悠久雨模様 〜 What a lovely day 作:くれなゐ
「熱いわ熱いわ! 熱くて死ぬわ!」
「どこの中ボスよ……」
蒸し暑い夏。
家にいれば気温の暑さに悩まされる事はないだろう。それでも大勢の人が暑さに耐えながら外を出歩いている。
「ふふ……メリー! 私にはこれがあるのよ!」
そう言って蓮子はショルダーバッグから扇子を取り出し、自分を扇ぎ始めた。
「暑いのは分かってたから持ってきてたの。これだと折り畳めて邪魔にならない。どうしてもって言うなら貸してあげない事もないわよ?」
「確かに涼しそうね……でも蓮子、私はこれを持ってきたから大丈夫よ!」
メリーが取り出したのは携帯扇風機だった。
携帯扇風機の起動ボタンを押し、涼しそうにして蓮子へ見せつける。
「腕が疲れる事はないし、太陽光発電でも動いてるから電池切れの心配もない。どう? いいでしょ?」
「なん…だと……」
「まぁ風量はそこまで多くないから気晴らし程度にしかならないのだけど……」
「そうだメリー、いいことを思いついたわ! 夏の暑さを忘れる方法と言えば」
「あっ、そうか! 海ね!」
「……肝試しよ肝試し」
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「――ふぅ、なんとか間に合ったわ」
「5分32秒遅刻。どこに間に合った要素があるのよ?」
二人は鳥居の前で待ち合わせの約束をしていた。
いつものように遅れてきた蓮子にメリーは呆れつつ問いかける。
「はぁ……待たせた償いは今度してもらうとして、この後どうするの?」
「神社へ参拝しに行く」
「参拝って、こんな夜中に?」
「肝試しなのだけど…サークル活動という事で通すわ」
ここ貴船神社は手前から本宮、中宮、奥宮と3社あり。本宮、奥宮、中宮の順で参拝すると願いが叶うと言われている。
「ここでは今も丑の刻参りが行われているらしいのよ」
「というと今私達がしている事って結構危なくない?」
「まぁ多分大丈夫、もしもの時ようにこの防犯ブザーを持ってきてあるから」
「うん、あまり大丈夫ではない事が分かったわ」
元々丑の刻参りとは貴船神社の伝承で 丑の年の丑の月の丑の日の丑の刻に貴船明神が貴船山に降臨したから丑の刻に参拝すると願い事が叶う というものだった。
それが転じて 丑の刻に憎い相手を思って藁人形に釘を打つと呪える というものになった。
願いが叶うのが元々。つまり良いことに願うか、悪いことに願うかの違いなだけなのだ。
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「玉依姫命が黄色の船に乗って大阪湾から淀川、そして鴨川を遡り、ここに高龗神を祀ったのが始まりなんだって」
「それって、動力なんて持ってない船で大阪湾から貴船まで川上に向かって80キロメートル以上もの距離を遡ったってことでしょ?」
「どう、いかにも神話って感じがすると思わない?」
二人が話をしながら見ているのは船形石だった。
「因みにこの岩、豊玉姫の御陵かも知れないらしいよ」
「つまりここは夜の墓場と」
「まぁ飽くまでかもだし……夜の墓場が怖いの?」
「別に怖くはない、というか慣れたわよ。夜の墓場とか夜の寺とか……もう夜が付くものは怖くない」
「そういえば夜の廃病院とか行ってなかったわね」
「それはやめて、泣くわよ?」
「冗談よ、軽い気持ちで行く気はないわ」
「……その言い方だと行く気はあると言ってるみたいで怖いのだけど」
「…」
「え、嘘よね?」