約束された守護の剣   作:ジャックハルトル

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どうもです。

前回は結構シリアスだったなぁ…久し振りにシリアスっぽい作品書くからクオリティが心配。

ではどうぞ〜


第二話・王の誕生

 

 

 

アリアが亡くなってから暫くの間は地獄だった。

アルトリアは女の子だからなのか、オブサベルよりもずっと落ち込んでいた。

 

オブサベルはそんなアルトリアを支えるべく、全ての家事をこなそうとしていたが、いままでそんな事をした試しはないのだ。

全てアリアに任せていたため、掃除から料理まで全てにおいて四苦八苦していた。

 

そんなオブサベルを見ていて、自分がどれだけ兄に頼りきりだったのかを自覚したアルトリアが自分を取り戻したのは、あれから一年が経った頃だった。

 

 

 

「アルトリアぁ……今日の飯は?」

 

「野菜炒めだね」

 

「おぉう……肉分が恋しいぜぇ…」

 

「あはは……」

 

二人暮らしに慣れてきたのはいいのだが、この兄妹……とんでもない悩みを抱えていた。

 

「金が……欲しいぃぃぃい!!」

 

「切実だよねぇ……」

 

グーーー………

 

二人揃って腹が鳴る。

そう、二人が直面している問題とは……金が無い事だ。

しかし、これに関してはしょうがないとしか言えない…なんといっても二人はまだ11歳。

村人も二人の事情を知ってはいるが、11年前の事件以来、裕福な家庭などというのは殆ど存在しない。 皆、自分達の生活を支えるのに必死なのだ。

 

そんな時この男が現れたのは、二人にとって救いの手にしか見えなかった。

 

「僕の名はマーリン、キャメロット城で働くしがない魔術師だよ」

 

「魔術師?」

 

「根元に至らんとするために神秘を探求する研究者……まぁ要するに、変態集団ってところかな? 分かった?」

 

よく分からなかった……とりあえず話を聞いてみると、どうやら研究の手伝いをお願いしたいらしい。

危険な事はしないとの話に加え、どうやらこの男、金に無頓着なのか金払いが良いらしい。

 

「あ、それと……オブサベル君だったかな?

君は何気に魔術を使う素養があるみたいだね、僕も多少は齧ってるんだけど……使いたい?」

 

「使いたい!」

 

明らさまに怪しい誘いだったのだが、オブサベルは簡単にマーリンの誘いに乗った。

アルトリアがジト目で睨んでいたのだが、お前を守る力が欲しいからなんてのは、恥ずかしくて言えない。

 

そんなこんなで始まったマーリンとの仕事だが、これが思っていた以上に楽しい。

研究室自体は不気味だが、自分達が手伝った薬が出来る瞬間はちょっと嬉しい。

オブサベルも魔術師としてグングン成長していき、アルトリアも偶々見つけた木刀をブンブン振っている。

 

そんな生活が4年続いた。

 

いつも通りキャメロット城に向かう兄妹は相も変わらず仲が良い。

 

「俺がお前に剣で勝てる日は来るのだろうか……」

 

「ん〜…無理じゃない? 兄さんって剣の才能無いっぽいしね」

 

「ですよねー」

 

この兄妹、それぞれが魔術と剣に天賦の才能がある。

アルトリアが剣技、オブサベルが魔術……男としては逆であればよかったのにと思うのだが、才能ならば仕方ない。

 

「その代わり、兄さんは魔術がすごいよね。

この間マーリンさんが褒めてたよ?」

 

「マジか、多分アレだな。

この前、アルトリアのケツを触ろうとしてたから、師匠のケツにガンド打ち込んだ件で認められたか」

 

魔術師の頂点とも言われるマーリンが、ガンドの呪いにより、トイレで呻き声を上げていたのは記憶に新しい。

 

「でもなぁ…アルトリアに勝ててる要素が魔術の使い方だけってのがなんとも…運動も剣術も、果てには魔力の総量ですら惨敗してるからな……お兄ちゃんちょっと悲しい」

 

「しょうがないよ、生まれた時からの素質が違うんだからねっ! えっへん」

 

このままでは将来、守るのでなく守られる側になるかもしれない。

兄としてそれだけは阻止しなくてはならない! オブサベルに謎の使命感が生まれた。

 

「アルトリア、弱くなって下さい」

 

「うん、ヤダ」

 

「……………」

 

ノータイムで一蹴された。

 

「君達……何を訳のわからない争いをしているんだい?」

 

「うわっ! 何処から湧いてきたんだよ、師匠!」

 

「び、びっくりした……」

 

何処からか突然現れたマーリンに対し文句を言うが、当の本人は何処吹く風といった様子で全く気にしていない。

 

「で、何やってるんだい? 遅いから心配しちゃったよ」

 

「いや、アルトリアの超人っぷりに絶望してたら遅くなった感じ、だよな」

 

「そうだね、私の才能が魔術以外、一切合切全部兄さんに勝ってる事に酔いしれてたら遅くなった感じ……かな」

 

「君達本当は仲悪いだろ」

 

妹に嫉妬しまくる兄と、兄を見下して喜ぶ妹……喧嘩が始まってもおかしくないとは思うのだが、『いえ〜い』と笑顔でハイタッチしているのを見る限り、兄弟仲の心配はいらないだろう。

 

「それじゃ、さっさと僕の工房に行こうか」

 

「あいあい」

 

「あいあい」

 

その返事はなんだろうと思いながら、マーリンは二人を工房に連れて行く。

キャメロット城の中にあるため、本来ならこの兄弟のような一般人が入る事は出来ない。

 

工房に向かって歩いていると、オブサベルは前から気になっていた疑問をマーリンにぶつけてみた。

 

「なぁ師匠、あの立ち入り禁止区域って何があるんだ?」

 

「ん〜……割と重い話になるから、あんまり話したくないかな〜」

 

「私も気になります、マーリンさん」

 

「そうだねぇ……オブサベル君だけのお願いなら無視するところだけど、アルトリアちゃんのお願いだからなぁ……」

 

「オイコラおっさん」

 

まぁまぁ…とアルトリアに宥められたので許してやるが、事故を装ってまたケツにガンドを撃ち込む事を心に誓う。

 

「それじゃ、ここで話すのはちょっと気が引けるから、僕の工房で話そうか」

 

話してくれるなら問題ない。

オブサベルは黙ってマーリンに着いて行くことにする。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「さて、何処から話そうか………」

 

工房に着いた3人は、いつも座っている自分の特等席に腰を降ろす。

適当な性格の割に、部屋はそれなりに片付いているので、この工房は割と広い。

 

「君たちは今年で15歳だったかな?」

 

「そうだけど?」

 

「うん、なら少しは聞いた事あるかな。

このキャメロット城なんだけど、15年も王が不在って事を」

 

ブリテンに住む国民にとっては忘れられない凄惨な記憶、ちょうど15年前に産まれたこの兄弟もアリアから少しは聞かされている。

二人して頷くと、マーリンも頷き返して話を進める。

 

「あの立ち入り禁止区域はね、その当時の王であるウーサー王とイグレイン王妃が暗殺された場所に通じる通路なんだ」

 

「あぁ、そういう事だったのか」

 

「おや、意外とドライな反応なんだね」

 

「俺とアルトリアにとっては、知らないって言った方が合ってるくらい昔の話だからなぁ…」

 

「ま、それもそうだね」

 

実際にはオブサベルとアルトリアも深く関わっている出来事なのだが、アリアに引き取られてからは王族という事を隠しつつ、貧乏な一般庶民として育てられてきたのだ。

 

「それはそうとさ、君達はお父さんの事って聞いた事あるかな?」

 

「そういや、物心ついた頃には既にいなかったし、気にした事ないな……アルトリアは母さんからなんか聞いてたりするのか?」

 

「私も聞いた事ないかなぁ…気になった事はあるけど、母さんに直接聞くのはちょっと気が引けたし」

 

「実はね…僕は君達のお父さんとは古い友人だったんだよ」

 

マーリンの知り合いという事は、キャメロット城で働いていた騎士とかだったのか?

考えを巡らせるが、そもそもマーリンがどれ程の地位にいた人物なのかすら知らない。

 

「へぇ…そうなんだ」

 

「ど、どんな人だったんですか!?」

 

オブサベルは父親に興味があまりないのか、頬杖をついて話し半分に聞いている。

しかし、アルトリアは興味津々といった様子でマーリンに詰め寄った。

 

「う、うん、教えるからちょっと離れて欲しいかな? オブサベル君の目が本気になっちゃってるからさ」

 

「いやはや、愛され系の妹ですいません」

 

アルトリアがマーリンから離れて、元の椅子に座り直す。

オブサベルも密かに向けていた人差し指を収めると、再び頬杖をついてマーリンの話を聞く事にする。

 

「で、君達のお父さんの印象だけどね……うん、凄い人だったよ。

人柄も良くて、周りからも信頼されてて、強くて、優しい人だったよ」

 

「素晴らしい父親だったんですね…」

 

「そうだね、あの人がいなかったら僕がブリテンに居座る事はなかっただろうね」

 

「へぇ、師匠にそこまで言わせるってのは驚きだな」

 

アルトリアはもちろん、さっきまで興味の無かったオブサベルですらマーリンの話に熱中している。

 

今がチャンスかな……

 

そう思ったマーリンは、急に真面目な顔で次の話をし出した。

 

「……アルトリアちゃんはさ、この国をどう思ってる?」

 

「そうですね……正直、ここまで腐りきってる国もそうそう無いと思います。

王が存在しない事で、まともな統治すらされていない……常に飢饉に見舞われており、餓死で亡くなるものが後を絶たない。

何処からどう見ても最悪な状況ですね」

 

「なるほど…オブサベル君は?」

 

「大方はアルトリアと同じ意見だな。

更に付け加えるとするなら……なぁ、師匠。

ーーーーなんでこの国は新しい王を選定しない? 選定出来ない理由でもあるのか?」

 

オブサベルの鋭い読みに、マーリンは薄っすら笑う。

 

「流石は僕の愛弟子だね、良いところを突いてる。

その通りだよ、この国には王を選定するために『ある』事をしなければならないんだ」

 

「ある事?」

 

「もしよかったら挑戦してみるかい? 危険は無いよ?」

 

突然こいつは何を言い出すんだろう?

オブサベルはマーリンを冷たい目で見ているが、横を向いてみると……

 

「やりたいです!」

 

「は?」

 

アルトリアはやる気満々だった。

しかしまぁ……どうせ成功しないだろうと思い、とりあえず許可を出しておいた。

 

「本当ですか、兄さん!」

 

「ま、本当に引き抜くなよ〜」

 

「わ、私だって国を変えたいんです!」

 

そして後日、その『ある』事をやりに行く事にした。

オブサベルとアルトリアは、その時に気付いておくべきだったのだ……マーリンの微笑みの意味に。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

そしてその時は来た……アルトリアが選定に挑む日だ。

 

マーリンに着いてきたのは無名の丘、そこにある剣を引き抜けば王として認められるらしい。

 

「でもさ、鉄鉱石に刺さっただけの剣がこの15年間誰にも引き抜けなかったってのが胡散臭いんだよな」

 

「私もそこは半信半疑なんだけどね…」

 

この兄妹の言い分も尤もだが、マーリンは全くそうだとは思っていない。

なにせあの剣は……大魔導士であるマーリンが作り出した、マーリンにとっての最高傑作なのだから……

 

「それじゃあ、試しに僕がやってみようか?

強化魔術を最大に掛けてからでもいいしね」

 

「え……師匠がフルパワー出したらエラい事になるんじゃね?」

 

「ん〜、デコピンで人の頭吹っ飛ばすくらいは余裕かな?」

 

そんな事すれば剣が砕けるんじゃね? と、思わなくも無いが、このマーリンをもってしてそこまで言わせているのだ、恐らく信用出来る情報なのだろう。ならば……

 

「俺も試していい?」

 

「いいんじゃないかな? でも、もし抜いちゃったら王様になるんだよ? その覚悟はあるかい?」

 

「覚悟があるか無いかで言えば、アルトリアと比べれば……無いな。

だけどさ、師匠も思わないか? 国政を執るなら、俺の方が適任だって」

 

「あぁ……うん……それは、そうだねぇ」

 

オブサベルは魔術を習っているのもあるが、マーリンから直々に教育されているので非常に頭が良い。

飲み込みも早く、頭脳的にはかなり高いレベルだと師匠からのお墨付きがあるくらいなんだが……アルトリアの場合は剣ばっかり振ってきたせいか、少々脳筋なところがある。

 

「私……バカにされてる?」

 

「もちろん」

 

「否定出来ないかなぁ…」

 

「うぅ……」

 

そして、コントをしている間に例の剣がある丘に到着した。

既に剣の姿は見えているからか、アルトリアの表情は真剣そのものだった。

国を思うからか、死者を悼んでの事なのかは分からないが……オブサベルは一つだけはっきり分かることがある。

 

あぁ……俺の妹って、こんなに立派だったんだな。

 

「行ってこい、アルトリア」

 

「私で……大丈夫かな?」

 

行ってこいと言われた途端不安げな顔をするアルトリア。

抜けるかどうかは分からないが、もし抜けてしまえば、それはこの崩壊した国の王になると言うこと……だからこそ言っておく。

 

「心配すんな。お前が王になったら俺が裏の王様としてこの国統治してやるよ。

喜べ妹よ、お前は俺の傀儡となって君臨するんだ………安心するだろ?」

 

他人が聞けば、酷すぎる言葉。

アルトリアが王になった暁に、誰かがこの情報を漏らすだけで国家反逆罪で殺されても文句を言えないほどのセリフだが……アルトリアにとっては、とても安心出来る言葉だった。

 

「ん…ありがと、兄さん」

 

剣に向かって行くアルトリアの背を見守るオブサベルとマーリン。

二人から見れば、アルトリアの足取りは非常に遅く、重い。

 

「いいのかい? 多分抜いちゃうよ、アルトリアちゃん」

 

「んなこたぁ分かってるよ。 誰があいつを一番見てると思ってんだよ、師匠。

アルトリアの纏ってるカリスマ性は尋常じゃない。 それこそ兄であるこの俺ですら平服したくなるくらいだよ……それに、あいつは生前に何かを施されている」

 

「……どうしてそう思うんだい?」

 

「魔力量だよ。俺は当然として、師匠ですらあいつに遠く及ばないんだ、魔術師でそれに気が付かない奴はバカか能無しかのどっちかだよ。

何をどうやったのかは分かんねぇけど、師匠だろ? やったの」

 

危険な子だと思った。

 

始めて見たときは魔術回路と魔力量が多いだけの子供だった。

 

だけど…彼に魔術を教え出してから分かった事がある。

 

「やっぱり君は怖い子だね。

いつもアルトリアちゃんの影に隠れて目立たないようにしてるけど、君も充分だよ。

頭が良く、勘も鋭い、オマケに魔術で教える事なんてもう無いんじゃないかな?」

 

「それは正解って意味で取っていいのか?」

 

「うん。アルトリアちゃんの心臓を赤竜の物に変えたんだ。

まさか双子だとは思ってなかったけどね……僕の事、嫌いになっちゃった?」

 

「別に。 魔術師ってのはそんなもんなんだろ? どうせなら俺にやって欲しかったってのはあるけどさ」

 

そして、オブサベルはマーリンを睨みつけ、胸倉を掴みあげた。

身長の高いオブサベルに持ち上げられた事によって、首が締まったはずだが、マーリンの目はオブサベルの目を見つめ続けていた。

 

「………あと一回でもアルトリアになんかしてみろ、どんな手を使ってでもテメェを殺してやる」

 

「それじゃあ、殺されないように気を付けないとね……君を相手にするのは面倒くさそうだ」

 

その言葉を聞いたオブサベルは、ため息を吐いてマーリンを下す。

 

「俺程度が師匠に勝てる訳ないだろ。足元にすら及んでない自信があるくらいだっての」

 

「君の特性は厄介だからね……っと、アルトリアちゃんが剣を掴んだみたいだよ?」

 

オブサベルもアルトリアに注目していたので、そんな事は言われないでも分かっている。

 

二人はそれ以上喋ることをやめた。

アルトリアは剣を掴んだまま動かない。

多分、本人も分かったのだろう……そして、それが怖かったんだろう。

 

マーリンがオブサベルを見やる。

 

師匠が何が言いたいのかなんてのは分かってる、分かっているからこそ叫んだ。

 

「ーーーーアルトリア!!」

 

「ーーーーっ! やぁぁぁぁあ!!」

 

天に向かって輝きを放つ剣。

 

その日、15年間ぶりに『王』が誕生した。




はい、アルトリアがやっと王様になりました。

オブサベル? あぁ、彼は主人公っぽい脇役ポジだからね!
まぁ名前にもちゃんと意味とかあるんですけど、物語の中では絶対に出てきませんw

はてさて、彼は本当にアルトリアを傀儡るのか……むしろ活躍出来るのかは、次回以降に期待して下さいな!
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