総統が鎮守府に着任しました!   作:ジョニー一等陸佐

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38話 変わらぬナチス~我らこそ最後の大隊~

 7月半ば、いよいよもって暑くなり夏休みに突入した学校も出始めたころ。

 ゲルマニア鎮守府ではそんなことは構わず、日夜国土防衛のために艦娘達や親衛隊員が奮闘していた。

 「ふぅ~艦隊が返ってきたぜ~あー暑かった」

 重巡洋艦摩耶は少しボロボロになり汗でぬれた艤装や服、肌をタオルで拭きながら工廠の中を歩いていた。

 「よく帰ってきたな。ほかの子達はどうした?」

 汗だくの摩耶を高速修復材の入ったバケツを持ったモーンケが出迎えた。

 「お、サンキュー・・・駆逐艦と軽巡はもう入渠しに行ったぜ。アタシは早く総統かあのロリコン大臣のところに報告に行かないと・・・」

 ロリコン大臣とは無論、ゲッベルスのことである。しばしば駆逐艦娘を盗撮したりそれ関係の同人やコレクションを集めて駆逐艦娘の魅力を毎日のように啓蒙する彼はここ最近では階級を問わず、だれもがゲッベルスのことを陰でロリコン大臣、ロリコン宣伝相と呼ぶようになった。無論、責任は彼にある。青葉の情報によるとゲッベルスは秋葉原でオタクを集め、『国家社会主義ドイツロリコン党』なる組織を結成したなどという噂も流れているらしい。

 モーンケは頷きながら言った。

 「まったく、宣伝相にはもっと自覚を持ってもらいたいものだ。自分が大臣だという自覚を・・・」

 「おっさんは唯一真面目だからほんと助かるよ」

 「それは褒めているのか?」

 「もちろん!」

 二人がそんなことを話しがら工廠を出ようとした時、武装ss隊員と白衣姿の研究員らしき男がやってきて工廠の一番隅にある扉の向こうに入っていくのを見た。

 「・・・ん?」

 「どうした摩耶?」

 「いや・・・あんなところに扉あったかな、って・・・」

 隊員と研究員が入っていった扉は鎮守府が完成した時には存在しておらずここ最近になって造られたものであった。扉は他のと違って分厚い鉄鋼で出来ており常時、重武装した親衛隊員がここを見張っていた。

 「・・・ああ。地下室の入り口だよ。もともとこのゲルマニア鎮守府が完成した時には地上施設のほかに地下2階建ての地下室もあったんだが、かなり前総統閣下の命令で拡張工事がされたのだ。仮に敵の攻撃を食らっても鎮守府としての機能を保ち地下壕として機能するようにね。あの扉はその時できたものだろう」

 「ああ、そういやこの前大規模な工事やってたな・・・あんときゃ五月蠅かった」 

 「だがそのおかげでより堅固な施設になったじゃないか」

 「拡張した施設か・・・どんなのがあるか知りたいな。入れんのか?」

 摩耶がそう言うと、突然、モーンケは表情を硬くした。

 「摩耶、地下施設には関係者以外総統の許可なくして入ってはならないという命令を忘れたのか?」

 「え?いや・・・」

 突然雰囲気の変わったモーンケに戸惑う摩耶。

 モーンケは頷いた。

 「・・・そうか。ならいい」

 多くを語ることなくモーンケと摩耶は工廠を後にした。

 

 

 その地下施設の内部。

 そこは一言でいえば血まみれであった。

 無数の深海棲艦だったものがバラバラに切り刻まれて手術台やホルマリン容器の中に置かれていた。

 その手術台の一つの横に立ちクラシックを口ずさみながら顕微鏡を覗く男がいた。

 「・・・この程度のモルモットではだめだ。もっと数が必要だな・・・」

 男の名はヨーゼフ・メンゲレ。親衛隊大尉として悪名高きアウシュビッツ収容所で残虐な人体実験を繰り広げかの有名な人工の結合双生児を作ろうとした『死の天使』。

 ゲルマニア鎮守府では医師としてヒトラーや艦娘達の体調管理を行い幼い駆逐艦娘達からは『おじさん』と親しまれていた。が、これはあくまで一つの顔に過ぎない。彼のもう一つの顔は深海棲艦の研究に勤しむナチスお抱えのマッドサイエンティストであった。

 砂浜や海面で漂流していた深海棲艦や戦闘の末気絶した深海棲艦、ミレニアム大隊が秘密裏に捕獲した深海棲艦の個体を使いメンゲレをはじめとするナチスお抱えの科学者たちは生体解剖や薬物実験、吸血鬼化などのとても子供には、それどころか大人にさえ見せられない非人道的な残虐な人体実験を行っていた。

 そのメンゲレのもとに、これまた明らかにまともではない血まみれの白衣に無数のレンズがついた眼鏡に長髪の男と白い服をまとった眼鏡の太った男、無表情な軍用コート姿の男がやってきた。

 メンゲレは三人に気づき太った男にドイツ式敬礼をした。

 「Heil Hitler!少佐殿」

 少佐と呼ばれた男もニヤリと笑って敬礼を返す。

 「Heil Hitler.メンゲレ博士、研究のほうは進んでいるかね?」

 「・・・そうですな、今細胞の解析を行っているのですがまだ50%ほどしか完了していません。何しろ種類が多いうえに数が足りないものでして。もうしばらく時間と個体が必要かと」

 「ふむ・・・もう少し早くならんかね?総統は、ベルリンの伍長殿は朗報を首を長くしてお待ちになっているぞ」

 「申し訳ありません・・・ですが今現在の調子でいけばどんなに遅くとも今年中には進むかと。ドク、お前は、吸血鬼の研究のほうはどうなっているんだ?」

 ドク、と呼ばれた血まみれの白衣姿の男は肩をすくめながら言った。

 「こっちもお世辞には順調とは言えんな。運よく手に入れた空母ヲ級の体を使って実験体第一号を完成させたはいいが数時間したら体組織が暴走、崩壊を起こして使い物にならなくなってしまった。出来損ないの吸血鬼、戦闘にすら向かないグールだ。少佐殿と総統閣下に示しがつかん」

 少佐は一か月前の、総統執務室でのやり取りを思い出した。

 

 

 ゲルマニア鎮守府、総統執務室。

 革張りの高級な椅子に座るドイツ第三帝国総統アドルフ・ヒトラーと、総統秘書ボルマン、宣伝相ゲッベルスらと少佐は対峙していた。

 「モンティナ・マックス少佐、ようこそ我がゲルマニア鎮守府へ」

 「光栄です、まさかこうした形で再開できるとは・・・」

 いつもの気味の悪いニヤニヤとした笑みを浮かべながら少佐は言った。

 その顔に突き刺さるブルクドルフやクレープス達ドイツ国防軍関係者の目線は冷たい。もとより彼は親衛隊内や国防軍内では彼をあまりよく思わないものが多かった。彼のやっていることを知れば当然のことだろう。彼は化け物を率い、化け物と戦うという禁忌を犯した人物であり戦争に取りつかれた狂気の男なのだから。

 だがそんなことは少佐もヒトラーも気にしなかった。

 ヒトラーは少佐に言った。

 「マックス少佐、先の『第二次ゼーレーヴェ(あしか)作戦』におけるロンドン壊滅という君たちの活躍は目覚ましいものであった。まずその労苦をねぎらい、戦果と数十年にも亘る忠誠心を称賛したい」

 「なに、マインフューラーの命令でありますし何よりあの戦争自体を我らが望んでいたのです。当然のことであります」

 そう、この男はドイツが敗北したのちも1000人の一個大隊と共に南米のジャブローに逃れ、吸血鬼の軍団を作り上げロンドンを襲撃、無差別爆撃、虐殺、ヴァティカンやイギリス国教騎士団との三つ巴の死闘の末ロンドンを死の都に変貌させたのだった。

 「これで、愚かなトミーや大酒飲みのチャーチルに一泡吹かせることができたな」

 ゲッベルスが頷いた。

 「まったく。私も記録映像を見ましたがいい気味でした」

 「死んだライミー(英国人)だけが良いライミーだ」

 ヒトラーは少佐に向き直った。

 「さて・・・本来なら君の功績を鑑みて昇進と休暇を与えたいのだが・・・その前にもう一つやってもらいたいことがある」

 「?」

 「少佐、総統命令だ。モンティナ・マックス親衛隊少佐に『総統特秘命令666号』の継続を命じる」

 「!!」

 ヒトラーはにやりと笑った。

 「安心したまえ、艦娘にも、誰にもばれないように手配はしてある。施設も心配はいらん。地下室の拡張工事で秘密の研究室や訓練室を設置した。深海棲艦や吸血鬼の個体も大破し気絶したものや漂流したもの、捕虜にしたもの、石仮面を使えばよい。すでにシュトロハイム大佐をメキシコに派遣した。実験材料に困ることはまずないだろう」

 「では・・・」

 ヒトラーはニヤリと笑った。

 「少佐。思い切って『戦争』をやってこい。三千世界のカラスを殺す鉄風雷火の如き闘争を」

 

 

 執務室での一件を回想して少佐は目を開けた。

 ドクとメンゲレの非人道的な内容のやり取りを見ながら少佐は言った。

 「いやそんなことはないぞ、ドク、メンゲレ大尉。素晴らしいじゃないか」

 「と言いますと?」

 「細胞の解析もこのように進んでいるし吸血鬼と深海棲艦や艦娘の細胞との融合化ある程度可能なことが分かっただけでも素晴らしいことだ。普通の人間同士の戦闘に投入すればあっという間に敵の戦線は崩壊し数時間で敵は亡者の群れと化すだろうな」

 メンゲレは頷いた。

 「ごもっともで。あとはどう安定化させるなどの重要な課題が残っていますが」

 「なに、まだ時間は十分にある。施設も材料も十分にある。今はまだ準備をする時間だ。ぬかりなく戦争をするため準備。戦争の歓喜を無限に味わうために、次の戦争のために次の次の戦争のために」

 少佐はニヤリと、狂気を感じさせる笑みを浮かべた。まるで楽しい夢を見ているかのような子供のような顔で。

 「楽しそうですな、少佐殿」

 「それはそうさ、ドク。闘争だよ、闘争。考えてもみたまえドク、もう見ることのできないと思っていた夢がもう一度、もしかすると永遠に見られるのかもしれないのだ。私たちの大好物の戦争が。これが運命なのか偶然なのかはどうでもいい、運命ならぶち壊そう、偶然なら思いっきり踊り狂おうじゃないか。泣こうが喚こうがもう我々は踏み出してしまったのだ、狂喜が常識であり正常である世界に」

 少佐は笑いながら言った。その目線の先にはボロボロになった国家社会主義ドイツ労働者党の象徴であり呪われた紋章である血染めの鉤十字(ハーケンクロイツ)の旗があった。

 「化物を兵装し、化物を構築し、化物を教導し、化物を編成し、化物を兵站し、化物を運用し、化物を指揮する。我らこそ遂に化物すら指揮する。我らこそ最後の大隊、ラストバタリオン」

 少佐は血まみれの研究員達をぐるっと見渡して言った。

 「さあ、諸君研究を続けよう」

 地下室にはたっぷりの血と絶望と狂気のにおいが漂い、捕らえられた深海棲艦や捕虜たちのうめき声、断末魔が響いていた。

 ここには、希望などない。

 

 

 

 

 




フェーゲライン「今日はデイリーはなしか・・・」
青葉「ほっ、助かった・・・」
曙「ほんと、あのクソ総統にしごかれるなんてゴメンよ!!」
加賀「何を言ってるの、後書きも例外ではないわ。任務は任務、総統の命令は絶対よ」
フェーゲ&青葉&ぼの「え?」
ヒトラー「KO☆RO☆SU」
フェーゲライン「はい死んだ!」ズダダダダダピロリーン♪
青葉「なんで青葉もおおおおおお!?」ズダダダダダピロリーン♪
曙「ちょ、何すんのよこのクソ総統ってぎゃあああああ!?」ズダダダダダピロリーン♪
 
今日も鎮守府は平和です。
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