元『最強』であったが、それでも俺は―――   作:青いお尻

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第1話

最強を夢見た少年は、いつの間にか最強に君臨する男となっていた。

 

十数年前までは、ただのド素人であった彼がここまでの進化を遂げたのはまさに奇跡と言っても過言ではない。彼は努力家でもあった、だからこの瞬間も彼は鍛錬を怠らない。決して彼は自分自身を褒めない、それが彼流のやり方だ。

 

本郷 雅功(ほんごう まさとし)

 

格闘家の叶わぬ夢『最強』を成し遂げた、この世で唯一の男。

 

 

 

「うわっ、エッロ」

 

 

 

そんな格闘家の日常は、女子○学生のスカートを横目で見ることである。あの最強と歌われた彼の姿は、すでに消えていた。すでに歳は20代半ばであり、シワがところどころに付いているスーツを着こなしている。ベンチにだらんと寝転がりながら、大きな欠伸をしだしている。慣れた手つきで携帯を片手で弄りながら、目の前に女性が通れば目線を向ける。

なんと嘆かわしいほど変わってしまったのか。

昔の彼の姿は、それはもう英雄千の呪文の男(サウザンドマスター)ばりに有名人であった。『破壊神』や『格闘の最高峰』、または『千の技の達人(サウザンドエキスパート)』など、様々な通り名が存在した。

けれど、今はそんなものは過去に消えてしまった。今では『変態仮面』や『汚ヤジ』など、酷い通り名が有名になってしまった。

 

 

 

「はぁ~~~。あぁ、清掃ダリィ、マジで。もうよくない? こんな道端のゴミを掃除するより、世界のゴミ共を掃除したほうがいい気がするんだが? 都知事だって、結局掃除されちゃったし、ねぇ?」

 

 

 

この男、どこまでもわがままであった。緩くなっていたネクタイが邪魔になったのか、ついに外している。そんな中で、この広い青空を眺めるている。どこかしか楽しそうに笑みを浮かべ、ベンチに思い切り寄りかかった。先ほどまで騒がしかったが、今ではだんだんと人が少なくなり、心地よい空気となっている。

 

 

 

「お主、本当に変わってしまったのうぅ。昔のキラキラしていた若い頃が、懐かしいわい」

 

「急に現れるな、妖怪ぬらりひょん」

 

 

 

本郷の頭上から強烈な一撃が下された。

喚きながら頭を押さえ、ベンチから転げ落ちた。本郷に一発おみまいしたのは、80歳以上ぐらいのお爺さんであった。かつて『最強』と言われた本郷にダメージを与えるとは思わない、ひょろい体つき。

特徴と言えば、その後頭部の以上の長さ。まるで、かの妖怪『ぬらりひょん』にくりそつである。

本郷は涙目になりながら、文句を言う。

 

 

 

「ッツ…! ふつう、殴ることないだろ。俺が『最強』じゃなかったら、ふつうの人だったら脳が破壊されてたところだぞ!?」

 

「『最強』じゃと? そんな昔の栄光にすがるなど、バカバカしい。だからお主はプー太郎なのじゃよ」

 

「誰がプーだ! 清掃の仕事ちゃんとやってるだろが!」

 

「仕事時間なのに、なんでお主はここで日向ぼっこしておるんじゃ? ほれ、この老いぼれの爺に説明してくれんか」

 

 

 

意地悪く質問するぬらりひょん。片手を耳に当て、某元泣き議員の恰好をしている。

 

 

 

「くっ。今からやろうとしてたんだよ。ほら、休憩終わり! 爺のせいで、清掃遅れたらどう責任とってくれるんだよ」

 

「それはすまんかったのぅ。仕事の邪魔をしてしまったなら、それそうおうの迷惑料を払わんとな」

 

 

 

本郷は近くに置いてあるトングとゴミ袋を装備し、仕事アピールをする。そんな様子を見かねたぬらりひょんは、顔を申し訳なさそうにし、懐をもぞもぞ探っている。

どうやら、本郷にウソを信じたのかなにかくれるらしい。それに少しだけ期待している本郷は、若干嬉しそうにする。

 

 

 

「ほれ、どうじゃワシの孫娘」

 

「………え、いやどうかって…」

 

 

 

ぬらりひょんが懐から、お見合い写真のようなのが出てきた。開けばそこには、綺麗な袴を着ている京都美人が写っている。長い髪であり、おしとやかそうな顔、少しだけ化粧しており色気もある。

本郷は女性は好きだ。好きであるが、もちろん彼にもストライクゾーンあればボールゾーンもある。

 

 

 

「………で、これがどうしたんだよ」

 

「なに、せめてものじゃ。孫娘と結納する許可を与えようか「拒否します!」なぜじゃ!!! 雷光の如く返事されては、木乃香の面目が…」

 

「いやよ、ぬらりひょん。俺は学生を見るのは好きだ。それは認める……認めるよ」

 

「じゃあ、もーまんたいじゃ」

 

「テリア◯ンに謝れ。いいか? 学生は好きだ、けれど結婚となれば一般常識てきに『中学生』と結納とかダメだろうが!!!」

 

 

 

写真をぬらりひょんに押し付け、この場を去っていく。後ろからぬらりひょんの叫びが聞こえるが、本郷はそんなのお構いなしに突っ走る。

 

 

 

 

 

 

―――――――――――――――――

 

 

 

「はぁはぁ……。マジ、やばかった。あのぬらりひょん、妙に素直と思いきや奥の手出しやがって…」

 

 

 

本郷は途中から追いかけてきたぬらりひょんから、死ぬ気で逃げたおかげで体力が底を尽きてしまった。けれども、雲が良かったのかぬらりひょんの追跡を免れ、やっと一息つけるように。

無我夢中で走ったおかげで、ここがどこだか一瞬わからなかった本郷。当たりを見渡し、記憶にあるのと一致しだす。

すると―――

 

 

 

「おや、こんなところでなにやっているんだマサ」

 

 

 

一人の女性が、本郷に話しかけた。最後のピースは、彼女の声でこの場所を理解した本郷。後ろを振り向くと、巫女姿をしている褐色肌の女性がいた。

掃除中なのか、箒を持っている。これほど箒と似合わない女性、しかも巫女姿なのに。

 

 

 

「真名か…。というと、ここは……。嘘だろ、神社まで走ってきたのかよ」

 

「?? よくわからないが、まぁそこで待ってろ。今冷たいのもってくるから」

 

 

 

箒を下に置き、予告通りに本郷のために飲み物をもってくるために一旦この場を離れた。

彼女の名前は『龍宮 真名』。長身であり、大人顔負けの美貌を兼ね備えている。だが、それでも『中学生』であった。危ない雰囲気を漂わせている彼女だが、本郷のためにと行動する彼女は、どこか可愛げがある。

本郷は近くにある木により抱り、休む体制に入る。そんなところに、真名が一本のペットボトルを持ち現れた。

 

 

 

「ほら、飲んで。事情はよくわかないが、顔がぶっさいくだぞ」

 

「お前、俺を痛めるのか傷つけるのかどっちだよ」

 

 

 

悪態をつきながらも、本郷はペットボトルを受け取り喉を潤おす。

 

がぶがぶ飲む姿を見ている真名は、何故か嬉しそうに口元が緩んでいる。そこまでして俺を――と、変な勘違いしている本郷が、次の瞬間には体中が猛烈に熱くなり、それは下から上へと。

 

 

 

「か、からぁあああああああああああああああああアア”””!!」

 

「ハハハハッハハハハ!!!? わ、私が素直にマサの思い通りにするわけないだろ!? バカだな!」

 

「き、貴様ぁ!? やべぇマジ喉やべぇ!? というか、何入れやがったこのバカ!?」

 

「ハバネロを5………「5個入れてんじゃねぇよ!?」いや、50入れた」

 

 

 

追い打ちをかけるように、そう告げる真名。本郷はその言葉を聞いた途端、口から炎を吹き出す始末になった。真名は笑いが止まらず、本郷は辛いのが止まらずとなんともまぁ、皮肉なことが荒んに起こっている。

 

 

 

――――――――――――――――

 

 

 

 

あれからは、もう一本冷たいボカリを持っていた真名からそれをもらい、今度こそダメージ負っている喉に与える。潤った喉がだんだんと辛くなくなり、今では平常に。

 

 

 

「いいか、真名! 今度こんなデンジャラスサービスしたら、また前みたいに『おしりぺんぺん』だからな!」

 

 

 

本郷 雅功。今年で20代半ば。なのに、まだこんなことを言う。

 

 

 

「もしそうしたら、責任取ってもらおうか」

 

「せ、責任……? 責任もなにも、お前が悪いだろ」

 

 

 

焦りだす本郷。真名は、そんな本郷を見逃さず、獲物を仕留めるように言葉を放つ。

 

 

 

「あぁ、仮にも私は『中学生』だ。『おしりぺんぺん』とかされたら、PTA問題になるだろうな」

 

「PTA怖くてやってられっかよ! というか、お前の両親とは良好に築いてんだ、許してくれるはず!」

 

「許してくれるね。けれど……」

 

 

 

ずいっと、本郷に顔を近づける。あと10センチで唇が触れそうな距離である。本郷は『中学生』はそういう目で見てるから、この状況がエッチなことは自覚しており、頬を染めている。

真名の続きの言葉が気になり、喉を鳴らす。

 

 

 

「世間が許さないと、私は思うが」

 

「せ、せけん………と、いうと」

 

「そう、この日本中さ。ニュースになるだろうね、間違いなく。『中学生猥褻人物』とか、『痴態晒し』とか」

 

「ち、ちがう…!? 俺は、そんなこと…!」

 

「マサが弁解しても、世間はどう受け取るのかな?」

 

 

 

本郷は頭の中で想像する。自分がこれから受けるであろう罰を。何回も何千回も、このたった5秒の間で繰り返す。どう考えても、本郷が生きるルートが思いつかないでいる。

真名は妖艶な笑みで、本郷を見つめる。

 

そろそろか―――

真名が小さく呟きながら、勝気な表情に。焦っている本郷の背中に、優しく手を置く。

ビクッとする本郷だが、少しずつ落ち着くを取り戻す。『最強』と呼ばれて畏怖されていた彼である、もう見る影もない。たかが、脅しにもなっていない虚言に、変に信じ込む悪い癖は、まだ直ってないようだ。

 

 

 

「だが、一つだけ救いはあるさ。なに、簡単なこと」

 

「な、なんだと? 真名、それは本当だろうな、俺が捕まらないルートがあるんだな!?」

 

 

 

結論を言えば『おしりぺんぺん』をしなければ、いいと思う。

 

真名の唇がゆっくり動き、熱心にそれを見つめる本郷。

 

 

 

「私と結婚すれば、いいじゃないか」

 

「あぁ、そうか笑 責任取れば、なにも誰も言わないよな笑」

 

「そんな難しくないんだ。じゃあ、ちょっとそこの木陰で、か、体を……合わせないか…!」

 

「おう! すまんな、俺なんかのために、真名、これから俺が責任ちゃんともつからな笑」

 

「責任は抜きにして…はぁ……はやく…!」

 

 

 

本郷は間抜けそうに笑っているのに、真名は涎をたらし瞳孔が開いている。息が荒くなっているのが、見ただけでわかる。本郷の背中を力強く押し、無理やりにでも木陰に入ろうとしている。

笑いながらも、足先を進める彼らはいつしか木陰に入った。そこは一見、木陰というより茂みであるが、本郷は全く気にもしなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なわけねぇだろうが!!!!!!!」

 

 

 

流石にバカではない本郷は、真名の両手を振り払い先ほどのぬらりひょんのやり取り同様に、全速力でこの場を去った。よく見たら、その木陰に布団やらティッシュがすでに準備されていた。

『チッ、バカだと思っていたが、甘くみていた』と内心怒りで腹が煮えくりそうであった。布団の下に密かに用意していた手錠と、何処で仕入れたのかわからない『銃』を二丁取り出し、本郷の後を追う。

少しでも背中を捉えれば、この銃でバンバンと撃っている。本郷にとってはぬらりひょんよりレベルが高い鬼ごっこが、始まりだした。

 

 

 

「止まれ!! 止まらなければ撃つぞ!! 止まれば、なお撃つ!」

 

「どっちも一緒なんですが!? やめて、俺のライフはゼロよ!」

 

「大丈夫だマサ!! お前の息子のライフは、まだゼロではない!? 私のザラキとザオリクで、なんとかする!」

 

「いやぁああああ!? 生々しい呪文にしか聞こえない!」

 

 

 

先ほどから銃を発砲しているというのに、近くに通りかかる人々はあまり驚かないでいる。むしろ、どこか和やかにその光景を見ている。

 

ここは麻帆良学園都市。

 

変人の集まりと言われる、日本最大の学園都市。そこに、本郷は就職している。

もちろん………清掃員として。

 

物語は、いつでも始まる。

けれど、この物語は本郷 雅功の『復活』の話。『最強』の称号を持っている彼は、いつしか『最強』の面影がなくなった。

それをまた、取り戻す物語が―――始まる。

 

 

 

 

 

 

来月から

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