ゲルマニア鎮守府、総統執務室。
鎮守府の頭脳ともいえるこの場所で宣伝大臣ゲッベルスが目の前の将軍たちに対して持論を展開していた。
「さあ、今回も始めるぞゲッベルス主催艦娘討論会!!みんな艦娘についてどんどん意見してくれ!!と言っても、結論は決まっているがな!!それは即ち、駆逐艦こそ至高ということだ!!夜戦での強さ、汎用性はもちろん特筆すべきはその可愛らしさだ!幼女特有のあどけなさが放つエロティックな雰囲気はまさに一瞬で散る桜の美しさのようであり我々に対して、守ってあげたいという心を否応もなしに思い起こさせる!!この美しさはまさに他の艦娘には出せないものであり、この駆逐艦娘特有のエロさ美しさこそ、人類の美の歴史の頂点に立つべきものである!!ドイツ艦の拉致なんざやめてすぐに駆逐艦の増産に努めるべし!!駆逐艦こそ我らの女神なのだ!!異論は認めぬ!!駆逐艦万歳!!ロリコン万歳!!ハイル・ツェアシュテラー!!(ドイツ語で駆逐艦の意味)」
ゲッベルスのロリコン賛美演説に当然のことながら、将軍たちから非難が巻き起こる。
「ロリコンもいい加減にしろゲッベ、貴様それでも大臣か!!」
「怨怨!!戦艦を崇拝せよ!!ビス子は俺は嫁だ!!」
「巡洋艦も忘れちゃいないか?」
「空母のダイナマイトボディを見てみろ、戦艦なんか目じゃない!!」
「一度でいいから駆逐艦とヤりてぇ・・・」
「もしもしゲシュタポですか?」
「ドイツの潜水艦は世界一ィィィイイイ!!」
「俺は那珂ちゃんのファンはやめないぞー!!」
「いや、ゲッベルスの言うことにも一理ある気が・・・」
「ふざけんじゃないわよ、酸素魚雷くらわすわよ!!」
「きっもー」
「駆逐艦?ウザい」
将軍たちの間に広がる猥談にヒトラーが喝を入れる。
「お前ら自重しろよ!!お前らそれでも軍人か!?」
言ってることはもっともだがお前が言うなである。
フェーゲラインが笑いながら言った。
「一番自重しない変態に言われてもww」
青葉と曙も続く。
「まあ、この前警察署に連れて行かれるところ見ちゃいましたからね・・・」
「警察に連れて行かれるような変態が何言ってんのよ、このクソ総統!!」
だがこんなこと言って無事で済むはずがない。
「KO☆RO☆SU」
ヒトラーがそう言った瞬間、武装SS隊員がどこからともなくあらわれMP40をフェーゲライン達に向け連射した。
「はい死んだ!!」
「なんで青葉もおおおおおおおお!?」
「ちょ、デイリーは二人の任務で、ってぎゃあああああああああ!?」
響く銃声、三人が床に倒れ伏すとともにピロリーン♪という効果音が響いた。
ヒトラーは言った。
「お前ら、さっきから戦艦がいいとか駆逐艦ムラムラするとか言ってるけどな、艦の種類で語るべきものではない!!艦娘の良し悪し、魅力、強さを決めるのは、なんといっても胸部装甲だ!!おっぱいこそ正義なんだ!!私はこの際宣言するぞ、私は大好きです、目に刺さるような!!おっぱいぷるーp」
ヒトラーが完全に言い切る前に、執務室に砲弾が飛び込み、炸裂、執務室の窓ガラスが割れ、部屋に轟音と煙が充満した。
見れば執務室の外で龍田が恐ろしい笑みを浮かべながら主砲を構えていた。
「総統~~?皆さん、いい加減真面目にしないと実弾を撃ちますよ~~?バラバラになりたいんですか~~?真面目にやってくださいね~~?」
「「「「ハイ!!」」」」
艦娘からの恐るべき忠告に従うほかなかったヒトラー達であった。
数分後。
クレープスが咳払いをしながら資料を広げた。
「さて・・・それでは気を取り直して真面目にいきましょう。約1週間前、総統閣下はドイツ艦娘の拉致を命じましたね?命令を受けて、我々はドイツ艦娘がいると思われる鎮守府を特定、部隊を編成し鎮守府を襲撃、艦娘および人員の拉致に成功しました」
ヒトラーは頷いた。
「ああ、亜宇酒美津鎮守府だろ?それにしても実に懐かしい響きだ、絶対アウシュビッツから命名したなこれは」
「拉致した艦娘は戦艦ビスマルクと空母グラーフ・ツェッペリンの二隻。襲撃の際に使用した睡眠ガスがかなり効いたのか、現在も地下室で眠っている状態です」
「そうか・・・とにかく後で私が見舞いに行かなければな。鎮守府のためとはいえ、お嬢さん方に手荒な真似を使ってしまった」
クレープスが言いにくそうに続ける。
「それと一緒に拉致した人員のことですが・・・」
ヒトラーの目がわずかに光った。
「うん?ああ、ヒムラー達のことか」
襲撃の際、拉致部隊は艦娘のみならず、ヒトラーにとっては因縁の裏切り者であるヒムラー、ゲーリング、ヘスもともに連れて帰ったのだ。
ヒトラー達の悩みは彼らに対する処置であった。
ゲッベルスがすかさず発言する。
「どうすべきかは決まっている、即刻銃殺刑だ。裏切り者には死を与えねば」
「いや待てゲッベルス、確かにすぐに処刑するのもありだが・・・その前に彼らに聞かねばならぬこともある。どうやってドイツ艦を手に入れたのか、どうやってこの世界に来たのか・・・それに、ヒムラーはともかくゲーリングやヘスはまだ可愛いほうだ。すぐに処罰する必要はあるまい。とりあえず地下室に拘束したままにしろ」
ヒトラーがヒムラー達に対する処遇を話していると、親衛隊少将モーンケが発言した。
「総統閣下、一つ質問があるのですが・・・」
「なんだね、モーンケ?」
「鎮守府を何の理由もなく襲撃したのです、上層部も不振がり調査するでしょう。下手をすればこの鎮守府全体が取り潰される結果を招きません。そこの根回しはどうなっているのでしょう?それに、拉致した艦娘は我々の味方になってくれるでしょうか?拉致したからそう簡単に心を開きそうにありませんが・・・」
もっともな疑問にヒトラーは答えた。
「ああ、心配する必要はないモーンケ。襲撃に際して、我々の関与の証拠は一切残していないし、去り際に鎮守府を適度に破壊しておいた。爆撃や砲撃に見せかけてな。おかげで今回の襲撃は深海棲艦の特殊部隊によるものだと上層部は思い込んでいる」
ヒトラーは腕を組んだ。
「そして二人の艦娘の説得だが・・・これは私がやろう。最高司令官である私の責任だ」
「うまくいきますかな」
ボルマンが言った。
「うまく言いくるめるさ。私は何事も、『説得』で成し遂げてきたからな」
混濁した意識に視界が徐々に晴れていく。そして雲は散りやがて意識が完全に覚醒した。
空母グラーフ・ツェッペリンはゲルマニア鎮守府の地下室の一室でゆっくりと目覚めた。目の前には灰色の天井が広がる。
「・・・ここは」
「目覚めたかね?」
グラーフが記憶を辿ろうとした時、傍らで男の声がした。
とっさに声のしたほうに目を向けるとそこにはグラーフにとって見慣れた男がいた。
「あなたは・・・」
七三分けの黒い髪にちょび髭。見るものに何とも言えない感情を与える澄んだ目。
グラーフ達にとっては最高司令官でありもっとも因縁のある男、ドイツ第三帝国総統アドルフ・ヒトラーの姿があった。
グラーフの記憶が急速に蘇る。
「そうだ、私は突然何者かに襲われて・・・」
グラーフはヒトラーを見た。
「そうだ、他の者たちはどうなったのです?ビスマルクは?長官は?そもそもここは一体――」
「グラーフ・ツェッペリン」
ヒトラーの声がグラーフの疑問を遮った。
「君の質問に答えてもいいがまずその前に言うべきことがあるのではないかね?」
ヒトラーはゆっくりとした口調でグラーフを見つめた。
ヒトラーに見詰められグラーフは黙った。
その瞳は異様なまでに澄んでおり、比喩表現を用いるならばまるで魔術師や催眠術師の目のようであった。グラーフは何も言えない。何とも言えない感情に襲われる。まるで一度とらえられたら二度と逃れられない罠にかかったように、恐るべき暗示力をヒトラーは放っていた。
「・・・Heil Hitler.」
「よろしい」
ヒトラーは頷いた。
「グラーフ、他の人たちはみな無事だここにいる。なぜなら私が連れて来るよう命じたからだ」
「え?」
「私が君たちをここに連れてきたのだ。身もふたもない言い方をしたら拉致してきたのだ」
「それは一体・・・」
ヒトラーはグラーフの目を見据えて言った。
「グラーフ・ツェッペリン嬢。まさかあの言葉を言った以上ドイツに対する、総統に対する忠誠心が消えたわけではあるまい」
そしてヒトラーは言った。
「私のもとで戦わないかね?私のために、君のために」