遊戯王GX フラグブレイカー   作:順風

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うだうだとまた二カ月……本当に何やっているんでしょう。

今回は遊戯王名物のあの必殺技が登場。


第12話 必殺技

住宅街の中に佇む廃ビル。そう聞くとなんとなくだが近寄りがたい雰囲気を醸し出している物というとらえ方をする人は多いだろう。実際、昴の住むマンションの近くにある廃ビルも元々は好景気の時代に建てられたものが好景気の崩壊とともに建設途中で放棄されたものであり、夜になれば地元に住む不良たちがたまり場として使っていた場所であった。

 

当然近隣住民としては迷惑になるので数年前に掃討作戦(という名のデュエル)を行った。結果は大家さんが不良三十人ほどを相手取り一人残らず倒してしまったらしい。

 

しかし、不良がいなくなっても大家さんではビルの解体はできなかったので現在もそのまま放置されていた。

 

(そういえば大家さん、どうしてあそこの廃ビルに逃げ込むってわかったんだろうか?)

 

マンションから廃ビルまでは一直線に行くことはできなかったために迂回して向かっている昴は走りながらそんなことを考えていた。誘拐されているということは状況から判断できるだろうがなぜ廃ビルだと断定できたのか。実際のところそれは会話の途中で割り込んだために手下が焦って口に出た言葉だったのだが昴はそのことを知る由もない。

 

(……しかし、あのフード、間違いなくあれだよなぁ……)

 

先ほどの男たちがかぶっていたフード。それに昴は見覚えがあった。いや、見覚えがないほうが不思議だろう。原作でのバトルシティ、その大会の最中に始まったこの世界には今は亡き神のカードをめぐる争い、それを仕掛けた結社の事を。

 

「グールズ……だよな。間違いなく」

 

墓守の一族であるイシュタール家。その一族のマリク・イシュタールが組織したグールズはカードの窃盗、偽造、密売を行う組織であったがバトルシティでマリク・イシュタールが武藤遊戯に敗れたことによって崩壊した。現在では海馬コーポレーションの働きもあり偽造カードは反応しないようにディスクの改良が行われており、偽造カードは使えなくなっている。

 

(確かゲームのほうだとキースがネオ・グールズを結成したとか言う話があったはずだけど……もしかするとその話か?)

 

かつてプレイしたゲームの内容を昴が思い出していると廃ビルの近くにたどりついたことに気付いた。子供が誘拐されているという事実を思い出して一気に緊張感が高まる。なにせ自分の行動一つで子供を殺してしまう可能性すらあるのだ。

 

入口は放棄された建物なので一応立ち入り禁止の札が掲げてあるもののかなり古くなっているうえ今でも出入りがあるのか先客がいるせいなのか鍵が壊されていた。

 

(入る手段には悩まずに済みそうだけど……見たところこの中か……)

 

建物はコンクリートが打ちっぱなしで五階以降は天井がなく、雨ざらしとなっている。建物の周辺はきれいに片づけられており建設中という感じはあまり感じられなかった。

 

(少なくとも状況ぐらいは把握しておかないとな……行くか)

 

昴は決意とともに建物の中へと足を踏み入れた。

 

          ○

(外に散らかってないと思ったら中に詰め込んでたのか……。何にもなくて見通しがよすぎるよりはマシだけど……)

 

ビルに入って昴がまず目にしたのはこれでもかというぐらいの建築資材だった。景観の維持の都合か単純にそのままだったのかは定かではないが少なくとも視界を遮るだけの量はあった。ただ一部分だけがまっすぐ道のようになっており、この先にいる者の都合で作られたことがわかる。

 

(なんか邪魔だからどけたって感じだな……見張りもいなかったしアジトとかそういうのじゃなさそうだな)

 

あまりにも散らかっている内部の状況とここに入った時のことなどを総合してこの場所の意義を考えながら昴はゆっくりと階段をのぼりはじめた。階段を上り、二階、三階に到達したもののそこには一階同様資材の山が広がっているだけだった。

 

(ここでもないとなると……後は四階か)

 

消去法になってはいるが犯罪者の居所に近付いているためか昴の緊張もピークに達していた。元の世界で犯罪者とはち合わせた経験などないうえ、想定されるのはグールズである。緊張しないほうがむしろ不思議な話だった。しかし状況も確認せずに戻るわけにはいかない。せめて情報ぐらいは得てからでも戻るのは遅くない。そう意を決して階段を上る。

 

(!? なんだ? この空気を締め付けるような圧迫感は!?)

 

それは四階に続く階段を踊り場まで登り切った時のことだった。昴は重苦しい空気に変わった事に対して不気味に感じていた。

 

かといって歩みを止めるわけにはいかない。再び階段を上り四階にたどりついた。昴は半開きになっている入口のドアから入り、散乱している資材越しに様子を見る。どうやらデュエルが行われているようなのだが様子が少しおかしい。

 

デュエルは昴からみて少し奥のほうで行われており左に恐らくグールズと思われるフードをかぶった人物が一人。右を見ると今日見たデュエル大会で優勝を飾った小学生が見える。しかし肩を上下させながら息をしておりどう見ても調子がよさそうには見えない。そしてこの部屋に入った時から圧迫感がさらに増大している上に霧のように黒く、重苦しい空気が渦巻いており、足元はその靄がたまってしまっている状況になっている。

 

(これはもしかして……闇のデュエルか!)

 

黒い霧を見て昴はそう確信した。ふとフィールド付近に目を向けると先ほど見たフードの男が小学生の視線の死角になるような位置に佇んでいた。腕の中の子供は顔は見えないが寝かされているのか反応がない。

 

場の状況はグールズの場には神獣王バルバロスが一体。小学生のほうのフィールドには何も残っていないところを見るにバルバロスの三体生け贄による全体破壊効果を発動された後に直接攻撃を食らったという感じだろう。ライフポイントはグールズが2600、小学生が400。闇のゲームに加えて相当追い込まれているためにこのような状況になっているのだろう。

 

(しかしどうするか……アーマー野郎みたいにデュエルに物理的に介入するなんてことは俺にはできないし手元に戦えそうな武器はない。手元にあるのはデュエルディスクだけだし下手に壊したら怒られる。ま、それ以前に鈍器にするには形状の問題もあるし威力が出なさそう……)

 

それに加えて周りにあるタンスに物を押し込めたような感じで置かれている資材は逆に大きくて使い物にならない。

 

(寝ているのか知らないけど意識がない以上攻撃したとしても意味がないんだよな)

 

さらにまずいのが人質に意識がないということである。手元はよく見えないがナイフの一本は持っていると見るのが妥当なところだろう。はっきりいって状況はよくないと言える。

 

(そういえばこんなシーンどこかで……)

 

昴はなにか引っかかるものを感じてはいたがそれが何かはこのときはまだ分からなかった。

         ○

 

「俺様のターンは終了だ。さぁ、さっさとサレンダーしてあのカードを渡せ!」

「……いや……だ……」

「……ああ?」

「嫌だって言ってんだよ! お前らなんかに絶対にあのカードは渡さない!」

「はっ! 残りライフはたった400。お前の手札は0! その状態で何ができる!」

 

グールズの手下がそう叫ぶ。声色から明らかに勝利を確信してのものだとわかる。フィールドには攻撃力3000のバルバロスが鎮座しているからだろう。

 

「できるさ……絶対に! 俺のターン、ドロー!」

 

ドローの際の勢いであたりに風が吹き、靄が払われる。デュエリストが本気でドローをすると風を起こすことができるのは割と普通のことだからか相手もそんなことには突っ込まない。

 

「これが俺の切り札だ! 俺は手札からオーバーロード・フュージョンを発動! 墓地のブローバック・ドラゴンとリボルバー・ドラゴンをゲームから除外! 融合召喚! こい、ガトリング・ドラゴン!」

「ガトリング・ドラゴンだと!?」

「ガトリング・ドラゴンの効果発動! コイントスを3回行い表が出た数だけ、フィールド上のモンスターを破壊する!」

 

ガトリング・ドラゴンの破壊効果は表の出た回数に応じて破壊効果を発動するというものであるがそれは自分自身も自壊するデメリットがあるため本来は相手のモンスターが多いときに使用するのが望ましい。しかし、現状相手のモンスターはバルバロスのみ。表が2回以上のときには自壊してしまい、逆に0回の時には次のターンにバルバロスに倒されてライフが0になってしまう。3回コイントスを1回だけ表である確率は37.5%と決して低いわけではないがリスキーであるというのは事実だろう。

 

「一回目! 出たのは裏だ! 二回目、出たのは表! 三回目、出たのは裏! よってフィールド上のモンスターを一体破壊する!」

「な、なんだと! こんな状況でコイントスを一回だけ表に!?」

「伊達に修羅場くぐってきてるわけじゃないんだ! ガトリング・ドラゴン! バルバロスを破壊しろ!」

 

ガトリング・ドラゴンの装備している無数の銃火器が火を噴き、空間を割るような音を立ててバルバロスに打ち込まれていく。バルバロスは全身に鉛玉を打ち込まれた衝撃で爆散した。

 

「これで遮るものは何もない! 行け、ガトリング・ドラゴン! ダイレクト……」

「少し待ってもらおうか」

「!?」

(動いたか!)

 

少年がダイレクトアタックを宣言しようとした瞬間、少年から見えなかったところからローブをかぶった男が少女を抱えて姿を現した。昴もその動きに注視する。

 

「早乙女勇人。妹の命が惜しければあのカードを出してサレンダーしろ」

(ん? この声って確か……)

 

特徴的なその声に昴は心当たりがあった。すると男がフードをとり、顔を出した。その顔は痩せた不健康体のような印象を与え、どことなく爬虫類のような目つき。

 

(レアハンター! グールズと聞いてもしやとは思っていたが……)

 

同時に本名不詳、バトルシティにも堂々とレアハンターと登録して参加していた人物でもある。その人物が少女にナイフを向けていたのだ。

 

「ん……あれ? お兄ちゃん!」

「レイ!」

 

動きがあったことで少女も意識を取り戻したようではあった。そして少年が呼んだ名前と名字から昴にはその少女の名を知ることになった。

 

(早乙女レイ……兄がいたなんて話は聞かないが俺がいる影響かあるいは……しかし今はこの状況をどうにかしないと……)

 

現状の打開が最優先であるがいい案が出てこない。思いつかない自分の頭に少々苛立ちを覚えながら目線を下に下げた。

 

(せめてデュエルに持ち込むことができれば……でもそんな簡単には……)

 

そう思い悩んでいると大家さんのところから持ってきたデュエルディスクを見る。そのデュエルディスクは第一世代仕様で現在昴がデュエルアカデミアで使用している第二世代の前……すなわちバトルシティの際に作られた仕様のものであった。現在は第一世代のデュエルディスクは生産をあまり行っていないため貴重品になりつつある。それに気づく機会はいくらでもあったがそれどころでない状況が昴の手元にあったデュエルディスクの形状すら見落としていた。

 

その時に昴の頭に閃くものがあった。人質とディスク。そしてかつてのバトルシティ。

 

(やってみるしかない!)

 

昴は持ってきたデッキを取り出して所定の位置に入れた。そして左手をデッキトップに置き黒い靄がかかっている中密かに近づいていく。

 

(チャンスは一度きり。失敗は許されない……でも絶対に成功させる!)

 

それは昴の世界以上に頑丈に作られているこの世界のカードだからこそできる荒業、その強度は固い地面にも刺さり、時には銃替わりに使われ、時に事件解決の切り札としてつかわれる。

 

(この……カード手裏剣を!)

 

この世界のある意味で最強の万能武器であった。

 

      ○

早乙女勇人はこの状況に怒りを感じていた。勇人とレイは実の姉妹ではないのだが、お互いにそのことを知ってもなお実の姉妹のような関係が続いていた。勇人としてはうれしいことであったし、そもそも捨てられるまでの記憶を有していないことも実の姉妹同様の関係を続けていられる理由でもあった。

 

そんな二人は勇人が優勝した大会の準決勝で戦っている。互いに全力を出して戦い、勇人が勝利こそ収めたもののレイにも敢闘賞が送られるほどの激戦だった。そんな激戦の後の決勝戦に勝利し、優勝を飾ったのだが、その後になって人ごみの中でレイとはぐれてしまう。

 

探しても見つからずに不安に思っているとレイの携帯から電話がかかってきた。これ幸いと電話に出たものの、そこから聞こえてきたのはレイを誘拐したという内容であった。

 

相手の要求は勇人の持つあるカード。そのカードを持って指定の場所に来いというものだった。勇人は要求通りに建設途中で放置されたままのマンションにやってきたがレイはいない。そのためレイの居場所を吐かせるためにデュエルが開始されて今に至る。

 

(あと少しだっていうのに!)

 

相手のライフポイントは2600。相手の場に伏せカードもないこの状況でガトリング・ドラゴンの直接攻撃が通れば勇人の勝利は確実だ。しかし、レイに突き付けられた刃物がその決断を鈍らせる。

 

(奴らはカードさえ手に入れば他のことなんてどうでもいいといった感じの考えをしている……仮に従ったとして生きて帰れる保証があるのか?)

 

カードさえ手に入れば自分たちは用済み。生きて帰れるかどうかも怪しい。かつてはそんなことを気にすることはなかったが今となってはいかに無力かを勇人は思い知らされた。

 

(一体……どうしたら……)

 

闇のゲームのダメージの蓄積もあり、立っているのもやっとの状態の勇人には直接的に解決できる手段が思いつかなかった。八方塞がり……そう思ったその時のこと。

 

何かがレイに刃物を向けている男に対して飛来し、刃物を持っている手の甲に刺さったのが見えた。その痛みで男は刃物を手放してしまう。

 

「なっ!? 一体何が!?」

「離れろ!」

「ぐっ……何をする!?」

 

それを見たレイはその男の細い腕に噛みつき、振り回されるような状況になったところで男に蹴りを入れる。衝撃でふらついている間にレイは男の拘束から脱することができた。

 

「くっ……逃がすか!」

「待てっ!」

「レイ!」

 

拘束から逃れたレイを男が再び捕まえようとするがそこに邪魔が入った。七海昴その人であった。昴はレアハンターの持っていた刃物を蹴り飛ばして遠くへ追いやって置いたあと、レイの前に立つようにレアハンターと相対した。

 

(何とかうまくいったか……)

 

「何だてめぇは! レアハンター! お前の部下はどうした!?」

「あんたらの部下なら今頃うちの大家さんにやられているだろう」

「てめぇ……舐めたまねしやがって!」

 

勇人と相対している対戦相手が声を荒げ、この場に本来いるであろうレアハンターの部下の所在を問う。しかしその答えはとっくにやられているという回答であり、この対戦相手の全ての手札が失われた瞬間であった。

 

「お兄ちゃん! 早くとどめを刺して!」

 

レイがそう声を上げる。昴とレアハンターの相対はお互いに武器も持っていないことからにらみ合いになっており、どちらも動くことはできない。

 

「いけ、ガトリング・ドラゴン! ダイレクトアタックだ!」

「ぐああああっ!」

 

グールズ LP2600→0

 

ガトリング・ドラゴンの直接攻撃を受けたグールズの男はその場に倒れ伏してしまう。霧のような闇は消失していったが、一方の勇人も立ってはいるが肩で息をしており闇のゲームの影響を受けているように感じられた。

 

「お兄ちゃん!」

 

レイが勇人に駆け寄っている中、レアハンターと昴の総体の状況にも変化があった。

 

「さて、あんたのお仲間は倒したみたいだが、どうする? もうすぐここにも警察が来るだろう。うちの大家さん、警察にも知り合いいるしな」

「フフフ、なるほど。警察が来るからといってもう勝った気か」

「何?」

 

大家さんのデッキを考えれば、ぼちぼち二人を蹴散らして警察に電話を入れている頃。景観の先陣もすでにこちらに向かっているだろうし、のんびりしていられるはずがない。

 

「ちょうどいい。私のデッキの肩慣らしに付き合ってもらおうか」

「肩慣らしだと?」

「デュエルだ。貴様とあの小娘も倒して、警察も倒す。私の完全なる最強デッキを邪魔することができないことをここに証明しよう! デュエルフィールド展開!」

(なるほど、デュエルで拘束しろなんて言葉が生まれるわけだ)

 

再び広がる闇の霧。つまり一人ずつ倒して意識を奪うことでここから逃げ切る算段のようだ。

 

(さて……と)

 

その前に昴には確認しなければいけないことがある。

 

「お兄ちゃん……お兄ちゃん!」

「ちょっといいか?」

「な、何ですか?」

 

素早く脈などを確認する。どうやら思った通り意識を失っているらしい。命に別条はないだろうと昴は判断した。

 

「この子は意識を失っているだけだ。たぶんしばらくしたら意識は戻ると思う。あと、聞こえていたかはわからないから言っておくと、今から俺があの男と決闘する。もうすぐ警察も来ると思うから、しばらくはそこにいてくれ」

「わかりました。あの、名前は?」

「ああ……」

 

言われて初めて昴は名乗っていなかったことを思い出した。

 

「七海昴。知識量が多いだけの凡人だ」

 

そう言ってレアハンターの待つフィールドへ足を向けた。

 

      

 

 

 

 

「んじゃ、始めようか」

「私のデッキに怖気づいたのかと思ったが?」

「言ってろ。いくぞ」

 

「「デュエル!」

 

 

 

七海昴 LP4000

   VS

レアハンター LP4000

 

 

 

「私の先攻、ドロー! 私はカードガンナーを守備表示で召喚」

 

 

カードガンナー 効果モンスター

星3/地属性/機械族/攻 400/守 400

1ターンに1度、自分のデッキの上からカードを3枚まで墓地へ送って発動できる。このカードの攻撃力はエンドフェイズ時まで、この効果を発動するために墓地へ送ったカードの枚数×500ポイントアップする。また、自分フィールド上のこのカードが破壊され墓地へ送られた時、デッキからカードを1枚ドローする。

 

 

「カードガンナーの効果を発動。デッキの上からカードを3枚墓地に送りこのカードの攻撃力を1500ポイントアップさせる」

 

 

墓地に送られたカード

アステカの石像

アクア・マドール

ホーリー・エルフ

 

 

カードガンナー ATK400→1900

 

「なんで攻撃力を上げる効果を持つモンスターを守備表示で……」

「私の最強デッキに攻撃など必要のないことだ!」

(やっぱり原作同様エクゾディアか。だけど今のデュエルディスクは性能が上がっているからエクゾディア3積みなんて事はできないはず。それにこいつはエクゾディアしか勝ち筋がなかった事も王様との対戦の敗因の一つだった。となると違う勝ち筋が入っている可能性は高いな)

 

かつてバトルシティが開催された折、武藤遊戯が対戦した最初のデュエリストが彼であった。当然そのことを知っている昴としてはレアハンターがその時から何も変わらないデッキを組んでくるとは到底思えなかった。

 

「私はカードを1枚伏せてターンエンドだ」

「やっぱり良くわからない。墓地に送られたカードも守備力の高いモンスターだけ。あの人は一体何を狙っているの?」

 

最初のターンはカードを墓地に送っただけであるうえにめくられたカードもただ守備力が高いだけのモンスター。故にレイにはレアハンターが何をしようとしているのかを理解することはできなかった。

 

「その答えは単純。あのレアハンターが狙っているのはエクゾディアだからだ」

「エクゾディア!? 5枚そろったら勝利するっていう!?」

「そう。エクゾディアデッキを作るに当たって重要なのはエクゾディアパーツをいかにそろえるかということだ。当然それが早ければ早いほど勝率も上がる。さっきのカードガンナーの効果も意味のないように見えるだろうけどデッキの枚数を減らしたり、ドローするカードをデッキにたくさん入れることで引きたいカードの確率を高める。こういうデッキなら必要なことだ」

「で、でもエクゾディアって市場にはほぼ出回らないカードだよね? なんでそんなカードを……」

「さすがにそれはわからない。ま、こいつを倒して口を割ってもらうしかないだろう」

 

一頻りレイに対しての説明を終えた後昴は自身のデッキトップに手を伸ばす。口を割ってもらう前に倒さなければ意味がない。デュエルで拘束しろという言葉が平然と飛び交う世界だからこその荒業ではあるが非常に有用なやり方でもあった。

 

「俺のターン、ドロー!」

 

引いたカードと手札を見比べる。このデッキは先ほどまで大家さんのデッキと調整を行っていたデッキであり完全ではないものの高い制圧力を持つデッキであった。……しかしそれでも大家さん相手の勝率はあまりよろしくないのだが。

 

(軸さえ機能すればロックカードぐらいなら破ることはそんなに難しい話じゃない。ただ手が正直今一つだな。調べたところバトルシティやKCグランプリの件があったからか偽造カードなどに対しての対策が強化されたようだし、バトルシティの時のようなエクゾディア三積みなんて状態はないだろう。となると早くカードを引き込むべきか)

 

エクゾディアといえばロックと高速ドローという認識がある昴にとっては時間はあまりないがなんとかはできると考えてカードを出した。

 

「カードカー・Dを攻撃表示で召喚。カードを2枚伏せて効果を発動する」

 

 

カードカー・D 効果モンスター

星2/地属性/機械族/攻 800/守 400

このカードは特殊召喚できない。このカードが召喚に成功した自分のメインフェイズ1にこのカードをリリースして発動できる。デッキからカードを2枚ドローし、このターンのエンドフェイズになる。この効果を発動するターン、自分はモンスターを特殊召喚できない。

 

 

「この効果によってカードを2枚ドロー。効果によってエンドフェイズとなる。ターンエンドだ」

「私の戦術がエクゾディアと知った上でターンを浪費したか」

「浪費? いやいや、やってることはあんたと同じだよ。カードを引き込むためにターンを消費しただけだ」

「減らず口を。私のエクゾディアが最強であることを思い知らせてやる。私のターン、ドロー!」

 

引いたカードを見てレアハンターは爬虫類のようなその顔で笑みを浮かべた。周りからみれば気持ち悪いという言葉ぐらいしか感想がないぐらいだ。現にこの場で唯一の観戦者であるレイもその表情を見てびくついていた。

 

「貴様のその自信、前のターンのカードの効果でさぞかしいいカードを引いたのだろう。だがこのカードでそれも無意味となる! 魔法カード、手札抹殺! 互いのプレイヤーは手札をすべて捨て、その枚数分ドローする!」

「そんな! せっかく引いたカードが!」

 

引いた手札を処理されるという事態にレイが悲鳴を上げる。しかし昴は冷静だった。

 

「手札抹殺にチェーンしてリバースカードオープン! 砂塵の大竜巻!」

 

 

砂塵の大竜巻 通常罠

相手フィールド上の魔法・罠カード1枚を選択して破壊する。その後、自分の手札から魔法・罠カード1枚をセットできる。

 

 

「あんたのフィールドにある伏せカードを破壊する!」

「和睦の使者が破壊されたか……しかし、その程度のことでは私のデッキには勝つことはできない!」

「砂塵の大竜巻にはもう一つ効果がある。破壊した後自分の手札からカードを一枚セットできる。俺はカードを一枚セット。さて、手札抹殺の処理だ」

 

昴はカード・カー・Dで加えたうちの一枚をセットし手札抹殺の処理に入った昴もレアハンターも4枚ずつの交換となる。

 

(今の効果で奴はカードを1枚残した……いったい何を伏せた? 奴は私のデッキがエクゾディア主体であることには気づいている。その対策のつもりか?)

 

一方のレアハンターは昴がのこした伏せカードに対して警戒感をあらわにしていた。手札抹殺の処理を避けるようにして伏せられたカードであるためというのが一番の理由だろうが

 

(だが、私のデッキはエクゾディアがなくとも勝てるように強化されている。そのためのカードは揃いつつある!)

 

「私はカードガンナーの効果を発動! 再びデッキの上から三枚墓地に送る」

(エクゾディアパーツは無しか……まぁ補充要員とダーク・バーストが送られただけましだと思おう。といってもまだ回収カードがあるのかが気がかりではあるけど)

 

カードガンナーによるデッキ圧縮が行われたがレアハンターのデッキからパーツを回収するカードが送られたことに多少の安心感を得つつも他にも存在するパーツカードをサーチするカードに警戒感を抱いていた。

 

レアハンターのデッキは現在残り26枚。先ほど使用された手札抹殺の際に捨てられたカードの中にパーツカードはなかったことからまだ若干余裕があると昴は見ていた。

 

しかし、その考えは少々甘かったことを昴は知ることになる。

 

「私は強欲な壺を発動。カードを2枚ドローする。そしてライフを2000支払い、終焉のカウントダウンを発動!」

 

 

レアハンター LP4000→2000

 

「!? 終焉のカウントダウン!」

 

 

終焉のカウントダウン 通常魔法

2000ライフポイント払う。発動ターンより20ターン後、自分はデュエルに勝利する。

 

 

カードの発動の宣言とともに周囲が暗く暗雲が立ちこみ始めた。雷が落ちるような音も聞こえる。

 

「終焉のカウントダウン……デュエルモンスターズの中で特殊勝利のカテゴリーに該当するカード……でも20ターンもあれば!」

「フフフフ……私が20ターンも待つとでも思ったか! 私は手札から速攻魔法を発動!」

「速攻魔法?」

「発動せよ、時の飛躍!」

「!? 時の飛躍だと!」

 

 

時の飛躍(アニメオリカ) 速攻魔法

この魔法を発動した瞬間 3ターン後のバトルフェイズに飛躍(ジャンプ)する

 

周囲の空間にうねりが起きたかと思うとそれはすぐに終結した。しかしデュエルディスクのターンカウントが進んでいるのが確認できる。

 

 

「それでもまだ17ターンある! それまでに……」

「……いや、終焉のカウントダウンのカウントは互いのプレイヤーのエンドフェイズに一つずつ増えていく。時の飛躍によって過ぎた3ターンというのは双方ともに3ターンが経過したことになる。つまり、あのカウンターが乗るのは3つじゃなく……6つだ」

 

昴のその言葉通りカウントダウンの火は円の4分の1を超えた6つ目まで点灯している。

 

「まだ終わりではない! さらにもう1枚、時の飛躍を発動!」

 

再びうねりが発生するとともにカウントダウンの火は12個目の火を灯した。

 

「……これで奴のターンの終了時には火は13個……つまり俺に残されたターンは4ターンだけということか」

「そんな!」

「私は永続魔法、守護神の宝札を発動! 発動時手札をすべて墓地に送りカードを2枚ドローする。さらに! このカードが存在する限り私はドローフェイズ時にカードを2枚ずつドローできる!」

「!? ドロー増強カード!」

 

 

守護神の宝札 永続魔法(アニメオリカ)

このカードの発動時、自分は手札を全て捨て、デッキからカードを2枚引く。このカードが自分フィールド上に表側表示で存在する限り、自分はドローフェイズにカードを2枚ずつ引く。

 

「私はカードを2枚セット。これでターンエンドだ」

 

(次のターン以降毎ターン強欲な壺状態か……早いこと何とかしないとまずいな……)

 

「そんな……こんな状況、一体どうしたら……」

 

レイが悲鳴に近いような声を上げるのも無理はない。あと4ターンで勝たなければいけないうえにデッキにはそれを待たずとも完成してしまえば敗北が決まるエクゾディア。相手の手札は現在0なので5枚必要なエクゾディアは手札にないのは明白であるが、残りのデッキ枚数は22枚。その中に入っているドロー増強カードとエクゾディアパーツの枚数を考えれば一刻の猶予もない。しかし、悠長にことを構えていては終焉のカウントダウンの効果で敗北が決まる。

 

「そしてこのエンドフェイズ、終焉のカウントダウンのカウントが刻まれる」

 

13個目の火がともった。これで円をほぼ3分の2周したことになる。

 

昴に残されているのは、あと4ターン。




新しい召喚方法の名前がしっくりきません。さっき思い出そうとしたら浮かんだ言葉。

ペンなんとか召喚。どういうわけかどこかの大食いシスターが浮かぶんですが。

この小説では当分スルーです。現行のルールのまま進みます。
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