遊戯王GX フラグブレイカー   作:順風

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結局1カ月かかりました……こんなはずじゃなかった話です。

1話で終わらせる予定だったので全部書きましたが……異常に長くてどうしようかと思いました。これはもうプレミスがあったら1から作り直すしかないかもしれません。

……すいません。長いですが楽しんでいただけたら。懐かしいカードたちも多々登場します。


第10話 ゲームは始めた時が一番楽しい

 七海昴は世間的に言えばインドア派と呼ばれる人種だ。春休みなら休むものだという生活信条はどこぞの古典部員に通じるものがある。

 

しかし、そんな生活信条を掲げていても外に出なければならない用事はある。

 

(豚肉安いなー……生姜焼きでも作るか。昼は弁当とかでもいいよな。面倒だし)

 

買い物である。忘れがちだが昴は天涯孤独なので食事の準備は自分でしなければならない。ラノベの主人公見たくすさまじく料理ができるなんてことはないが、人並みにはできるので弁当ばかり、インスタント食品ばかりといった生活にはなっていない。この日も食材の購入のため近くのスーパーに行く予定だったのだがどういうわけか改装工事中で閉店していた。仕方なく昨日城ノ内とデュエルを繰り広げた海馬ドーム(正確にはその外だが)の近くにある大型ショッピングセンターに来ていた。

 

一通り買い物を済ませた昴は荷物を持ってきた保冷材入りのカバンの中に入れた後、帰るまえにこのショッピングセンターに入っているカードショップに向かった。この世界に来てからえらくカード屋に行くことが多いが、昴も順調にこの世界になじんでいるということなのだろう。

 海馬ドームが近いということか昨日昴が訪れたファストフード店のように大きくスペースが取られており、その場に居合わせた人同士でデュエルを楽しんでいる。順番待ちも大勢いるが、ただでさえ大きなショッピングセンターのワンフロア……普通の店舗が数十店は余裕で入れる広さがそのまま使われていると言えばその広さも人の多さもよくわかるだろう。

 

 デッキを持ってはいるが、昨日城ノ内に負けたデッキとその時手に入れたパックのカードがあるだけなのでデュエルをするつもりはないようだ。そのため昴は他の人たちがデュエルをしている様子を眺めていた。休み期間中とあって小学生などの子どもの姿が良く目立つ。

 

「バトル! ブローバック・ドラゴンでダイレクトアタック!」

「こんな……こんな子供に負けるだと!」

 

そこそこ強キャラの捨て台詞を残して対戦相手のライフはゼロになった。

 

『ついに決着! 優勝はなんと小学五年生の早乙女選手!』

 

どうやら大会の決勝戦だったようで優勝が決まった少年(・・)は向かい側のデュエルリングの下に向けて手を振っている。おそらく家族か友人が来ているのだろう。

 

(早乙女……だけどデュエルしていたのは間違いなく男だし偶然か?)

 

 早乙女という名前から昴は以前十代が『小学生に負けかけた』とかぼやいていたのを思い出す。あいにく一週間もたたずに帰ったようで、そもそもイエロー生の昴としては状況がつかみづらいイベントでもあった。

 

昴の言うように今デュエルしていたのは紛れもなく男である。男装したレイとかそんなオチは存在しない。見た目も男、服装も間違いなく男、話している感じも男である。

 

(確か昔気になって調べた時は6000人ぐらいは早乙女って言う名字の人はいるらしいけど……まぁいいか)

 

直接聞いてみるという方法もあるが、今は優勝者のインタビューだったり賞品の授与だったりで早乙女君(仮)の周りには人だかりができている上、リュックに背負っているとはいえ荷物が地味に重い。疲れもあったためか途中で思考をやめて帰ることにしたようだ。

 

「おっ! 昨日の!」

 

ショッピングセンターを出て通行量の多い駅までの道を歩いてると不意に声をかけられた。振り返ってみると金髪の男性。というより昨日対戦した城ノ内克也がいた。

 

「あっ……どうも」

 

声をかけられた昴は軽く会釈をした。急に声をかけられたためか内心びっくりしていた。

 

「あっ! 昨日お兄ちゃんとデュエルした人ですね!」

「えっ? なになに? この子が昨日城ノ内とデュエルしたの?」

 

比較的身長の高い本田と御伽はさっき会釈をした時点でも見えていたが静香と杏子も来ていたようだ。

 

「買い物か?」

「ええ。それより城ノ内さんたちはどうしてこちらに?」

「……なんか口調が固くないか?」

「癖みたいなものなんで気にしないでください」

 

影丸理事長と会談した時も大半はそうだったのだが……年上相手だと昴はどうも無意識に敬語になってしまう。

 

「ところで……」

「ああ、俺たちが何しに来たかだったよな。昨日手に入れたパックを使って静香のデッキを……」

「……城ノ内。目の前の子とは昨日会っただけじゃないの?」

「え? ああ! すまねぇ! これだけじゃ何のことかわからねぇよな」

(本当は知ってるんだけどね。説明するのも面倒だし黙っていよう)

 

原作組の簡単な自己紹介の最中、昴は転生について言うか悩んだが言わないで済むに越したことはないと思ったため何も言わなかった。

 

「それで静香のデッキを作ったからデュエルをしてもらおうと思ってな。ここならたくさんデュエルリングもあるし……」

「……水を差すようで申し訳ないんですがさっき見てきましたけど相当混み合ってましたよ? それにいきなり見ず知らずの他人とのデュエルはきついんじゃ……」

「いや……さすがにまだ静香に見ず知らずの奴とデュエルさせるのはまずいからな。杏子とデュエルをしてもらうつもりだ。ついでにカードを見てデッキの調整もしようと思ってな」

 

デュエルスペースと言っても用途は一つではなく、全く見ず知らずの他人とデュエルができるスペース、知り合い同士でもデュエルができるスペースがる。城ノ内達は後者の目的でやってきたようだ。

 

「というよりも家とかでデッキの調整とかしなかったんですか?」

「いや……静香を前にすると本気が出せないというか……」

「俺も自重しちゃうし……」

「痛めつけるのはかわいそうかなって……」

(本田はともかく御伽はデュエルの経験多少なりともあるだろうに……惚れた弱みか? 城ノ内も城ノ内でシスコン? だし無意識に手を抜いちゃうんだろう)

 

静香相手に本気になれない男性陣を見てそんな考えを巡らせる。……聞こえたら怒られそうなことも入っているが。

 

「で、結局杏子を呼んでデュエルしてもらうことになったんだ」

「リラックスするのも大事ですし妥当な判断だと思いますよ? 初心者なら尚更です」

 

いきなり初心者に達人と戦えとか言われたら誰でも委縮するしそれを好きになれない。楽しむことは大切だと昴は思っていた。……当の本人もなかなか勝てずにやめかけたこともあったから言えることなのだろう。

 

「ほんとは双六爺さん……遊戯の爺さんなんだけどよ、爺さんがやってる亀のゲーム屋でカードを見てからやるつもりだったんだが……」

「静香ちゃんを見るなり興奮して勢いよくダッシュした時にまたぎっくり腰やっちまってなぁ……」

「……おじいさん、まったく成長してないわよねぇ……」

「それで双六さんを病院に運んだ後、その病院海馬ドームのすぐ近くだからそこでやろうってことになったんだ」

(双六爺さん……相変わらず若い女子を見るなりか……エロペンギンとかと張り合えるんじゃね?)

 

城ノ内達の説明を聞いた昴はKCグランプリの際にヴィヴィアンを見た後ぎっくり腰になった状況に似ていると思っていた。ちなみに静香についてだが数年がたち大人びてはいるものの清純なイメージはそのままに成長しているというのが昴の感想である。

 

「混んでいるってなると……行っても無駄足になっちまうな……」

「近くに公園ありましたし、そこでやったらどうでしょう? デュエルしたら足りない物をカード屋に見に行けばいい感じになるんじゃないですかね?」

「そうだな。じゃあそうするか!」

 

昴の提案に城ノ内が乗り、他の面々も承諾したので公園に移動してデュエルを行うことになった。

 

        

「この辺でいいか」

 

公園の広く空いたスペースを見つけて城ノ内がそうつぶやいた。

 

「よし静香! 最初のデュエルだ! 思い切っていけ!」

「うん! わたし頑張る!」

「静香ちゃんがんばれー!」

「静香ちゃんなら勝てるよー!」

「あんた達ねぇ……」

 

対戦相手である杏子は本田と御伽の態度に少々呆れ気味のようだ。

 

「どんなデュエルになるのやら……」

 

めったに見ることのない組み合わせのデュエルに昴としては少し楽しみなようだ。

 

「それじゃ、いくわよ静香ちゃん!」

「はい! よろしくお願いします!」

 

2人のデュエルディスクが起動しデュエルができる状態に移行する。

 

「「デュエル!」」

 

        ○

「あたしの先攻ね! ドロー!」

 

デュエルディスクの先攻を示すランプが灯ったのは杏子の方だった。

 

「あたしはモンスターを裏守備表示でセット。これでターンを終了するわ」

 

 

TURN1

 

杏子 LP4000 手札5枚

 

場 伏せ1体

 

静香 LP4000 手札5枚

 

場 無し

 

 

「私のターンです。ドロー!」

 

まだあまり慣れていないようで少々危なっかしい手つきでカードを引く静香。

 

「「頑張れ静香ちゃん!」」

「まだカード引いただけでしょうが! なんなのよあんた達!」

 

カード引いただけでこれではまるで過保護な親のようだ。

 

「そういえば城ノ内さん、静香さんのデッキってどんなデッキなんですか?」

「実は俺もほとんどよくわからねぇ。カードは渡したけど『自分で組む』って聞かなかったからな。どんなふうに組んだかはさっぱりだ。協力したことと言えばルールとか一部のカードの効果を確認したぐらいだからな」

 

昴は乃亜編では静香はモンスターしかプレイしていないので一体どんなデッキを作ったのか気になって城ノ内に尋ねたのだが城ノ内自身も知らないらしい。

 

(杏子さんのフィールドには裏守備のモンスターが1体……どんなモンスターかわからないし……)

 

「デーモン・テイマーを守備表示で召喚します。えっと……カードを3枚セットしてターンを終了します」

 

 

デーモン・テイマー 効果モンスター

星3/地属性/戦士族/攻 800/守 700

リバース:相手フィールド上に表側表示で存在する悪魔族モンスター1体のコントロールをエンドフェイズまで得る。

 

 

TURN2

 

杏子 LP4000 手札5枚

 

場 伏せ1体

 

静香 LP4000 手札2枚

 

場 デーモン・テイマー(守)、伏せ3枚

 

 

「あたしのターン! まずはセットしたモンスターを攻撃表示に!」

 

横向きになっていたカードが表になり、そこに記された魔術師が姿を見せる。

 

「炎の魔術師、ファイアーソーサラー!」

 

 

ファイヤーソーサラー 効果モンスター

星4/炎属性/魔法使い族/攻1000/守1500

リバース:自分の手札を2枚ランダムに選択しゲームから除外する。相手ライフに800ポイントダメージを与える。

 

 

「ファイアーソーサラーのリバース効果を発動! 手札2枚をランダムに除外して800ポイントのダメージを与えるわ!」

 

除外されたカード

 

エンシェント・エルフ

二重魔法

 

ファイアーソーサラーが呪文を唱え、静香に向けて火の弾を発射し、直撃した。

 

「きゃあ!」

 

静香 LP4000→3200

 

小さな悲鳴と共にライフポイントの五分の一が削られる。

 

「さらに通常召喚! マハー・ヴァイロを攻撃表示で召喚!」

 

 

マハー・ヴァイロ 効果モンスター

星4/光属性/魔法使い族/攻1550/守1400

このカードに装備された装備カード1枚につき、このカードの攻撃力は500ポイントアップする。

 

 

「さらに装備魔法、秘術の書をを発動! マハー・ヴァイロの攻撃力を300ポイントアップ! さらにマハー・ヴァイロ自身の効果で装備カード一枚につき攻撃力500ポイントアップ!」

 

秘術の書 装備魔法

魔法使い族モンスターにのみ装備可能。装備モンスターの攻撃力・守備力は300ポイントアップする。

 

 

マハー・ヴァイロ ATK1550→1850→2350

 

「いくわよ静香ちゃん! バトル! ファイアーソーサラーでデーモン・テイマーを攻撃! ファイヤーブラスト!」

 

ファイアーソーサラー ATK 1000

    VS

デーモン・テイマー DEF 700

 

「デーモン・テイマーが……」

「まだよ! マハー・ヴァイロでダイレクトアタック! ホーリー・ライトニング!」

「速攻魔法を発動します! スケープ・ゴートです!」

 

 

スケープ・ゴート 速攻魔法(制限カード)

このカードを発動するターン、自分は召喚・反転召喚・特殊召喚できない。自分フィールド上に「羊トークン」(獣族・地・星1・攻/守0)4体を守備表示で特殊召喚する。このトークンは生け贄召喚のために使用することはできない。

 

 

城ノ内もよく使う色違いの四匹の羊が現れ、ふわふわと静香の前に浮かんだ。

 

「確かこういうときは巻き戻しが起きるのよね?」

「そうですね。バトル中にターンプレイヤーでないプレイヤーのモンスターが増減した場合、ターンプレイヤーは攻撃対象を変更、もしくは攻撃の取りやめを選択することができます」

「じゃあマハー・ヴァイロ! スケープ・ゴートを攻撃!」

 

羊トークンの一体がマハー・ヴァイロの攻撃で破片になり消滅した。

 

「あたしはこれでターンエンド。さぁ、静香ちゃんのターンよ!」

「待ってください! 杏子さんのエンドフェイズに永続罠、神の恵みを発動します!」

 

 

神の恵み 永続罠

自分がカードをドローする度に、自分は500ライフポイント回復する。

 

 

TURN3

 

杏子 LP4000 手札2枚

 

場 ファイアーソーサラー(攻)、マハー・ヴァイロ(攻)、秘術の書(マハー・ヴァイロ)

 

静香 LP3200 手札2枚

 

場 羊トークン三体(守)、伏せ1枚、神の恵み

 

 

「私のターン、ドロー! 神の恵みの効果でライフポイントが500回復します!」

 

静香 LP3200→3700

 

(確かスケープ・ゴートは生け贄召喚には使えないけどそれ以外なら使えるって……それにこの装備カードを合わせれば……)

 

「リバースカードオープン! 儀式魔法、ドリアードの祈りを発動します!」

 

 

ドリアードの祈り 儀式魔法

「精霊術師 ドリアード」の降臨に必要。フィールドか手札から、レベルが3以上になるようカードを生け贄に捧げなければならない。

 

 

「場のスケープ・ゴート三体を生け贄に、精霊術師 ドリアードを儀式召喚します!」

 

 

精霊術師 ドリアード 儀式・効果モンスター

星3/光属性/魔法使い族/攻1200/守1400

「ドリアードの祈り」により降臨。このカードの属性は「風」「水」「炎」「地」としても扱う。

 

 

「あれ?スケープ・ゴートって生け贄にできたか?」

「生け贄召喚の生け贄にはできませんけどこういったケースなら可能ですよ。城ノ内さんもパンサーウォーリアーの生け贄とかによく使ってますよね?」

「まぁな。いつも世話になってるぜ」

「なるほど……城ノ内ちゃんとわかってたんだな」

「分かってなかったら使ってねぇよ!」

 

スケープ・ゴートの「生け贄にできない」の例外に当たる部分を昴が例をあげて説明した。本田が城ノ内を茶化しているがそういう軽口を言い普段から叩き合っているからか本気で怒っているようには見えない。友人と呼べる関係も人それぞれなのだろう。

 

「それはともかく、あの儀式モンスターの攻撃力は1200。マハー・ヴァイロの攻撃力は2350だから全然足りない……」

「さすがに何も考えずに出した……ということはなさそうですけどね」

 

 

「さらに手札から装備魔法、リチュアル・ウェポンを発動します!」

 

 

リチュアル・ウェポン 装備魔法

レベル6以下の儀式モンスターのみ装備可能。装備モンスターの攻撃力と守備力は1500ポイントアップする。

 

 

精霊術師 ドリアード ATK1200→2700

 

「攻撃力2700!?」

「さらに女豹の傭兵を攻撃表示で召喚します!」

 

 

女豹の傭兵 効果モンスター

星4/地属性/獣戦士族/攻1400/守1300

表側表示のこのカードを生け贄に捧げる。このターンに戦闘によって破壊され自分の墓地へ送られたモンスター1体をデッキの一番上に戻す。

 

 

「戦闘です! 女豹の傭兵でファイアーソーサラーを攻撃します!」

 

 

女豹の傭兵      ATK1400

  VS

ファイアーソーサラー ATK1000

 

杏子 LP4000→3600

 

 

「さらに精霊術師 ドリアードでマハー・ヴァイロを攻撃します!」

 

精霊術師 ドリアード ATK2700

   VS

マハー・ヴァイロ  ATK2350

 

杏子 LP3600→3250

 

「私のモンスターが全滅した!?」

「静香ちゃんやるなー! 杏子のモンスターを全滅に追い込むなんてよ!」

「確かに流れは静香にある。だけどよ、杏子だってそう簡単に負けるとは思えない。デュエルはまだ始まったばかりだからな」

(にしても静香のデッキ、使いづらいカードが多いなー。元から……と言われればそうなのかも知れんが。杏子のデッキは純魔法使いデッキっていうイメージだけど……)

 

 

「私はこれでターンを終了します」

 

 

TURN4

 

杏子 LP3250 手札2枚

 

場 無し

 

静香 LP3700 手札1枚

 

場 精霊術師 ドリアード(攻)、女豹の傭兵(攻)、リチュアル・ウェポン(精霊術師 ドリアード)、神の恵み

 

 

(伏せカードなしってことは風林火山はないのかデッキの中か……性格的に入れていない可能性が一番高い気もする)

 

 

風林火山 通常罠

風・水・炎・地属性モンスターが全てフィールド上に表側表示で存在する時に発動する事ができる。次の効果から1つを選択して適用する。

●相手フィールド上モンスターを全て破壊する。

●相手フィールド上の魔法・罠カードを全て破壊する。

●相手の手札を2枚ランダムに捨てる。

●カードを2枚ドローする。

 

 

 

禁止カードたちの中から一つを選んで発動するというような強力な効果だが、先ほどの神の恵みや召喚したモンスターたちのように静香のデッキには女性型のモンスター及びそれに準ずるようなカードが数多く入っている。つまり絵柄で選んでいる以上このカードは入っていない……そう昴は当たりをつけていた

 

「あたしのターン、ドロー! ……モンスターを守備表示でセットしてターンエンド」

 

 

TURN5

 

杏子 LP3250 手札2枚

 

場 伏せ1体

 

静香 LP3700 手札1枚

 

場 精霊術師 ドリアード(攻)、女豹の傭兵(攻)、リチュアル・ウェポン(精霊術師 ドリアード)、神の恵み

 

 

「私のターンです。神の恵みの効果でライフポイントを500回復します」

 

静香 LP3700→4200

 

「……精霊術師 ドリアードで裏守備モンスターを攻撃します!」

「破壊された見習い魔術師の効果発動よ!」

 

 

見習い魔術師 効果モンスター

星2/闇属性/魔法使い族/攻 400/守 800

このカードが召喚・反転召喚・特殊召喚に成功した時、フィールド上に表側表示で存在する魔力カウンターを

置く事ができるカード1枚に魔力カウンターを1つ置く。このカードが戦闘によって破壊された場合、自分のデッキからレベル2以下の魔法使い族モンスター1体を自分フィールド上にセットする事ができる。

 

 

「この効果で見習い魔術師を裏守備表示でセットするわ!」

「女豹の傭兵で見習い魔術師を攻撃します!」

「もう一度見習い魔術師の効果が発動! デッキから執念深き老魔術師をセット!」

 

 

「よし! 1体モンスターは残ったが静香ちゃんが押してるぜ!」

「これはまた次のターン、大きく動きがありそうですね……」

「確かにな。静香にとってはきつい展開になってくる……」

「昴に城ノ内! なんでこの状況で静香ちゃんにきつい状況なんだよ……。それより静香ちゃんを応援しろよ! 静香ちゃん! 頑張れ!」

(あのセットモンスターの事を知っていればそんなことは言えないんだけど……どうせすぐわかることだしいいか)

 

ずいぶん楽観的な本田を見て昴はそう思うが次のターンになれば意味が証明されるので特には突っ込まなかった。

 

「私はリバースカードを一枚セットしてターンエンドです」

 

 

 

TURN6

 

杏子 LP3250 手札2枚

 

場 伏せ1体

 

静香 LP4200 手札1枚

 

場 精霊術師 ドリアード(攻)、女豹の傭兵(攻)、リチュアル・ウェポン(精霊術師 ドリアード)、神の恵み、伏せ1枚

 

 

「あたしのターン! 強欲な壺を発動! カードを2枚引くわ! そして反転召喚、執念深き老魔術師!」

 

 

執念深き老魔術師 効果モンスター

星2/闇属性/魔法使い族/攻 450/守 600

リバース:相手フィールド上のモンスター1体を選択して破壊する。

 

 

「この効果で精霊術師 ドリアードを破壊する!」

 

老魔術師が何かつぶやき始めるとドリアードが苦しみ出し、叫び出した後倒れて破壊された。

 

(……生き霊でもでてたのか?)

 

古典の授業で何かそういう話があったなと思いだす昴。実際のところ何に執念があったのかはよく分からない。デュエルモンスターズ界の精霊たちなら知っているのかもしれないが……

 

「さらに、執念深き老魔術師を生け贄に闇紅の魔導師を攻撃表示で召喚!」

 

 

闇紅の魔導師 効果モンスター

星6/闇属性/魔法使い族/攻1700/守2200

このカードが召喚に成功した時、このカードに魔力カウンターを2つ置く。このカードがフィールド上に表側表示で存在する限り、自分または相手が魔法カードを発動する度に、このカードに魔力カウンターを1つ置く。このカードに乗っている魔力カウンター1つにつき、このカードの攻撃力は300ポイントアップする。1ターンに1度、このカードに乗っている魔力カウンターを2つ取り除く事で、相手の手札をランダムに1枚捨てる。

 

 

闇紅の魔導師 ATK1700→2300

 

「攻撃力が……上がった?」

「闇紅の魔導師が召喚に成功した時、魔力カウンターを2つ乗せてその魔力カウンター1つに付き攻撃力が300ポイント上がるの」

「な、なるほど……そうだったんですか」

 

召喚したとたん攻撃力が上がったモンスターに静香は戸惑い気味だったが説明を聞いて理解したようだ。

 

「さらに速攻魔法、サイクロンを発動! 神の恵みを破壊する!」

「ああっ……」

「魔法カードを発動したことで闇紅の魔導師の攻撃力がアップするわ」

 

 

闇紅の魔導師 ATK2300→2600

 

 

「バトルよ! 闇紅の魔導師で女豹の傭兵を攻撃! 闇紅衝撃波導(ダークレッド・ショック・ウェイブ)!」

 

 

闇紅の魔導師 ATK2600

    VS

女豹の傭兵 ATK1400

 

静香 LP4200→3000

 

 

「この瞬間罠カード、白衣の天使を発動です!」

 

 

白衣の天使 通常罠

自分が戦闘またはカードの効果によってダメージを受けた時に発動する事ができる。自分は1000ライフポイント回復する。自分の墓地に「白衣の天使」が存在する場合、さらにその枚数分だけ500ライフポイント回復する。

 

 

静香 LP3000→4000

 

「ライフポイントあんまり削れなかったわね……あたしはこれでターンを終了するわ」

 

 

TURN7

 

杏子 LP3250 手札2枚

 

場 闇紅の魔導師(攻)

 

静香 LP4000 手札1枚

 

場 無し

 

 

「私のターンです」

 

ドローしたカードと今の自分の手札とを静香は見比べる。今ここに逆転できるカードはない。

 

 

「(ここは耐えるしか……)私はモンスターを裏守備表示で出してターンを終了します」

 

 

TURN8

 

杏子 LP3250 手札2枚

 

場 闇紅の魔導師(攻)

 

静香 LP4000 手札1枚

 

場 伏せ1体

 

 

「防戦一方ね静香ちゃん! 私のターン!」

 

ドローしたカードは赤色。つまり罠カードだ。

 

「バトル! 闇紅の魔導師で守備モンスターを攻撃!」

「セットモンスターはスケルエンジェルです」

 

 

闇紅の魔導師 ATK2600

  VS

スケルエンジェル DEF400

 

 

スケルエンジェル 効果モンスター

星2/光属性/天使族/攻 900/守 400

リバース:自分のデッキからカードを1枚ドローする。

 

 

「スケルエンジェルの効果でカードを1枚引きます!」

「あたしはリバースカードを1枚セットしてターンエンド」

 

TURN9

 

杏子 LP3250 手札2枚

 

場 闇紅の魔導師(攻)、伏せ1枚

 

静香 LP4000 手札2枚

 

場 無し

 

 

 

「私のターン!(!? このカード……)」

 

引いたカードはモンスターカード。しかし静香のデッキのエースモンスターを出すには不可欠なカードではある。しかし……

 

(今あのカードは出せない……)

 

静香のデッキのエースモンスターである聖女ジャンヌは融合モンスターであるため素材である慈悲深き修道女と堕天使マリーの2枚と融合のカードが必要となる。今静香の手札にはそれが揃っているのだが、召喚を躊躇させているのは杏子のフィールドにいる闇紅の魔導師。魔法カードの発動で攻撃力が上がるこのモンスターがいるため、仮に聖女ジャンヌを出しても闇紅の魔導師の攻撃力が2900に上昇してしまい、聖女ジャンヌの攻撃力である2800を上回ってしまう。

 

しかし、このままモンスターを出さなければ次のターンには闇紅の魔導師の直接攻撃で大きくライフを削られるうえ、攻撃力1400以上のモンスターが出てくればライフポイントはゼロになってしまう。攻撃力1400以上なんて一般的なデッキなら間違いなく入っている。

 

(どうしたら……でも出してしまったら融合素材が……あっ! 確かあのカードの効果!)

 

静香が思い浮かべたのはデッキに眠ったままのあるカード。それは彼女が初めてデュエルをしたある電脳世界にて最後の最後で彼女を救ったカード。

 

(あのカードを引ければまだチャンスはある!)

 

そう考え静香はカードに手をかけた。

 

「慈悲深き修道女を守備表示で召喚します!」

 

 

慈悲深き修道女 効果モンスター

星4/光属性/天使族/攻 850/守2000

このカードを生け贄にして発動する。このターン戦闘によって破壊され自分の墓地へ送られたモンスター1体を手札に戻す。

 

 

「ターンを終了します」

 

TURN10

 

杏子 LP3250 手札2枚

 

場 闇紅の魔導師(攻)、伏せ1枚

 

静香 LP4000 手札2枚

 

場 慈悲深き修道女(守)

 

 

「あたしのターン、ドロー! ……バトル! 闇紅の魔導師で慈悲深き修道女を攻撃! そしてこの攻撃宣言時、リバースカードオープン、マジシャンズ・サークル!」

 

 

マジシャンズ・サークル 通常罠

魔法使い族モンスターの攻撃宣言時に発動する事ができる。お互いのプレイヤーは、それぞれ自分のデッキから攻撃力2000以下の魔法使い族モンスター1体を表側攻撃表示で特殊召喚する。

 

 

「あたしはデッキからブラック・マジシャン・ガールを特殊召喚!」

 

 

ブラック・マジシャン・ガール 効果モンスター

星6/闇属性/魔法使い族/攻2000/守1700

お互いの墓地に存在する「ブラック・マジシャン」「マジシャン・オブ・ブラックカオス」1体につき、このカードの攻撃力は300ポイントアップする。

 

 

「ブラック・マジシャン・ガール!?」

「なんで杏子が持ってるんだよ!」

「遊戯にもらったのよ」

「「「もらった!?」」」

「話すと少し長くなるし後でもいいでしょ? 今はデュエル中なのよ!」

「あぁ……話してくれるんならそれでいいが……」

 

多少威圧感を含めて放たれた言葉に怯え、城ノ内達は心なし後ろに下がった。

 

(怖いよこの人……主人公勢のストッパーだっただけの事はある)

 

だが怯えていたのは昴も同じだったりもする。転生したといっても精神年齢的にはまだ若いので普通に年相応の反応といったところだろうか。

 

「マジシャンズ・サークルの効果は相手にも及ぶわ。静香ちゃん、デッキにある魔法使い族を攻撃表示で特殊召喚して」

「必ず……ですか?」

「魔法使い族がいれば必ず出さなきゃいけないの。なければ出す必要はないわ」

 

マジシャンズ・サークルの効果処理が続く。魔法使い族が存在しない場合、昴の元の世界ならデッキをピーピングできるのだがこの世界では申告制でそういった行為が行われる事はない。

 

天使族中心の静香のデッキに魔法使い族はいないと思われた。杏子としてはマジシャンズ・サークルの効果範囲内で出せる最高の攻撃力2000のブラック・マジシャン・ガールを出した以上何が出てきてもこれで倒せると思っていた。

 

「えっと……私はデッキからお注射天使リリーを攻撃表示で召喚します!」

「お注射天使リリー!?」

 

 

お注射天使リリー 効果モンスター

星3/地属性/魔法使い族/攻 400/守1500

このカードが戦闘を行うダメージ計算時に1度だけ、2000ライフポイントを払って発動できる。このカードの攻撃力は、そのダメージ計算時のみ3000ポイントアップする。

 

 

「「お注射天使リリー!?」」

「あれって天使族モンスターじゃねぇのか!?」

 

城ノ内と御伽が素っ頓狂な声で叫び、本田が昴に疑問をぶつけてきた。

 

「ええ。勘違いされやすいんですけどあのモンスターはれっきとした魔法使い族です。なのでこういった魔法使い族の関連カードの効果を受けられるんです。マジシャンズ・サークルの発動は少々裏目に出たみたいですね」

 

昴にとっては今さら驚くことでもないので冷静に説明する。だが3人にとっては衝撃的だったらしい。

 

(お注射天使リリーが魔法使い族モンスターだったなんて……あのモンスターはライフを払うことで攻撃力を上げるカード……静香ちゃんのライフは4000。確実に返り討ちにされちゃう……)

 

ライフが4000ちょうどである以上連続攻撃をかければ倒せるのだが、よほど驚いたためかそこまで考えが至っていなかった。

 

「闇紅の魔導師で慈悲深き修道女を攻撃!」

 

巻き戻しの処理で元の攻撃対象を選択し戦闘を続行した。

 

 

闇紅の魔導師 ATK2600

   VS

慈悲深き修道女 DEF2000

 

「リバースカードを1枚セット。ターンを終了するわ」

 

 

TURN11

 

杏子 LP3250 手札2枚

 

場 闇紅の魔導師(攻)、ブラック・マジシャン・ガール(攻)、伏せ1枚

 

静香 LP4000 手札2枚

 

場 お注射天使リリー(攻)

 

 

「私のターン! (このカードじゃない……)」

 

引いたカードは望みのカードではなかったようだ。

 

「バトルです! お注射天使リリーで闇紅の魔導師を攻撃! ライフポイントを2000支払い、攻撃力を3000ポイントアップします!」

 

静香 LP4000→2000

 

「させない! 速攻魔法、ハーフ・シャットを発動!」

 

 

ハーフ・シャット 速攻魔法

フィールド上に表側表示で存在するモンスター1体を選択して発動する。選択したモンスターはこのターン戦闘では破壊されず、攻撃力はこのターンのエンドフェイズ時まで半分になる。

 

 

 

お注射天使リリー ATK400→200→3200

   VS

闇紅の魔導師 ATK2600

 

杏子 LP3250→2650

 

「攻撃力がほとんど下がってない!?」

「え……えっとこれは……どういうことなんでしょう?」

 

攻撃力が半分にならず使った杏子だけでなく使われた側である静香も困惑していた。

 

「ああ……これはお注射天使リリーの効果の発動タイミングの問題でこうなったんですよ」

「発動のタイミング?」

「お注射天使リリーの効果は戦闘がおこなわれる直前に効果を発揮するものなんです。そのタイミングにはほとんどのカードは割込むことができません。さっき攻撃が行われましたけどリリーが闇紅の魔導師に向かってきている間に杏子さんの使ったハーフ・シャットは攻撃力が3000上がる前の攻撃力400のタイミングでの適用となったので攻撃力が200しか下がらず、実際は攻撃が行われた瞬間に3000ポイント上がって3200になっていた……というわけです」

「……複雑すぎてわけわからねぇ」

「ま、まぁ……終わったらもう一度説明するので……」

「何かよくわからないですけど……私はカードを1枚セットしてターンエンドです」

 

 

TURN12

 

杏子 LP2650 手札2枚

 

場 ブラック・マジシャン・ガール(攻)

 

静香 LP2000 手札2枚

 

場 お注射天使リリー(攻)、伏せ1枚

 

 

「あたしのターン!」

 

ドローしたのはまたしても魔法カード。闇紅の魔導師の効果を生かすために魔法を多めに入れていたのも裏目に出たようだ。

 

(静香ちゃんのライフポイントはちょうど2000。この状況でリリーの効果は使えない。今が攻撃のチャンス!)

 

「いくわよ! ブラック・マジシャン・ガールでお注射天使リリーを攻撃! 黒・魔・導・爆・裂・破(ブラック・バーニング)!」

「罠カード、和睦の使者を発動します! このターン私のモンスターは戦闘で破壊されず、ダメージもゼロになります!」

「ダメか……リバースカードを一枚セットしてターンエンド」

 

 

TURN13

 

杏子 LP2650 手札2枚

 

場 ブラック・マジシャン・ガール(攻)、伏せ1枚

 

静香 LP2000 手札2枚

 

場 お注射天使リリー(攻)

 

 

 

「私のターン! 強欲な壺を発動です! カードを2枚引きます!」

 

引いたカードの中にモンスターカードの姿はない。しかし、まだチャンスがなくなったわけではなかった。

 

「さらに貪欲な壺を発動! 墓地のモンスターカードを5枚戻しデッキをシャッフル。カードを2枚引きます!」

 

デッキに戻したカード

 

デーモン・テイマー

精霊術師 ドリアード

女豹の傭兵

スケルエンジェル

慈悲深き修道女

 

(……来た!)

 

「杏子さん、いきます! これが私の全力です! 手札から融合を発動!心眼の女神を慈悲深き修道女の代わりとして堕天使マリーと融合! 聖女ジャンヌを融合召喚します!」

 

歴史上の偉人をモチーフとした天使族の融合モンスターにして静香のエースモンスター聖女ジャンヌ。かつては融合素材にした心眼の女神の力に助けられて融合召喚したモンスターだったが今度は融合で召喚することができた。

 

「そして魔法カードモウヤンのカレーでライフポイントを200回復! さらに魔法カード、至高の木の実を発動します! 私のライフポイントは杏子さんより少ないので2000ポイントライフを回復します!」

 

 

至高の木の実 通常魔法

このカードの発動時に、自分のライフポイントが相手より下の場合、自分は2000ライフポイント回復する。自分のライフポイントが相手より上の場合、自分は1000ポイントダメージを受ける。

 

静香 LP2000→2200→4200

 

 

「これでまたリリーのライフコストが……」

「そうです。では行きます! お注射天使リリーでブラック・マジシャン・ガールを攻撃!」

 

静香 LP4200→2200

 

お注射天使リリー ATK400→3400

   VS

ブラック・マジシャン・ガール ATK2000

 

杏子 LP2650→1250

 

 

「ブラック・マジシャン・ガール!」

(心なしか泣き顔のように見えるのはたぶん気のせいじゃないはず。ソリッドビジョンなのかあるいは……)

 

ブラック・マジシャン・ガールの散り際は注射に刺されてのものであったので人型モンスターとしては非常に痛い思いをしたのだろう。別に他のモンスターでも変わりはないが人型であるが故なのか、もしかしたら精霊なのかと昴は思いを巡らしていた。

 

 

「続いて聖女ジャンヌでダイレクトアタック!」

「それは通さない! ガードブロックを発動! 戦闘ダメージをゼロにしてカードを一枚ドロー!」

「通せませんでしたか……私はこれでターンを終了します」

 

 

TURN14

 

杏子 LP1250 手札3枚

 

場 無し

 

静香 LP2200 手札0枚

 

場 お注射天使リリー(攻)、聖女ジャンヌ(攻)

 

 

(圧倒的に不利なこの状況。今までこんな状況に何度も陥りながらも遊戯はあきらめず戦って勝利をつかんできた。あたしも遊戯にデュエルを教わった。だから……絶対にあきらめない!)

 

「あたしのターン、ドロー! 貪欲な壺を発動! モンスター五体をデッキに戻してカードを2枚ドロー!」

 

戻したカード

 

ブラック・マジシャン・ガール

闇紅の魔導師

ファイアーソーサラー

見習い魔術師

執念深き老魔術師

 

 

「さらに魔法カード、カップ・オブ・エースを発動!」

 

 

カップ・オブ・エース 通常魔法

コイントスを1回行う。

表が出た場合、自分はデッキからカードを2枚ドローする。

裏が出た場合、相手はデッキからカードを2枚ドローする。

 

 

「ギャンブルカード……ですか?」

「そうよ。城ノ内みたいであんまり使いたくはなかったんだけど負けるかどうかの瀬戸際だからね」

「杏子てめぇ! 誰が運だけのデュエリストだ!」

「城ノ内さん……そこまでは言ってませんよ……」

 

城ノ内=運のイメージが強い以上仕方のないことなのだろうが今でもそれはあまり変わっていないらしい。

 

「コイントス!」

 

杏子が持参したコインを弾いて上空へと飛ばす。落ちてきたコインをキャッチし……面を確認する。

 

「表よ! よってカードを2枚……ドロー!」

 

ドローしたカードを確認。そして一つ深呼吸をした。

 

「静香ちゃん」

「な、なんですか?」

 

そして杏子は静香に声をかけた。

 

「このデュエル……私の勝ちよ!」

「えっ!?」

「手札からマジシャンズ・ヴァルキリアを攻撃表示で召喚!」

 

 

マジシャンズ・ヴァルキリア 効果モンスター

星4/光属性/魔法使い族/攻1600/守1800

このカードがフィールド上に表側表示で存在する限り、相手は他の魔法使い族モンスターを攻撃対象に選択できない。

 

 

「さらに速攻魔法、ディメンション・マジックを発動!」

 

 

ディメンション・マジック 速攻魔法

自分フィールド上に魔法使い族モンスターが存在する場合、自分フィールド上のモンスター1体を選択して発動できる。選択した自分のモンスターを生け贄にして、手札から魔法使い族モンスター1体を特殊召喚する。その後、フィールド上のモンスター1体を選んで破壊できる。

 

 

「マジシャンズ・ヴァルキリアを生け贄に、手札から再びブラック・マジシャン・ガールを特殊召喚!」

「杏子さん、デッキにブラック・マジシャン・ガールは1枚だけですか?」

「そうよ。自分でもよく引けたなーって思うわ」

「す、すごいです……」

 

デッキに1枚しかないカードを貪欲な壺で戻して引く。それを成し遂げた杏子を静香は純粋にすごいと思った。自身も貪欲な壺で慈悲深き修道女を戻したものの引くことはかなわなかった。心眼の女神を引けた以上贅沢はいけないとは思っていたが、それを差し引いても杏子の引きはすごいと思っていた。

 

「ディメンション・マジックにはもう一つ効果があって特殊召喚時に相手モンスターを1体破壊できるんだけど……この効果は使わないわ」

「えっ!?」

「なんでだよ杏子!」

「このターンで勝つために決まってるでしょ!」

「あっ……分かった気がする」

「ホントか!? なんで杏子はあの効果を使わなかったんだ?」

「たぶん……いないと困るからです。見てればわかりますよ」

 

昴は杏子のやろうとしていることが分かったようだが説明するよりみた方が早いと思ったのか詳しくは言わなかった。

 

「さらに魔法カード、賢者の宝石を発動!」

 

 

賢者の宝石 通常魔法

自分フィールド上に「ブラック・マジシャン・ガール」が表側表示で存在する場合に発動する事ができる。自分の手札またはデッキから、「ブラック・マジシャン」1体を特殊召喚する。

 

 

「デッキからブラック・マジシャンを特殊召喚!」

 

 

ブラック・マジシャン 通常モンスター

星7/闇属性/魔法使い族/攻2500/守2100

 

 

「ブラック・マジシャン……」

「遊戯君の持っているのとは違うようだけど……」

 

杏子の出したブラック・マジシャンは着ている鎧の色や髪の色などが金色など遊戯が使っているものとは違うカードだった。

 

「魔法カード、マジシャンズ・クロスを発動!」

 

 

マジシャンズ・クロス 通常魔法

自分フィールド上に表側攻撃表示の魔法使い族モンスターが2体以上存在する場合、その内1体を選択して発動する。選択した魔法使い族モンスターの攻撃力はエンドフェイズ時まで3000になる。このターン、選択したモンスター以外の魔法使い族モンスターは攻撃する事ができない。

 

 

「ブラック・マジシャンを選択して攻撃力を3000にしてブラック・マジシャン・ガールと合体攻撃をすることができる!」

(そういう効果じゃないんだけど……水を差すのもあれだし黙っておこう)

 

 

ブラック・マジシャン ATK2500→3000

 

「そしてこれで最後! 魔法カード、拡散する波動!」

 

 

拡散する波動 通常魔法

1000ライフポイントを払う。自分フィールド上のレベル7以上の魔法使い族モンスター1体を選択する。このターン、選択したモンスターのみが攻撃可能になり、相手モンスター全てに1回ずつ攻撃する。この攻撃で破壊された効果モンスターの効果は発動しない。

 

 

「この効果でこのターン、すべてのモンスターに攻撃をすることができるわ!」

 

 

「杏子さんがさっきディメンション・マジックの効果を使わなかったのは聖女ジャンヌを残すことに意味があったみたいですね」

「つまり……どういうことだ?」

「お注射天使リリーを倒すためです。ジャンヌをマジシャンズ・クロスを使って倒せばライフはちょうど2000ポイント。リリーの効果を発動すれば負けになってしまいます。ブラック・マジシャンもブラック・マジシャン・ガールも攻撃力ではジャンヌに及ばないのでこの状況にする必要があったんです」

「なるほどな……リリーを効果で破壊してもライフは残っちまう。逆にジャンヌを破壊するとリリーの攻撃に耐えきれないか……」

「ま、ホントの事を言えばジャンヌを効果で破壊してブラック・マジシャンでリリーに特攻すれば事が済む話なんですけど。モンスターを大事にするこういうやり方も悪くないとは思いますけどね」

 

 

「行くわよ静香ちゃん! これが最後のバトルよ!」

「はい、受けて立ちます!」

 

ブラック・マジシャンとブラック・マジシャン・ガールが白い悪魔の集束砲のように魔力を貯め始めた。

 

「これが私の全力全開! 「『二重黒魔導(ダブル・ブラック・マジック)!』」

 

放たれた集束砲がジャンヌとリリーに向けて轟音と共に突き進む。リリーは耐えきれずに即座に破壊されてしまうが、ジャンヌはそれを浴びても耐え続けた。しかし、最後は力尽き破片となり散った。そして……

 

「きゃあああああ!」

 

合計2800のダメージが静香を襲い、デュエルディスクがゼロを刻んだ。

 

静香 LP2200→-600

 

 

 

 

 

 

 

 

「声がハモっていたり、合体攻撃だったり、どこかの終わりを告げる砲撃だったり……なんだこれ」

 

そんな昴のつぶやきはいつの間にか増えていた周りの観客こと一般市民の歓声に打ち消されて聞こえなかったのは幸いと言うべきなのだろう。




次回で春休みの話は終わりになる予定です。長くなりすいませんでした。ちなみにですが16000字ほどです。いつもの2倍近いって……

こんなペースで更新してたら完結するのいつになるんだよほんと……
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