は12回別の方法で殺さなければ消滅しない以上、アルテラ単騎での戦いは圧倒的に不利。つまり、勝率は限りなくゼロに等しかった。
「どうした、マスター。私一人では不安か?」
「うん、少し――っていうかだいぶ…かも」
闘いを前に心を傷つけないように少しだけ強がってみたが、対する彼女は滅多に見せない小さな笑顔で答えてきた。
「そうか、だが奴はたかだか大英雄だ。かの魔術王との闘いに比べれば、幾分かはマシだと思うぞ?」
思い出される敗北の苦汁…
そうだ、自分はこんなところで立ち止まっている暇はない…それなら――
「行こう、アルテラ!!」
「あぁ、マスター。半神とはいえ神は神…神殺しの本懐、ここで成し遂げよう」
そう告げると、アルテラは自らの宝具『』を取り出し、構える。
軍神の剣――未来的な意匠を思わせる三色の光で構成された「刀身」は、地上に於ける「あらゆる存在」を破壊し得るという、軍神マルスゆかりの剣。
何度もこの宝具で敵を蹴散らし、救われた…
ならば、今回も最高のタイミングで切り札を切るしかない。
「目標、大英雄ヘラクレス。破壊する――」
そっと、呟かれた一言とともにアルテラは半神の大英雄を破壊するべく、跳躍した。