新たな騎士とあるんですが、出てくる騎士の順番までは分からなかったので、ちょいと適当かもです。
新たな王が誕生した!
その情報は瞬く間に広がっていき、ついにはブリテン全土がその事を知るようになった。
王として即位したアルトリアは、マーリンのアドバイスにより男として生きなければならなくなったのだが、それをオブサベルが簡単には許してくれなかった。
「王として必要なのは、どれだけ国民に愛されるか、王としてどれだけ働けるかだろ!?
男女の違いなんかどうでもいいだろ!!」
そう言ってマーリンに詰め寄っていたのだが、男でなければ他国に舐められる。
男でなければ後継を残す際に苦労する。
男でなければ、男でなければ……とひたすら説教されたお陰で何とかそれを認めた。
そんな中アルトリアが最初に行ったのは、長い間、主のいなかったキャメロット城の再建だった。
城の宝物蔵に保管してあった魔術的な価値の無い財宝塁を全て他国に売払い、資金を増やした上で、再建に必要な人材を雇い国に金を流したのだ。
一度金が回り出せば、あとは勝手に国を潤してくれる事になる……例えば、商業などが発展すると、他国との取引のために交流が始まり、物流によって食事や生活に困らなくなる。もちろんこれは長い目で見た場合の話なのだが、やっておいて損はない。
次に立てた政策は、マーリンを中心にした、魔術師達による新しい食品の開発を行っていった。
これは魔術に期待している訳ではなく、様々な植物や動物を掛け合わせる事による、育ちやすく、数も取れ、更には味を良くする為に集められた……要するに進化した農家である。
ちなみにこれはオブサベルの提案であり、マーリンはそれに巻き込まれただけに過ぎない。
それ以降も様々な国政を挙げると、その何れもが功を奏し、再びブリテンの大地を豊かにしていった。
そして国が発展していく中、一つの問題が発生した。
かつての力を取り戻しつつあるブリテンに対し、焦りを覚えた国による襲撃……戦争が始まろうとしていた。
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あれから更に3年経ち、18歳となったオブサベルは、キャメロット城に用意されたオブサベル専用の工房で、一人の教え子に魔術の指南をしていた。
「いいかー、ガンドと一言で言っても込める魔力や詠唱の仕方によっては、人を殺す事だって出来るんだ」
「でも、ガンドって確かただのショボい呪いですよね? 誰が使っても変わらないように思えるのですが?」
オブサベルに質問をしている少女の名はカリーナ。
たまたま城下の街に出かけたときに見つけた、魔術の素養が非常に高い少女だった。
3年前までの飢饉のせいで家族を全員失い、死にかけているところをオブサベルに拾ってもらった事で非常に懐いており、今ではもう一人の妹のように可愛がっている。
「バッカ、お前……ガンドてのは確かにショボいかもしんねぇけど、呪いには違いないだろ? だったらその呪いに指向性と属性を与えてやれば、こんな事だって出来るんだ。
『
適当な物を的代わりにしてその特殊なガンドを飛ばすと、不思議な現象が起きた。
「あ、あれ……なんですかこれ? 火が出てないのに燃えてますよ?」
クリクリとした大きな青い目をパチクリさせながらオブサベルに聞くと、彼は自信満々にそのカラクリを語りだした。
「さっきも言った通り、ガンドってのは呪いだ。 呪いってのは万物にかける事が出来る非常に優秀な魔術でもある……ってのは前に教えただろ?」
「はい」
「ん、覚えてるならよろしい。
その中でもガンドは構成が単純で、指をさした相手に呪いをかけるってだけのものなんだ。 俺がやったのはガンドを基盤にして、火の属性に不可視化の魔術を組み合わせた術式を書き込んだもんだな」
見た目は普通の黒いガンドだが、その効果は火の属性により対象に熱を与え、不可視化の魔術によって加熱し吹き出す筈の炎を見えなくさせるという物だった。
「でも、炎を見えなくして意味なんてあるんですか?」
「んー……想像してみろよ、カリーナ。
お前の隣に誰かがいたとする、そいつは突然熱い熱いと叫びながらのたうち回り、ついには炎も出ていないのに皮膚が焼け爛れていき……そして最後には灰になる。どうだ?」
「師兄には逆らわないようにします」
「うむ、よろしい」
オブサベルは弟子であるカリーナに師兄と呼ばれている。
理由はただ単に、カリーナが師匠と呼んで来たので、それでは自分とマーリンと被ってしまう……なら兄か師匠のどっちかで呼んでくれと言ったら二つ合わせて師兄になったという事だ。
「師兄はガンドが得意なんですか?」
「他にも色々使えるんだけど、俺が初めて使った魔術でもあるし、初めて師匠にぶち込んだ魔術でもあるからな……なんとなく気に入ってるから、色んなバリエーションのガンドを作ったって感じだな」
「ちなみにそれはいつ頃の話なんですか?」
「え〜と……13だか14だか、そんなもんだな」
私と同い年……と言い落ち込んでしまったカリーナの頭を撫でると、すぐにまたクリクリとした目でニコニコと笑い始めた。
そんなときだった。
バタァァン!!
勢いよく扉が開けられ、その風で資料などが飛んでいく。
カリーナなんかはびっくりしてオブサベルに抱きつくが、当の本人は犯人が誰かなんてのは分かっているので、若干うんざりした顔で扉の方に顔を向けた。
「アルトリアさ〜ん、ドアはノックして返事があってからゆ〜っくり開けようね〜」
「はぁ…ふぅ………ごめんね、兄さん」
そこにいたのは案の定、アルトリアだった。
余程急ぎの用事でもあるのか、息を切らしてまで走って来たのがよく分かる。
「で、どうした?」
「実はね、なんか…雇って欲しいっていう騎士が一人来てくれたんだけど……」
「だけど?」
「ちょっと変わった人で……」
「判断を仰ぎに来た訳か」
こくりと頷いたので、間違いは無いだろう。
しかし、今は魔術の講義中。 アルトリアから王としての命令では無い限り、こちらを優先したいのもある。
「てかアルトリア、お前口調。 カリーナいるんだけど、いいのか?」
「だって、カリーナは兄さんの妹みたいなものなんでしょ? だったら私の妹でもあるってこと、だから口調は問題なし!
むしろ、カリーナがいるのに、私に敬語を使わない兄さんには言われたくないね」
普段のアルトリアは、王として恥ずかしくない、威厳のある話し方をしている。
それこそこんな砕けた口調で話すのは、兄であるオブサベルと、義妹であるカリーナだけだ。
「カリーナも、こんにちは」
「こんにちはです、アルトリア姉様」
カリーナはカリーナで、オブサベルとアルトリア直々に砕けた口調で話していいと許可を得ている唯一の人間ではあるが、やはり公共の場では敬語を使っている。
そして、オブサベルとマーリン以外でただ一人アルトリアが女性である事も知っている。
「で、話を戻すけど、兄さんも一緒に来てくれない?」
「………えぇ…」
「師兄がすっごい嫌そうな顔をしてます」
「そんな嫌そうな顔する兄さんは嫌いかな?」
手近にあった椅子に座りながら、そう言うアルトリア。
あ……こいつ俺が了承するまで帰るつもり無いな?
「はぁ……豪華な衣装を着ても、中身は昔から変わんねぇなぁ……いいよ、会ってやる」
「やった! ありがーーー」
「ただし! 俺はカリーナへの講義中だ。
そいつが既に城の中にいるなら、連れてこい。 ここでなら会ってやる」
「誰ぞここに!」
シュバっと立ち上がり、人を呼ぶアルトリア。 その声は先程までの甘えん坊な妹の声ではなく、凛とした王の威厳に満ちた声だった。
「はい、なんでしょ……って! アーサー王!?」
「謁見の間にて待たせている騎士をここに呼んで欲しいのだが、頼めるだろうか?」
「はっ!今すぐ呼んで参ります!
アルトリアは、王として即位してから名前が変わった。
アルトリアは幼名として、そして新しく男としての名前がアーサーだった。
未だにアルトリアと呼んでいるのはきっと、オブサベルとカリーナくらいのものだろう。
「こほんっ……それでは王よ、この席にお座り下さい」
臣下としての言葉遣いで、自分の座っていた椅子をアルトリアに譲ろうと退いたら、物凄い不機嫌な顔で睨まれた。
「私、兄さんのその口調嫌いです」
「いえ、これは臣下として当然の言葉遣いです。 もうじき例の騎士もやってくるでしょう、先程までのような口調など言語道断です」
「まだ来てないんだからいいじゃないですか」
「はぁ……あのな、お前は王で俺は臣下だ。
確かにアルトリアの兄ではあるが、他者の目があるところではそんな事言ってられんだろう、カリーナだってそんな事は重々承知してるくらいなんだ」
でも……と言って落ち込み出すアルトリア。
本当にいつまで経っても甘え癖が抜けない可愛い妹だ。
「んじゃ、一つ譲歩してやる。
今から来る騎士の前で、王としての正しい姿を見せてみろ。
そしたら、ここへの入室を無期限で許可してやろう」
「何をしている、サー・オブサベル。 さっさとそこの椅子を寄越さんか」
「おい、見たかよカリーナ。 あれがお前の姉なんだぜ? ちょっと泣けてくるだろ? 俺はちょっと泣けてくる」
「あは…あはは……」
私に振らないで! と内心で叫んでおく。
まだ騎士も来ていないのに無駄なカリスマを振りまくアルトリアに辟易していると、扉がノックされる。 ようやく来たか。
「アーサー王、オブサベル様、ご客人をお連れしました」
「入れ」
「失礼いたします」
ドアが開くと其処には、先程の兵士と長い銀髪を持った騎士が立っていた。
「ではアーサー王、私はこれにて失礼させていただきます」
「ご苦労だったな、下がっていい」
「はっ!!」
兵士が部屋から出て行ったのを見やると、アルトリアは銀髪の騎士に目を向けた。
「先程は失礼したな。 この者がお前に合わせたかった者だ」
「いえ、王の手を煩わせてしまい、誠に申し訳ありません。
私の名はベディヴィエール。 アーサー王に忠義の限りを尽くすべく馳せ参じた次第にございます。以後、お見知りおきを」
中々礼儀のなっている騎士だな。 それがオブサベルが抱いた第一印象だった。
「この者の名はオブサベル。私の相談役と思ってくれればいい」
「王より紹介にあずかった、オブサベルだ。
以後、よろしく頼む」
「はっ! よろしくお願い致します、オブサベル卿!………あの、失礼ですが、そちらのお嬢さんは…」
「あぁ……カリーナ、挨拶を」
オブサベルの後ろに隠れていたカリーナの肩を優しく叩いて前に出そうとすると、ギクシャクとしたぎこちない動きでベディヴィエールに挨拶を始めた。
「こ、こんに……御機嫌よう…ベディヴィエール殿。 わ、私の名前は、カリーナと申しましゅ。
オ、オブサベル様の元でま、まじゅちゅしとして師事を仰いで…ます」
かみかみでガチガチ。 非常に可愛らしいのだが、もうちょっと緊張せず話せるように練習しなければいけないな……とオブサベルは内心思っていた。
「オブサベル卿の……なるほど、可愛らしいお嬢さんですね」ベディヴィエールとカリーナが話している中、アルトリアがこちらをチラチラと見てきた。 バチッと目が合うと、視線で訴えかけてきた。
どうですか、兄さん。
中々だな…騎士としても、軍師としても相当使えるタイプだろうな。
雇った方がいいかな?
俺はそう思うが、決めるのはお前だ。
「あの……アーサー王? オブサベル卿?
どうかしたのですか?」
双子特有の以心伝心…ただのアイコンタクトなのだが、それに集中しているとベディヴィエールがいつの間にかこちらを見ていたらしい。
「いや、すまない……オブサベルは彼の事をどう思う?」
「私の個人的な意見でもよろしいのならお答え致しますが……」
「構わん、申してみろ」
「ありがとうございます。
……確実に、というのはまだ分かりませんが、人柄や騎士としての心構えに関しては問題ないでしょう。
後は戦闘能力ですね、あるにはあるのでしょうが、それは模擬戦などを見てみない事には分からない領域ですから」
なるほど…と言い顎に手を当てて考えているが、そのその口元がニヤッとしたのをオブサベルは発見した。
うわっ、嫌な予感しかしねぇ。
「ベディヴィエール」
「はっ!」
「オブサベル」
「はっ!」
「戦え」
「はっ!」
もうヤダよこの妹……大好きだけど。
ベディヴィエールも、なんかやる気満々だし…
「しかし王よ、私はただの魔術師です。
騎士であるベディヴィエールと戦うには些か力不足だと思うのですが?」
「謙遜するな。 その歳にして既に大魔導士と呼ばれている貴殿が弱いはずなかろう」
大魔導士……それは最強クラスの魔術師にのみ送られる称号で、同じ大魔導士から認めてもらわなければ絶対に名乗る事を許されないものだ。
もちろん、オブサベルにその称号を与えたのはマーリンだ。
この妹には、胸が育たなくなる呪いをかけてやる。
「分かりました…ベディヴィエールと戦いましょう」
「すまないな。 では私は庭園を開けるよう皆に言ってくるので、先に行かせてもらう。
準備が出来次第、人を寄越す、ここで待っていろ。 ではな」
「「はっ!」」
「カリーナ、お前も共に来い」
「は、はい!」
アルトリアがベディヴィエールの後ろを通ったとき、悪戯っぽく笑って手を振ってくるあたり、間違いなくオブサベルに迷惑をかけれて満足しているんだろう。
カリーナも、頭をペコペコと下げている。
いいんだ、お前は悪くない。 悪いのは全部アルトリアだ。
ベディヴィエールがいる手前、そんな事は間違っても口に出せないが、思うだけならいいだろう。
アルトリアがいなくなった事で気が抜けたのか、オブサベルは椅子に座ると、ベディヴィエールにも座っていいと指示した。
「にしても、ベディヴィエール…お前さんも大変だねぇ」
「いえ、一代にしてここまで国を発展させたアーサー王の元で我が剣を振るえるのなら、私は何でもしましょう」
「真面目だねぇ…っと、すまんな。 紅茶でも出そう」
「そう……ですね。 お願い致します」
アーサー王を前にして緊張したのか、ベディヴィエールはダラダラと汗を流していた。
アルトリアのカリスマにやられたか? それとも威圧されたのか?
正直どちらでもいいのだが、今のうちに慣れておかなければこの城では働けないだろう。
「オブサベル卿は、そちらが素の喋り方なのでしょうか?」
「まぁな。 王と二人きりの状態ならもう少し砕けた話し方でもいいだけどさ、お前がいる手前、礼儀正しくしてたって訳だよ」
「なるほど……カリーナ嬢とはどのような方なのでしょうか?」
「なんだ〜? 気になるのか〜? そうだよなぁ、カリーナは可愛いもんな〜。
だけど、ベディヴィエールくらいの歳の奴がカリーナに手を出すのはマズいんじゃないか?」
オブサベルの発言に、ベディヴィエールはボッという音が聞こえてきそうなくらい一気に赤くなった。
「そ、そういう訳ではありません! ただその……可憐だとは思いました……」
「ま、本当の家族がいないカリーナにとっては俺があいつの親代わり? 兄代わり? みたいなもんだ。
と、いう訳でこう言っておこう……カリーナが欲しければ俺を倒してからにしろっ!」
「ええっ!? なんて険しい……ではなく!
何故オブサベル卿はそういう考えになるのですか!」
「諦めろ、それが俺だ。 それとも何か? カリーナに魅力が無いとでも? 喧嘩売ってんのか?」
オブサベルは冗談交じりで言っているのだが、言われている本人からすれば堪ったものではない。
だからこそ、ベディヴィエールが……キレた。
「あぁそうです、惚れました、一目で惚れてしまいましたよ!
仕方ないでしょう! クリクリとした大きな黒い瞳、サラサラと流れる黒い長髪……正直、好みど真ん中です」
「よく言ったぞベディヴィエール! そうだよなぁ…やっぱカリーナは可愛いよな〜」
「もちろんですとも! あのように可憐な御仁、不肖このヴェディビエール…始めて見た次第にございます!」
ベディヴィエールの発言を要約するとこうなる。
カリーナ>>>>>他の女
オブサベルにとってもカリーナは愛すべき可愛い妹なのだが、一つだけ許せない事があった。
「おうテメェ…アルト………我が王も可愛いだろ? 男だけど可愛いだろ? あぁ?」
「ははははい! もちろんです! もちろんですからガンドを撃とうとしないで下さい!」
「分かりゃいいんだよ、分かりゃ」
オブサベルには男色の気でもあるのだろうか? そう思わずにはいられなかったベディヴィエール。
二人が談笑を続けていると、不意にノックの音が聞こえた。
「来たか。 手加減しねぇぞ? ベディヴィエール?」
「こちらこそ、全力で行かせてもらいます」
そうして、二人は工房から出て行った。
真面目系ロリコン騎士。
新たなオリキャラ出しました、カリーナちゃんです。
黒髪黒目の可愛いロリですな。
次回やっと戦闘に入りますので、なんとか見てやって下さい。