『最強』であった格闘家はいつしか、『最強』のプー太郎を目指し…
『最強』であった格闘家はいつしか、『最強』の清掃員を目指していた。
「腹減った~~ぁ。くそぅ、三食付きでも腹が減っちまう。ケチくせぇよな、この学園。流石は妖怪の縄張りだ、人間様には風当り強いわ」
ぐぅたらのごく潰し本郷 雅功。今日もお気に入りのベンチで寝そべりながら、弱い事を申している。誰に向けているわけでもない、自由に発しているだけ。
本郷は前回とは違い、スーツではなく私服姿。
背中に『自宅警備』と書かれている黒いつなぎを着込んでおり、上半身の部分ははだけながら腰に巻き付けている。もちろん、白いTシャツを着ているから、安心してくれ。
ここまで自堕落に着こなせるのは、彼しかいないであろう。本郷は大きな欠伸をしながら、また青い空を眺める。
「おい、学園長の悪口は私が許さない」
急に現れた、謎の美少女。片方に髪を纏めており、いわゆるサイドポニーテイルというやつだ。
可愛いというより、美人系。美人系というより、怖い系である。
いわゆる和風美人に………。と、本郷はこう解釈していたが、どうも彼女の腰についている者が気になるらしい。
その物を彼女は手にかけ、スッと本郷に向けた。向けられたのは、この日本の業物に入る『夕凪』という、この少女の丈に合っていないような刀。
「んだよ、いい子ちゃんの刹那か。おどかすなよ、またこないだみたいに爺だったら、俺泣くところですよ」
「お前の亡き姿は一度拝みたいが」
「漢字違うんですが」
桜咲 刹那。中学生
効果音のキリッとしたのがよく似あう女の子。刀で分かる通り、彼女の得意分野は剣道である。だから、部活動も剣道部に所属。その腕はたち、麻帆良四天王というのにも数えられている。
学園長に対して恩を感じており、その学園長に向かって反抗的な態度をとった本郷に厳しいことを突き付ける。
「いやよ、刹那。俺は人間代表として意見を述べただけだ。だから、早くこの刀を納めなさい、さもないと――」
「さもないと? さもないととは、なんだ。お前のその軽い口からどんなデマがでるのか、楽しみだ」
剣先が本郷の喉元まで移動する。加減を知っている刹那の技術があってこそ、喉に当てても血はでていない。本郷はやれやれと一息つき、先の方を指で摘み、剣を下ろそうとする。
「あのなぁ、刹那? 大の人とかいて、大人に向かってその態度はないだろ?」
「屑男と書いてプー太郎と読むお前のことか?」
「誰がプー太郎だ!!!! いいか、プー太郎は働いていない自堕落生活送っているやつのことさすんだよ!! 俺はどっちかっていうと、プーじゃなくて、パーだ!! 太郎じゃなくて、マン! 正義の味方をしてい―――」
「それ以上言ったら、悪・即・斬だ」
某・牙○の構えをする刹那。
このゼロ距離だとよけきれないと悟った本郷は、すぐさま頭を下げ謝罪を述べる。本郷の良いところは、コンマ秒で物事を把握し、それを想像することである。
「す、すまんって! わかった、今度から爺の悪口言わないし、働くから命だけは……!?」
「むっ、最後の働くというのだけ信用できないな……」
「テメェどんだけ俺のことをプー太郎認定しているんだよ!? 誰だ、俺のことをプー太郎と広めた奴は!?」
実は『プー太郎』というあだ名が広まったのは、先月からである。最初は本郷はそのあだ名の意味もわからず、バカな対応でやっていた。最初は『プー○ん』の別バージョンかと思い、マスコット気分で喜んでいた本郷であったが、いつしかその意味を調べると、今の本郷かのような意味が罹れている。
意味を知った本郷はすぐさま犯人探しに精をつぎ込んだが、今でも見つからず。むしろ、規制させているつもりがさらに学園全体に広まっている危機。
「朝倉だが?」
「あいつだったんかい!!!!?!」
あっけなく、真犯人の名前が明かされた。
本郷の頭の中には、すでに朝倉と言われただけで誰だかわかっていた。いや、もしかしたら最初っから気づいていたのかも知れない。
あいつなら、やりかねんと、本郷は何度もそう思い唇を噛みしめる。まさか、まさかと思いきやまさかであったと、本郷は悔み続ける。
「あのバスト88がぁああ!!」
高らかにそう叫ぶ本郷。その言葉が刹那に届き、引き気味で本郷を見ている。まるで、変態という存在が奇跡的に表れて、どう対処したらいいのかという思い悩む顔つき。
怒りで燃える本郷は、すでにスーパー○イヤ人のように黄金色のオーラを纏っている。
『これ以上刺激したら、なにかに変身するのか…』と、少しだけそのような疑問が沸いた刹那。
「刹那! あのバカ倉のやつ、どこにいるかわかるか!! わかんなかったら、お前の今履いているパンツ脱がすぞごらぁ!!」
「○○し、○○○てやって、最後に○○○○、○○されていのか?」
「すんませんでした」
心もない本郷の問いに、流石の刹那も我慢の限界を超え脅しをかける。放送禁止用語を、息を吐くようにすらすら告げている。だんだんと本郷の顔も怒りから、恐怖へと顔色を変える。
最終的には何も言われていないのに、地べたに座り土下座の体制をとっている。大の人と、書いて大人の本郷がもうプライドする捨てたのだろう。刹那は呆れを示すかのように、不快ため息をしだす。
このように、テンションに身を任せるとこうなるのは、もうすでに見えていた未来であった。
「まさかと思うが、中学生に乱暴な行為するつもりだったのか?」
「いえ、滅相もありません刹那様!」
ついに、様付けになっていた。
「私、少しだけ感情のコントロールが苦手なため、このような不祥事になって大変申し訳ありませんでした!! だから殺さないでください!」
刹那は一言も、殺すという発言も表現もしていないでいる。
本郷の悪いところは、もしもという想像するのだが、大抵はネガティブな想像をしてしまうところである。
「マサ、何度も言うが生徒に危害を加えるのはご法度のはずなんじゃないのか? それを破ったら、この学園に居られなくなっちゃうことは、ちゃんと頭の中でわかっているんだろうな?」
「そ、それが学園が俺を養ってくれる『
「養うじゃなくて、
どこまでもプー太郎な本郷。しかし、本郷も事の重大さは理解している。本気で朝倉という中学生に手を出すとは、思っていない。そのことは刹那も分かっている、けれどももしもと思い釘をさしている。
「長年一緒にいたんだ、マサの考えもわかっている。けど、やっぱしそれでも自分の首を絞めるところは、やめてほしい。お嬢様も悲しむ……もちろん、私もだ」
付けだしたかのように、そう本郷に優しく言う。その言葉が後から恥ずかしく思い、刹那の頬が少しだけ赤く染まっている。
「あぁ、わかっている。俺も本当に大人げない、昔はブイブイ言わしてたのに情けないぜ」
「マサ……」
地べたに座り込む本郷に、目線を合わせるようしゃがみ込む刹那。その瞳は本郷の何もかも知っているからこそ、本郷の気持ちがわかる、そんな慈愛の瞳で見ている。刹那と本郷の関係は、深く長く繋がっている。逆を言えば、本郷も刹那の心配している気持ちが心の底から理解している。中学生に心配されている自分が、なさけないと感情が渦巻く。
しかし、そんな感情はすぐさま収まった。本郷の視線は刹那の顔から、だんだんとゆっくり下に向けられる。勿論、そんな奇妙な行動している本郷に合わせるように、刹那も視線を下げる。
ゆっくり下げ続けると、目標のところまでたどり着いたのか本郷は目を見開かせる。
「お、お前………黒いパンティーだったの「斬岩剣!!!!!!」」
神鳴流という、刹那が幼き頃から習っている流派の派生技『斬岩剣』。岩をも真っ二つ斬る技法であり、それを本郷という変態に向けてはなった。悔いがないという顔つきで、本郷は技をモロ食らい笑みを浮かびながら目を閉じた。
刹那の顔は、今どきの女の子らしい感情を露わにしている顔。目には涙を浮かべ、顔じゅうが熱気で包まれているかのように真っ赤であった。
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「くそぅ、あっちからパンティー見せてきたくせに怒ることないだろ? なんだった、今度俺のパンティーでも見せてやろうか」
視界からの攻撃は、ぜひやめてほしい。
本郷は目を覚ませば、すでに夕焼け小焼けであった。空は赤く、だんだんと黒がかかっている。どうやら、かなり気絶していたらしいとすぐわかった。今は帰宅するために、とぼとぼと歩いている。
整備されている街道を歩いているが、あまり人が集まっていない。どうやら、ここの付近にいる生徒たちも家に帰ったらしい。街灯が次々と明かりを灯し、それを目で追うとある人物に目が留まった。
「あれ、マサさんじゃ~ん!」
「でたな事の元凶!!!」
今日一日で、何もせずに本郷に多大のダメージを与えた人物。スタイルがよく、目立つのは彼女が手に持っている小さなカメラ。写真好きでもあり、噂好きそうなそんな感じする。断言できないが、彼女はどこかしか読めない人である。
朝倉 和美。真名と刹那と同じ、同級生であり本郷の天敵――――
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