虚無の存在は行方不明 作:英傑
終わってません。
ではどうぞ。
「ハァ………今日はお客様が多いですねぇ。お嬢様がはしゃぎそうです」
一つのため息と共に愚痴も零す一人の執事———空白は今夜起こりそうな宴の為に、客人となるであろう人々を迎えに出ていた。
「本人を前にしてよく迷惑そうに言えるわね。しかも自分の主人に対して!」
空白が自分に愚痴るのを切れ気味に受け取った少女———アンリ=アクサラは少し大股になって空白を置いて行くように歩いた。積りなのだろうが、大股で歩いてやっと空白と同じ速度になっていた。そんな"御主人様"に対して微笑んだ口元を軽く隠す。空白はこの彼女の行動で内心がワクワクしてしょうがないのだと言う事を理解した。今回の様な客人の発現は極稀なのだ。それはこの森に入ってこれる人物はそう多くはないから。それにこの森に入るには相当な実力が無いと入る事はできず、入れたとしても"門"の通過で精霊に身体と精神の両方の寿命を喰われて直ぐに老化し力尽きて魔物の餌になる。その為、ある特定の条件を満たしていなければ森に入る事も叶わない。
「お嬢様。お客人が訪問して来てくれたのに対して楽しみなのは分かりますが、御自分が魔王である事を忘れずに、魔王として適切に接して下さいね?」
そんな台詞を魔王歴50年の"現・魔王様"に向かって明らかに揶揄った口調で、そして対した反応を見て漏れる笑いを最早隠す気も無い様子の"現・執事"。
「あ、あぁなたねぇ!馬鹿にするのも大概にしなさいよ⁉︎貴方が幾ら長生きしていようと、私が主人で!貴方が従者!此れが今の関係よ!私は魔王になってもう結構経つし、そもそも魔王が何たるかを私に教えてくれたのは貴方でしょう!あ………それとも、自分の教育に自信が無いのかしら?フフフ」
まくし立てるように怒鳴り散らすが、最後に落ち着いたように空白を嘲笑って挑発に出た。珍しく出来た空白を馬鹿にするチャンスにアンリは飛び付いたのだ。だが、空白は落ち着き、だが冷静に笑みを作って優しく且つ小馬鹿にして笑った笑みを向ける。
「そうですね。御嬢様の様な方に教育するのは骨が折れますからね。ちゃんと伝わっているかが不安で仕方がないのですよ、御嬢様」
「グヌヌ………ッ‼︎」
簡単に、遠回しに反撃されて顔を真っ赤に染め上げたアンリは、困った様に笑っている空白の口撃に反論出来ず、ポカポカと子供の様に叩いた。だが見た目が幼いとは言え魔王だ。その一撃の一つ一つが城一つ崩壊させる威力を持っている。一般的な"必殺の一撃"と言うヤツだ。一撃ではないか。それにただ極一部の人間の必殺、だし。そんな自覚は無いアンリに苦笑しながらも空白は全て苦もなく軽く受け止める。避けないのか、と思うかもしれないが、それは愚問だ。必殺の数撃のポカポカを避ければ森が崩壊し、生態系が壊れる。其れを考えれば、森の修復よりも"お子様"の攻撃を受けた方が楽である。
「フフ、御嬢様。そろそろ御客人の御膳ですよ。初対面でこんな醜態を晒すものではありませんよ」
「アンタが原因でしょ‼︎ハァ………もう、私が馬鹿みたいじゃない………。辞めなさいその『え、何言ってのこの子………』みたいな顔をッ!」
どうやらこの御嬢様は怒鳴り散らすが日常の様だ。ならこのまま客人に会った方が素の顔を見せられるだろう。だがアンリは溜息ついでに深呼吸をして自分を落ち着かせ、次に表した表情は無表情だった。その目は冷たく、何を考えているのか読み取れないような。其れを見て相変わらず微笑んでいる空白は満足した様に頷いた。どうやらアンリは無表情が一番魔王の風格があるらしい。そして歩みを進め、等々御客人の正体である3人の少年少女と対峙した。
今回は少し少なめです。
長くは出来ませんでした、すいません。
次回は客人との対峙ですので今回よりは長くなると思います。
ではでは。