虚無の存在は行方不明   作:英傑

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御客人

 

 

 

「………あの方達ですね。………また途轍も無い方々が来たものですね」

「………………」

 

 

空白は呆れつつも愉しそうに、道の先に居る者達に期待を込めた様に言う。その言葉を聞いてアンリは表情を消して、空白はより先を歩く事で応える。そんな事をしなくとも空白は最初から手を出すつもりなど一切無いのだが。アンリの意図を汲み取って苦笑を漏らすも、一礼して一歩退がる。

 

 

「………………」

「………おや」

 

 

空白の見据えた先の最も手前に居る金髪の少女。彼女は道横の木の根元で腰を下ろして、自分の身体を抱く様にして俯いていた。だがどうやら意識が沈んで眠っているらしい。こんな場所で意識が無い時点で正気の性の有無どころか、生命など無いにも等しいのだが、どうやら高熱のある風邪に掛かっているようだ。顔が見え難くも、空白は彼女の身体の状態と体温を確認した。顔を赤く染めて呼吸も荒くなっている。霊力が残り僅かとなった時に発症する"瀕霊症"に掛かっているようだ。それでは自分の身を守るどころ魔物が近付いたことにすら気づく事も出来ない。だが近くにどころか、周囲の少し離れた所にすら魔物が居る気配は無い。良く観れば少女の手首から微量の霊力が漏れていた。その質を見るにどうやらその霊力で魔物払いの術と護身の結界を張っていたようだ。空白は自分の霊力を質を変えて彼女に流して纏わせ、ただ漏れていただけとなっていた霊力を止めると同時に、絶対な安置の状態とし護らせた。

 

 

「………クッ!」

「………………ハァ」

 

 

互いに姿が見えた時からずっと鋭い睨みを2人の向けている黒髪の少女に、理由を分かっていながら悲しそうなしつつも笑みを浮かべている振りをする空白。溜め息は違う意味になりそうだが、挑発を込めてやったらしい。だがどうやら効果があったようで、両手に黒い風が現れた。敵意剥き出しで隠す気など一切無いらしい。その行動によって空白は彼女の能力、正体を把握したのだが、理解して溜め息を漏らすだけだ。

 

 

「………………ハァ」

「おいおい、何n—————ッ!!」

 

 

ドガアアァァァァァアァンッ‼︎

 

 

御客人唯一の少年が声を出した瞬間だった。紅い爆発のような斬撃が地を左右に断ちながら3人に向かって襲い掛かった。 それは膨大な霊格を秘めた斬撃であるが、ただ全力で振っただけの鎌鼬だ。根源を辿れば灰色の大剣を振り下ろしたアンリがいる。黒い少女と少年がその斬撃の存在に気が付いたのは半分程迫ってからだった。そして秒も跨がない内に斬撃は3人を襲った。だが、次の瞬間、アンリの身体が後方へ弾かれたように飛んだ。

 

 

………………ほう、いやはや。存外やりますね。死の少女は兎も角、あの少年の実力はお嬢様と同等か、はたまた超えているようですね。是非とも磨きたい原石ですね。

 

 

この時、空白の笑みが一瞬だけ深みを増したのに気づいた者は居ない。

 

 

「対面早々に必殺カマして来るとか、飛んだ挨拶があったもんだなッ‼︎ どんな神経してやがる、たくが………」

 

 

いつの間にかアンリの立って居た場所には肩で息をしている少年が立って居た。あの斬撃からどうやって死を免れたのかは、その姿が語っている。肩で息をしているの勿論、右腕には肩まで刻まれている深い裂傷。そして直撃の寸前に空白が感じた僅かな時間の間に現れた爆発的な霊格の膨張。

 

 

慢心して油断などしていなければ捌けていたでしょうに、教えがまだ足りませんかね。

 

 

横に持ち上げている少女を見て、空白は今後の教育の方針を決めていた。だが、この少女は仮にも自分の主人である。いつまでもこのままにしておくのは従者として有るまじきもの。

 

 

「それに対しては返す言葉も御座いません。ですので良ろしければ我等が屋敷に足をお運び下さい。我が主人の非礼の償いをさせて頂きたい。あ、貴方達お二人がいらっしゃらなくても其処の少女はお連れさせて頂きますので、悪しからず」

 

 

対面からずっと意識を失っている少女は此方の世界に滞在するには状態があまりにも危険だ。空白も彼女が命を落とすのを望んでいるわけではない為、黒い少女の護法術を破り貼り直す。

 

 

「ッ………わぁったよ。此処は大人しく償われてやるよ」

「良いの?って、それ以外の選択肢は無いのよね」

「では、案内しますので私の後ろに付いて来て下さい」

 

 

二人の納得により、屋敷への案内が決まった。

 

 

対面による戦闘は随分と呆気なく終えられた。

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